「結果にコミット」の介護予防プログラムを始め、介護施設サービス情報サイト等 沖縄発の新事業創出 トータルライフサポート研究所(沖縄県)
2025年10月28日 06:00
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産官学連携によるICT産業の振興活動がさかんな沖縄県で、デジタル技術を活用した介護事業のイノベーションに取り組む株式会社トータルライフサポート研究所が、その存在感を高めている。同社は、同県中部の沖縄市とうるま市で「カシータ」ブランドの介護付き有料老人ホームを運営。沖縄県が実施するオープンイノベーションプログラムを通じて首都圏の企業と連携し、リアルタイム配信技術を活用したフレイル予防の基盤整備を進める一方、県内の老人ホームや保険外サービスの情報を検索できるポータルサイトを運営するなど様々な介護業界の課題と向き合うデジタル社会に必要な新規事業を生み出している。(TOP写真:高齢者が健康づくりの運動に取り組む様子)
介護は究極のサービス業 沖縄市とうるま市で、介護付き有料老人ホームの運営のほか、健康的な体づくりの運動指導を行う「スタジオ・カシータ」も運営
インタビューに応じるトータルライフサポート研究所の宮里啓代表取締役社長
「人それぞれの人生の最終ステージで深い関わりを持つことになる介護は、究極のサービス業でなければなりません。人々がそれぞれの人生に夢を持ち、より豊かに楽しく、笑顔で毎日を送ることができる環境を作ることに全力を尽くしています」。2003年にトータルライフサポート研究所を設立した宮里啓代表取締役は、介護事業に取り組む思いをこのように話した。大学卒業後、米国に留学し、銀行、建設会社での勤務を経て介護事業に乗り出した背景には、「年老いた両親や障がいを持つ姉を安心して任せることができる施設を自らの手で作り出したい」との思いがあったという。
美里の杜カシータの外観
津嘉山の杜ヒルトップカシータの外観
株式会社トータルライフサポート研究所は、沖縄市とうるま市で、介護付き有料老人ホーム「美里の杜カシータ」と「津嘉山の杜ヒルトップカシータ」をそれぞれ運営している。天然温泉を備える「ヒルトップカシータ」では、デイサービスを運営。その他に健康的な体づくりの運動指導を行う「スタジオ・カシータ」もある。一連の施設のブランド名「カシータ」は、宮里社長がホスピタリティーとサービスに感銘を受けた東京・六本木のレストランの店名にちなんでおり、オーナーの承諾を得た上で命名したという。「関わるすべての人たちに『カシータがあってよかった』と実感していただければ、これに勝る喜びはありません」と宮里社長は微笑んだ。従業員には、前向きな姿勢で仕事に取り組む秘訣として、将来の夢を持つことの大切さを折に触れて伝えているという。
介護認定調査票の項目を基に、逆算の発想で介護度の軽減・維持を目指す運動メソッド「TLSメソッド」を考案
トータルライフサポート研究所は、2015年に設立した「スタジオ・カシータ」で、逆算の発想で考案した介護予防のための運動メソッドTLSメソッド(トータルライフサポート研究所が独自に組み立てた介護予防の運動プログラム)を使って高齢者に運動指導を行っている。TLSメソッドは、「イスからの立ち上がり」「両足での立位保持」といった介護認定調査票に盛り込まれている項目から逆算して介護度を軽減、維持することを重視してプログラムを実施している。講座は毎週月曜日から金曜日にかけて十数回開催され、1回あたり10人ほどが参加しており、体力や動作を分析して一人ひとりに合わせた運動指導とともに栄養指導も行っている。これまでTLSメソッドで指導を行った高齢者ののべ人数は数万人にのぼるという。
美里の杜カシータ職員の様子
スタジオ・カシータは、沖縄市、うるま市、嘉手納町から介護予防・健康づくり事業を受託しているほか、介護予防運動指導者の養成コースを開講するなど多方面に事業を展開している。「高齢になっても自分の足で立ち、歩ける体づくりを目指して運動指導を行っています。エビデンスに基づいた指導を行い、結果にしっかりとコミットすることを大事にしています。高齢者ご本人とご家族が生き生きとした毎日を送れるよう健康寿命を延ばすお手伝いをしていきたい」と宮里社長は話した。
オンラインで介護支援事業を展開している企業と協創 健康寿命延伸の運動プログラムをオンラインで提供
トータルライフサポート研究所は2025年4月には、オンラインで介護支援事業を展開している東京都千代田区の株式会社Rehab for JAPANと共同で、オンラインとAIを活用したインタラクティブオンラインによる運動プログラムの実証実験を開始した。
沖縄県は移動手段に自動車を使う割合が90%を超える全国有数の車社会。高齢者の移動手段が限られていることに加え、離島や過疎地域で介護予防サービスを提供する担い手が不足しているという課題がある。オンラインとAIの技術を活用することで地理的制約を克服し、県内の幅広い地域の高齢者にリアルとオンラインの特徴を活かし合う運動指導を行うことを目指している。
その他にも、公民館などで地域住民が企画する介護予防教室のサポートや、教室の参加者に対する自宅での運動習慣維持のフォローアップといったサービスを、オンラインで提供していくという。「公民館で近所の人たちとおしゃべりしたりしながら、体操を楽しんでいただけたらと思っています。健康的な生活を送るには、運動だけでなく他の人との食事や交流を楽しむことも重要です。事業を通じて人と人との結びつきをサポートしていきます」と宮里社長。今後沖縄での実績を踏まえて、Rehab for JAPANと協創して全国への展開を予定している。
沖縄県のオープンイノベーションプログラム「OKINAWA Co-Creation Lab.」に参画 東京の新事業のパートナー企業を見つけることにつながった
トータルライフサポート研究所が東京のIT企業Rehab for JAPANとの協創を実現するきっかけとなったのが、2024年に沖縄県が企画した県内と全国の企業を結び付けるオープンイノベーションプログラム「OKINAWA Co-Creation Lab.」だ。プログラムへの参加が認められた企業は、運営事務局の伴走支援、事業開発のプロからのアドバイス、補助金の支援を受けることができる。毎年、デジタル技術の活用に関心と強みを持つ複数の県内企業が、首都圏を中心に全国の企業との連携を実現し、新たなビジネスやサービスを創出している。
トータルライフサポート研究所がプログラムに参画するにあたって掲げた新規事業創出のテーマは、「新・フレイル予防インフラの構築」。ヘルスサイエンス、メディカルフィットネス、アプリの企画・開発、高齢者向けコミュニティー支援、リアルタイム配信、モーションキャプチャー、データ分析の分野で技術やノウハウを持つ企業を全国から求め、数多くの応募企業の中からRehab for JAPANを事業パートナーに選んだ。高齢者への運動指導を通じて蓄積している健康や運動能力に関する約1万人分のデータを活用しながら、今後はフレイル予防のインフラとなる高齢者向けサービスの開発や、地域全体で取り組む健康寿命の延伸に挑戦していきたいという。
「施設を利用したり、地域の介護予防教室に参加している高齢者の健康状態、食事習慣、運動習慣などの情報を収集、分析、活用することで、健康寿命の延伸に欠かせない意識や行動の変化につながるサービス、QOLの向上につながるサービスを開発していきたい」と宮里社長は意気込みを語った。
参考:2022年における我が国の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳であり、健康寿命とはそれぞれ約9年、約12年の差があります。全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現のために、平均寿命を上回る健康寿命の延伸を実現することが必要です。(出典:厚生労働省 健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~)
沖縄県内の老人ホームと保険外サービスを検索できるポータルサイト「えらべるプラス」を2025年4月から運営 事業者と利用者の双方にメリットを提供している
トータルライフサポート研究所が運営するポータルサイト「えらべるプラス」
トータルライフサポート研究所は、沖縄県内の老人ホームをはじめ、保険外サービスを検索できるポータルサイト「えらべるプラス」を2025年4月から運営している。沖縄県の「稼ぐ企業連携支援事業」の補助金を活用して制作し、約500件の沖縄県内の施設や保険外サービスの情報を掲載。住み慣れた地域で希望する条件の老人ホームや保険外サービスを探しやすいように検索機能を充実させている。事業者が「えらべるプラス」に情報を掲載する際の利用料は月額5000円。老人ホームに入居が決まった際の紹介料も不要なので、コストをかけずに利用者を募ることができる。「事業者と利用者の双方にとってメリットが大きく使いやすいポータルサイトにすることを目指して開発しました。これからもより一層役立てていただけるよう、内容の充実に努めていきたい」と宮里社長は話した。
新鮮な情報提供、企業情報のゲートウェイとしてブログを頻繁に更新するなど迅速に情報を発信 従業員の負担軽減にもデジタル技術を積極的に活用
トータルライフサポート研究所のホームページ
トータルライフサポート研究所は、2019年からCMS(コンテンツマネジメントシステム)を導入し、社内でホームページを運営することができる体制を整え、施設のサービス内容や人材募集などの積極的な情報発信に取り組んでいる。ホームページ運営の担当者を置いて、ブログの積極的な更新を心がけ、SEO対策も重視している。以前は更新作業を含めたホームページの運営を外部に委託していたため、迅速な情報発信が難しかったという。ホームページをリニューアルした結果、採用活動での応募者数の増加につながるなど様々な効果が生まれている。
従業員の負担軽減にも介護支援システムをはじめとするデジタル技術の活用を積極的に進めている。有料老人ホーム向けの設備としてセンサーを活用した見守りシステムにも関心を持っている。「介護は人の力があってこそ実現できます。人口減少に伴う人手不足がこれからますます深刻化する中、スタッフの負担を減らすためにデジタル技術をこれまで以上に活用していかなければならないと実感しています」と宮里社長は話した。
今後も沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)や地域の学術機関との連携を進め、新たなデジタル事業立ち上げを目指す
研究所のオフィスで取材の様子
沖縄県はアジアの主要都市とのアクセスに恵まれた地理的条件を生かして海外展開を視野に入れたICT企業の誘致に力を入れている。その中で、トータルライフサポート研究所は、官民協働でデジタル産業の振興を図る一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)や、イノベーション拠点を運営する地域の学術機関との連携を進め、ネットワークを広げることで、今後も新たなデジタル事業を立ち上げることを目指している。
「豊かな暮らしを実現していく上でデジタル技術は大きなポテンシャルを秘めています。世の中を良くしていくという夢を大事にしながら、事業を通じて社会課題の解決に貢献できるようこれからも頑張ります」と宮里社長は意欲的に語った。デジタル社会における介護のあり方をいち早く事業化し、笑顔あふれる介護の業界の成長を沖縄県にもたらす上で、トータルライフサポート研究所が創出する新事業に大きな期待が寄せられている。
企業概要
会社名
株式会社トータルライフサポート研究所
本社
沖縄県沖縄市松本一丁目11番1号
電話
098-937-3123
設立
2003年12月
従業員数
144人
事業内容
介護付き有料老人ホーム事業、在宅介護事業(通所介護・訪問介護)、居宅介護支援事業、ウェルネス推進事業(介護予防・健康づくり)、給食事業、うるま市地域包括支援センター(具志川みなみ)受託事業
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