世界水準のスポーツ用手袋メーカー オリジナルブランドにも力を入れる 事業を支えるのがデジタルの力 レガン(香川県)手袋製造
2025年12月15日 06:00
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香川県東部の木田郡三木町に本社を構える株式会社レガンは、野球、ゴルフを中心としたスポーツ向け手袋の生産で事業を拡大してきた。60年を超える歴史を通じて高度な手袋生産の技術とノウハウを蓄え、大手スポーツ用品メーカーからのOEM(受託生産)で業界トップクラスの実績を持つ。月間約10万枚にのぼる手袋の生産は海外の工場に移管し、国内は商品の企画、設計、開発、営業といった業務に特化している。オリジナル商品のラインナップ強化など、先を見据えた取り組みを進める中で、デジタル技術のポテンシャルに着目し、設計や総務、そして、情報発信といった様々な業務で活用している。(TOP写真:オリジナルブランドとして商品化したゴルフ用手袋の「941(ナイン・フォー・ワン)」シリーズ)
社名は、フランス語で「唯一の手袋、最も優れた手袋」を意味する「Les Gants(レガン)」にちなんでいる 機能、デザインに徹底してこだわる
レガンの社名を刻んだプレート
株式会社レガンは「Ever Onward(限りない前進)」を経営理念にしている。社名は、フランス語で「唯一の手袋、最も優れた手袋」を意味する「Les Gants(レガン)」にちなんでいる。主力商品の野球、ゴルフの手袋に加え、ランニングやフィッシングといったアウトドア向け手袋の開発、販売も手掛ける。大手スポーツ用品メーカーなどからのOEM生産が、手袋の90%を占め、機能、デザインへの徹底したこだわりと、アスリートからの厳しい要求を製品に落とし込む技術力は高い評価を受けている。取引先メーカーのブランド名で販売されるため、レガンの社名が表に出ることはないが、国内外で活躍する数多くの野球、ゴルフの一流プレイヤーがレガン製の手袋を使っている。
クオリティーの高い商品を生み出すためクラフトマンシップの養成と新しい技術の活用に力を入れている
レガンの砂川泰三代表取締役社長
レガンは、国内の手袋生産の中心地、東かがわ市とともに、東讃(とうさん)地域を構成する木田郡三木町の幹線道路沿いに本社を構えている。「会社の業務を支えてくれている従業員の生活を豊かにするとともに、お世話になっている地域を活性化したいという思いで事業に取り組んでいます。クオリティーの高い商品をお客様に提供するために、材料選びの段階から徹底的にこだわり、クラフトマンシップの養成とICTをはじめとする新しい技術の活用に力を入れています」。取材に応じた砂川泰三代表取締役社長は、2011年の就任以来大事にしている思いをこのように話した。
レガンは、2018年に全国健康保険協会香川支部が推進する「事業所まるごと健康宣言」の認定を受け、健康経営の取り組みを積極的に進めている。近年、採用活動に力を入れていることもあって、20代から30代の従業員が増加しているという。従業員の半数を女性が占めており、女性が働きやすい環境づくりに力を入れた結果、2020年には香川県の「かがわ女性キラサポ宣言」の認定を受けている。
1980年代初頭にファッションからスポーツに事業領域をシフト 大量生産に対応するため海外での生産体制の構築に取り組んだ
レガン本社の展示スペースで紹介されている様々な種類の手袋
レガンの歴史は、砂川社長の父親である砂川匡氏が1962年、手袋の生産を個人事業として始めたことにさかのぼる。1965年1月にクラウン手袋株式会社として法人化した。当初は、フランスのピエール・カルダンなどの海外ブランドとライセンス契約を結び、ファッション性が高い手袋の生産に取り組んでいたが、スポーツが盛んになることを見越して1980年代初頭からゴルフや野球などの手袋に事業領域をシフトしていった。同時に、大量生産に対応するため、人件費が安い海外での生産体制の構築に取り組んだ。1988年、企業イメージを社内外に浸透させるCI(コーポレート・アイデンティティ)戦略を進めるために、社名をクラウン手袋から現在のレガンに変更した。
レガンは、ほぼ全ての手袋の生産をフィリピンとベトナムに置く2ヶ所の自社工場と、ベトナム、インドネシア、中国の協力会社の工場で行い、国内は企画開発、営業、物流、総務といった業務に特化している。月間で約10万枚の手袋を生産。海外の工場で出荷前に徹底した検査を行った上で輸入して、取引先の倉庫に直送している。
本社工場で試作品の製作とともに手袋の製造技術の開発に取り組む 2017年からオリジナルブランドの企画と製造に乗り出す
本社内の工場では試作品の製作や製造技術の開発が行われている
本社内の工場では試作品の製作とともに、手袋の製造技術の開発にも取り組んでいる。代表例の一つが、一度のミシン縫いで手の甲と手の平のパーツを縫い合わせることで、握りやすさ、指の動かしやすさ、フィット感を実現する「ワンシーム手袋」の製造技術だ。少ない構成パーツとシンプルな構造に特殊な縫製を施すことで、立体的な仕上がりを実現している。手の平や指の部分に縫い目がないので、プレイヤーは、より素手に近い感覚でゴルフクラブを握ることができる。
レガンは、2017年、企業を取引先とするOEMだけでなく、消費者のニーズを直接反映した製品の開発能力を養うため、オリジナルブランドの企画と製造に乗り出した。オリジナルブランドの第一弾として商品化したのが、ゴルフ用手袋の「941(ナイン・フォー・ワン)」シリーズだ。ブランド名は、スポーツ用手袋に求められる機能性、デザイン、構造に関連した九つの要素の一体化を目指すレガン独自のコンセプト「九位一体」の英訳、「NINE FOR ONE(ナイン・フォー・ワン)」にちなんで名付けた。
941シリーズには「ワンシーム手袋」の製造技術を活用。強いグリップ力を追求した「真紅(しんく)」、繊細な感覚と柔軟性を重視した「黄金(こがね)」、雨天に強い万能型の「紺碧(こんぺき)」の3タイプと「HYBRID(ハイブリッド)」をラインナップしている。プロゴルファーやトップアマ用手袋の仕様を基準に、4タイプとも薄さ、柔らかさ、機能性を兼ね備え、真紅、黄金、HYBRIDには合成皮革、紺碧には人工皮革を素材として使用している。ファッション用手袋でも「彩」のブランドで「錦」、「竹林」、「新緑」、「夕焼」の4タイプを開発、販売している。
消費者からの意見やニーズをフィードバックすることで手袋づくりの更なる技術の蓄積につなげている
「蓄積してきた技術と素材の活用方法に独自のアイデアを加えたオリジナル商品を作ることで、消費者からどのように評価されるのか確かめてみたいという思いがありました。オリジナルブランドを通じていただいた消費者からの意見やニーズを、OEM商品にフィードバックすることで、品質が更に向上するという好循環が生まれています。これからも自由な発想で新しいスポーツ手袋のジャンルを開拓していきたい」。砂川社長はオリジナルブランドにこめた思いや効果をこのように説明した。オリジナルブランドの生産は、自社工場の稼働率向上にもつながっているという。
オリジナルブランドの商品は、レガンの本社などの拠点のほか、インターネットの大手ショッピングサイトでも販売している。また、「941」のゴルフ用手袋は、三木町のふるさと納税の返礼品に採用されている。そして、返礼品限定で「941」の野球のバッティング用手袋を本社工場で生産している。
デジタル技術を活用することで生み出した時間を、人間だからこそ取り組むことができる創造的な仕事に振り向けている CADは試作品開発に欠かせない存在になっている
イラストレーターを活用して手袋をデザインする様子
レガンは、手袋の設計、国内の支社や海外の工場とのコミュニケーション、基幹業務、情報発信といった様々な業務でICTやデジタル機器を活用している。デジタル技術を活用することで生み出した時間を、オリジナルブランドの企画開発、取引先との意思疎通、新たな経営戦略の策定といった、人間だからこそ取り組むことができる創造的な仕事に使っている。
手袋の設計では、30年以上前からアパレル業界向けのCADを活用し、定期的にバージョンアップしている。取引先企業の要望をきめ細かく反映する試作品を開発する上で、なくてはならない存在になっているという。CADを使うことで、デジタル空間で正確な型紙を、手作業よりも短時間で手間をかけずに作成できる。細かい修正が必要な時も瞬時に反映させることが可能だ。複数のサイズに展開するグレーディングも、基準となる型紙をベースに効率的に行うことができる。データの保存と管理もしやすく、これまでに蓄積した手袋のデザインは約1万件を数える。
東京事務所や県外の取引先、海外の自社工場、協力工場との打ち合わせや会議でWeb会議を活用 国内外の出張件数は導入前と比較して約3割減少した
2020年のコロナ禍をきっかけに、東京事務所や県外の取引先、海外の自社工場、協力工場との打ち合わせや会議で活用を始めたWeb会議も、業務効率化に大きな役割を果たしている。2023年からクラウド型の業務支援アプリケーションや、グループウェアと連動したWeb会議の使用頻度を増やしたところ、画面上で資料や画像など様々な情報の共有がしやすいこともあって、以前より会議の生産性が向上したという。「Web会議のおかげで国内外の出張の件数は導入前と比較して約3割減少し、時間とコストの両面で大きな効果が生まれています。Web会議システムを使うことで、対面でコミュニケーションを取る効果の大きさも改めて認識できたので、リアルとオンラインを効果的に使い分けています」と砂川社長は話した。
勤怠管理システムを導入して給与計算システムと連動 複合機のスキャン機能を活用して紙文書のペーパーレス化も進めている
複合機のスキャン機能を活用してペーパーレス化に取り組んでいる
レガンは、2019年からICカードで出勤時間と退勤時間を記録する勤怠管理システムを導入し、給与計算システムと連動して活用している。以前は紙製のタイムカードで約40人の従業員の出退勤時間を記録していた。月末にタイムカードを回収して手作業で従業員の勤務時間を給与計算システムに入力していたため、手間がかかっていたが、勤怠管理システムを導入したことで、以前は2日から3日かかっていた作業が半日ほどで完了するようになったという。「従業員一人ひとりの勤務日数、残業時間、休暇の取得状況が自動集計され、リアルタイムで確認できるので本当に助かっています。業務の効率化だけでなく属人化も解消できました」と砂川総務課長は話した。文書管理システムと連動した複合機のスキャン機能を活用して紙文書のペーパーレス化も進めている。
ホームページとSNSで情報発信 フクロウをモチーフにしたオリジナルキャラクター「テブクロー」のぬいぐるみも効果的に活用している
従業員が考案したオリジナルキャラクター「テブクロー」のぬいぐるみ
レガンはホームページの運営とともに、SNSを活用した情報発信にも力を入れている。ホームページでは会社情報、ものづくりへのこだわり、オリジナルブランド、採用に関する情報を掲載。SNSでは、会社の取り組みとともに地域の行事や飲食店などの情報を、写真や動画を添えて機動的に発信している。写真や動画には、フクロウをモチーフに従業員が考案したオリジナルキャラクター、「テブクロー」のぬいぐるみを登場させている。フォロワーに親しみを持ってもらう上で大きな効果を発揮しているという。
時代の変化に対応するためDXに従業員全員の意識と関心を向けていく
レガンのオフィス
レガンは今後、文書作成、データ分析、顧客対応などの業務をより一層効率化するために、業務内容に合わせてカスタマイズした企業向け生成AIの導入も検討したいという。素材を熱溶着するシームレス(無縫製)加工など、手袋を製造するための新しい技術の情報収集と研究にも力を入れていく。
「DXは、製造面でのコストと時間の圧倒的な短縮につながる大きなポテンシャルを持っています。DXに従業員全員の意識と関心を向けていくことは非常に重要と考えています。アンテナを張り巡らせて技術の進化にしっかり対応していきたい」と砂川社長は意欲的に語った。時代の変化に対応してスポーツ用手袋のOEMで事業を拡大し、先を見据えてオリジナルブランドの強化にも力を入れているレガン。デジタル技術を活用することで世界中の人々の手元をこれからも支え続ける。
レガンの本社の外観
企業概要
会社名
株式会社レガン
本社
香川県木田郡三木町大字上高岡356番地1
電話
087-898-1211
設立
1965年1月(創業1962年)
従業員数
40人
事業内容
野球手袋、ゴルフ手袋、アウトドア手袋のOEM、オリジナルブランドの手袋の企画・製造
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