学校給食や仕出しを軸に食のプロデュース 本社移転を機にICT含む管理体制強化で次のステップへ 山路フードシステム(神奈川県)
2025年11月18日 06:00
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夫婦で始めた仕出し弁当屋が原点の株式会社山路フードシステムは、現在1日約2万3000食を製造し配送する、神奈川県有数の学校給食・企業向け仕出し弁当会社に成長。工場では、HACCPやISO22000取得で国際水準の衛生管理体制を整備。2025年6月に本社機能を小田急線相模原駅近くのオフィスビルに移転。移転を機に給食や仕出しの更なる品質向上とスピーディーに顧客へ届けるため、業務システムの機能強化を推進。またシステムには反映されない、様々な課題や要望を速やかに共有することが、顧客への責務であり、企業成長のためにも不可欠と考え、社内コミュニケーション強化のためのネットワーク環境の再構築を行う。
外食産業にも参入し、鶏卵の加工卸や「丹沢滋黒軍鶏」をブランド化するなど「食」にかかわる事業分野を広げつつあり、365日3食の要望に応える食材プラットフォームの確立を目指している。(TOP写真:衛生管理の行き届いた4工場で給食や仕出し弁当を1日23,000食作り2時間以内に配送する)
板前の経験生かした先代の仕出し弁当が評判となり取引先拡大 姉妹会社で外食産業にも進出し、理念は「真心と愛情で 味を究めて幸せづくり」
本社の入口には創業者で先代社長の松井保興氏が残した訓話が記した皿が置かれている
相模原市の旅館で板前をしていた松井保興氏が独立して、自宅で仕出し弁当屋を始めたのは1971年。料理人だっただけに丁寧に作られた弁当の味は評判を呼び、取引先は広がり順調に成長した。1984年には働いていた旅館名から「山路」をとって株式会社山路ランチセンター(2005年に山路フードシステムに社名変更)を設立。同年には有限会社山路フードも設立し、居酒屋チェーンのフランチャイズ契約を結んで飲食業に進出した。
本業でも近隣中学の学校給食や企業向け仕出し弁当、社員食堂運営と取引先を広げて、大和市に専用工場を建設するなど、次第に業容を拡大。自社経営の居酒屋「炭火焼と旬の魚 ゆるり」を県内に店舗展開して外食産業にも本格参入した。
経営理念は「安全・健康・美味・信頼 真心と愛情で 味を究めて幸せづくり」であり、「365日3食のあらゆるシーンに対応する食材プラットフォーマーへの進化」が同社の経営ビジョンである。
松井氏が事業を起こした年に生まれた長男、大輔氏は父親の背中を見ながら育ち、他の飲食業を経て同社に入社。「働いて楽しかった仕事が食の仕事だったので、必然的に実家を継ぐことになった」と淡々と振り返る。2003年に山路フードの、2005年に山路フードシステムの2代目代表取締役社長に相次ぎ就任して「食材プラットフォーマー」としての事業基盤作りに奔走している。
川上から川下までトータルに使命感・責任を担う中食産業 美味しさへの挑戦で、食材高騰でも売上増を維持
「トータルな食の分野で事業を磨き挑戦していく」と話す松井大輔社長
松井社長が経営の基軸に置いているのは「お客様へのお役立ち、社会へのお役立ち、働く仲間へのお役立ちができるように成長すること」。
そのため、HACCPに代表される食のトレーサビリティーが最も重要で、それを支えるのは仕組み(システム)と仕組みを運用する全員の姿勢であり、松井社長はホームページでも、「わが社の経営資源は唯一『人』である。あの人なら信頼できる。あの会社なら信頼できると思って頂けるような、人として原点である、約束を守る、誠実さ、あいさつ、親切さなどの人間味を究めていく事が大切であり、その様な真摯な態度や心の状態があってこそ、顧客が期待する以上の商品や美味しさづくりに日夜励むことが可能となり、顧客自身さえ不便さに気づかなかったサービスや提案につながったりする」と語っている。
山路フードシステムは現在、県央部を中心に正午までの2時間以内に届けられるエリアで事業展開しており、中学校給食、企業向け仕出し弁当のほか、社員食堂運営、幼稚園向け給食まで、幅広い中食需要を事業の柱としている。さらに、鶏卵専門問屋「ふくたま家」と、県のブランド「かながわ鶏」をベースに1年8ヶ月もの長期平飼いで、噛み応えと旨味を増した独自ブランド鶏「丹沢滋黒軍鶏」を飼育する「山路ファーム」を、それぞれ事業部で展開している。丹沢滋黒軍鶏は、飼育施設のある清川村のブランド鶏として立ち上げ、ふるさと納税の返礼品でも人気商品となっている。中食産業でありながら、養鶏場の運営を行う背景には、命をつなぐ大切さと重要性を従業員一人ひとりが体感し、それぞれの職場での仕事に生かすことが大きな目的の一つだからだ。
「トータルな食の分野で事業を磨き挑戦していく。川上から川下まで、食の使命感と企業責任を果たしたい」(松井社長)とアグレッシブに食の事業に向き合っている。同社の売上高は、2023年8月期が28億円、2024年8月期が29億円、2025年8月期は30億円を超える見込みだ。米をはじめ食材の高騰や、調理・配送コストの増加といった逆風のなかで安定して業績を伸ばしている。
4工場で1日2.5トンの米を炊き上げ20台の巨大釜で一挙に調理 配送センターから各中学に迅速に届ける給食一貫体制を構築
巨大な釜20台を使って毎日1万5,000人分の給食を作る
同社の給食や弁当は現在、県内の相模原市、大和市、海老名市、藤沢市の4工場で作り、伊勢原市の配送センターから中学校や企業に昼前に配送している。中学校給食の場合、平日は毎日約2万5000食分の給食を、各工場にある300~400リットルの巨大な釜20台を使って調理し、冷却後にランチボックスに詰める。米は1日約2.5トンを炊き上げる。金属探知機などの検査装置に通してから、各中学校へ配送し配膳係に渡す。食事後にランチボックスを回収し、配送センターに戻して洗浄するまでが一連の流れとなる。
HACCPやISO22000取得で国際水準の衛生管理体制を整備 検査体制強化し異物混入や食中毒を徹底排除
詰められた昼食は入念な検査を行い食中毒や異物混入を徹底的に防ぐ
食品業界では異物混入や細菌汚染を完全にゼロにすることは極めて困難だといわれる。厚労省による2024年の全国の食中毒発生件数は1,037件、患者数は1万4229人で、いずれも前年より増加している。そのうち給食や仕出し弁当など集団調理は4割前後を占めており、中食業界では安全対策が最大の経営課題ともいえる。
山路フードシステムは全工場で衛生管理の国際基準HACCP認定と食品安全管理の国際規格ISO22000を取得。大手食品メーカーと同等の安全管理体制を整えて、食材の仕入れから加工、配送、保管にまで各工程のリスク分析・管理を徹底してきた。
調理工程の再構築とマニュアルの刷新、第三者による衛生検査の導入、年2回の衛生研修を義務付けて、現場担当者にも食品衛生責任者水準の知識が必要な体制とした。製造ラインにおける異物混入探知機の導入や出荷前の2段階検品体制を導入することで、食中毒や異物混入の撲滅を狙った。
相模原市のPFI活用による中学校全員給食施策に対応 2027年度には南部給食センターで17中学校9,000食の給食作りを担うため従業員増や食缶対応の事業体制を整備へ
南部給食センターの完成予想図。2027年度からの事業開始に向けて体制整備を急ぐ
相模原市は、市内の全中学30校の全員給食体制を実現するため、PFI(民間資金活用による公共施設・サービスの整備)による学校給食センターを北部と南部に建設する計画で、17校9,000食を担う南部センターを、山路フードシステムが受託した。
建設は当初予定の2026年12月から2027年度中に延期される見通しだが、山路フードシステムは、事業開始に向けて準備を着々と進めている。同プロジェクトのために現場従業員を30人増員するほか、同社としては初めてとなる、食缶による温かい給食を提供する計画に合わせて、調理・提供体制の整備にも取り組んでいる。松井社長は「相模原給食センターのスムーズな立ち上げが中期的にも一番大事な事業と考えている」と意欲をみせている。
2025年6月に本社機能を駅近に移転し採用活動を強化 多機能ボード導入でTV会議の準備作業を省略 柔軟な操作性で業務効率を大幅に改善
コラボレーションボードの利用によって会議の準備や進行が格段に効率化できた
同社は2025年6月、大和事業所で工場と同居していた本社機能を小田急線相模大野駅近くのオフィスビルに移転した。赤川総務部長は「大きな目的の1つが採用活動の強化。従来は最寄り駅から20分以上かかっていたので、訪問に二の足を踏む就職希望者も少なくなかった」と苦笑する。今後は駅から5分の場所に移転したことで企業訪問者の増加に期待している。
本社移転のもう一つの目的がICTの本格活用による品質・生産性向上を可能にする業務システムの再構築だ。
移転時に導入したのが、コラボレーションボードと呼ばれる大型モニター画面とホワイトボード機能の合体型デバイスだ。専用ソフトが不要で、無線やケーブル1本の接続によって資料の投影が可能なほか、画面上からパソコンをタッチ操作することもできるため、パソコンと画面を行き来する必要がない使い勝手の良さが特徴。スイッチを入れるとホーム画面が立ち上がり、使いたい機能を簡単に選択して作業を開始でき、画面を2分割することで、プロジェクターの映像とアプリケーションを同時に表示したり、資料を投影しながらホワイトボードにメモしたり、2つの資料を比較するなど効率的なミーティングを進められる。
総務の伏見さんが、「以前は会議を始める前には機器の接続確認など準備が大変だったが、このボードになってから準備は数秒で済むし、ワイヤレスでパソコンとつなげるのでコードがないのも助かる」と話すように作業効率は格段に改善された。
現在、大会議室と中会議室に計2台を設置。「アプリも楽に出せるし、必要な書類をPDFで送って印刷もできる。画面ごと保存もできる」(赤川部長)と、柔軟な機能に満足そうだ。
ユニフォームの在庫管理をクラウド化 遠隔地でも手軽に会話できるWeb会議システムの構築や業務システムの連携も検討 業務全体をICTで見直し
ICT活用による業務効率化のテーマは山積している
総務部が移転したことに伴い、これまで総務部が担当していた従業員のユニフォームの在庫管理業務は、クラウド環境に移行して誰でも扱えるように改良した。システム開発に当たってはテストと改良を繰り返し、二次元バーコードによる入出庫登録から月次集計まで自動化した、使い勝手の良い在庫管理システムを構築。試行錯誤の末に、現場の声と生成AI活用で、満足度の高いシステムに仕上がった。
現在、取り組んでいるのが遠隔事業所間でのリアルタイムコミュニケーション環境の構築だ。「日々の雑談からビジネスのヒントが見つかることが多い」という松井社長のリクエストに応じて、別の部屋や離れた事業所にいても、気軽に会話ができる通信環境を整備する計画で、送受信データ量を大幅圧縮し、通信が途切れにくいWeb会議システムの利用を想定している。
新本社に作った社長室で執務をすることが多くなった松井社長にとっては、デジタル技術を活用して、従業員とのコミュニケーションを維持することが企業経営の活力を維持するために不可欠といえる。
業容拡大を見据えた業務全体の見直しと生産性向上を急ぎ、「食材プラットフォーマー」の基盤づくりに取り組む。
企業概要
会社名
株式会社山路フードシステム
本社
神奈川県相模原市南区相模大野3-16-1 相模大野REGALOビル501
電話
042-705-7510
設立
1984年10月
従業員数
665人(2024年4月時点)
事業内容
中学校給食、幼稚園・保育園・学童給食、企業・団体向け仕出し弁当、卵加工品製造、養鶏
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