「We never say “NO”」と宣言 合成樹脂の卓越した加工技術をAI・ICTで更に磨く 京都樹脂精工(京都府)
2025年12月01日 06:00
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合成樹脂の分野で蓄積した加工技術を武器に、積極的な事業展開を図る企業が京都府にある。設立から60年近い歴史を持つ京都樹脂精工株式会社だ。接着、曲げ、溶接、研磨、染色の高度な加工技術を備え、樹脂製品の設計から製造、納品まで一気通貫で対応可能な体制を構築している。企業成長の覚悟としてホームページのTOPに「We never say “NO”」と宣言。そのため、多種多様な工作機械と熟練した職人の技を融合した加工能力のポテンシャルを高め、その技術を支援するためにCADの徹底活用、AIを活用して見積り精度を大幅アップ等、常に最新のデジタル技術を活用して、更に進化させようとしている。(TOP写真:京都樹脂精工のホームページ)
機械と手作業をバランスよく組み合わせて多種多様な樹脂部品を製造している
多種多様な工作機械をそろえる京都樹脂精工の生産現場
1967年設立の京都樹脂精工はプラスチックの切削加工を事業として営み、樹脂加工分野の技術を進化させてきた。京都府久世郡久御山町内の工業団地に本社工場と第二工場を構え、約60台にのぼるフライス加工、旋盤加工、仕上げ加工の工作機械や画像測定器などの検査機器をそろえている。経営理念として「全てのお客様に安心と満足を提供する」を掲げる。
京都樹脂精工の本社内に掲出されている経営理念
多種多様な工作機械を操作する技術と汎用機や手作業による溶接、接着、研磨、サンドブラストなどの加工技術をバランスよく組み合わせ、顧客の要望を反映したバラエティに富んだ樹脂部品を製造している。取り扱っている樹脂材料は、塩化ビニール、ポリプロピレン、アクリルといった汎用プラスチックからポリカーボネート、ポリアセタール、超高分子ポリエチレンといったエンジニアリングプラスチック、熱硬化性樹脂まで幅広い。小型精密機器の組み立ても行っている。
企業成長の覚悟として「We never say “NO”」 大企業、大学、研究機関に製品を納入し、豊富な開発実績を誇る
京都樹脂精工は様々な樹脂製品を開発している
京都樹脂精工が開発したアクリル製の耐圧水槽
創業当初から「We never say “NO”」、断らないものづくりをモットーに、試作品を中心とする一点物から量産品まで難度が高い案件を積極的に引き受けてきた。堀場製作所、パナソニック、ジーエス・ユアサコーポレーションといった関西を代表する大企業をはじめ、大学や研究機関にも製品を納入している。高い透明性が求められるアクリル製品の製造に特に強みを持ち、従来はステンレスでなければ難しかった水圧試験などで使われる耐圧水槽をアクリルで開発した実績を持っている。京都樹脂精工が開発した透明性と強度を兼ね備えた耐圧水槽は、ステンレス製と比べて観察しやすいことから、防水用電子機器の耐圧試験や流体状況の確認、深海の模擬実験、流体攪拌(かくはん)の観察といった様々な場面で使用されている。
「長年にわたって蓄積してきた技術を土台に樹脂の可能性を日々追求しています。お客様の課題解決の役に立ってこそ存在意義があると考えて事業に取り組んでいます」。久御山町の本社で取材に応じた京都樹脂精工の山下直毅代表取締役社長は、事業に対する姿勢をこのように説明した。
成長を図るため事業での補完性が高い企業をM&Aでグループに迎え入れる
京都樹脂精工の山下直毅代表取締役社長
山下社長は2008年、2代目社長を務めていた父親の急逝に伴い、20代半ばで事業を承継した。「就任した当初は無我夢中でした。創業時代からの幹部や従業員に支えてもらいながら、お客様に迷惑をかけないように全身全霊をかけて経営に取り組みました」と山下社長。就任以降、環境マネジメントへの対応、品質に関する国際標準規格、ISO9001の取得、生産体制増強のための第二工場新設といった数々のプロジェクトを形にしていった。2024年には大阪府東大阪市内の樹脂メーカー、酒井製作所をM&Aで傘下に収めた。事業での補完性が高い企業をグループに迎え入れて成長を図るとともに、製造拠点を分散させることでBCP(事業継続計画)を強化する狙いがある。「時間を買うという視点で考えるとM&Aは効果が大きいと考えています。経営環境の変化に対応できる企業であるために次の一手を考え続けたい」と山下社長は先を見据える。
石油を原料とする製品を扱う企業の社会的責任として環境保護に強い関心を示す
SDGsの達成に向けた京都樹脂精工の取り組みをまとめた宣言書
京都樹脂精工は、石油を原料とするプラスチックを扱う企業の社会的責任として環境保護に強い関心を持っている。生産設備は、京都市発の環境管理に関する認証制度、KESステップ2Enに基づいてエネルギー効率を最優先に考えて導入(参考 https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000152637.html)。また、製品は、EU(欧州連合)が有害物質の排出を抑制するために制定したRoHS指令に基づいて製造するようにしている。2024年1月には、国連が提唱する持続可能な開発目標、SDGsの達成に向けた社内の取り組みをまとめた上でSDGs宣言を行った。
オフィスや工場の情報化に早くから取り組み、1980年にオフィスコンピューター、1985年には生産管理システムを導入 バージョンアップしながら活用してきた
京都樹脂精工が活用している生産管理システム
京都樹脂精工は、ものづくり業界の中でオフィスや工場の情報化に早くから取り組んだ企業として知られている。1980年にオフィスコンピューター、1985年には生産管理システムを導入し、バージョンアップしながら業務の効率化に活用してきた。「機械やシステムを使って時間を効率的に活用することで、樹脂部品の透明性を高めるための手作業など、人間でなければできない仕事の精度を高めることにつなげてきました。これらの技術の蓄積が会社の大きな財産になっています。これから先も会社にとって必要かどうかを見極めながらデジタル技術を積極的に活用していきたい」と山下社長は話した。
2010年代初頭から複数のCADシステムを10台以上導入 図面はデジタル化した上でシステムを使って一元管理している
図面管理システムで図面を確認する様子
工作機械を稼働させるNC(数値制御)データの基になる図面を作成する上で必要不可欠な存在となっているのがCADシステムだ。2010年代初頭から複数のCADシステムを10台以上導入しており、設計だけでなく営業の担当者もCADを使って取引先と図面のやり取りを行っている。これまで蓄積してきた樹脂製品の図面はデジタル化した上で図面管理システムを使って一元管理している。「必要な図面を高精度で検索する機能を活用することで、紙ベースで管理していた時よりも図面作成にかかる時間を大幅に短縮することができました」と山下社長。
AIを活用した見積作成システムを導入して、作成にかかる時間を約30%削減 勤怠、給与計算、会計の各システムを連携して基幹業務の効率化も実現している
京都樹脂精工のオフィスの様子
2024年にはAIを活用した見積作成システムを導入した。従来の紙ベースの見積プロセスでは、担当者によって見積の金額が微妙に異なることがあり、確認作業を徹底するため、取引先に短時間で回答できないという課題を抱えていた。システムは、新たな見積が必要な図面について、過去の類似図面をベースに差異を解析した上で金額を自動計算する機能を備えている。システムを活用することで見積作成にかかる時間を約30%削減することができたという。「お客様への回答を迅速にできるようになっただけでなく、経験や知識が豊富なベテランでなくても根拠に基づいた標準的な見積を出せるようになったので、ベテランの能力をほかの業務でより一層活用しやすくなりました。デジタル技術が、業務の属人化解消に大きな効果を発揮していることを実感しています」と山下社長は満足そうに話した。
また、勤怠、給与計算、会計といった基幹業務でもシステムを導入して連動することで効率化している。従業員がICカードを使って記録した日々の勤務時間の記録を勤怠管理システムに自動集計し、リアルタイムで管理者が確認できるようにした上で、給与計算や会計に活用できるようにしている。担当者が会社の外部でも業務をこなし、税理士との情報共有を行いやすくするためにクラウドサービスを活用している。
企業を標的にしたサイバー攻撃に備えて多様な機能を備えたUTM(統合脅威管理)機器を中心に防御体制を強化している
中小企業をターゲットにしたサイバー攻撃が増加傾向にあることを踏まえてセキュリティー対策にも力を入れている。2018年にコンピューターウイルス対策やファイアウォール、IPS(不正侵入防御システム)、IDS(不正侵入検知システム)といった多様な防御機能を備えたUTM(統合脅威管理)機器を導入。2024年には万が一サイバー攻撃を受けた際、情報が漏えいする前に検知して自動で通信を遮断する機能を備えたセキュリティー機器を追加で導入した。情報のバックアップ用機器としてNAS(ネットワーク接続型ストレージ)も活用している。「これまで培ってきた技術、知識のデジタル情報は重要な資産になっています。セキュリティー技術は日進月歩で進化しているので、定期的に新たな機器を導入しながらサイバー攻撃への防御体制を強化していきたい」と山下社長は話した。
デジタル技術を活用して事業領域を拡大する
京都樹脂精工の本社の外観
山下社長は、今後、労働人口の減少に伴う人手不足に対応しながら事業の持続可能性を高めるにはデジタル技術のより一層の活用が鍵になると考えている。文書作成や定型業務を効率化するために生成AIの導入も検討したいという。「長い間、当たり前と思って続けてきた業務プロセスを、デジタル技術で効率化するという視点から見直す必要があると思っています。デジタル技術を率先して活用する雰囲気を社内で醸成していきたい」と山下社長は話した。60年近い歴史の中で樹脂加工の分野で実績を積み上げ、ものづくりの新しい可能性を追求している京都樹脂精工。デジタル技術を活用することでその事業領域は着実に拡大するはずだ。
企業概要
会社名
京都樹脂精工株式会社
本社
京都府久世郡久御山町佐古外屋敷150
電話
0774-48-2211
設立
1967年2月
従業員数
89人
事業内容
各種樹脂・軽金属の精密切削、旋削加工及び仕上げ加工、各種樹脂特殊加工、各種実験装置設計製作、小型精密機器組立
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