製造業(その他)

世界に先駆け自動化ラインで「日本一の電池加工会社」へ 祖業の運送事業と製造事業の一体化に強み LUC(群馬県)

From: 中小企業応援サイト

2026年01月30日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

株式会社LUC(ラック)は群馬県安中市で電池などのバッテリー事業を中核に、運送、海外引越し、飲食の4事業を展開する。バッテリー事業では、アルカリ電池をはじめ、ニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池など多岐にわたる製品を手掛けている。「日本一の電池加工会社になる」という目標にも、あと一歩で届くところまで来ていると自負する。

経営理念に守破離(しゅはり)」を掲げ、「守」=基本を守り、「破」=基本を覚えて技術を身につけ伸ばし、「離」=型から離れ、独自の新しい技術を確立する、この考えがLUCのベースになっている。
結果、取引先の多様な要請に応える機動力に加え、業界ではまれな生産の自動化に挑み、量産化を実現してきた。今後の事業展開では、人の手を介さない自動化をさらに進めていく考えだ。(TOP写真:安中工場のフルオートメーション製造ライン)

電池のシュリンク加工で製造業に進出 山あり谷ありの歴史を乗り越え、新社名と組織変更でバッテリー事業に大きくシフト 現在製造部門が売上の70%を占める

祖業の運送事業部を担う「安中営業所」のトラック

祖業の運送事業部を担う「安中営業所」のトラック

LUCの祖業は運送業だ。1965年に東京都大田区で「内田運輸」を創業し、2025年に60周年を迎えた。当時、東京都品川区にあった東芝電池の電池運搬を担っていた同社は、東芝電池が安中市に碓氷川工場を新設したことを機に、1977年に運送業として安中市へ進出。現在の運送事業部につながる「群馬県松井田営業所」を開設した。

これがこの先、LUCがバッテリー事業に携わるきっかけとなった。東芝電池からマンガン電池とアルカリ電池を、4本や8本の単位でフィルム包装する、シュリンク加工を働きかけられ、1989年に営業所に隣接して松井田工場を設けた。これが電池製造の出発点となった。その後も東芝電池による使い捨てタイプの一次電池の取り扱いを続け、2002年には充電して繰り返し使える二次電池のニッケル水素電池のシュリンク加工を開始した。これは、ニッケル水素電池生産から撤退した東芝電池から生産設備を譲り受けた三洋エナジー(現FDK)との取引で、同社のバッテリー事業が飛躍する足掛かりとなる。

そこで翌2003年、社名を「株式会社LUC」に変更し、新たな組織で事業を展開する。新社名のLUCはLogistic Uchida Companyの略称で、祖業の「内田運輸」への思いを込めた。さらに、この年はバッテリー事業の主力となる「安中工場」を新設する。これを機に、これまでの収縮フィルムで簡易的に梱包するシュリンク加工から、一次・二次電池を加工・組立、さらに、完成品としての電池に仕上げる、電池生産に本格的に乗り出し、バッテリー事業を中核事業に押し上げる大きな転換点となった。

一方、東芝電池は碓氷川工場での電池生産を全面的に海外生産に切り替え、品川区にあった本社も長野県佐久市に移転した。このため、LUCは創業地、大田区にある「東京営業所」で担っていた電池運搬業務をすべて失うことになる。このため、2006年に、日本通運と海外向け引越し請負取引を開始し、運送業としての危機を乗り越えた。これが、現在の海外引越し事業部の礎となった。

さらに、業績を補うため、2008年に、安中市に亜鉛精錬所を構える東邦亜鉛の100%子会社、安中運輸と定期便の取引を開始する。ただ、東邦亜鉛は、2025年3月に安中精錬所の主要生産を停止したため亜鉛の運搬はなくなり、現在は日本通運など、他の取引先との関係性を構築し運送事業を展開している。

3代目で現在の代表取締役社長である内田光則氏は、「当社は何かと山あり谷ありの歴史をたどりながら、さまざまな形で取引先を増やし事業を継続してきました。現在は運送事業と製造業を強化しながら事業を展開しています」と語る。かつて運輸業70%、製造業30%だったLUCの売上高ベースの事業構成は、製造業70%、運輸業30%と逆転している。

業界の常識を破り、世界に先駆け紙パッケージによる自動化装置を開発、量産化を実現 一次リチウム電池製造を目的に新工場を建設 目指すは、人の手を介さない自動化

一次リチウム電池製造を目的に新設した安中第二工場

一次リチウム電池製造を目的に新設した安中第二工場

中核事業となったバッテリー事業にとって、最大の強みは生産の自動化にある。なかでも、専用の紙のみで電池をパッケージングする技術は象徴的で、同社はこの自動化装置をFDKと共同で開発し、2021年から量産を開始した。これは世界に先駆けた新しい技術で、世界最大の家具・雑貨量販店であるI社が全世界で販売する電池を、同社が全量の生産を担っている。

内田社長は自動化について、「電池は小ロットの生産が多く、業界的に自動化に取り組む企業はほとんどありません。それでも当社は世界に先駆けて自動ラインを作り、量産化を実現してきました」と話す。実際、安中工場に加え、一次リチウム電池の製造を目的に、2023年12月に新設した安中第二工場でも、フルオートメーションの製造ラインを導入している。

こうした自動化への取り組みはこれにとどまらない。現在の経営課題を内田社長に問うと、「今まさに取り組んでいる自動化が課題です」と話す。背景には物価上昇や賃上げ要請など外部要因による社会情勢の大きな変化があり、この問題が経営に大きく降りかかっている。内田社長は「こうした環境下で生き残っていくためには、人の手を介さない自動化で事業を展開することが最も重要」と語り、今後も自動化を一層推進していく考えだ。

実際、LUCはバッテリー事業部に製造技術課を新設し、そこにFDKに出向して電子系のプログラム技術を習得してきた社員が復職したことから、「社内で作れるものはすべて自動化しようと、その社員にゼロからの開発に挑戦させている」(内田社長)。

バッテリー事業部は電池以外の製造もスタート。2024年に安中第二工場で、特殊電動工具に内蔵するモーターや、減速機の組み立てを始めた。電池以外の製品としては初めての取引で、2025年には医療機器関連製品も手掛け始めた。それらも含め、内田社長は「同業他社が持っていない自動化の技術を使って、2026年以降はすべてを自動化しようと動いている」と今後の方向性を示す。

倉庫の全面改築に併せ、AI活用の可能性を視野に入れた新たな生産管理システムを構築も

内田光則代表取締役社長は製造部分と運送部分の一体化を完結することで「『最も頼りになる会社』という状況を確立する」と語る

内田光則代表取締役社長は製造部分と運送部分の一体化を完結することで「『最も頼りになる会社』という状況を確立する」と語る

一方、LUCは運送事業部の安中営業所にある倉庫を全面改築する。改築後はバッテリー事業部で製造する部材を収容し、倉庫内でピッキングした部品を運送事業部が配送し、製造部分と運送部分の一体化を目指す。LUCは元々、製造と運送の両部門を抱え、製品の製造から物流・保管・発送までを一貫してできる事業構造が強みだった。

内田社長はこの点を「ほかの会社の『運送だけ、保管だけ、製造だけはできる』という事業形態に対し、当社はそれら全部を1社でこなせます。その結果、お客様から品質も含めて高い評価を頂き、外注先を当社に絞っていただく会社が増えています」と話す。倉庫の全面改築は、この良さを一段と磨き、「取引先の期待に応える体制を確立していきます」と決意を語った。

バッテリー事業部は基本的にOEM(相手先ブランドによる生産)であり、部材は生産する量だけが取引先から入荷されるため、部品在庫は持たない。このため、従来からの電池生産のような、在庫管理を含めた生産管理システムは構築していない。主要な取引先は大企業ばかりで、それぞれ会社ごとに異なる受発注システムになっており、手間と費用をかけ、システムを統合しても「トータルで見るとマイナスになります」(内田社長)。

ただ、倉庫の全面改築により、OEM生産であっても、部品の入庫から組み立て、検査、完成品の出庫まで、ひとつのラインと考えたシステム展開が可能になるのではと考えている。内田社長はこの点、既存のデジタルツールにこだわらず「その仕組みづくりについてはAI(人工知能)を活用して展開しようと思っています」と新たな発想で挑もうとしている。

各事業部門のICT(情報通信技術)の活用については、新設した安中第二工場は、無線ネットワーク環境を整備し、工場のどこでもパソコンやタブレットが使えるようにした。また、VPN(仮想専用線)による拠点間接続を構築し、社内システムへの接続の安全性を図り、セキュリティ対策を強化した。また、運送事業部は車両の走行時間、走行距離、速度などの運行記録にデジタルタコメーターを導入し、商品を確実に届ける高品質な物流の提供につなげている。また、異業種参入となるが、新規事業の飲食事業部として2022年に群馬県高崎市にオープンした、さつま芋菓子専門店「おいもい」では、デジタルサイネージ(電子看板)やスマートレジを導入し、ICTで省人化を図っている。

経営理念「守破離」を従業員が体現する事でつかんだ成果。これから新たな成長戦略へ

安中第二工場のリチウムイオン電池の製造ライン

安中第二工場のリチウムイオン電池の製造ライン

前述したが、LUCは経営理念に武道などで三段階の成長過程を示す概念として知られる「守破離」を掲げ、それに基づく行動指針をまとめている。

これを社内向けに「守」「破」「離」をそれぞれ「感謝」「挑戦」「プライド」と置き換え、「守破離のプロセスの体現により、常に感謝の気持ちを持って挑戦し続け、最終的に社会に貢献するという姿勢で事業運営に当たっています」(内田社長)。

「守破離のプロセスを長期間にわたって地道に継続してきたことで他社に負けない生産体制を構築し、お客様からの短納期要求にも対応できるようになりました。このような取り組みが、結果的に私たちの強みとなっています」

「守破離」によって従業員のモチベーションが上がり、在職率で80%、かつてゼロだった有給休暇取得率が90%台、さらに年2回のボーナス支給を可能にしている。この点を内田社長は「従業員の頑張りがあってこそ実現できた」と「守破離」の経営理念と行動指針が社内全体に浸透してきた成果と受け止めている。

その成果は、バッテリー製造事業で進化を続ける自動化技術、倉庫の全面改築に向けてAI活用の可能性も視野に入れたことにも見て取れる。「日本一の電池加工会社になる」という目標をほぼ手中に収めた中で、内田社長は「経営ビジョンを見直すべきかを考えています」とし、次なる一手にM&A(企業の合併・買収)をも含む成長戦略を描こうとしている。「守破離」の体現に沿ったLUCの挑戦は続く。

企業概要

会社名

株式会社LUC

住所

群馬県安中市松井田町五料118-1

HP

https://u-luc.co.jp/

電話

027-380-2455

設立

1988年

従業員数

95人

事業内容

バッテリー事業、一般貨物事業、海外引越し事業、飲食事業

記事タイトルとURLをコピーしました!

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

中小企業応援サイトに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

中小企業応援サイト

https://www.ricoh.co.jp/magazines/smb/

「中小企業応援サイト」は、全国の経営者の方々に向け、事例やコラムなどのお役立ち情報を発信するメディアサイトです。"

新着情報をお届けします

メールマガジンを登録する

リコージャパン株式会社

東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

お問い合わせ先:中小企業応援サイト 編集部 zjc_smb@jp.ricoh.com