建設業(建築)

塗装工事の「100年企業」 ICT活用で「脱手書き」を加速、リアルタイムで全社情報の共有実現 太陽社(山梨県)

From: 中小企業応援サイト

2025年11月28日 06:00

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株式会社太陽社は山梨県中巨摩郡昭和町を本拠に、専門塗装工事業を営む。「技術と信頼」をベースに地域に根差した事業を推し進め、2023年5月に創業100年を迎えた「100年企業」だ。事業の柱は公共工事に加え、スーパーゼネコンから請け負う事業で、安定した事業環境を確保してきた。その100年企業はいま、作業日報や勤怠管理、業務管理に昔ながらの手書き文化から、会社全体でICT(情報通信技術)を活用した業務革新に取り組んでいる。(TOP写真:太陽社が施工した東京都墨田区にある隅田川テラスギャラリー。太陽社ホームページより)

創業は1923年。転機は公共工事狙いの本社移転と株式会社化 町のペンキ屋から総合塗装工事事業者に

山梨県中巨摩郡昭和町にある太陽社の本社

山梨県中巨摩郡昭和町にある太陽社の本社

太陽社の創業は1923年5月に発足した「太陽社塗装店」にさかのぼる。山梨県南部に位置する鰍沢町(かじかざわちょう:現南巨摩郡富士川町)で、現在の太陽社の渡辺潮代表取締役社長、松村陽子取締役顧問の共通の祖父が町のペンキ屋といった形で立ち上げた。太陽社塗装店の事業はその後、渡辺社長、松村顧問のそれぞれの父親兄弟が引き継ぎ、協力して徐々に事業を拡大していった。

太陽社塗装店にとって、本拠を現在の昭和町に移転するとほぼ同時に、1978年10月に「株式会社太陽社」に組織変更し、新体制で事業を推進することになったのが一大転機となった。この点について、松村顧問は「従業員も少しずつ増えており、鰍沢にこのまま留まっていては事業拡大が見込めない。公共工事を受注するためには官公庁が多い甲府市の近くに移転することを当時の経営陣は判断したようだ」と語る。

現在の営業エリアはほぼ山梨県全域が主体で、取引先との関係から東京都内での塗装工事も請け負う。工事受注は元請け、下請け含めて民間工事6割に対し公共工事は4割という比率で、山梨県内に限れば公共工事が6割を占める。本社以外に甲府支店と鰍沢支店を構える。

強みはスーパーゼネコンとのつながり 40社ほどの協力会社とのネットワークで機動力を発揮

「スーパーゼネコンとの取引を通して一緒に歩んできたのが太陽社の強み」と語る渡辺潮代表取締役社長

「スーパーゼネコンとの取引を通して一緒に歩んできたのが太陽社の強み」と語る渡辺潮代表取締役社長

太陽社の事業面での強みは、古くからスーパーゼネコンとの取引関係を築いてきたことにある。50年ほど前から関係を継続しているとし、渡辺社長は「スーパーゼネコンとの取引は事業のメインの柱としており、工場新設など大きな箱ものの受注につながっている。昔からの付き合いがあり、その仕事を通して当社が育ってきて、一緒に歩んできたという自負がある。そこが当社の強みにもなっている」と語る。

スーパーゼネコンとの取引関係を長く維持できている背景には「県内の同業他社に勝る機動力にある」と渡辺社長は力を込める。太陽社の従業員数は現在、17人にとどまる。しかし、「協力会社は40社ほどあり、そのネットワークを通じて現場には機動的に作業員を送り込める」と渡辺社長は語る。

さらに、国土交通省が主導し、一般財団法人建設業振興基金が運営する、現場従事者の就業履歴や保有資格を記録・閲覧・管理する建設キャリアアップシステム(CCUS)について、太陽社は社員全員が4段階の最高位に当たる高度なマネジメント能力を有する者が取得できる「ゴールドカード」を取得している。この点もスーパーゼネコンからの高い信頼を得ている要因になっている。

協力会社とのネットワークについては「当社の協力会社は技術的にもかなり育ってきているので、自社による作業はむしろスリム化し、協力会社に仕事を回す方が効率が良いと考えており、今後はその方向をさらに進めていく。協力会社へ作業量をシフトしていく一方で、社員に対しては一人ひとりの生産性向上につなげていく」と渡辺社長は考えている。

実際、太陽社が誇る機動力を反映した直近の工事実績としては、2025年4月に山梨県南アルプス市にオープンした米国の会員制量販店がある。この案件はスーパーゼネコンが施工を担当し、長年にわたる元請け企業との信頼関係と太陽社の高い機動力が発揮されたケースと言えそうだ。このほか大口の工事実績としては、工作機械大手の会社や半導体製造装置大手の会社などの塗装工事を継続的に請け負っている。

ただ、太陽社は公共施設や橋梁(きょうりょう)といった公共工事や民間の工場など大口の塗装工事だけを手掛けているわけではない。1990年代後半からは「塗装&リニューアル」を掲げ、集合住宅や一般住宅の壁や屋根の塗り替えなど、小口のリニューアル事業にも手を広げてきた。協力会社の中にはリニューアルを手掛ける業者もあり、ここでも協力会社とのネットワークの力が生かされている。

手書き文化からの脱却は勤怠管理から 作業日報ベースをスマートフォンでリアルタイム把握 残業時間規制への社員の意識も向上

「勤怠管理システムの導入で事務担当者と現場の意思疎通の課題が解消された」と語る松村陽子取締役顧問

「勤怠管理システムの導入で事務担当者と現場の意思疎通の課題が解消された」と語る松村陽子取締役顧問

工事現場は協力会社とのネットワークの活用で効率化を図ってきたのに対し、業務管理は手書きのまま対応してきた。松村顧問によれば「勤怠管理も、60年の間、手書きの作業日報で対応してきました。それを事務の担当者がExcelに入力し、勤務時間を管理、集計するという流れになっていた。社員を信頼していたこともあって、タイムレコーダーは導入してこなかった」と言う。

しかし、作業日報は日々提出されずに週単位で提出されるようなケースもあり、現場への直行・直帰もすべて作業日報ベースでの報告となり、管理業務が煩雑となっていた。「事務の担当者は給与の計算だけでなく、近年は現場の安全管理書類の作成など事務負担が増えてきており、2025年2月に勤怠管理システムの導入に踏み切った」と松村顧問は語る。

勤怠管理システムの導入は、事務負担の軽減に加えて、2024年10月に建設業界が、残業規制強化の対象に追加されたことへの対応策でもあった。新たに導入した勤怠管理システムはスマートフォンでの打刻により、社員それぞれがリアルタイムで労働時間を見える化し、残業時間に対する社員の意識向上につながってきている。さらに、勤怠管理システムは給与計算システムと連携することで、管理業務の改善にもつながった。

この点について松村顧問は「これまでの勤怠管理は手書きの作業日報か事務担当者が直接、現場担当者と直接会話して把握してきた。ただ、事務の担当者が午後5時には退勤するのに対し、現場の担当者は午後7時ぐらいに帰社するので、タイミングがずれて意思疎通が図れなかったこともあった。それが勤怠管理システムの導入で徐々に解消しつつある」と言う。

ICT活用で多種多様な現場を一元的に管理、全社で現場の基本情報を共有

多様な塗料などが収容されている太陽社の倉庫

多様な塗料などが収容されている太陽社の倉庫

太陽社は勤怠管理システムに続いて、会社全体でデジタルを活用して、現場と事務部門での情報共有に取り組んだ。太陽社の施工実績は年間400件を超え、現場も大口から小口まで手掛けていることから、工期も長期間にわたる現場から2日程度で完了する現場もあり、日ごとに変わってくる現場の全体像を一元的に把握するのが難しくなっていた。

その状況について渡辺社長は「これまでは、会議で営業担当者から担当する現場の内容について月次報告を紙ベースで受けてきた。建設会社のどこの現場で、現場に入る社員、協力会社、工期はいつから、受注金額などだ。ただ実際のところ、たくさんの現場があり、目まぐるしく変わる現場の状況に追いつけなくなってきた」と吐露する。

この課題の解決に向けて、太陽社は協力会社の情報や現場の進捗状況など、各現場でリアルタイムに更新される情報を一元的に管理するため、2025年6月に、クラウドで利用できるノープログラミングソフトを導入し、業務管理システムを構築した。システム設計にあたっては、管理項目を社内会議や現場の意見をヒアリングして取り入れ、作業日報や現場情報についても、これまで使用してきた紙ベースの形式を参考にしつつ残しながらシステムを構築した。さらに販売管理システムとの連携も図り、事務管理業務の軽減にもつなげた。

パソコンやスマートフォンを通じてどこからでも利用可能なクラウドシステムとしたことで、現場と社内のスムーズな情報共有が可能になった。この点を渡辺社長は「社員全員が各現場の状況をリアルタイムで一元的に確認でき、現場の進捗状況なども把握できることが最大の利点」と語る。今後については「まずはシステムに慣れて、当社に合った活用の仕方を考えていきたい」と期待を寄せる。

100年の歴史からなる手書き文化から、ICT活用による業務の見える化に大きく舵を切った太陽社の決断は、業務の効率の加速だけでなく、取引先からの問い合わせに即対応できるため、得意先からの信頼性も高まる。また、蓄積したデータから様々な状況把握をすることで人材・資材・資金の再配分を行うことが可能となり、生産性をさらに高めることが期待される。

企業概要

会社名

株式会社太陽社

住所

山梨県中巨摩郡昭和町押越100

HP

https://taiyosha100.com/

電話

055-275-5641

設立

1978年10月

従業員数

17人

事業内容

建設塗装工事、橋梁塗装工事、防水工事、内装工事、左官工事、屋根工事

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