サービス業

〝派遣先と労働者双方に寄り添う派遣会社〟として成長を続ける 多言語のSNSやHPで情報発信 エフライン(栃木県)

From: 中小企業応援サイト

2025年11月05日 06:00

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「派遣で苦しむ人を一人でも減らしたい」―。栃木県小山市で外国人材に特化した労働者派遣・職業紹介業を営む株式会社エフラインは、若き創業者のそんな思いからスタートした〝派遣労働者に寄り添う派遣会社〟だ。その経営姿勢はSNSによって外国人材の間で広く共有され、高い人材募集力と定着率を誇る。2024年には従業員の福利厚生と雇用確保を狙いに、新たにフード事業にも乗り出した。ホームページ作成ソフトを活用して、フード事業のホームページも新たに開設するなど情報発信にも余念がない。従業員の個人情報をはじめとする各種社内情報を守るための情報セキュリティー対策も徹底している。(TOP写真:フード事業を営む店舗のテラスに立つ創業者夫妻と店舗スタッフ)

「クリスチャンとして見て見ぬふりはできない」。外国人材の理不尽な扱いに疑問を抱き、自ら派遣会社を起こす

創業者の竹本真誠代表取締役

創業者の竹本真誠代表取締役

エフラインの創業者で代表取締役の竹本真誠(まなせ)さんはペルーの出身。日系3世の父親が日本で働き始めたことから、1993年、7歳の時に家族とともに来日し、主に小山市で育った。地元の高校に通っている頃から人材派遣会社でアルバイトをし、南米出身者を中心とする外国人材の通訳を経験。高校卒業後も複数の人材会社に勤務し、人材管理の実務を習得した後、派遣人材や派遣先企業を募集する営業を担当すると、半年で派遣人材を3倍に増やすなどトップの成績を挙げるようになった。

そんな竹本さんが独立を決意するに至ったのは、一部の悪質な営業を行う派遣会社による、日本語に不慣れな外国人材に対する理不尽な扱いにいたたまれない思いを抱いたからのようだ。創業のきっかけについて、「いろんな偶然が重なりましたからね」と多くを語らない竹本社長に代わって、創業当時から一緒に働いている妻で、経理・総務・人事・フード事業部総括部長の渡邉亜子華(あすか)さんが説明する。

「労働者派遣法が何度も改正されて今でこそ人材派遣会社は厳格に規制されていますが、当時一部の派遣会社は派遣人材に対してブラック企業の代表のような扱いをするところがあったのです。それを(竹本社長は)クリスチャンとして見て見ぬふりはできないという思いにかられ、会社を立ち上げたのです」。2013年8月にエフラインを創業、竹本社長は27歳だった。

経理・総務・人事・フード事業部総括部長の渡邉亜子華さん

経理・総務・人事・フード事業部総括部長の渡邉亜子華さん

竹本社長も渡邉部長もプロテスタントのクリスチャンで、2人は教会で知り合ったという。ちなみに竹本社長は2021年3月に日本に帰化しているので、渡邉部長も今は竹本姓だが、〝ビジネスネーム〟として旧姓を使っている。

会社名の「エフライン」と竹本社長のファーストネームである「マナセ」は聖書の創世記に登場する兄弟の名前にちなんだ。日本では弟の名前を一般に「エフライム」と表記するが、竹本社長の母国語であるスペイン語の発音に近い「エフライン」という表記にした。エフラインには「苦しみの後に収穫が2倍」、マナセには「過去の辛いことを忘れさせる」という意味がある。「兄弟の名前をつなげると、『苦しみに耐えれば収穫が2倍となり、その過去の苦しみも忘れさせてくれる』という意味になります」(渡邉部長)。会社名のアルファベット「fline」を基にしたロゴにはキリスト教の象徴である羊と十字架、それに魚をあしらっている。

エフラインのロゴマーク

エフラインのロゴマーク

大型の資金調達を迫られた創業初期とコロナ禍が試練 〝従業員ファースト〟で乗り切る

右の本社に続いて左の別館を竣工

右の本社に続いて左の別館を竣工

当初は届出制の「特定労働者派遣事業」でスタートしたが、創業間もない2015年9月に労働者派遣法が改正され、許可制の「労働者派遣事業」に一本化されたことから、同社の事業も許可制への切り替えを迫られた。許可制に移行するための最大の難関は資産要件をクリアすること。基準資産額2000万円以上に加え、事業資金として自己名義の現預金1500万円以上が必要とされた。「経過措置期間後も〝特定派遣〟から〝派遣〟に移行できなければ会社を閉めるしかないので、ここで何とか踏ん張ろうと、八方手を尽くして資金調達しました」(渡邉部長)。

創業の精神に立ち返り、〝派遣労働者に寄り添う〟会社としての姿勢を貫くことで、派遣人材も派遣先企業も順調に増え、2017年3月には新築した社屋に移転。翌2018年3月には本社隣接地に研修ホールと厚生施設を備えた別館を竣工した。

別館の研修ホールの一部

別館の研修ホールの一部

そこにコロナ禍が襲った。企業活動が停滞すると、まず人件費が削減され、パート社員や派遣社員がその対象となる。エフラインは雇用調整助成金を活用して、無期雇用派遣労働者(派遣元企業と無期限の雇用契約を結んでいる労働者)に休業補償するなどして、雇用の維持に努めた。休業補償よりも好条件の仕事を求めて辞めていく人もいたが、何とかコロナ禍を乗り切って、再び経営を軌道に乗せた。渡邉部長は「社長が〝従業員ファースト〟を徹底してくれたのでコロナ禍を乗り切れました。社名にあやかり、苦しみに耐えたぶん、今後の収穫は2倍になる自信があります」とほほ笑む。

人材募集力と定着率に定評。社長は地域貢献にも力

竹本社長はSNSのFacebookやInstagramを使って日本語やスペイン語、ポルトガル語で情報発信している。人材派遣の仕事に直結する内容ではなく、主に小山市の自然や風土、イベントに関する情報が中心だという。それでも、そうした情報発信を通じて竹本社長の人柄やエフラインの社風を知り、信頼を寄せる人が増えるのだろう。渡邉部長は「派遣労働者を募集する目的で求人媒体を使ったことは過去に一度もありません。口コミで評判が伝わり、人が人を紹介してくれます」と、人材募集力の高さに胸を張る。

エフラインでは定着率の高さにも定評がある。竹本社長はその秘訣をこう明かす。「業界でよくある派遣のやり方は単なる頭数合わせなんです。派遣人材として来た人を募集している会社に連れていくだけだと、その人は仕事が合わないと判断したらすぐに辞めてしまいます。例えば、定時で帰りたい人を残業の多い現場に入れたり、その逆だったり。技術のレベルが合っていなかったり。要はマッチングができていないのです。弊社はその人に適した条件をまず考えて、本人と相談した上で派遣先企業に紹介しているので、マッチングがある程度うまくいっていると自負しています」。

竹本社長は「地域貢献」の意識が高く、小山市内に在住する外国人との交流活動を行う「小山市国際交流協会」の副会長や、市民参加型のまちづくりを進めるために市が設立した「小山市民フォーラム」の運営委員なども務めていて、多文化共生や地域活性に尽力している。

また、エフラインとしても2019年6月に外国人向けに生活支援を行う新サービスを始めた(コロナ禍以降現在は休止中)。子どもの学校で配布されるプリントの口頭通訳や書き方、郵送物仕分けなど7種類のサービスをスペイン語、ポルトガル語、英語で提供。竹本社長が子どもの頃に南米料理の弁当を持参して級友にからかわれた経験から、日本的な弁当の作り方講座も用意した。さらに同年8月には発行手数料の一部を銀行と企業が一緒に学校に寄贈する仕組みの私募債を発行。小山市内にある外国人児童生徒の応援指導教室に寄付した。

フード事業をスタート。平日昼に給食弁当を販売、ペルーの家庭料理もコラボで提供

フード事業の店舗「Cocina Linda」

フード事業の店舗「Cocina Linda」

そして、2024年9月には新規事業となるフード事業に乗り出した。エフラインの本社の近くに「テイクアウトフードショップCocina Linda(こしーな・りんだ)」という店舗を新築。平日に社員食堂を兼ねた日替わり給食弁当を販売し、美食で有名な本場ペルー仕込みの家庭料理をコラボで提供している。ちなみにLindaはスペイン語で「かわいい」、Cocinaは「キッチン」を意味する。

店舗の2階には社員が食事するコーナーや休憩室などがある

店舗の2階には社員が食事するコーナーや休憩室などがある

竹本社長がフード事業に乗り出した狙いを語る。「無期雇用派遣労働者が増えているので、(派遣先企業に)何かあった時には当社で仕事を見つけないといけません。また、派遣会社は障がい者雇用の法定雇用率を達成するのが難しいところがあります。そこで障がい者や高齢者の雇用を推進し、育休や妊産婦にも対応できればと考えました」。いわば、エフラインの主力業務である労働者派遣・職業紹介業を助け、安定した雇用を生み出すための施設として新設したのだ。主力業務で必要となる「福利厚生費」「広告宣伝費」「リスクヘッジ費用」などを複合的に換算すると、たとえフード事業が薄利でも十分な費用対効果が得られるとみている。また、地域貢献の一環として、将来的に「子ども食堂」のように活用するなど、飢餓問題の一助となりたいと考えている。

法律で義務づけられた資料公開のため、更新しやすいホームページ制作ソフトを採用。日本語のほか「英語」「スペイン語」「ポルトガル語」に簡単に切り替えも

エフラインは許可制の労働者派遣事業に移行するのと相前後して、2015年10月にホームページを開設している。最初から「専門知識なしでウェブサイトを簡単に作成・更新できる中小企業向けCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)」がうたい文句で、アフターフォロー体制に定評のあるホームページ作成ソフトを採用した。渡邉部長は、「企業はホームページがあることが信頼される第一条件であるのに加え、ホームページの印象で好感度が変わるし、更新頻度で会社のアクティブ度を判断されます」とホームページの存在価値を強調した上で、同ソフトを選んだ理由について、「労働者派遣事業は法律で定められた情報を公表する義務があるため、自社で容易に更新が行えることが大切でした」と強調する。

同社のホームページは画面下に「英語」「スペイン語」「ポルトガル語」という3つのタブが並び、通常の日本語画面をこれらの言語にワンクリックで切り換えられるのが大きな特徴だ。派遣労働者や派遣先の数、平均賃金、マージン率などの情報を公表するため、年に1~3回更新している。問い合わせフォームを使った営業メールが頻繁に送られてくるのが唯一の悩みだという。

フード事業の開業に合わせて、同ソフトを活用したフード事業専用のホームページも開設。同時期にソフトがバージョンアップされ、一つのホームページであたかも2つの異なるホームページが開設されているように作成できるようになったという。エフラインのホームページとリンクしているほか、「Cocina Linda」のInstagramに遷移できる。フード事業のホームページは毎月の日替わり給食弁当の献立表を掲載しているので、最低でも月1回は更新しているそうだ。

エフラインが派遣人材や派遣先企業から厚い信頼を得ている理由の一つとして、マイナンバーをはじめとする個人情報の保護を重視し、情報セキュリティー対策を徹底させていることも挙げられるだろう。まず、新社屋に移転するタイミングで、ルーターとファイアウォールなど複数のセキュリティー機能を1台の機器に統合したUTM(統合型脅威管理)を導入。インターネット接続によるマルウェアなどのサイバー攻撃を阻止するとともに、システム会社にUTMを24時間365日保守してもらう契約を結んだ。さらに、その半年から1年後の間に「DDH BOX」(外部への危険な通信を検知・遮断するセキュリティ機器)も導入。万一、サイバー攻撃による被害が発生しても、社内ネットワークから外部への危険な通信を検知して瞬時に遮断できるようにした。これにより、社内ネットワークの入口と出口の両方を守る完璧なセキュリティー体制を敷いた。

外国人材中心の派遣事業に先細り懸念も。今後は教育訓練に特化した教育ができる人〝財〟サービス会社への転身を視野に

今後のエフラインの将来を考えると、人材派遣事業の先細りが懸念されるのだという。同社の従業員は現在、本社のスタッフやフード事業の店舗スタッフを除いた派遣労働者だけで約130人。そのうち90%以上を占める外国人材は、日系人を中心に、永住者や定住者、あるいは配偶者が日本人など、いわゆる身分系在留資格を持つ人が大半だ。外国人材の次世代は今や、「大学を卒業するとそのまま正規社員として企業に就職するので、最初から派遣労働者を目指す方は少なくなっています」(竹本社長)。

どこの業界も人材不足に悩む中、そうした傾向は今後ますます強まると予想。将来的には「教育訓練に特化した人〝財〟サービスを行える会社」へと舵を切っていく方針だ。「例えば溶接を覚えたい人とかフォークリフトを操縦したい人、塗装技術を身につけたい人など、手に職をつけたい人たちを自分たちで育て、育てた人材を大切にしていく計画です」と、渡邉部長は夢を描いている。

企業概要

会社名

株式会社エフライン

住所

栃木県小山市大字犬塚998番地682

HP

https://f-lines.jp

電話

0285-39-6617

創業

2013年8月

従業員数

約140人

事業内容

労働者派遣事業、有料職業紹介事業、飲食店営業

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