予防に特化したデイサービス ICTによるスタッフ間の情報共有、業務の標準化で、働きやすさを実現 「みらい」(群馬県)
2025年11月26日 06:00
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在宅介護に欠くことのできない訪問看護・訪問介護。しかし、その担い手の慢性的な人手不足が、事業者の悩みの種になっている。安定的な経営を維持するためには一定数以上の利用者が柱となるが、利用者が増えてもスタッフが確保できなければ現場は回らない。そこで課題となるのが、人材確保と離職防止に資する働きやすい就労環境づくりだ。株式会社みらいが運営するリハビリデイサービス「コンパスウォーク前橋北代田」および「コンパス訪問看護前橋」では、設立当初より「働きやすく労働条件の良い会社」を運営方針として掲げ、ICTの活用や業務の標準化などを積極的に推進。人材確保と離職抑止に成果を出している。(TOP写真:訪問看護ステーションでは、グループラインやスケジュール共有アプリの活用により、スタッフ同士のフォロー体制を構築している。)
歩行訓練に特化した半日デイサービスでフレイルを予防し、介護度の維持・向上に寄与 通所が困難な人には訪問看護でサポート
高齢者向けのリハビリ特化型半日デイサービス
群馬県前橋市に拠点を置く株式会社みらいは、2016年に設立。同年にリハビリ特化型半日デイサービス「コンパスウォーク前橋北代田」を開業した。同施設は歩行訓練に特化したデイサービスであり、高齢者がフレイル(運動不足による筋肉低下)により介護度が上がるケースが増えていることから、国家資格を持つ理学療法士・作業療法士による歩行訓練を実施している。また、平行棒やエアロバイクなど、各種リハビリ機器も備えており、足岩盤浴やウォーターベッドなどによるリラクゼーションメニューも好評だ。利用者ごとに個別のリハビリプログラムを提供しており、同施設では介護度を維持・改善している利用者が全体の88%だという。
一方、デイサービスの営業時間外のサポートや、通所自体が困難になった人へのサポートを目的に、同社は2023年に「コンパス訪問看護前橋」を開業。軽度の状態確認、服薬管理、退院直後のリハビリや、通所できなくなってからのリハビリ、入浴介助、看取りまでを手がけ、24時間オンコール対応体制を整えている。
なお、同社は全国で介護事業を柱とするフランチャイズを展開する、リハプライム株式会社のリハビリ型デイサービス事業「コンパス(全国220以上の事業所)」に2番目に加盟しており、優良なサービスを展開する事業者として、同フランチャイズ内では高く評価されている。
父母の遠距離介護で芽生えた思いから一念発起して起業 介護フランチャイズチェーンを手がける友人に相談し、予防に特化したリハビリ型デイサービスで他と差別化
株式会社みらい 代表・管理者の柳井亨夫氏
同社の柳井亨夫代表は、群馬県前橋市出身。大学を卒業後、東京で長年IT企業のコンサルタントを手がけてきた、介護業界では異色の経営者だ。参入した背景には、両親の介護経験があったという。
「2010年に母親、次いで父親も要介護状態となり、私は当時勤めていた東京の会社と地元群馬県を毎週往復する介護生活を送っていました。ケアマネさんや介護施設の方々、それに親戚のサポートに恵まれて遠距離介護をしていましたが、2015年に他界した父を看取れなかった後悔がありました。そこで、母にしっかりと付き添っていきたいという気持ちと、お世話になった故郷の方々への恩返しの思いから、その翌年に一念発起して株式会社みらいを設立したのです。」(柳井代表)
柳井代表は、設立して間もないコンパスフランチャイズチェーン(リハプライム株式会社)の友人である小池社長に相談をし、コンパスウォーク前橋北代田を母親の実家近くに開所。地域では要介護度の高い利用者を対象にしたデイサービスが多いことから、自らは予防型に特化。午前・午後の半日デイサービスにすることで差別化を行った。それでも、利用者が増えるまでに時間を要した。さらにコロナ禍では利用者が減り、補助金でしのいだ時期もあったが、食事提供や入浴がないため感染リスクは低く、感染者は発生しなかったという。
「ワクチン接種が始まった頃から利用が回復し始めました。開業直後から母親のほか、近所に暮らす親戚たちにも通ってもらったので、毎週親戚同士で顔を合わせることができて、親孝行になったかもしれません。」(柳井代表)
運営スタンスは「介護業界で群馬県一働きやすく、労働条件の良い会社」を目指し、訪問看護事業の拡大に尽力すること。ICTの環境が整っていたことから訪問看護事業スタート時に恩恵。
介護保険の請求業務には欠かせない介護請求ソフトは情報共有機能も備えているという。
前職での最後の2年ほどは、厚生労働省の介護保険制度のシステム設計にも関わり、仕組みへの知識があったことも参入への後押しとなったという。
柳井代表は、運営に対するスタンスが明確だ。「スタッフが働きやすい会社を目指し、徹底的にホワイト企業にしようと思っています。そのため、訪問看護においては、一人あたりの仕事を分散化して残業にならないようにしています。本部の人が来ると、定時でスタッフが帰るので驚かれますよ」それを実現するのが、余裕のある人員配置と業務の標準化だ。コンパス訪問看護では、常時定員プラス1人を確保し、スタッフの急な休みでもカバーできる体制を構築している。さらに、ICTによる情報共有の仕組みを活用して業務の属人化を避け、誰でも代わりができる体制を整えた。「子どもはすぐに熱を出すものです。うちは子育て中のスタッフが多いので、有給休暇をとりやすい仕組みを整えることで離職防止にもつながります。」
各自のスケジュールはGoogleカレンダーで管理、連絡はグループLINEで共有、訪問看護の請求システムでは、訪問看護の記録も一元化されている。また、データの共有ができるNASも導入。コロナ禍を契機にWeb会議も定着し、毎週行われる本部との会議や訪問看護スタッフの研修も、外出先から参加できるようになったという。「訪問看護は最初にICTの環境を整えられたので、事業をスタートしやすかったですね」(柳井代表)
一日中訪問先に出払っている訪問看護師だが、各自の予定はGoogleカレンダーに一元化されており、全員が出先から予定を確認できる。
本部との会議の多くはWeb会議で行われ、月に一度は本部スタッフが来訪する。
ケアプランデータ連携システムができても事業者双方が導入しないと活用できない。当面はFAXでの送信作業に対応するため、メモリー送信機能付きのFAXを導入。
毎月月初にはケアマネジャーにケアプラン実績をFAXで送信する。利用者一人ずつの書面なので枚数は多く、以前は1日がかりの作業だったという。
積極的にICTを活用している同社だが、毎月居宅介護支援事業所に送るケアプラン(予定と実績報告)については、いまだにFAXによる送信をするしかない状況だという。厚生労働省では2022年にオンラインでやり取りが完結する「ケアプランデータ連携システム」を構築しているものの、現状では利用が進んでいないのだ。「このシステムは事業者双方が導入しないと使えないのですが、ケアマネジャーがいる居宅介護支援事業所では導入してもらえないケースが多いのです。いずれFAXはなくなるだろうと思いますが…」
これまで同社のFAXには、一度に複数枚を読み込むメモリー機能がなかったため、一枚ずつ送信完了するまでFAXから離れられなかった。そこで、メモリー送信機能つきの複合機を導入し、1日がかりで行っていた作業の負荷軽減と効率化を進めた。
「コロナ禍を契機に、市役所では印鑑が不要になり、メールでの書類提出も可能になりました。ですが、せっかく作ったケアプランデータ連携システムも、介護事業者みんなで乗らないと活かされません。」と柳井代表は懸念を示す。
人がいなければ成り立たない介護の現場。人材が獲得できて、辞めない仕組みづくりが重要。
リハビリ特化型デイサービス コンパスには、若手の理学療法や作業療法士が数多く在籍している。
訪問看護事業は人手不足では経営が成り立たないビジネスモデルだが、コンパスのフランチャイズは、必要な人材がそろっていることを前提に継続できる仕組みだと、柳井代表は指摘する。「たとえフランチャイズであっても、人材獲得ができて辞めない仕組み、育てる仕組みは各オーナーが考えていかねばなりません。」そこで柳井代表は業務の効率化だけでなく、毎月1回スタッフとのミーティングを実施し、仕事に関する意見のほか、家庭の状況についてもヒアリングを行っているという。「うちには子育て中のお母さんが5人いますが、中には小さいお子さんや受験生を抱えるスタッフもいますので、それぞれの事情をくみ取って調整することが必要です。」(柳井代表)
「人材確保については最も苦労するところ」と話す柳井代表。現在はフランチャイズ本社が契約している人材紹介会社を利用しているが、最近はスタッフの紹介で入社を希望する人が増えつつあるという。「今後訪問看護事業では半年に2人ぐらいのペースでスタッフを増やしていく予定です。継続的に人が集まる仕組みを確立したいですね、いい会社を作ることで人は集まりますから。」と柳井代表は意欲を示す。
介護人材の人手不足にはさまざまな要因があるが、働きやすい就労環境づくりは、経営者が取り組むべき重要な課題である。ICTを活用して業務負荷を軽減し、スタッフそれぞれのライフステージに応じて、柔軟にマネジメントを行うことは、人手不足が続く今、欠かせない視点といえるだろう。
さらに、介護サービスは利用者がさまざまな事業所を併用することから、事業所間の情報共有と連携は欠かせない。「ケアプランデータ連携システム」の普及による、利用者サービスの質的向上にも大いに期待したい。
企業概要
法人名
株式会社みらい
住所
群馬県前橋市北代田町158-3
電話
027-257-0572
設立
2016年8月
従業員数
15人
事業内容
高齢者向けリハビリ特化型半日デイサービス、高齢者・障がい者向け訪問看護ステーション
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