建設業(土木)

地域の環境づくりに貢献 少数精鋭の武器は、クラウドによるどこでも情報閲覧・入力できる環境と現場のリモート監視 株式会社赤川組(新潟県)

From: 中小企業応援サイト

2025年11月17日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

新潟県新潟市で土木・建設業を営む株式会社赤川組は、『「お客さま」「社員」「金融機関」「地域社会」の皆さまとともに、「まち」「環境」をつくります』という経営哲学のもと、道路工事や下水道工事といった公共のインフラに関わる業務やJR東日本の事業に関した工事などを行っている。本社から離れた資材センターに詰める社員との様々な書類のやりとりを、クラウドストレージサービスやメールを駆使して行い、事務作業も自宅から行えるリモート環境を整備し、中小企業にとって不可欠な業務効率化を実現している(TOP写真:株式会社赤川組が造成を手がけたみどりと森の運動公園)

2024年1月1日に発生した能登半島地震は新潟市にも大きな被害をもたらした。赤川組の本社がある西区では震度5強が観測されて液状化現象が発生。「夕方だったので社員に周辺をパトロールしてもらいました。その時は普通に車も通れる感じだったのですが、一夜明けてから見渡すと、とんでもないことになっていました」と代表取締役の赤川修氏は振り返る。

2024年1月の能登半島地震で本社周辺の道路が液状化し社員総出で復旧に当たる

能登半島地震の時に一刻も早い生活道路の復旧に取り組んだことを話す赤川修社長

能登半島地震の時に一刻も早い生活道路の復旧に取り組んだことを話す赤川修社長

「電柱が傾いていたり地面がでこぼこしていたり、『これは大変だから』と出られる人に出てもらって、補修などの対応に回りました」(赤川社長)。車が通れるはずの道が液状化で通れなくなっていた。「とにかく生活道路を止めるなという意識で、壊れていた道を補修して車が通れるようにしました。地元の社員も被災していたにもかかわらず、復旧のために現場へ出てくれました。経営哲学にある「まち」と「環境」を作って地域社会に貢献したい思いが、全社的に浸透している表れだ。

赤川社長の父親で、新潟県の建設会社で現場のトップを務めていた赤川辰平氏が1970年に独立し、個人営業として赤川組を興した。「ライトバンにスコップを積んで工事現場に行って働いていたことを覚えています」。5年後の1975年に当時の黒埼町建設業協会に入会してネットワークを広げ、官公庁から発注される公共工事を手がけるようになって、事業規模も拡大した。

個人営業から野球場や多目的グラウンドのほかに大きな広場がある運動公園の造成工事を手がけるまでに成長

「みどりと森の運動公園」の案内を見せる赤川修社長「みどりと森の運動公園」の案内を見せる赤川修社長

「みどりと森の運動公園」の案内を見せる赤川修社長

1988年に法人化して現在の株式会社赤川組が発足。赤川社長も大学を出てそのまま会社に入り、2004年に社長に就任した。「大学では景観工学というものを勉強していました。道路を1本作るにしても、それがどのように景観として人の心をつかむものになっているのか、といったこと研究していました」。公共工事では予算や仕様が決められていることが多く、大学での知見を設計に盛り込んでもらうことは難しいが、「住む人や使う人のアメニティーが重視される時代になって、景観への考え方も強まっています。そうした要請に考え方を提案できるようにしていきたいという気持ちはいつも持っています」。

2011年にオープンした「みどりと森の運動公園」の建設では、新潟県のゼネコンで大手の福田組と特定共同企業体(特定JV)を組んで造成工事を手がけた。野球場や多目的グラウンド、屋内コートといったスポーツ施設を備えた公園内には広場も作られ、なだらかな丘から降りる滑り台も置かれて親子連れが楽しめるようになっている。居心地の良さそうな空間となっている背景に、施工をした同社の景観に配慮し、誰もが幸せに暮らせる社会を作りたいという意識が働いている。

事業の規模や範囲が拡大して、働く社員の数も多くなってくると、取り扱う書類の数や種類も増えてくる。それらをすべて紙で作成するとなると、管理が大変になり必要な時にすぐ取り出すことも難しくなる。そこで同社では、2020年にクラウドストレージサービスを導入して、社員一人ひとりがパソコンで作成した書類を入れるようにした。「プリントアウトして回したり、USBメモリにいったん書き出して渡したりするような手間がなくなりました」(赤川社長)

クラウドストレージサービスを使い書類をクラウド上に一元化、作成や閲覧、提出を効率化して業務のスムーズな進行に役立てる

公共工事を多く手がける赤川組が施工した河川工事の模様

公共工事を多く手がける赤川組が施工した河川工事の模様

官公庁から受注して行う公共工事が多い土木・建設会社では、役所に提出する書類が相当な数や種類に上るという。「契約書関係でも相当ありますし、安全関係の書類も必要となります」そうした書類を管理し、誰でも見られるような状況にしておく上で、クラウドストレージサービスは有効に働いた。「新しく書類を作成する場合でも、以前の書類を見て参考にできます。キャビネットから取り出して探すような手間がなくなりました」(赤川社長)

クラウドに置かれていることで、災害時に事務所が損壊を受けたり急な停電などで記憶装置が故障したりするような事態が発生しても、ネットワークにつなげればそこから書類を取り出せる。「BCP(事業継続計画)への対策としてもクラウド化は不可欠でした」。実際に能登半島地震のような大規模の災害が起こったわけで、その意味で先見の明があったと言える。

社員が取得している免許に関する情報も、クラウド上に保管して他の人がいつでも確認できるようにしている。「以前は、作業の現場で使っている名簿に誰がどのような免許を取っていて、期限がいつまでといった情報を記録していました」。そのため、いざ仕事を割り振ろうとした時に、必要な免許の期限が切れていることが判明して、業務が滞るような事態が起こっていた。

離れた資材センターでのアルコールチェックの結果を本社で把握・管理できるようにして安全の確保に努める

本社のパソコンからアルコールチェックの結果を社員別に確認できるようになっている

本社のパソコンからアルコールチェックの結果を社員別に確認できるようになっている

「今は、本社で免許や期限に関する情報を常にチェックできます。新しく取得したら情報に加え、期限が来ていれば取り直すよう伝えられます」。

人の動きを効率化することも重要だ。同社の場合、工事の現場に出向く社員が本社からやや離れた資材センターに詰めていて、出退勤の時に本社に立ち寄ることはほとんどない。現場に車に乗って向かう際に行うアルコールチェックも、資材センターの方で行っているが、「その時に、現場のタブレットから入力されたデータが、ネットワークを介して本社のパソコンで確認できるようになっています」。公共工事を請け負う会社として運転中のトラブルは絶対に起こせないだけに、リモートでの情報管理体制構築は、社員の意識を高め保つ上でも有効だった。

リモートでは資材センターのカメラによる監視も実施、事務作業を自宅からでも行える環境も構築した

リモートカメラで常時監視している資材センターの様子

リモートカメラで常時監視している資材センターの様子

「リモートでは、資材センターの様子を常にカメラでチェックして本社でモニターし、資材の盗難に備えています」。金属関係の盗難が日本各地で発生する中で、同社も工事の現場に敷く鉄板などの資材が盗まれるような事態に見舞われた。事業継続と危機管理に関してできることを行って、安定した会社の運営に役立てている。

また、「リモートアクセスツールを導入して、事務を行う社員が自宅からでも本社にいる時と同じような作業が行える環境も整えました」。急な事情で出社できない時でも、自宅から情報にアクセスして内容を確認したり、作業を行ったりできる。少ない社員数でひとりが受け持つ仕事が多くなりがちな中小企業にとって、事業を滞りなく継続する上で、こうしたリモート環境の整備は不可欠だ。

土木・建設業の例に漏れず、同社でもなかなか新しく人を採用できず人手が足りない状況が続いている。どうにかしようとハローワークでの求人を行う一方、ホームページも整備し、経営哲学の他にこれまで手がけた工事の施工事例を掲載して、社会と地域に貢献するやりがいのある仕事であることを知ってもらおうとしている。「雪が多い時には除雪作業を行っていることも発信しています」。これに加え、よりアピールできる情報を発信していくことも考えているという。

地域の人に役立つ仕事をしていることを知ってもらい就職希望者の確保につなげていく

雪深い新潟市で道路の除雪作業を担って地域の交通確保に貢献している

雪深い新潟市で道路の除雪作業を担って地域の交通確保に貢献している

「新潟市は日本海に面していて海岸があります。この砂が風に吹かれて道路に入ってくるのを取り除く作業をしています」。地域に暮らす人たちに役立っていることをアピールすれば、会社のイメージアップにつながる上に働く人たちのモチベーションアップにもつながる。災害への対応も含めて社会に役立っている仕事だということを知ってもらい、働きたいという若い人を増やそうとしている。

また、保育園の園庭の整備も夢のある仕事だ。総合遊具メーカーと組んで長く続けているもので、「ただ遊具をポンポンと並べるのではなくなく、導線を考えて園児たちの体力作りになるような園庭作りに取り組んでいます。築山もただ作るのではなくて、手を使って登るようなところを作って全身運動につながるようにしています」。

毎日のように園児たちが遊ぶ場所だけに、見た目も大切だ。そうしたところに、大学で学んだ「景観工学」の知見も生かされる。そこで遊んだ経験を持つ子どもが大きくなって、同じような夢を抱いて同社に入ってくるような未来も夢ではなさそうだ。

赤川組本社

赤川組本社

企業概要

会社名

株式会社赤川組

住所

新潟県新潟市西区寺地542番地2

HP

https://akagawagumi.co.jp/

電話

025-267-5493

設立

1988年6月(創業1970年4月)

従業員数

13人

事業内容

土木工事、とび・土工・コンクリート工事業、舗装工事業、水道施設工事業、解体工事業

記事タイトルとURLをコピーしました!

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

中小企業応援サイトに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

中小企業応援サイト

https://www.ricoh.co.jp/magazines/smb/

「中小企業応援サイト」は、全国の経営者の方々に向け、事例やコラムなどのお役立ち情報を発信するメディアサイトです。"

新着情報をお届けします

メールマガジンを登録する

リコージャパン株式会社

東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

お問い合わせ先:中小企業応援サイト 編集部 zjc_smb@jp.ricoh.com