経営の見える化をベースに、感謝の心で地域貢献を重視 夢に向かって挑戦を続ける 湯本内装(埼玉県)
2025年10月24日 06:00
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古代において武蔵国の中心地として栄えた歴史を持ち、明治時代に近代日本経済の礎を築いた渋沢栄一ゆかりの地が数多く存在する埼玉県北部の行田市。歴史資産に恵まれたこの町で、湯本内装株式会社は、半世紀以上にわたって内装業を手掛けると共に、天然温泉や大衆演劇の劇場で構成するレクリエーション施設の運営や寄付活動を通じて地域の活性化に貢献している。(TOP写真:湯本内装のホームページより)
経営面では、創業当初から、どんぶり経営を排し経営の見える化のため原価管理を重視したシステム導入を行ってきた。また内装業をベースに、事業安定のため、多角化を推進。現在、M&Aによるグループ企業の拡大にも力を入れている。合併先の従業員の働く環境を大幅に改善し、合併先の経営の健全化と成長のため、デジタルによる効率化と見える化を推進している。
1972年に創業し、内装業を軸に一代で埼玉県北部を代表する企業グループを形成
湯本内装株式会社の湯本茂作代表取締役
20代前半で起業してわずか一代で埼玉県北部を代表する企業グループを形成した湯本内装株式会社の湯本茂作代表取締役は、地域の立志伝中の人物として知られている。家庭の事情から中卒で東京都文京区本郷の表具店で、掛け軸や額の表装を専門とする職人としての修業を積み、生まれ故郷の行田市に戻った後、1972年に有限会社湯本表具店を創業した。小さな店舗からのスタートだったが、顧客からの信頼を何よりも重視して仕事に取り組んだ結果、受注件数は着実に増えていった。苦労も多かったが、表具店で培った職人としての高い技術力が、品質の高い仕上がりを実現する上で大いに役立ったという。創業からわずか3年後の1975年には株式会社化した上で社名を湯本内装に変更した。
「感謝の心で夢に向かって常に挑戦することを創業時から大切にしてきました。ここまで事業を拡大することができたのは、支えてくれた地元の人たちや取引先の皆さん、従業員と家族みんなのおかげです。地域のお役に立ちたいと思って始めた事業が順調に成長してくれて本当に嬉しく思っています」。行田市内の湯本内装の本社で、湯本社長は明るい表情でこれまでの会社の歩みを振り返った。
湯本社長の誕生日に従業員たちから贈られた記念のタオル
湯本内装は埼玉県行田市を中心に関東全域で内装工事を手掛けている。軽天工事、ボード貼り、クロス床貼りなど内装のあらゆることに対応し、大手ゼネコンや準大手ゼネコンを主な取引先に着実に事業を拡大してきた。内装工事に協力する企業、職人は100社以上、300人以上を数え、同県内の内装業者としてトップクラスの実績を誇る。
経営基盤を強化するため事業の多角化に取り組む 地域シニアのため「1日中楽しんでもらう」をキーに、天然温泉、飲食、ホテル、大衆演劇を次々と始め、埼玉県有数の憩いの場としてにぎわっている
湯本社長は、内装業を軸に事業の多角化に力を注いできた。「一つの事業に特化しているだけでは、市場環境が変化した時に大きなリスクに見舞われます。安定した経営基盤を構築するために、常に先を見据えて新しい事業の種をまくことを心掛けてきました」と湯本社長は話す。
行田・湯本天然温泉茂美(もみ)の湯の外観
行田市初の健康ランドを開設した背景には、地域の人に喜んでもらえる事業を手掛けたいとの思いがあったという。「うまく温泉を掘り当てることができた時の驚きと感動を今も覚えています」と湯本社長はにこやかに話した。そして「茂美(もみ)の湯は丸一日ゆったりと安らぐことができる癒やしの空間です」と湯本社長が話すように、シニアにとって、1日楽しめるレジャー施設を目指し、次々と楽しめる癒やしの施設を増やしていった。
1988年に湯本レストラン株式会社を設立し、飲食事業に進出。1996年には行田市内のさきたま古墳公園に近い幹線道路沿いの遊休地で温泉を掘削して健康ランドの運営に乗り出した。2000年には同じ敷地内でホテルを開設。2006年には装いを新たに、県内で唯一の源泉かけ流しの温泉として人気を集める行田・湯本天然温泉茂美(もみ)の湯を開設した。茂美の湯は大衆演劇の劇場「もさく座」を併設している。月替わりで全国の様々な大衆演劇の劇団が1ヶ月間、昼の部と夜の部の2回にわたって公演し、全国から大勢のファンを集めている。2024年10月にはホテルの客室をリニューアルした。
茂美の湯は、露天の木々に囲まれた空間で、のんびり癒やされる雰囲気があり、高齢層にも好評。来場したシニアからも「大衆演劇が楽しめ、役者さんが素敵でハマる」との声や「温度はややぬるめで、長湯に適しており、高齢者にも負担が少ない」との声が多い。
茂見の湯のホームページ(埼玉県下、唯一の純重曹泉で、源泉100%掛け流し)
茂見の湯の2階で連日2回開催される大衆演劇(茂見の湯のホームページより)
信頼関係を大事にしたM&Aでグループ企業を拡大 技術、人材、営業ノウハウをうまく組み合わせることで相乗効果を生み出す
内装作業に取り組む湯本内装の従業員
湯本内装は、内装ビジネスの強化と事業の多角化を加速するために、M&Aによるグループ企業の拡大に力を入れている。2017年12月には、事業承継の課題を抱え、事業の譲渡先を探していた東京都荒川区の内装会社、清建株式会社を湯本グループに迎え入れた。清建は床面の工事に強みを持っており、内装事業の強化や東京都内での取引先の拡大で高い相乗効果を生み出している。M&Aにあたっては、湯本内装より高い金額を提示した企業もあった。しかし経営に対する考え方や従業員を大切にする姿勢から湯本内装が選ばれたそうだ。
湯本社長は、清建の従業員に湯本グループの一員として満足して働いてもらえるように待遇改善に力を注いだ。真っ先に行ったのが事務所のトイレのリニューアル、和式で女子トイレが男子トイレの先にあった。全て洋式にし、男女別のきれいなトイレに改装。またパソコンもない手書きの状況から業務効率向上のためパソコンと複合機の導入。同時に経営の見える化のため原価管理システムを導入し、仕事専用のスマートフォンを支給。不足していた社用車の購入などにも取り組み、風通しの良い会社に変えていった。「清建の従業員を仲間に迎え入れるにあたって何より大事にしたのが、信頼関係の構築でした。技術、人材、営業ノウハウをうまく組み合わせることで、お互いの成長につながっています」と湯本社長はこれからの発展に強い意志を示した。
太陽光発電事業にも取り組む 2022年にはSDGs宣言を行った
湯本内装は、2015年から太陽光発電事業にも乗り出している。現在、関東、中部地方を中心に全国22ヶ所で発電所を運営している。2022年には地球環境への負担軽減に貢献したいとの思いから、国連が提唱する持続可能な開発目標、SDGsに賛同し、行動目標を達成するための社内の取り組みをまとめた上でSDGs宣言を行った。
創業時から深いつながりを持つ地域をはじめ、被災地、研究機関への寄付に積極的に取り組む
湯本内装の貢献活動に対して贈呈された数々の感謝状
湯本内装は、創業時から深いつながりを持つ地域への寄付活動を積極的に行っている。湯本社長夫妻と子どもたち、孫たちが通った行田市内の小学校、中学校への寄付をはじめ、地域活性化や安心・安全なまちづくりに役立ててもらおうと埼玉県内の行田市、深谷市、吉川市に企業版ふるさと納税を通じた数百万円規模の寄付を行っている。また、2024年12月には「なまずの里」をPRしている吉川市に観光振興に役立ててもらおうと、なまずの石像4体を寄贈した。地震の被災地や京都大学iPS細胞研究所への寄付も行っている。社内には長年の地域貢献に対して贈られた数多くの感謝状が飾られている。
経営数字を最重要視し、原価管理を徹底 2016年から建設業向けの原価管理システムを活用している
湯本内装のオフィス
湯本社長は、創業以来、会社を経営する上で数字を最重要視し、収益構造を可視化するために原価管理を徹底してきた。財務管理業務を効率化するために1970年代からオフコンを導入。1990年代前半にパソコンが普及し始めると県内の業界内で先駆けてオフコンからの切り替えを行った。また、地元の企業に開発を委託して自社専用の原価管理システムを長年運用していたが、受注件数の増加に伴って機能が追い付かなくなったため、建設業向けに開発された市販の原価管理システムを2016年に導入した。システムは当初、オンプレミスで運用していたが2023年7月からサーバーレスのクラウドに転換している。
システム導入に際しては、アナログ人間の処遇に苦労する話があるが、湯本社長の話を聞いていると、苦労することに意味がなく「真剣に経営に取り組むとやるべきことが見えてくる。その姿勢を社内で共有し実行する」ということだと納得できる。
現場ごとの原価を自動で計算し、損益をリアルタイムで把握できるようになった
湯本内装が活用している原価管理システムは、最大6階層まで対応可能な見積作成機能に加え、予算管理、発注管理、原価集計、支払管理、勤怠連動など豊富な機能群の中から必要な機能を組み合わせて利用できる機能を備えている。現場ごとの原価を自動で計算し、損益をリアルタイムで把握することができる。「システムのおかげで、見積から支払までの業務を以前のシステムと比べて短時間で処理することが可能になり、以前は1週間程度かかっていた決算書の作成も2日程度で終えることができるようになりました」と湯本江美取締役・総務部長は満足そうに話した。
システムの開発会社から電話でアドバイスを受けたり、リモート操作で調査や修復を行ってもらうこともできる
システム運用のサポート体制が整っている点も重宝している。システムの使い方で疑問が生じたり、不具合が発生した時は専用のサポート回線を通じて、システムの開発会社から電話でアドバイスを受けたり、リモート操作で調査や修復を行ってもらうことが可能だ。以前のシステムの運用委託先は、リモートメンテナンスに対応していなかったため、システムが不具合や故障を起こした際に復旧するまで時間がかかり、その間業務が停滞することがあったという。「電話やリモートコントロールを通じて365日サポートしてもらえるので安心して業務に取り組めるようになりました」と湯本取締役は話した。
グループ会社にも同じ原価管理システムを導入 データを共有することでグループ全体の経営数字も把握できる
湯本内装は、2017年に湯本グループに入った清建にも同じ原価管理システムを導入している。清建では、湯本グループに入るまで紙ベースで原価管理を行っていたが、湯本内装のサポートを受けることでシステムを活用する体制を整えることができた。紙からデジタルに転換したことで業務効率化が一気に進んだという。原価管理に関連するデータの共有もできるのでグループ全体の経営数字を把握する上でもシステムは大きな効果を発揮している。
5年先、10年先を見据えてデジタル技術の活用を進める
湯本内装の本社の外観
湯本内装はほかにも現場向けに、スマートフォンなどの端末で利用できる図面共有やチャットなどの機能を備えた施工管理システム、建設業界向けの人材マッチングシステムを活用している。今後、社内決済をはじめ、協力先の企業、職人向け発注業務のデジタル化にも取り組んでいきたいという。業務のデジタル化を進めることでペーパーレス化も推進していく方針だ。若い人材の育成にもデジタル技術を活用していきたいと考えている。
経営の見える化を重視する姿勢と地域貢献への熱い思いを大事にしながら着実にグループを成長させている湯本内装。「新しい分野に前向きに挑戦することを若い頃から大事にしてきました。この思いは今も変わりません。5年先、10年先を見据えてデジタル技術を活用しながらこれからもグループを成長させていきたい」と熱い口調で湯本社長は話した。また加藤正雄常務取締役が「社長は、新しいことに挑戦する従業員には一度もNOと言ったことがありません」と話すように、ホンダの創業者本田宗一郎氏の「やらまいか」と同じく新しいことへの自由な挑戦の風土が育まれている。
企業概要
会社名
湯本内装株式会社
本社
埼玉県行田市埼玉3331
電話
048-559-4611
設立
1975年10月(創業1972年)
従業員数
31人
事業内容
内装仕上工事業、建具工事業、飲食業、宿泊業、太陽光発電事業
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