LPガス専業から地域の「住宅サポートNo.1企業」へ、クラウド業務システムとホームページ作成ソフト活用で快進撃 カナメ(群馬県)
2026年01月13日 06:00
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都市ガスとの競合やオール電化などでLPガス需要の縮小傾向が続く中、創業60年を迎えた株式会社カナメは、LPガス事業から派生した新規事業を積極的に展開。リフォームや機器販売、不動産などの成長で売上増を実現。少数精鋭で好調な業績を下支えしているのが、ICTの効果を最大限に引き出す工夫だ。集客力を高めるホームページ作成や、業務に合わせて柔軟に情報管理ができる営業支援システムの活用が同社の武器になっている。(先代が残した言葉「豊かな暮らしは青い炎から」に「より豊かな暮らしのために」を加えた企業理念のボードの横に立つ矢端要一社長)
1965年にLPガス販売事業を開始 LPガスの地方普及とともに顧客増で成長 都市ガスやオール電化との競合激化し水道事業に参入
LPガスは災害時に強いエネルギーとして知られるが、市場は厳しさが増している(写真は耐用年数が切れたLPガスタンク)
カナメは、矢端要一代表取締役の父、要氏が1965年に創業した、カナメ液化瓦斯が母体だ。ガス会社に勤めていた要氏が独立して、当初は個人事業で前橋市を中心に家庭向けLPガスを販売していた。
1950年代半ばから家庭向け供給が本格化したLPガスは急激に需要を伸ばし、1960年代には需給がひっ迫するほど成長した。大手石油会社などが輸入を始め、LPガスは地方都市にも急速に普及しつつある時期で、カナメ液化瓦斯も順調に顧客を増やした。
LPガスの新規需要開拓は新築住宅の需要に連動する。新築住宅には水道工事が必ず必要になる。そこで同社は水道工事の専門技術者を雇って、本格的な水道工事事業に参入。水道管敷設とともにガス管敷設の情報をいち早く得て、LPガスの売上増に結び付けてきた。
しかし、LPガスより割安な都市ガスとの競合、オール電化マンションの増加などで、LPガス市場の競争は激化。経済産業省などが都市ガスに比べて災害時に強いLPガスのメリットを強調しても、LPガス市場の成長は次第に鈍化しつつあった。
1993年に株式会社化 2010年に2代目社長に就任後、リーマンショック後の景気低迷でLPガスの市況も悪化し業績も下降線たどる
給湯器の設置作業 キッチン、お風呂、洗面所など、現代の生活にお湯はかかせない
カナメ液化瓦斯は、有限会社カナメプロパンガスを経て1993年に現在の、株式会社カナメに組織を変更。「会社を継ぐつもりはなく、別の仕事に就いていた」と話す矢端社長は、1997年にカナメに入社し、営業部門で顧客のLPガス関連機器のメンテナンスに奔走しながら現場で仕事を覚えた。ただ、家庭用LPガス需要は2006年の約797万トン(日本LPガス協会調べ)をピークに下降線をたどり、事業環境は厳しさを増した。要氏からバトンタッチを要請されても「一度は断った」が、2010年には「来期からお前だから」と言われていきなり2代目社長に就任した。
リーマンショック後の景気低迷でLPガス輸入量が減少し、仕入値が高騰。さらに大手事業者の地方進出も加速して、業績が悪化しつつある時期に経営を引き継ぐことになって、「これは大変なことになった」というのが本音だった。「新規顧客の伸びが止まって、工務店経由の機器販売の仕事も激減した」(矢端社長)。オール電化住宅が増えた上に都市ガスの供給網も拡大して、地場の中小LPガス事業者は統廃合が続き、事業者数も減少した。このままでは業績も落ち込む一方だった。
リフォーム事業に本格参入 伊勢崎市で新規顧客開拓し順調に成長し隣町に2店目開設 新規事業の伸長見込み売上10億円目指す
リフォーム店:リフォーム専門店は本社のある前橋市でなく、あえて伊勢崎市に開設して新規顧客開拓にこだわった
「LPガスだけでは事業継続は難しくなる」と考えた矢端社長は、ガスの契約や機器設置の際に、依頼があれば請け負っていた給湯器やトイレまわりなどの小規模リフォーム施工を、本格的に事業化することにした。LPガスの顧客に限定せず新規顧客開拓を目指して、2020年に本社のある前橋市ではなく、伊勢崎市にリフォーム専用店舗「カナメリフォーム伊勢崎店」を開設した。
新規事業だけに、新聞の折り込みチラシやWeb広告で積極的に販促活動を展開したところ、月に20件以上の問い合わせが舞い込んだ。高額な請求をされるなど、信用できないリフォーム業者に不安を抱いていた住民もいて「困ったときに頼れる店ができた」と喜ばれた。自前の施工職人を抱えていることも強みになった。
「ガスの顧客に頼らず、新たな顧客開拓に注力したのが奏功して、一気に売上が伸びた」と話すように、リフォーム事業は順調に軌道に乗り、2022年には隣町の玉村町に2店目をオープンし、3店舗目も検討しているという。
2025年6月期の売上高8億円強のうち、LPガス販売以外は3億5000万円で、1億5000万円のリフォーム事業が牽引(けんいん)した。2024年秋には、LPガス販売の川上にあたる住宅を扱う不動産事業にも進出し、前橋市に店舗を構えた。「ガス以外の事業の伸長で2026年6月期は10億円を目指す」(矢端社長)と新規事業の拡大に意欲を示す。
東日本大震災で経営データの重要性を痛感 販売・財務管理システムをクラウド環境に転換 100%自動検針化でゴールド保安認定事業者に。2024年にはクラウド型営業支援システムも導入
業務システムのクラウド化を推進し2024年にはクラウド型営業支援システムを導入した
需要の微減傾向が続くとはいえ、主力事業のLPガス事業では、10年以上前から業務システムのクラウド化を推進してきた。きっかけは、2011年の東日本大震災後の仮設住宅建設の際、現地のLPガス販売店の要請に応じてガス設備工事の応援に駆け付けた時だった。「販売データを失ってしまい、売上が回収できなかった事業者をみて、データ保管の重要性を痛感した」(矢端社長)からだ。LPガス事業の顧客管理システムで、検針の数字から販売管理、請求書発行に加えて、定期的な点検調査に関わる業務までクラウド化し、2022年には財務会計システムもクラウド化して、システムはほぼクラウド環境に移行した。
LPガス事業でも業務効率化を推進。先代が早くから一部で導入していたテレメータリング(通信回線を利用した自動検針システム)を、2020年には導入率100%に拡大。経済産業省の認定液化石油ガス販売事業者制度に基づいて、群馬県内の「ゴールド保安認定事業者(第一号)」の9事業者の1社に選定された。
2024年にはクラウド型営業支援システムを導入した。顧客情報を軸に、営業報告や商談状況、スケジュール管理、問い合わせ管理など多様な営業関連情報を一元管理し、必要に応じて活用できるのが特徴。カナメでは、少数精鋭で複数の現場を柔軟にこなすために欠かせないツールとして機能しているという。
ただ、課題もないわけではない。「工事の予定を入力する際に、余裕を見て時間を確保するため、丸1日時間を押さえてしまうなど、スケジュールを変更しにくいケースも散見していた」(矢端社長)と笑う。現在は書き込み方など工夫するなど改善を進めているようだ。
リフォーム店開設を機にホームページ作成システムを徹底活用し、集客に成果 スタッフが自分で画像や文章を作成して積極更新
カナメのホームページ 店舗のスタッフが自分で手軽にホームページを更新できる
2015年にはホームページ作成システムを導入し、当初は「会社案内を作る要領で普通にホームページを作っていた」だけだった。しかし、リフォーム事業の店舗開設のタイミングで本格的に活用を開始。「集客するために本腰を入れて人目につくように、しっかり作り込んだ」。伊勢崎市と玉村町の地元リフォーム事業者としての検索ヒット数は1、2番をキープしているという。
矢端社長は「最近は高齢者もチラシを見てからホームページで詳しく確かめるようで、そこで必要な情報を出さなければ来店してもらえない」とデジタル情報の重要さを強く認識している。ホームページ作成システムの最大の特徴は、各種ツールを使って自分たちで内容を更新しやすいことだ。
「ホームページ作成の勉強をしなくても思ったように作れるし、検索に引っかかりやすいワードも工夫できるし、とにかく使いやすい。今は店舗のスタッフが画像を貼ったり文章を作成して更新している」。今後も、生成AI機能を活用した電話応対も検討するなど、ICT活用による業務の効率化と競争力強化に貪欲に取り組む方針だ。
ガス屋ではなく「ガスもやっています」 LPガスよりコスト安のエコキュートも販売し目指すのは「住宅サポートNo.1企業」
LPガスだけにこだわらず果敢に新規事業に進出し「住宅サポートNo.1企業」を目指す(カナメ本社)
「ガスの仕事で育ったからこだわりはある」と話す矢端社長だが、今は「ガス屋ではない」と公言する。顧客からの問い合わせや要望は「給湯器が壊れた」など住居の困りごと全般なので、「ガス屋ではなく『ガスもやっています』」というのが近年のカナメの経営スタンスだ。
LPガス事業者でありながら、割安な夜間電力を使ってお湯を沸かすエコキュート(家庭用ヒートポンプ給湯機)を販売しているのも、ガス給湯器よりランニングコストを抑えたい顧客の要望に応じるためだ。
いまだに売上の6割がLPガス販売であり、屋台骨に変わりはないが、矢端社長が就任してから15年間で「LPガス販売の契約数は25%以上減っているし、これからも傾向は変わらない」とみている。
LPガスだけでは将来性がないと踏んだ矢端社長が掲げる経営ビジョンは、群馬県中心部の前橋市、伊勢崎市、玉村町を結ぶ三角地域で「住宅サポートNo.1企業になる」と、明確だ。
企業概要
会社名
株式会社カナメ
本社
群馬県前橋市広瀬町1丁目6-22
電話
027-261-1520
創業
1965年12月
従業員数
33人(2025年6月末)
事業内容
LPガス販売、ガス器具販売及び工事、水道設備工事、電気設備工事、リフォーム全般、ウォーターサーバー販売
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