図面・書類をデジタル化して共有、バックアップも行い 機動的に事業活動を展開する温度センサーの専門集団 サーモテクノス(群馬県)
2025年10月07日 06:00
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群馬県高崎市の市街地から北に10キロメートルほど行った榛名山の山裾に本社と工場を構える株式会社サーモテクノスは、マイクロヒーターや温度センサーといった機器を設計・製造・販売しているメーカーだ。製品は温度の制御や監視が必要な製造装置などに使われ、それぞれが間違いなく動作することを助けている。こうした多彩な製品が正しく作られ取引先に渡るように図面や取引記録の電子化を進め、共有化を推進し、データのバックアップも行うことで、万が一のことがあっても生産がスムーズに進むような体制を構築した。(TOP画像:温度センサーを製造している株式会社サーモテクノスの工場)
高崎市からサーモテクノスの本社に近づくにつれ、正面に見える榛名山が近くなり、道もだんだんと上り坂になっていく。代表取締役の野崎要さんが「自転車のロードレースをしている人たちが、山登りの練習のために走っているのを見かけます」と話すように、自然が近くてスポーツにも適した風光明媚な場所に同社が拠点を構えたのには理由がある。近隣にマイクロヒーターや温度センサーの製造に慣れた人材がいたからだ。
同業の経験者を雇用して会社を立ち上げ、10年で多数の取引先を持つ企業へと成長
パソコンに向かう株式会社サーモテクノスの野崎要社長
石川県の出身で、愛知県に移って今と同じ温度センサーなどの部品製造を行う会社を経営するようになった野崎社長だったが、2015年に新たに会社を作ることになって、同業のメーカーがすでに存在していた群馬県を新しい拠点として選んだ。市街地ではなく榛名山の山裾になったのは、「近くの渋川市にあった同業のメーカーで働いていた人たちに来てもらえそうだったからです」(野崎社長)。そうして迎え入れた人たちや、新たに入ってもらった人たちが、今は本社と棟続きの工場で働いている。
同社の製品に一般の家庭や街中で気付くことはまずない。マイクロヒーターは温めておく必要がある場所に取り付ける部品で、「一例ではプラスチックの射出成形のノズル部分に取り付けられていて、プラスチックを200~300℃くらいに溶融する熱源として使われています」(野崎社長)。温度センサーはそうした加熱を行う際に、どれくらいの温度になっているかを感知して伝える役割を果たしている。
マイクロヒーターは射出成形機などに使われ、温度センサーはITインフラなどに今後展開していく可能性を持つ
株式会社サーモテクノスの工場
「最近は、クラウドサービス用の拠点でサーバーなどの機器がどれくらいの温度になっているかを監視する用途にも使われ始めているようです」(野崎社長)。データのクラウド化が進んで全国各地でITインフラ施設の建設が進められていることもあり、同社の温度センサーにもこれから一段の需要が見込まれそうだ。ただ、「商社などを通して販売しているため、どのような場所で温度センサーやマイクロヒーターが使われているかは、あまりわかっていません」(野崎社長)。
取引に関しては順調で、コロナ禍の時期も「早めに部材を確保しておきたいというメーカー側の需要もあって、売上は落ち込むどころか逆に伸びました」(野崎社長)というから、商社経由の販売でも特に問題はない。ただ、自分たちの作っているものがどのようなシーンで使われているかをもっと知りたいという思いもあり、「営業代行会社を使っていろいろな会社にコンタクトをとってもらうようにしました」(野崎社長)。
営業代行会社を活用して新しい取引先を開拓しようと社長自ら走り回る
愛知県から移って会社を立ち上げた株式会社サーモテクノスの野崎要社長
営業のプロだけあって、誰もが名前を知っている大企業ともコンタクトを取って、訪問の日程を決めてきてくれるという。野崎社長はこれを受けて、アポイントが取れた会社に足を運んで、製品について説明する。「すぐには受注に結びつきませんが、つながりができることで将来の取引先になってくれる可能性が生まれます」(野崎社長)。訪問先で寄せられる様々な意見や要望を聞くことで、製品の改良や新たな用途の開発につながることも期待できるため、これからも足しげく会社訪問を続けるという。
同社の製品は、さまざまなシーンで使われていることから種類も多岐に及ぶ。必要となる図面も実にさまざま。これを従来は、紙に出力してファイルに保存しつつ、製造の現場に回して製品を作ってもらっていた。これを同社では、「受注をした時、図面をPDFにしてサーバーに保存して、工場のパソコンからも見られるようにデータの共有化を行いました」(野崎社長)。工場では、図面に添えられた工程表も見ながら作業することで、多彩な製品群の中から注文を受けている製品を、間違えずに製造できるようになった。
図面や取引記録を電子化してパソコンに入れ共有化も行い、どこからでも見られるようにした
工場内に置かれたパソコンから共有化されたデータを閲覧できる
今は、新しく注文を受けたものについて図面を電子化して保存しているが、いずれ過去に手がけた製品の図面についても電子化を行って、いつでもどこからでも取り出せるようにしたいという。「何年か前に注文をいただいたものを、改めて注文していただくことがあります。そうした時に、図面を探して取り出すのは手間がかかります」(野崎社長)。電子化されてデータベースに登録されていれば、「圧倒的なスピードで取り出せて業務を効率化できます」(野崎社長)。
大量にある図面の電子化には相当な手間や時間がかかるため、どのような方法が最適かを今は探っている最中だ。「AI(人工知能)を使えば、図面を読み取って用途や納品先も含めて記録していってくれるかもしれません」(野崎社長)。ニュースでAIの便利さが伝えられても、普通の人は自分たちの仕事にどのように関わってくるまであまり考えない。目ざとくAIの持つ可能性を考える前向きさが、新しく会社を興して10年という短期間で多くの取引先を持つほどの規模へと同社を押し上げた。
ハードディスクが壊れた経験から常にデータをバックアップしておくシステムを導入して危機に備えている
図面の管理や取引先の管理をパソコン上で行うようになったことで、データを安心していつでも取り出せるようにする必要が出てきた。そこで2025年の秋頃から始めたのが、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)を使って行う、ネットワーク上に置いたハードディスクドライブ(HDD)へのデータのバックアップだ。「実は一度、データを共有化していたHDDが壊れてしまったことがあったんです」(野崎社長)。データを復旧させるツールやサービスもあったが、「この時はいくら試してもデータを取り出せませんでした」(野崎社長)。
自分や従業員たちがパソコンに保管していたデータを集めて可能な限り復旧させたが、相当な手間がかかった上に今後への不安も残った。そこで決断したのが逐次的なデータのバックアップという方法。新しいファイルを作ると、同じ内容のファイルが別途作成され、バックアップデータとして保管されるため、特段の意識をしなくても自然とバックアップが行える。企業にとって取引先との約束を守ることが何にも増して大切だ。データが消えて納品が遅れるようなことがあっては信頼に関わる。困難を経験したことで、すぐにBCP(事業継続計画)への対応を行う決断力、同社の成長を支えているのだろう。
近くに暮らしている人たちを採用して働いてもらうことで人手不足の中でも人材を確保している
サーモテクノスの工場で働く女性たち
工場で働く11人を含めて13人の社員数では、出退勤のシステムを入れて勤怠管理の必要性はまだ感じていない。ただ、「たとえ13人でも集計などの作業にはやはり時間がかかります。これを簡単に行えるような仕組みがあるのなら利用を考えてみたいですね」(野崎社長)と関心は持ち続ける。ホームページについてもしっかりと手を入れて情報発信に努めていく。
人手不足が言われる中、ホームページを通して採用を呼びかける企業も少なくないが、同社については、「ご夫婦が2組、姉妹が1組といった感じで身近な人を集めるような形で働いてもらっているため、すぐに人を採用するような状況にはありません」(野崎社長)とのこと。一方で、「製品の情報を載せたり、タイミング良く更新したりして取引先に見て関心を持ってもらえるようにはしたいと考えています」(野崎社長)。そのためにホームページ構築サービスを使ってタイミング良く情報発信をしていけるようにしていく。
榛名山や赤城山を望む自然豊かな環境から取引先に求められる製品を送り出していく
株式会社サーモテクノスの本社から望める赤城山
営業代行を使って新規市場の開拓に挑み、データセンターへの温度センサー提供といった次代の産業への浸透も進んで将来的に取引量が拡大していけば、新しく営業担当者を迎えていっそうの売上増を目指すことも頭にある。そうした時に、榛名山が近く赤城山も望めて風光明媚な立地にひかれ、アグレッシブな野崎社長の経営姿勢にも共感して働きたいと言ってくる人もいそうだ。
サーモテクノスの本社及び工場
企業概要
会社名
株式会社サーモテクノス
住所
群馬県高崎市箕郷町柏木沢588-1
電話
027-395-0222
設立
2015年5月
従業員数
13人
事業内容
工業用温度センサー、ヒーターの製造・販売
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