精密部品加工が強み 社内セキュリティを強化し、SNSや地元学生へものづくりの魅力を伝える 佐々木鉄工所(香川県)
2025年12月17日 06:00
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四国の玄関口に位置し、造船、化学、機械設備の企業が集積する香川県有数の工業エリアとして知られる坂出市。そこに、精密部品加工に強みを持つ少数精鋭の金属加工会社がある。デジタル技術を活用した情報発信や業務改革に力を入れている、創業60年の有限会社佐々木鉄工所だ。2024年11月に40代前半で就任した3代目社長の舵取りの下、先を見据えて、新規事業の開拓や次世代のものづくり人材の育成に取り組んでいる。(TOP写真:精密小型部品の製造に強みを持つ佐々木鉄工所の生産現場)
多種多様な工作機械をそろえ、金型製作から切削、焼入、研磨、ワイヤーカットまで一貫対応可能な高精度の金属加工技術を備える
多種多様な工作機械や工作機器をそろえる佐々木鉄工所の工場
坂出市内に立地する佐々木鉄工所の2階建ての本社兼工場内には、マシニングセンタ、NC旋盤、多品種小ロットの生産に適した汎用フライス盤、ワイヤーカット放電加工機、半自動溶接機、TIG溶接機、全自動鋸盤といった二十数台の工作機械や機器が整然と並ぶ。
佐々木鉄工所は、1962年に初代代表取締役の佐々木清氏が創業。1973年に有限会社に移行し、法人化した。地域を代表する水処理設備メーカーや産業機械メーカーを主な取引先に、産業機械を構成する精密小型部品を製造している。多品種小ロットの生産に対応し、切削、焼入、研磨、ワイヤーカットまで一貫対応可能な高精度の金属加工技術を備える。その他には金型の修理、製作も手掛けている。
佐々木鉄工所が導入しているマシニングセンタ
佐々木鉄工所が導入しているCNC/普通旋盤
佐々木鉄工所が手掛けた金属加工品のサンプル
2代目社長の長男が坂出市へのUターンを決意 後継者の見通しが立ったことで設備投資に積極的に取り組めるようになった
地域経済の低迷や人手不足に加え、低コストで生産する海外企業との激しい競争を強いられる日本のものづくり中小企業が生き残っていくのは簡単ではない。佐々木鉄工所も2012年頃は長期的な事業継続の見通しを立てにくい状況に陥り、当時2代目の代表取締役を務めていた佐々木清隆氏(現取締役会長)は、自らの代での廃業を検討していたという。
状況が好転する契機になったのが、当時、故郷を離れて広島県内の自動車部品メーカーに勤めていた長男の徹也氏が、佐々木鉄工所への入社を決断したことだった。「坂出市に戻ることを決断してくれて本当にうれしかった。後継者の見通しが立ったことで、設備投資にも積極的に取り組めるようになりました」と佐々木会長は振り返る。徹也氏は約10年間、専務取締役として会社のマネジメントと現場での製造業務に携わり、2024年11月、事業承継に最適なタイミングとされる40代前半で3代目の代表取締役に就任した。
祖父、父が心血を注いで蓄積してきた技術を次の世代に伝えていきたい
佐々木鉄工所の佐々木徹也代表取締役
佐々木徹也社長は、物心ついた時から父親が経営する町工場を通じて、金属加工の現場を身近に感じながら育った。一旦は地元を離れて会社員としてものづくりに携わることを選んだが、祖父と父が心血を注いで蓄積してきた技術を、次の世代に伝えていきたいとの思いが強くなっていったという。「人々の日常生活を支える機械を構成する大事な部品を製造する仕事に、誇りを持って取り組んでいます。生まれ育った坂出市の活性化にも、しっかり貢献していきたい」と佐々木社長。従来からの取引先を大切にしながら、新規顧客の開拓にも力を入れていきたいと考えている。
新規事業の一環として、金型の修理請負を2018年からスタート 最先端の工作機械と昔からの手作業を組み合わせた独自の加工技術を磨き続ける
佐々木鉄工所は、新規事業の一環として、これまでに蓄積してきた金属加工技術を生かした金型の修理請負を、2018年から始めている。図面がなく、手が付けられないほどの損壊状態からの修理を依頼されることも多く、見事に再生する実績を積み重ねることで、事業の新しい柱として育ちつつある。自社の工作機械を使うだけでなく、精密測定、非破壊検査、金属加工の多種多様な設備をそろえた、高松市内の香川県産業技術センターを活用することで、より高レベルな修理を実現している。「佐々木鉄工所だからこそ任せることができるとお客様に評価していただけるよう、常に技術の研鑽(けんさん)に取り組んでいます。最先端の工作機械と、昔からの手作業を組み合わせた独自の加工技術を、これからも会社の強みにしていきたい」と佐々木社長は話した。現在、3Dプリンターにも関心を持っているという。
SNSを活用して機動的に情報発信 2営業日に1回のペースで投稿し、ものづくりの魅力を動画や画像で伝えている
佐々木鉄工所はSNSで積極的な情報発信を行っている
佐々木社長は、会社概要や設備内容などを掲載したホームページに加え、2022年9月からSNSを活用した情報発信に力を入れている。「動画や写真を中心としたコンテンツを手軽に投稿できるのが、SNSの大きな利点です。ホームページと比べて時間をかけずに機動的に情報を発信できるので非常に重宝しています」と佐々木社長。ハッシュタグと呼ばれるキーワードを付けることで、投稿内容に関心を持つ人々に効果的に情報を届けている。
SNSへの投稿は、佐々木社長と30代から40代の4人の従業員がローテーションで担当。動画や画像に文章を添えて2営業日に1回のペースで投稿している。情報発信の内容は、マシニングセンタ、NC旋盤、汎用フライス盤、ワイヤーカット放電加工機などの工作機械を使って、真鍮(しんちゅう)、チタン、アルミ、ステンレス、砲金(ほうきん)といった様々な金属材料を加工する現場の作業風景が中心。ものづくりの現場だけでなく、坂出市内で開催されたイベントや、加入している香川県中小企業家同友会での活動内容を投稿することもある。これまで蓄積した約660件の投稿からは、佐々木鉄工所が金属加工への強いこだわりと思いを持ち、工夫しながら日々の仕事に取り組む姿勢が伝わってくる。
「高頻度での情報発信を続けることで、以前はつながりがなかった企業からアプローチを受けたり、会社の技術力を広く知ってもらえるなど、徐々に効果が表れています。多くの人に見てもらうことを意識し、わかりやすい文章を考えることで、自らの仕事の内容を再確認することにもつながっています。多くの人に、ものづくり業界への関心を持ってもらえるよう、これからもSNSを活用した情報発信に力を入れていきたい」と佐々木社長は話した。
OCR(光学文字認識)機能を備えた文書管理システムを導入 連動した複合機のスキャン機能を使って紙文書のデジタル化に取り組む
佐々木鉄工所は、複合機のスキャン機能を活用して紙文書のデジタル化に取り組んでいる
情報発信以外でもデジタル技術を活用している。2023年8月にOCR(光学文字認識)機能を備えた文書管理システムを導入した。システムは複合機のスキャン機能と連動しており、複合機を使って紙文書を電子化することができる。以前は、図面や見積書、請求書などの決算関係書類は紙ベースで保存していたが、文書管理システムの導入を機に、ペーパーレス化を進めている。電子化した文書や図面は、クラウドストレージとUSBメモリに保存している。
電子証憑保存サービスを使って法令対応の負荷を軽減 サイバー攻撃からのセキュリティ強化にも取り組む
電子証憑保存サービスを活用する様子
2025年1月には、電子取引要件とスキャナー保存要件を満たしながら、紙と電子による様々な証憑をクラウドストレージにまとめて一元管理できる保存サービスの活用を開始した。このサービスを活用することで、改正電子帳簿保存法に準拠した保存が可能となり、法令対応にかかる負荷が大幅に軽減されたという。
2025年6月には、コンピューターウイルス対策やファイアウォール、IPS(不正侵入防御システム)、IDS(不正侵入検知システム)といった多様な防御機能を備えたUTM(統合脅威管理)機器の導入と、24時間365日の保守がセットになったセキュリティサービスの活用を開始した。以前は、セキュリティソフトを個々のパソコンにインストールすることで対策を講じていたが、サプライチェーンを構成する中小企業を狙ったサイバー攻撃が増加傾向にあることを受け、防御体制を強化した。「業務のデジタル化と、電子化した文書のやり取りは今後、確実に増えるため、セキュリティにも十分に気を配っていきたい」と佐々木社長は真剣な表情で話した。
地域とのつながりを大事に高校のインターンシップや中学校の社会見学を受け入れている
佐々木鉄工所のオフィス
佐々木鉄工所は、地域とのつながりを大事にしている。坂出市の特産品である、塩にちなんで、毎年5月ごろに開催されている「さかいで塩まつり」「丸亀お城まつり」の企業ブースに出展し、イベントのにぎわいづくりに一役買っている。2024年からは、次世代の人材育成を視野に、地元の高校のインターンシップや中学校の社会見学を受け入れている。「地域経済を支える人材を育てるには、長期にわたる地域全体での取り組みが必要です。ものづくりの楽しさを多くの子どもたちに知ってもらえるよう、様々な企画を考えていきたい」と佐々木社長は話す。今後は、行政や地元の経済団体とも連携し、小学校を対象にした見学会の開催にも力を入れていきたいという。
守るべき技術は守り、変えていかなければならない技術は変えていきながら、信頼してもらえる金属部品をこれからも提供し続ける
佐々木鉄工所の本社兼工場の外観
佐々木社長は、大規模な工作機械とデジタル機器の展示会に自ら足を運び、新技術の情報収集に積極的に取り組んでいる。工作機械やデジタル機器を活用して業務の効率化を図ることで生まれた時間を、独自技術の研鑽に使っていきたいという。「時代の流れとともに、ものづくりも変化していきます。守るべき技術は守り、変えていかなければならない技術は変えていきながら、信頼してもらえる金属部品をこれからも提供していきたい」と佐々木社長は抱負を述べた。日本の産業を支える一つひとつの金属部品の加工を通じて、佐々木鉄工所は、ものづくりの魅力をこれからも社会に発信していく。
企業概要
会社名
有限会社佐々木鉄工所
本社
香川県坂出市川津町3345-2
電話
0877-46-4487
設立
1977年12月(創業1962年)
従業員数
4人
事業内容
一般産業機械の精密部品加工、各種専用機の精密部品加工及び組立、金型再研磨・修理
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