積算・施工管理のデジタル化で属人化を廃し、「正直な経営」と社員の力で成長路線へ 竹石建設(栃木県)
2025年11月25日 06:00
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栃木県を中心に創業77年を迎えた竹石建設株式会社は、官公庁や地元企業の建築・土木事業を手掛け、技術力と品質を武器に、高い顧客満足度を追求。地元で揺るぎない信頼を築いてきた。2021年に4代目として代表取締役に就任した竹石哲也氏はコロナ禍と資材高騰の逆風の中、実直な経営姿勢で経営を立て直し、業務管理や施工管理などにICTソリューションを積極的に導入。会社全体の生産性向上に取り組んできた。(TOP写真:県内高校のトイレ改修の様子。新築案件だけでなく改修工事も積極的に受注し「頼れる会社」を目指す)
1948年材木商として創業 その後建設事業に参入し地元とともに成長 現社長は他社で修業の後、父親から厳しく鍛えられて自ら事業承継の道を選ぶ
父親からは「(会社を)継がなくてもいい」と言われたが、自らの意志で事業承継を決意した
竹石建設の前身は現在の竹石社長の祖父に当たる実氏が1948(昭和23)年に創業した材木商だ。1961年に有限会社竹石木材店として法人化した際に、建設事業に参入した。その後の県の工業団地造成や住宅着工数の増加に伴って、建設・土木事業が屋台骨に成長し、1984年に現在の「竹石建設株式会社」に商号変更した。
竹石社長が、祖父から父親、叔父と続いた竹石建設に入社したのは2005年。大学卒業後、父親の勧めもあって県内の同業他社に5年の予定で就職し、新規事業や経営を学んだ。“修業”を終えて竹石建設に入社しようとしたら、社長である父親から「そのまま今の会社にお世話になっていてもいいんだぞ」と言われた。
竹石社長は「高校生の時に欲しいものがあってアルバイトで初めて現場の仕事を手伝って以来、自然に会社を継ぐつもりになっていたが、父親からは一言も継いでほしいなどとは言われなかったし、逆に『継がなくてもいい』とさえ言われた」と振り返る。
営業では父親から叱咤 常務就任後は、「会社の顔」として業界デビューするも冷遇 負けん気と誠実な人柄で次第に「次期社長」として認知
建築、土木の比重が高まったが、大規模工事の受注は資材高騰などで難しくなっている=竣工した県道69号(宇都宮茂木線)
「今考えれば、親に言われて、という意識でなく自分の意志で決めたんだから逃げられないぞ、という父親の教えだったような気がする」と苦笑する。自らの意志で会社を継ぐ決意を固めたのは「建設の仕事が好きというより父親のようになりたいと思った」からだ。
2005年に竹石建設に入社後も社長だった父親の“教え”は続いた。住宅の営業を担当していた際、地元の同級生や前職の同僚が応援してくれ、10棟以上の受注を獲得したが、父親から「お前が売るんじゃない、ほかの社員に担当させろ」と叱咤(しった)された。
2015年に叔父にあたる昭厚氏が社長に就任、竹石社長も常務に昇格した。技術畑で社内にこもりがちの昭厚社長に代わって“会社の顔”として積極的に外に出たが、当初は同業者の経営トップに挨拶しても励まされるどころか、けんもほろろな対応に悔しい思いもした。持ち前の負けん気の強さで「私の意見が会社の意思です」などと言い返したこともあるが、約束を守る誠実な人柄が次第に評価され「次期社長」と認められるようになっていった。
コロナ禍に社長就任するも就任後の2年間で売上5割減 真摯な姿勢が信頼を呼び、破談間際の契約も獲得 経営者として自信に
納得できる仕事のために無理な値引きをしない姿勢が信頼獲得につながっている(写真は、湧水処理工事を行っているところ)
2021年に39歳で社長に就任後も、どんな場所にでも出かける腰の軽さは健在だった。しかし、コロナ禍で工事がストップしたり、建設計画自体が中止や延期になることが多く、売上高は大幅に減少。さらに、積算の責任者が病気で入院し、公共事業に不可欠な精緻(せいち)な積算ができなくなった。急きょ別の担当者を充てたが、全く受注できない日々が続いた。また、資材の高騰も追い打ちをかけた。
約20億円あった売上高は社長就任2年で5割近く落ち込んだ。それでも小さな工事の受注を積み上げて「意地でも賃金は下げたくなかったので、売上は減っても利益は維持した」と竹石社長は胸を張る。自動車部品メーカーの新設工場の受注では、見積後の急激な資材高騰で、大幅な値上げを余儀なくされ、契約破棄寸前にまでなったが、憤慨するメーカー社長に「きちんと仕事ができる値段、品質を守る値段は譲れない」と説明。最終的には契約にこぎつけた。「無理な値引きは仕事の品質に責任が持てなくなる」という仕事に真摯(しんし)に向き合う姿勢が相手に理解されたことで、経営者としての自信を深める出来事となった。
大型受注の獲得が続き業績が好転 ICT活用で業務効率化、公共事業依存からの脱却を目指し民間建築事業へのシフト強める
舗装路の修繕工事はICT測量機で負担軽減(写真は下高舗装修繕にICT測量を使用しているところ)
大型受注が続いたこともあり業績は好転。売上高は2024年7月期18億円、2025年7月期24億円と過去最高を更新している。
竹石建設の事業比率は、建築工事が全体の6割を占め、土木工事が3割、住宅が1割。今、建築工事の比率が伸びつつある。竹石社長は「土木を中心とした公共事業は続けていくが、公共事業頼りにはしたくない」という考えで、民間需要の掘り起こしに注力している。
また、企業や公共事業の建築工事の事業拡大に向けて経営資源をシフトしつつある。「新規開拓のやり方がポイントになる」と話すように、安定した受注に向けた新たな取り組みも成果を上げつつある。
急務となっていた積算業務のレベルアップと見える化を目指して2023年に土木積算システムと建築積算システムを導入。さらに、3次元設計データ要素抽出及び解析機能により、2次元図面から3次元施工データを自動作成する3次元施工管理システムを導入。若年技術者でもミスなく高精度の3次元施工データを作成でき、リアルタイムに設計と施工状況の比較もできるようになった。
社員の声で施工体制クラウドを導入 施工業務全体の効率化と分業体制が可能に 建設ディレクターによる現場の負担軽減、生産性向上も進展 属人的作業を抜本的に改革
現場とオフィスをつなぐ建設ディレクターが、現場の負担軽減と生産性向上に取り組んでいる
2025年5月には建築向け施工管理アプリとともに、施工関連の書類作成から保管までを一元管理し、業務の分業化と見える化を実現する「施工体制クラウドシステム」を導入した。施工に関わる多様なデータをクラウド上に保管し、必要に応じて誰でも活用できるシステムで、複数の担当者でデータを共有した分担作業を可能にする。
「社員から『早く導入して他社に差をつけたい』と意欲的な訴えがあった」(竹石社長)。ICT活用による効果や就労環境の改善効果まで、社員が自主的に考える環境になってきたことが嬉しそうだ。
2023年には現場での作業環境の改善や生産性向上に取り組む「建設ディレクター制度」も導入した。施工に関わるデータの取り扱いやICT業務などの専門スキルを習得し、現場とオフィスをつないで現場技術者の負担軽減と作業の効率化、就労時間の短縮を支援する仕組みで、現在は女性職員2人が建設ディレクターとして活躍している(建設ディレクターは、一般社団法人 建設ディレクター協会が創設し、同協会によって育成事業が行われている)
現場の働き方改革推進役といえる建設ディレクターだが、ICTを有効活用した積算業務も担当しており、栃木県の案件などで着実に成果を上げている。また、ICT測量機も少人数での測量が可能になり現場の負担軽減に効果を発揮している。
「残業や休日出勤は土木工事ではゼロ、建築工事は顧客の都合もありまだ残っているが、ゆくゆくは1週間程度の長期休暇が取れるようにしたい」(竹石社長)。属人的な積算や施工管理を抜本的に見直すと同時に、若手職員の採用も強化している。
地元高校のインターンシップ受け入れで新卒採用を継続 地元企業としての信頼をベースに「正直な経営」を心掛け、社員の「舞台」を用意する
ICTの積極的な活用と誠実な事業運営が会社の活力を生む(写真は本社)
採用活動については、就職情報誌を利用しているほか、地元工業高校や専門学校向けのインターンシップ受け入れも新たに始めた。2年続けて新卒の社員が入社するなど成果も出てきた。人材獲得が難しい建築業界において継続的な採用は、社員の就労環境改善にも深く関わる重要な経営課題である。
竹石木材店時代から、地元の企業や団体との信頼関係を築き、顧客満足度が最優先と考える伝統は現在に受け継がれている。その中で竹石社長が特に心掛けているのが「正直な経営」だ。
「社員には、会社の経営状態でも業務内容でも、何でもオープンに説明しています。だからこそ業績が上がったときには給料も奮発します」。竹石社長は毎年全社員と面談を行っているが、2025年7月には多くの従業員から「こんなにもらえるんですか」と驚かれたという。
「私が気に入って採用した社員一人ひとりの頑張りで当社は成り立っています。社員が活躍できるように私は舞台を用意するだけ。社員の失敗は舞台が合わなかっただけと考えています」(竹石社長)。ICTの積極的な活用と、社員の活躍を信じて支える社長の姿勢が、会社全体の活力を生んでいる。
企業概要
会社名
竹石建設株式会社
本社
栃木県芳賀郡芳賀町祖母井500
電話
028-677-0195
設立
1961年2月
従業員数
24人
事業内容
建築工事、一般土木工事、一般住宅工事
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