流通業(卸)

伝統を守り続けながらもデジタルで未来を拓く、県産材「とちぎの木」の価値を未来へつなぐ 金平(栃木県)

From: 中小企業応援サイト

2026年02月06日 06:00

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産経ニュース エディトリアルチーム

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株式会社金平は、栃木県宇都宮市に本社を置く住宅建築用木材を扱う卸問屋だ。栃木県は八溝山や高原山といった全国有数の産地に囲まれ、県産材「とちぎの木」で知られる。金平は長年、「地域に根ざした事業展開」と「顧客第一主義」を徹底し、日本の建築文化の土台を支えてきた。日本の家屋の生命線である木材を扱う金平の事業は、単なる流通ではない。木材市場の複雑な商慣習と深く結びつき、極めて価値の高い役割を果たしている。

伝統的な木材業界にもデジタル化の波は避けられない。金平は、歴史ある商習慣の良さを残し、未来へつなぐために変革を決断した。具体的には、木材業界特化の販売管理システムを導入し、アナログな取引を効率化。その一方で、地域や顧客との絆を深める会社独自の祭りを開催するなど、人と人とのつながりを重んじる文化も守り続けている。(TOP写真:とちぎの木をふんだんに使い2025年3月に完成した宇都宮営業所を案内する金平の渡辺崇史代表取締役専務)

木材流通業界特有の商習慣と月3回の締め作業が事務負荷を増大、書類を保存するためにコンテナを購入 効率化は待ったなし

木材流通業界は、伝統的に木材市場での「競り(せり)」によって取引が成立してきた。「競り」や「入札会」などの材木を取引する日を「市日(いちび)」と呼ぶ。市場側が設定したスタート価格に対し、買い手が値段を上げていく。この競りなどに参加できるのは登録業者に限られる。また、一定期間の取引合計金額を確定させる「締め作業」など、業界特有の商習慣が存在する。

金平では、製材所から木材を預かって販売する「委託販売」を行っている。製材所は、丸太の購入資金を早期に得る必要があるため、金平では販売と同時に製材所へ迅速に代金を支払う。月に最大3回の締め日があり、その都度、膨大な事務作業が発生していた。小売店や材木店に対しては請求書を発行し、製材所に対しては売上精算書を発行。こうした書類を作成し、封入、切手貼り、郵送という手間をかけていたため、事務員の業務負荷は非常に大きかった。

さらに、社内で使っていた販売管理システムは30年前に導入されたまま更新されておらず、電子帳簿保存法の改正など、現在のビジネス環境や最新のセキュリティ技術に対応できていなかった。また、社屋の外にあるテント張りの倉庫には、数百個の段ボールに入れた書類が保存され、さらに最近、書類保存用にコンテナを購入した。紙書類の削減は待ったなしだった。

木材業界特化の販売管理システムを導入、非効率な業務を改善へ システムのカスタマイズに全力投球

デジタル化への取り組みや求人活動などについて語る渡辺崇史代表取締役専務

デジタル化への取り組みや求人活動などについて語る渡辺崇史代表取締役専務

こうした非効率な状況を抜本的に打開するため、金平は2024年に最新の住宅資材専用販売管理システムの導入を決めた。新システムは、木材流通業界特有の複雑な業務要件に特化して開発された点が最大の特徴。具体的には、木材の体積を正確に把握する材積計算機能、市場価格の変動に合わせた売上単価の自動算出機能、仕様が異なる規格外商品への柔軟な対応機能などだ。さらに、在庫数と出荷残数をリアルタイムかつ正確に管理できる機能を有しており、迅速な経営判断を可能にする。プロジェクトの指揮は、渡辺崇史代表取締役専務が執った。

しかし、新システムの本格稼働には複数の難題があった。その一つが、取引先の多くが未だに紙媒体での対応を基本とする、根強く残るアナログな商習慣だ。材木店や製材所といった個々の取引先ごとに書類の仕様が異なるため、システムを円滑に運用するためには、個別の取引要件に合わせたカスタマイズが不可避となる。

渡辺専務は、導入の現状について「機器自体は3ヶ月前に搬入されたばかり。現場の事務員がストレスなく使えるよう、現在もシステムエンジニアと密接に連携を取り、細部の意見のすり合わせを精力的に進めている段階です」と話す。この新システムの導入を足がかりとし、数年以内には請求書や清算書などの書類を紙媒体から完全にデジタルデータへと移行させ、業務効率の最大化に貢献することを目指している。

「何でもそろう」品ぞろえが揺るぎない経営基盤を確立 伝統を体現するイベントで木材商いの原点を伝える

金平合同祭で行われる競りには製材所や木材販売店の関係者が一堂に集まる

金平合同祭で行われる競りには製材所や木材販売店の関係者が一堂に集まる

金平は、取引先に「最大限の満足」、そして「製品の品ぞろえ」を経営理念に掲げる。渡辺専務は「全国の木材を取り扱う市場として『ここに来れば、欲しいものは何でもそろう』という評価を確立し、長年にわたり取引先の厚い信頼を得ています」と胸を張る。

金平は年に2回、「市日」での競りなど伝統を体現するイベント「金平合同祭」を開催している。かつて毎月行われていた競りは、木材の需要が減少したこともあって近年では年4回の開催までに減っている。そこで、この祭りでは、単なる即売会ではなく、木材市場に集う多くの関係者を招き、競りを体感してもらう。金子利雄代表取締役会長は「戸建て住宅の工法が変わり、大工の仕事が少なくなった。市日の開催も少なくなったが、伝統を守っていきたい」と話す。

金平合同市は、抽選会を開催して景品を配布するなど、来場いただいたお客様に楽しんでいただく工夫もしながら、にぎわいと活気のあった木材商いの原点を伝える場となっている。

金平合同市のちらしを掲げ、満面の笑みを浮かべる社員。祭りの準備に余念がない

金平合同市のちらしを掲げ、満面の笑みを浮かべる社員。祭りの準備に余念がない

ウッドショックからの回復途上で求人活動に前向き 完全週休2日制を取り入れるなど貴重な高卒人材の獲得に成功

木材業界はいま、2021年春に起きた「ウッドショック」からの回復途上にある。ウッドショックは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的なサプライチェーンの混乱や、米国や中国における住宅需要の急増を背景に顕在化。国内の木材需要の約6割を輸入材に依存していた日本の木材業界と住宅建築業界は、深刻な影響を受けた。輸入材の価格が一時的に2倍以上に跳ね上がり、これに引っ張られて国産材の価格も上昇。国内の林業・木材産業の再構築、特に国産材の利用促進と安定供給体制の強化が、喫緊の課題として認識される転機となった。

このような経営環境の中、金平では人材獲得に向けた採用活動に前向きだ。自社のホームページを最新の内容に刷新したことをきっかけに2023年から高卒人材の採用に力を入れている。渡辺専務は県内の高校を訪れて求人活動をした際、求人ポスターに社屋や職場の写真とともにQRコードも掲示し、自社ホームページへの誘導を図った。ほかにも、隔週土曜日が休日だったものを完全週休2日制に変更したり、職場見学を行ったりしたこともあり、意欲のある高卒人材を2人採用できた。

社会課題の解決につながる場面で、地域の宝物「とちぎの木」の活用を自治体向けに提案したい

「競り」の歴史やとちぎの木の伝統を守る決意を語る金子利雄代表取締役会長

「競り」の歴史やとちぎの木の伝統を守る決意を語る金子利雄代表取締役会長

回復途上にある木材市場。今後について、渡辺専務は「例えば学童保育向けの施設を木造で建設するなど、社会課題の解決につながるような場面での木材の活用を自治体に提案していきたい」と語る。それを「とちぎの木」でできたら、と願っている。

県産材「とちぎの木」の普及に尽力してきた金子会長は「我々は単に木を売っているのではない。この栃木の豊かな森林資源を、次の世代に引き継ぐ責任を負っている。とちぎの木は、日本の家屋に不可欠な強度と美しさを兼ね備えた“地域の宝”なんです」と思いを語る。金子会長は、地域の林業を守り、栃木の木材を未来につなぐことこそが、金平の最大の責務だと考えている。

2025年3月に建て替えたばかりの宇都宮営業所

2025年3月に建て替えたばかりの宇都宮営業所

企業概要

会社名

株式会社金平

住所

栃木県宇都宮市旭2-2-2

HP

http://kanehira-tochigi.jp/

電話

028-688-8101

設立

1966年10月(創業 1966年4月)

従業員数

50人

事業内容

木材市場の経営、木材の販売、建築資材の販売

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