デジタルクリエイター専門の人材派遣を中心に受託開発や人材紹介を展開 新たな経営体制で飛躍を目指す デジタルスケープ(東京都)
2025年12月08日 06:00
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デジタルクリエイター専門の人材派遣業として老舗的な存在である株式会社デジタルスケープは、デジタルコンテンツの需要拡大とともに成長してきた。一方で新規参入や統廃合など業界再編の動きも激しく、事業提携を通じて数多くの子会社を設立したほか、資本関係も変遷を重ねてきた。2024年3月に株式会社ボーンデジタルの100%子会社として再出発したことを機に、膨大な映像コンテンツの保管・活用環境を整備。さらに業務系システムの刷新も検討している。(TOP写真: デジタルスケープでの打ち合わせ風景)
Windows 95登場の年に創業 デジタルクリエイター不足を見込み人材ビジネス市場に先鞭 業界再編の続く中で事業規模を拡大
デジタルスケープ本社が入っているビル
現在のデジタルスケープの母体が誕生したのは、「Windows 95」や「プレイステーション」が世に出た1995年。デジタルクリエイター育成専門会社のデジタルハリウッド株式会社が、クリエイターに的を絞った人材ビジネスを目的に株式会社デジタルスケープを設立。資本金6000万円で東京都千代田区に本社を置き、翌1996年に人材派遣業を開始した。
世界的な大ヒットとなったWindows 95は、インターネットの黎明期に登場した事もあり、机上で外部とつながって仕事ができるようになった事で、Web環境のアプリケーション需要を爆発的に増やした。また、プレイステーションはエンターテインメント分野のゲームや映像コンテンツの開発機運を急激に高めた。結果、デジタルクリエイターは圧倒的に不足し、デジタルスケープは時代の追い風を受けて成長を続けてきた。
人材ビジネスを軸に、さまざまな企業と提携し10社以上の子会社を設立したほか、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の資本参加により同グループに入る。その後、株式会社イマジカ・ロボット・ホールディングス(現株式会社IMAGICA GROUP)の完全子会社となり、2011年に社名を「株式会社イマジカデジタルスケープ」に変更するなど、業界再編の中で経営環境は大きく変化した。
発足間もなくデジタルスケープに転籍し2017年に社長に就任 業界は伸びるも派遣法の改正で人材派遣業に逆風 IMAGICA GROUPの傘下に
新生デジタルスケープの未来を語る篠原社長
篠原淳代表取締役社長は、リクルートを経て1996年にデジタルスケープの出資会社の一つに入社。翌1997年に発足間もないデジタルスケープに転籍して管理部門を主に担当し、2017年4月に社長に就任した。
景気の浮沈に加えて、働き方改革の進展やコロナ禍による巣ごもり需要など、市場環境は変化しながらもWebや映像、ゲームの市場拡大とともにクリエイター人材の需要は右肩上がりで伸びてきた。同社の売上高は一時100億円を超え、事業の統廃合や競合の増加、労働者派遣法の改正などで、事業環境は次第に厳しさを増す中においても成長していった。
そのような中、IMAGICA GROUPは2023年にイマジカデジタルスケープのゲーム関連事業を株式会社IMAGICA GEEQに分離。イマジカデジタルスケープとその子会社2社の全株式を2024年3月、映像ソフトウェア販売やクリエイター関連書籍の企画・販売事業を手掛ける、株式会社ボーンデジタルに売却した。親会社の変更を機に創業時の社名「デジタルスケープ」に生まれ変わった。新たな設立日は、祖業である人材ビジネス中心の事業に戻った2023年1月6日とした。
新しい親会社とは人材ビジネスの相乗効果に期待 制度改正で派遣の需要は頭打ち 人材紹介の事業比率を1割から3割に成長目指す
正社員登用を前提とした人材紹介の依頼が増えている
デジタルスケープのクリエイター登録数は現在、8万3000人だ。「ニーズが高く、成長が見込めるCG分野のクリエイターの人材紹介・派遣を増やしていきたい。あわせて社内クリエイターによるWebや映像の受託制作も積極展開したい」という。取引企業は約200社だが、「かつての数千社の規模に復活したい」と今後の事業拡大に意欲をみせる。
デジタルスケープの事業比率は人材派遣が8割、受託制作と人材紹介が1割ずつだが、労働派遣法の改正によって、派遣労働者の3年以上の雇用が難しくなるなど、企業の派遣人材活用も変化している。また、クリエイターの派遣需要が一時期より減少傾向にある一方、正社員登用を前提とした人材紹介の需要が増えている。
篠原社長は「派遣のニーズはいまも堅調だが、人材紹介は今後さらに増えていく見通しで、3割には成長させたい」と話すように、成功報酬が得られて粗利率が高い人材紹介事業の強化で、業績改善を牽引(けんいん)したい考えだ。
親会社であるボーンデジタルの事業との相乗効果も業績改善に欠かせない。篠原社長は「ボーンデジタルは取り扱っているソフトウェアも多く、顧客層も広いので、シナジー効果を出しやすい」と相性の良さに期待している。ボーンデジタルは各種映像ソフトの販売を行っているほか、クリエイターを対象とした書籍の企画・販売も手がけ、いわばクリエイターのインフラともいえる事業基盤が強み。クリエイター人材輩出のデジタルスケープとは、営業面でも事業協力は広がりそうだ。
ICTの活用による業務効率化も経営基盤強化の重要な戦略として位置付けている。篠原社長は、管理部門の経験を生かしてサービス現場と基幹業務の両面で積極的なICT活用を進めている。
容量無制限のクラウドストレージ導入で学生と企業結ぶ作品集の保管・検索可能に 内定者の作品集は教師にも人気の優良コンテンツ
デジタルスケープ クリ博PFO(ポートフォリオオンライン選考会)12月の告知ビジュアル
同社はコンテンツ業界に的を絞った新卒者向け就職フェア「クリ博」を2008年から実施するなど、クリエイター志望の学生と企業との仲介に注力してきた。学生の登録者は、年間7,000人に上っている。登録者数の増加とともに、収録するポートフォリオ(クライアントに向けた作品集)のデータ量も増大、自社のサーバーやストレージ環境では容量確保と効率的な活用が難しくなっていた。
2023年に導入したクラウドストレージと呼ばれるファイル共有サービスは容量が無制限で、データ容量を気にする必要はなくなった。WEBソリューショングループの平山陽介さんは「1人当たりのアップロード容量は一定の容量に制限を掛けております。学生の志望職種によって、データ容量が変動している現状です」と説明する。実際に施策にエントリーしているのは2000人前後だが、近年は動画の作品も増えておりデータ容量量は増える一方という。
現在は2027年卒業の学生を対象に年4回のペースでポートフォリオへの出品を促す告知を行っている。クラウドストレージの機能を利用して、ある程度のクオリティの作品が集まった段階で、採用を検討している企業がアクセスできるようになっており、「これは」と思う学生と面接するマッチングの仕組みを構築した。
同社は工業系・美術系大学や専門学校など全国の学校で説明会を行い、100校以上の学生が個人で登録。「かなり作り込んだ作品が多く、レベルが高い」と篠原社長も感心する高水準のポートフォリオが同社の強みでもある。
中でも、オファーを獲得した作品を集めたポートフォリオは人気コンテンツで、学校の教員も参考に見ているという。膨大な作品が収録されたポートフォリオの中から、企業の担当者がどのような作品を見たいのかを、AIを活用する事によって、ニーズに応じた作品を検索できるシステムの実用化も検討している。
人材紹介事業の効率向上へ クラウドシステム導入し競争力強化 基幹システムによる業務は内製化を検討 再び成長継続可能な事業規模目指す
デジタルスケープのオフィス
今後の成長が期待される人材紹介事業では、マッチングクラウドシステムを導入して、競争力強化に取り組む。求人・求職者管理、AIマッチング、応募管理や各種媒体からの求職者自動取り込み、エントリーの自動化や面談設定など、人材紹介に関する業務のデジタル化と自動処理機能を備えており、他のシステムとも連携を図る事で、業務を大幅に効率化できるという。
同社の販売管理や給与計算などの基幹業務系システムは、ゲーム関連事業を分離する前のシステムをアウトソーシングで使っている。しかし、人材ビジネスに特化した現在、「システムの規模が現状の業務と合わない」(篠原社長)ため、事業規模に合わせてコンパクトなシステムを利用し、業務を内製化する方向で検討を始めた。親会社の事業との相乗効果とICTシステムの積極活用を両輪に、経営基盤作りを急ぐ。
同社の企業理念は「次代の要求に応え、最新の技術、および人材の育成と供給を通して、クリエイティブ業界の繁栄に貢献することにより、すべてのパートナーの幸福を実現する」とある。
創業間もない時期からデジタルスケープの事業の変遷に携わってきた篠原社長は、「黎明期から(デジタルクリエイター人材ビジネスの)マーケット拡大に貢献してきた」と自負する。
創業期の社名に立ち戻った新生・デジタルスケープは、「再び成長を継続できる事業スケールへと成長させる」ために、入念な仕掛けづくりに取り組む。
企業概要
会社名
株式会社デジタルスケープ
本社
東京都千代田区九段南一丁目5番5号 九段サウスサイドスクエア3階
電話
03-3288-6330
設立
2023年1月(創業1995年)
従業員数
233人(2025年3月末現在)
事業内容
人材派遣、制作ソリューションサービス、人材紹介、クリエイター育成、就職支援・採用支援
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