予防医療と先制医療に注力する動物病院 ICT活用の診断説明で高評価、AIで高確度病気予測へ DAILすぎもと動物病院(三重県)
2026年01月23日 06:00
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三重県津市で株式会社DAILが運営する動物病院、すぎもと動物病院は、病気を未然に防ぐ「予防医療」と、病気を予測して早期に治療介入する「先制医療」に注力している。同院は犬と猫専門の動物病院として、地域のペット愛好家から高い信頼を獲得してきた。その予防・先制医療のベースとなる定期的な健康診断を行うために、検査機器や診断装置を充実させ、動物病院としては最高レベルといえる設備を整えている。これらの検査・診断機器を、パソコンに接続、複数のディスプレーで結果を表示し、飼い主への検査・診断説明に活用している。「実際に画像を確認しての説明は非常にわかりやすい」との評価を得ており、今後はAIを活用して飼い主への検査・診断の説明対応や、病気を予測する先制医療を進化させていくことを検討している。(TOP写真:画像データを使って飼い主に病状を説明するすぎもと動物病院の杉本貫院長)
病気になる前から備える先進的治療方針で飼い主の支持を得る
先制医療の概念図
「医療の基礎は予防医療です。これは病気にならないための医療のことで、具体的にはワクチン接種、フィラリア予防、良質な食事や生活環境などが挙げられます。しかし、病気の予防をしていても、様々な要因で病気にかかることはあります。元気に動き回る動物たちも、症状はなくても病気の要因を抱えた、東洋医学でいう『未病』と呼ばれる状態にあることも少なくありません。この未病になる前から動物の健康状態を把握するために、定期的な健康診断でデータを取って病気の予測をし、治療的な介入を行うのが先制医療です。当院では、『未病』を予防・管理する予防医療と先制医療によって動物たちの毎日の健康をアシストしています」。DAILの社長でもある杉本貫(とおる)院長はこう話し、すぎもと動物病院の診療方針を説明する。
予防医療、先制医療というのは近年、人間の医療分野でもよく聞かれる言葉だ。人間以上に自分の状態を伝えるすべを持たない動物たちには、未然に健康状態を把握することが大事であり、特に予防医療は、飼い主なら誰でも受けさせることができるというのが、杉本院長の動物医療に対する基本的な考え方だ。
杉本院長は研究者目指し、米メイヨークリニック留学の経歴を持つ獣医師
「学生時代は研究者を目指していた」と語る杉本貫院長
こうした先進的な診療方針は、研究者を目指していた杉本院長の経歴が強く影響している。杉本院長は、三重県で複数のペットショップを経営する家に生まれ、獣医学の道に進むのが「必然だった」と振り返る。ただ、大学の獣医学科入学後は研究者への思いが強まり、大学院修士課程から博士課程在学中の1990年から約3年間、米国で最も優れた病院の一つに数えられているミネソタ州のメイヨークリニックに留学。1992年に大学院博士課程を修了した。
帰国後は製薬会社に入社し、研究職に就いた。その後、研究者への道をあきらめ、製薬会社を退社し、大阪府下の動物病院に研修医として勤務。獣医師の道を歩み始めた。2005年から現在のすぎもと動物病院近くにあったアニマルクリニックで院長を務めた後、2019年にDAILを設立し、すぎもと動物病院を開業した。
開業時から健康診断に使う血液検査設備を充実させ、健診当日に結果を出すようにした
開業時からそろえている血液検査装置類
開業にあたっては、予防医療、先制医療という先進的な診療方針を実践するため、「(検査・治療機器は)動物病院の開業医としては、現時点ではこれ以上ないといえる設備を入れました」と、杉本院長は話す。
まず甲状腺ホルモンやインスリン量の確認、腎臓から漏れ出すタンパク量の測定、炎症反応などの幅広い項目を詳細に検査できる血液生化学検査機、血液中の成分を計測する血球検査機、甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンの値を測定するホルモン検査機、血液の凝固異常を調べる血液凝固検査機という、動物の健康診断に使う各種血液検査設備を充実させた。検査当日に素早く結果を出せるようにするためだ。
内視鏡や遺伝子検査機器、超音波診断装置も。動物病院の開業医では最高水準の検査・診断機器をそろえている
診療室にある超音波診断装置
さらに、寄生虫や細菌、皮膚カビなどを観察して診断に役立てたり、腫瘍組織検査に使う医療用顕微鏡、先進獣医治療である遺伝子検査を行う遺伝子検査機器や内視鏡に加えて、心臓の動きや内蔵の様子をリアルタイムで確認できる超音波診断装置もある。手術中や緊急時に装着して心電図や血圧、呼吸状態を確認できる心電図、ICU(集中治療)ケージも備えている。
いずれも、すぎもと動物病院が提供する予防医療と先制医療には欠かせないものだ。それらの多くは、院内ネットワークに連携して運用してきた。
2025年に院内ネットワークを見直し、インシデント対応サービスでセキュリティ対策を強化した
顕微鏡のデータ画像
「院内ネットワーク、セキュリティ対策などのICTシステムは従来、外部の事業者に任せてきましたが、トラブル対応が悪く、不満を抱えていました。2024年末の複合機の更新を機に新しいシステム会社とのお付き合いが始まり、2025年に入ってから院内ICTシステムの見直しを進めました」。予防・先制医療を重視する杉本院長にとって、健康診断の検査データや病状を早く画像で可視化し、飼い主にわかりやすく説明して治療方針の決定をサポートするシステムを、トラブルなく運用できることが重要だった。
院内ICTシステムの見直しでは、ネットワークに連携されている複数のデバイスでデータを共有できるNASを導入。ネットワークの専任管理者がいなくても運用できるインシデント対応サービスの監視・初動対応プラン。また、ウィルス対策ソフト、統合脅威管理システムを組み合わせて、セキュリティ対策を強化した。
ディスプレーを増設し、飼い主へ病状や治療方針を説明する際の精度を高めた
増設した画像表示ディスプレー
院内ネットワークにつながるディスプレーは「受診した動物たちの飼い主さんに健診結果や病状、治療方針を説明する際に使う重要なシステムです。症例を表示してお見せし、現在の状態を説明した上で、今後の治療方針などについてのご理解を得ることになります。その点では、従来以上に飼い主さんにわかりやすく、説明しやすいシステムになったと思います」。杉本院長はこう話し、システムの見直しを評価している。
その他のICTシステムの改善として、飼い主と動物たちの安心・安全のため、院内外の監視カメラを高画質化、それを大型ディスプレーに表示し、一度に多視点の監視を可能にした。また、事務の効率化と法対応として、電子帳簿保尊法に対応した証憑電子保存サービスも事務部門に導入した。
メディカルトリミングやペットホテルでも予防医療につながる健康チェックを欠かさない
メディカルトリミングルームでの皮膚のチェック
すぎもと動物病院は、犬や猫の診察、治療以外にもメディカルトリミングも行っている。事前に健康診断をし、全身に異常がないかを確認した上で行うメディカルシャンプー。皮膚のトラブル全般に対応する皮膚のチェック、耳のチェック、歯周病を予防する口内ケアなど、動物病院ならではの安心サービスが用意されている。いずれも予防医療や病気の早期発見につながる施術が特徴だ。
院内にはペットホテルもある。預かるのは同病院で診察を受けたことがあり、予防接種も済ませた犬と猫で、滞在中には、獣医師や獣看護師による健康チェックも行うなど、ここでも予防医療につながるサービスを提供している。
「スタッフ主体の職場」でコミュニケーションを重視した病院運営を行っている
すぎもと動物病院の受付
すぎもと動物病院の運営方針は、「スタッフ主体の職場」だ。トヨタ流の「カイゼン」を掲げ、獣看護師などの女性スタッフが自ら考えて行動することを推奨する。そのため、院内のコミュニケーションを重視している。
元気に動物と接してもらうため、スタッフに1人あたり月6000円の昼食補助を出しているほか、院内ではペットボトルのお茶を無料提供。また、近くのレストランで全員参加の食事会を月1回開いている。2026年1月からは、スタッフのモチベーションを高めてもらうために、獣看護師とトリミングの資格支援制度を設ける予定だ。
国内ペット事情は先細りだが、動物医療でも専門的な高度医療へのニーズ高まる
すぎもと動物病院の診察室
国内のペット数(犬と猫)は、15歳未満の子どもの人数を上回る規模で推移しているが、少子高齢化の影響で減少傾向にあるといわれる。そのような中、今、ペットにかける支出は二極化してきている。今までもペットは飼い主にとって家族であったが、ペットの医療についても人間の家族と同じ水準の対応を求める傾向が強まっており、ペットにかける支出は増えてきている。
こうした傾向を受けて、動物病院でも目や心臓など、人間の病院と同じように診療科目を専門化する病院が増えている。「国内のペット数は先細りですが、当院にも健康診断を求めて来院する飼い主さんが増えています。ペットに多額の支出ができる飼い主さんからは、内視鏡やバイオ細胞を使う高度医療へのニーズが高まってくると思います」と、杉本院長は予想する。
「健診データを点でなく面で見る」。AI解析を活用して先制医療を進化させたい
すぎもと動物病院の全景
今後のICT化では、診療へのAIの活用を検討していく考えを示している。今も症状を説明する際などに、「AI先生に聞いてみましょう」と言ってAIを使っているが、AIを活用すれば、長期間のデータ処理を基にした病気の予測が可能になると見ている。
「単一の健康診断データではなく、例えば2年間のデータをAIで解析すれば、現在の治療法が正しいのかの確認や、将来の病気予測も可能になるのではないかと考えています。先制医療は『転ばぬ先の杖』ということですが、AI解析を活用すれば、もう一歩先に進めることが可能になります」。杉本院長はこう話し、「健診データを点でなく面で見る動物医療への進化」に思いをはせている。
企業概要
会社名
株式会社DAIL すぎもと動物病院
住所
三重県津市久居明神町599-4
電話
059-254-5575
従業員数
6人
事業内容
動物病院の運営、メディカルトリミング、ペットホテルなど
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