製造業(機械)

世界シェア企業を陰で支える小さな精密切削メーカー 顧客の未来解決のため、「R&D部門」と「企業内大学」で躍進 桐生明治(群馬県)

From: 中小企業応援サイト

2025年10月23日 06:00

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株式会社桐生明治は群馬県桐生市を拠点に、自動車部品をはじめ多岐にわたる領域に精密切削加工部品を供給しているメーカーだ。その高い品質と技術力には定評があり、それを裏付けるように、完成車メーカーに直接納入する一次取引先「Tier 1」の自動車部品メーカーを取引先に持つ。自動車関連にとどまらず、各種分野で世界トップシェアを誇る7社を取引先に抱え、「世界シェア企業を陰で支える」精密切削メーカーとして高い存在感を示している。さらに、納期厳守の徹底、業務効率化に向け、独自の生産管理システムのバージョンアップを図り、生産管理の見える化に取り組む。(TOP写真:桐生明治ホームページ。NC自動旋盤が並ぶ)

ISO9001認証取得を機に商社依存から直接受注に事業転換 初の展示会出展で手応え

展示会出展用のブースセット

展示会出展用のブースセット

桐生明治の前身は1967年に立ち上げた「川中子製作所」にさかのぼる。現在の桐生明治の川中子雅夫代表取締役社長の父である川中子幸夫氏が個人事業として二次加工を中心にロクロやペンチレース、フライス盤などを使い技術を高めてきた。

その後、事業拡大に伴い1980年7月に川中子幸夫氏が「有限会社桐生明治製作所」を設立し、現在の桐生明治が実質的なスタートを切る。社名は川中子幸夫氏が独立前に勤めていた明治製作所(神奈川県横浜市)にあやかり、地元の桐生を冠したことに由来する。1985年には現在の本社所在地に新社屋と本社工場を移転すると同時に、NC自動旋盤を導入し、シャフトや精密部品を手掛けるようになる。

桐生明治にとって大きな転機は、現在の川中子社長が代表取締役専務として父に代わって実質的に経営の舵取り役を担うようになったことだった。「当時、第一に取り組んだのは組織の品質マネジメントシステムに関する国際規格であるISO9001の認証取得だった」と川中子社長は振り返る。

川中子雅夫代表取締役社長は企業経営を大きく進化させた

川中子雅夫代表取締役社長は企業経営を大きく進化させた

それまでの桐生明治の事業手法はネジなどの専門商社との取引が主体で、桐生明治が直接営業せずに専門商社からの発注に依存してきた。社内体制も「間接部門や組織もなく、社長対現場のような形で運営してきた」と川中子社長は語る。

このため、旧態依然のままでは今後の成長は見込めないと判断し、自ら直接受注を獲得できる経営へと大きく舵を切った。このためISO9001の認証取得が不可欠と判断し「認証取得に向けてあるべき姿を明確にして組織を作るなど準備を重ね」(川中子社長)、2013年7月に認証を取得した。

品質保証体制の要となる太田事業所内にある検査室

品質保証体制の要となる太田事業所内にある検査室

川中子社長が直接受注への手応えを実感したのは、認証取得直前に東京ビッグサイトで開催された「機械要素技術展」だった。桐生明治としては初の展示会への出展で、群馬県ブースに桐生市からの出展3社の中の1社として参加し、多くの企業と接する機会を得た。これを機に桐生明治は積極的に展示会に出展するようになり、ISO9001認証取得をアピールしている。

社長就任の2017年が「新生・桐生明治」への分岐点 生産管理システムを導入 「見える化」を徹底し事業革新を加速

生産管理システムと連動し機械の負荷、空きを表示する生産スケジューラーのモニター

生産管理システムと連動し機械の負荷、空きを表示する生産スケジューラーのモニター

さらなる転機は2017年に訪れる。2月14日に創業者である川中子幸夫社長の突然の逝去に伴い、川中子雅夫氏が代表取締役専務から代表取締役社長に就任。同時に、株式会社に組織変更し、社名を桐生明治製作所から桐生明治に変更した。さらに、群馬県太田市の太田リサーチパーク内に建設していた新工場「太田事業所」が4月に本格稼働した。

太田事業所について川中子社長は「本社工場が手狭になり、売上高も10億円を超え、事業拡張を狙って新たな生産拠点を計画していた」と言う。「新工場建設、株式会社への組織変更、社名変更については、それぞれ父の承諾を得ていた。ただ、太田事業所への引っ越し当日に父が亡くなったのは突然のことだった」と川中子社長は振り返る。社長就任も含め、これがまさに〝新生・桐生明治〟への分岐点となったことは間違いない。

実際、これを機に事業革新は加速する。2018年には見積・受注から実績、在庫、納品、売掛・買掛までの情報を「見える化」した生産管理システムを導入した。さらに2023年には生産管理システムをバージョンアップし、現場でタブレットと携帯端末で情報を入力できるようにし、管理業務の省力化、入力操作の負担軽減に取り組んだ。

さらにこれと連動し、翌2024年には機械の負荷、空きをグラフ表示した画面を見ながら、作業量を分散したり、急な納期変更などに即座に対応できる生産スケジューラーを新たに導入した。この点について川中子社長は「メーカーの基本である納期厳守の徹底のため、生産スケジューラーの導入に踏み切った」と語る。

生産管理システムの一連の改良は「システムには検査法も入っていて、どういった不具合でNGにしているかといった情報も全部吸い上げられ、常に付加価値の良し悪しがすぐにわかる非常に良いシステム」と川中子社長は評価する。

「想像力でお客様の『困った』を『良かった』に変える」を徹底するため、「桐生明治R&D」を開設 取引先世界シェアトップ7社への貢献と自動車に特化した「IATF16949」の認証取得でさらなる挑戦

2023年11月開始の「桐生明治R&D」(「桐生明治」のFacebookより)

2023年11月開始の「桐生明治R&D」(「桐生明治」のFacebookより)

直接受注に大きく舵を切った桐生明治の「モノづくり」に対するスタンスは「想像力でお客様の『困った』を『良かった』に変える」にある。この点を川中子社長は「お客様が困っていることを常に考え、それを当社が背負って、解決に導いていけば、必ず次の仕事につながる」と説く。「たとえ、その困りごとが当社でなかなか見かけない図面だったり、大変な仕事だったとしても、そこを乗り越えれば当社の技術力も高まる。それを実践してきたからこそ、他社との差別化につながっている」とも話す。

桐生明治はこうした取り組みを支援する組織として、2023年11月に桐生市の本社隣接地に新工場「桐生明治R&D」を完成し、そこに技術部を設けた。技術部では現場で困っている加工や工程があった場合、テストなどを繰り返して課題を解決し、現場にフィードバックし、全社的な技術の底上げにつなげている。

こうした事業革新の取り組みは多岐にわたる領域で取引先の増加という好循環につながり、2024年度は過去最高売上高を更新した。実際、桐生明治の大口取引先には、例えば歯科用ハンドピースで世界シェア7割を持つ歯科用機器メーカーをはじめ、各領域で世界のトップシェアを誇る7社を取引先に持ち、文字通り「世界シェア企業を陰で支える」を実践している。

しかし、桐生明治のあくなき挑戦は続き、2023年12月には自動車産業に特化した品質マネジメントシステムの国際規格「IATF16949」の認証を取得した。桐生明治にとって自動車関連は現在、最もボリュームのある受注先で、EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)向けなどの部品を手掛ける。「ISOに比べ非常に難易度の高いIATF16949の認証取得は当社のような事業規模では極めて珍しい。しかし、名だたるトヨタ自動車系の大手自動車部品メーカーなどTier 1のメーカーとの接点を持てるようになるためにも、認証取得に全社を挙げて戦術的に取り組んだ」と川中子社長は強調する。

情報セキュリティーに総合脅威管理を導入 ホームページにはメタバースページを追加し、情報提供型から体験型にリニューアル

こうした戦術とも絡み、桐生明治は情報セキュリティーの強化を目指している。既に複数のセキュリティー機能を一つの機器に統合した統合脅威管理(UTM)を導入し、ネットワーク全体のセキュリティーを包括的に管理・運用している。しかし、Tier 1の自動車部品メーカーは企業の社会的責任(CSR)の重点項目にサプライチェーン(供給網)を含む情報セキュリティー強化を組み込んでおり、こうした流れに沿ってさらなる強化が不可避と判断している。

一方、求人と取引先拡大に向けて、桐生明治は知名度向上に様々な方法で取り組んでいる。その一つは自社ホームページのリニューアルで、2024年にメタバース、求人のページを追加し、仮想空間で事業内容などを体験できるようにした。

ホームページを巡っては、ある大手医療機器メーカーが「実はこういった部品で困っている。そちらで作れますか」と問い合わせフォームに書き込んできて、これをきっかけに最終的に商談が成立したといった逸話もある。桐生明治の直接受注への糸口は、展示会やホームページを介して接触のあった企業に工場を視察してもらい、サンプルの提供で取引につなげている。メタバースのページの追加によって、情報提供型から体験型のアプローチが可能になり、直接受注、あるいは求人への糸口がさらに広がることが期待される。

また、桐生明治はバックオフィスのDX(デジタルトランスフォーメーション)化にも取り組んでおり、2024年末から2025年初めにかけてハード面を一新し、サーバーとパソコン50台、複合機6台を更新し、ネットワーク・インフラも全般的に整備した。さらにハードの導入からメンテナンス、さまざまなトラブルに一括して対応できるサービスも導入し、業務効率化を図っている。

「モノづくり」に加えて「人づくり」を強化 自社モデルの技術伝承に企業内大学も設置

「製造業全体が芳しくない今こそチャンス」と語る川中子社長

「製造業全体が芳しくない今こそチャンス」と語る川中子社長

桐生明治は「モノづくり」に加えて「人づくり」にも重点を置いており、2019年に一般社員のキャリアアップを促す人事評価制度を導入したほか、技術伝承を狙いに外国人技能実習制度を導入した。さらに2021年には企業内大学「KMSU(桐生明治ソリューションユニバーシティ)」を設けた。一般社員に自社のものづくりスタイルを浸透する狙いで、一般社員を育てる主任や係長、課長クラスを対象に、教材を内製化し、月2回開催している。

こうした取り組みなどが評価され、2024年3月には経済産業省・中小企業庁が事業変革や新規事業に挑戦し、地域経済や日本経済の成長への貢献が期待できるモデルとなる中小企業を表彰する2023年度「はばたく中小企業・小規模事業者300社 人への投資・環境整備部門」を受賞した。

川中子社長は「製造業全体があまり芳しくない中にあって、こんな時こそ当社のチャンス」と位置付ける。モノづくり、人づくりで技術の向上と品質の安定に力を注いできた上、IATF16949の認証取得にみられるあくなき挑戦がその自信を裏付ける。それを後押しするのが、生産管理システムのバージョンアップをはじめとしたデジタル化による業務革新だ。

企業概要

会社名

株式会社桐生明治

住所

群馬県桐生市広沢町5丁目1122番地

HP

https://k-meiji.jp/

電話

0277-54-9189

設立

1980年7月

従業員数

95人

事業内容

各種精密部品(半導体・医療機・電子部品・建機・遊技機・OA機器シャフト)、各種自動車部品加工、製造組立業務など

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