福祉業(介護)

24時間オンコールの訪問看護ステーション ICTでスタッフの負担軽減し、機能強化型訪問看護ステーションを目指す えがとど(群馬県)

From: 中小企業応援サイト

2025年11月11日 06:00

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2021年に厚生労働省が実施した介護サービス施設・事業所調査によると、2011年に訪問看護サービスを利用した人は23万4,846人だったのに対し、2021年では58万7,658人と10年でおよそ3倍に増加した。しかしながら、訪問看護ステーションの数は増加しているものの、看護師の確保が追いつかず、廃業に追い込まれる事業所も生じている。そんな中、国は24時間オンコール対応かつ看取りにも対応できる、機能強化型訪問看護ステーションへの加算を手厚くし、設立を後押しする構えだ。今回はこうした状況を踏まえ、ターミナルケアの実績とICTによる労働環境の構築によりスタッフのスキルアップを進める、訪問看護ステーションえがとどの取り組みを紹介する。(TOP写真:株式会社えがとどの柏瀬郁也代表取締役)

当初勤めていた総合病院では救急救命を目指すも、高齢者の在宅医療への関心を抱き、訪問看護を志す

株式会社えがとど代表取締役の柏瀬郁也氏。「えがとど」とは「笑顔を届ける」という意味を込めた名称だという

株式会社えがとど代表取締役の柏瀬郁也氏。「えがとど」とは「笑顔を届ける」という意味を込めた名称だという

群馬県桐生市に本拠を置く「えがとど」は2016年に、桐生市、みどり市、前橋市、太田市、栃木県足利市をサービス提供地域とする「訪問看護ステーションえがとど」として設立。看護師であり、法人の代表も務める柏瀬郁也氏が高齢者の訪問看護に関心を抱いたきっかけは、かつて勤務していた病院に入院していた高齢患者との出会いだった。

「学生時代から勤めていた総合病院で、当初救急の看護師を目指していましたが、看護師長や院長に相談したところ、まずは循環器科で学ぶことが必須だと助言されまして、5年間循環器科で勤務しました。その時に担当した90歳ぐらいの患者さんから『家に帰りたい』と相談されたのです」(柏瀬社長)
しかし、当人は点滴が4本つながれており、外せば命に関わる状態だった。副院長や主治医に相談するも難色を示され、悩んでいた柏瀬社長は、その患者の孫が医師であることを知る。「医師であるお孫さんと副院長と私の三者で話し合ったところ、点滴の処置をお孫さんがしてくださることを条件に、家に帰れることになったのです。その患者さんは、数日後に他界されましたが、望み通り自宅で家族に看取ってもらうことができました。その時、自分がやるべきはこれだ、と強く感じたのです」(柏瀬社長)

病院を退職し、訪問看護ステーション設立。スタッフ3人でスタートしたが24時間オンコール体制のためにはスタッフの増員が必要だった

柏瀬社長を支える妻で看護師の柏瀬 亜衣さん。介護報酬請求業務も手がけるバックオフィスの主軸だ

柏瀬社長を支える妻で看護師の柏瀬 亜衣さん。介護報酬請求業務も手がけるバックオフィスの主軸だ

2014年当時、24時間オンコール体制の訪問看護ステーションは桐生市にはなかった。とはいえ、当初は自らが訪問看護ステーションを立ち上げることには、まだ迷いがあったという。
「自分に経営能力があるのかどうか不安でしたし、結婚して3人の子どもがいましたので果たして食べさせていけるのかという迷いもありました」(柏瀬社長)
そんな柏瀬社長を決断に導いたのは、介護関係者との交流会で自らの思いを発表する機会だった。そこで縁がつながった介護事業会社の社長の「サポートするから」という言葉に背中を押され、柏瀬社長は病院を退職。2016年に自らが代表を務める株式会社えがとどを設立した。

まずは利用者を確保するために、病院やケアマネジャーにチラシを配って歩いた。しかし、設立当初は自分と看護師である妻を含めてスタッフは3人。しかも妻は介護報酬請求業務を担当していたため、実質的な稼働人数は2.75人だ。24時間オンコール体制を手がけるためには、スタッフを増やす必要があった。幸い、ケアマネジャーが同ステーションを利用者に紹介してくれることが増え、2年目に入ると利用者もスタッフも増加。現在はスタッフの総数は23人にのぼる。「24時間オンコール体制をとるには、15人以上いなければ回りません。15人いれば1週間に1回、もしくは10日に1回の夜間対応が可能ですし、経営的にも成立します」(柏瀬社長)

設立当初から介護報酬請求・勤怠管理システム、インターネット経由での操作も実施 今後介護記録他で極力スタッフの負担軽減を目指す

介護報酬請求システムや勤怠管理システムは法人設立時から導入している

介護報酬請求システムや勤怠管理システムは法人設立時から導入している

同社では設立当初から介護報酬請求システムや勤怠管理システム、さらにデータをネットワーク経由で共有できるNASなどのICTソリューションを導入し、バックオフィスにおける作業効率化を進めている。
「利用者さんのデータは5年の保管義務がありますが、データの共有がNASでできるので安心です。落雷などでデータが消失してもデータの復旧サービスもあるのでいいですね」(柏瀬社長)
ただし、利用者の記録業務においては、まだ紙ベースで運用中だという。
「個人情報を扱うことから、10年前はまだパソコンの持ち出しが禁止されていました。その名残で今でも紙の記録を写真に撮って訪問先へ出向き、訪問先での記録は手書きでメモ。事務所に戻ってからパソコンに入力しています」(柏瀬社長)

ただし、利用者と触れ合う時間を確保するためにも、事務作業は効率的に済ませたい。最近柏瀬社長はAIによる文字起こしにも関心を寄せており、サービス利用会議など、ICTを活用してさまざまな場面での作業効率化により、スタッフの負担軽減とデータ活用を進めていく意向だ。

2021年ごろからは障がい児・障がい者、医療的ケア児なども受け入れ ケアの質的向上のためにスタッフの専門知識を磨き、キャリアアップにもつなげたい

明るい雰囲気で笑顔があふれる訪問看護ステーションのスタッフルーム。赤い椅子、収納ボックスなどが明るい印象を創出している

明るい雰囲気で笑顔があふれる訪問看護ステーションのスタッフルーム。赤い椅子、収納ボックスなどが明るい印象を創出している

それまで高齢者の訪問看護を手がけてきた同社だが、2021年ごろからは障がい児・障がい者や医療的ケアが必要な乳幼児にも対応している。専門的な知識や技術を必要とする利用者を受け入れれば加算も手厚くなり、経営基盤の強化にもつながる。柏瀬社長はスタッフの専門教育にも力を入れ、スタッフのキャリアアップにもつなげたい考えだ。

もうひとつ、同社が専門性を高める背景には、地元の総合病院でも訪問看護を始めていることがあるという。
「総合病院ではシニア世代の看護師の再雇用の受け皿として訪看を始めているようですが、拠点が病院という強みがあります。だからこそ、うちは看護師の質的向上が必須です。ただし、24時間オンコールというのは総合病院では対応が難しいと思いますので、当社の強みになっています」(柏瀬社長)

在宅医療の質的向上を目的に機能強化型訪問看護ステーションを目指し、経営基盤の確立とスタッフの安定的な生活にも貢献したい

訪問看護の記録業務は訪問先から戻ってから事務所で入力。業務の省力化を図るため、今後は訪問先で入力ができるタブレット端末の活用も視野に入れている

訪問看護の記録業務は訪問先から戻ってから事務所で入力。業務の省力化を図るため、今後は訪問先で入力ができるタブレット端末の活用も視野に入れている

柏瀬社長に今後の目標を尋ねると、機能強化型訪問看護ステーションへのステップアップを掲げている。機能強化型訪問看護ステーションとは、在宅の高齢者への終末期の看取りやケア、重症度の高い患者への在宅療養支援、障がい児・障がい者の受け入れを行う訪問看護の仕組みで、地域における在宅医療の質的向上を目的に2021年ごろから国が推進し、手厚い加算が講じられている。

「うちは看取りの実績が規定を十分満たしていますし、小児からお年寄りまで対応できますので申請するつもりです」と意欲を示す柏瀬社長。機能強化型訪問看護ステーションはみどり市、桐生市、伊勢崎市にはまだ1ヶ所、前橋市に2ヶ所しかないため、ニーズは多いだろう。さらに、同社の看護師には指定難病にも対応できる特定医療の資格取得に向けた支援もしたいという。

「スタッフが働きやすい環境を作り、スキルアップにより収入面でも手厚くしてあげたいという思いもあります。うちはスタッフ23人のうち、男性スタッフが7人もいますが、彼らは一家の大黒柱でもありますから、うちに来てよかったと思ってもらいたいのです」(柏瀬社長)

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の一部としてリビングウィルを位置づける考え方をもとに、終末期を迎える人に寄り添っていく

訪問看護ステーションえがとどの入るビルは桐生市中心部のビル1階にある

訪問看護ステーションえがとどの入るビルは桐生市中心部のビル1階にある

終末期を迎える人の在宅医療が拡大する現在、自分の将来の変化に備え、医療やケアについて、本人や家族、医療従事者や介護スタッフがともに話し合い、最適な意思決定を進めていくアドバンス・ケア・プランニング(ACP)が注目されている。通常介護保険制度を利用する際、医師から在宅医療における延命措置(リビングウィル)の有無を家族や当人に確認されるが、柏瀬社長は「むしろACPの中にリビングウィルがあるという考え方が基本」であるという認識を持つ。ACPは人生会議とも呼ばれ、自らがどう生きるかという選択を自律的に行うものだ。その意思を支えるためには、同社のように専門性を有し、24時間駆けつけてくれる事業者の存在が欠かせない。創業の熱い志を胸に、地域の在宅医療を支える同社の今後の挑戦に大いに期待したい。

企業概要

会社名

株式会社えがとど

住所

群馬県桐生市本町6-27-1 プライマリービル1F

HP

https://www.instagram.com/egatodo_11/(インスタグラム)

電話

0277-20-1030

設立

2016年4月

従業員数

23人

事業内容

訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所

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