中小企業の経営者から社労士に転身 「顧問先の中長期的な発展」のため、業界に先駆けてICTをフル活用 リンクス社会保険労務士法人(群馬県)
2026年02月16日 06:00
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群馬県前橋市に拠点を構えるリンクス社会保険労務士法人。代表の中野秀人氏は、家業を継ぐ道から一転、一念発起して社会保険労務士資格を取得したキャリアの持ち主。その道は、難関試験の一発合格に始まり、厚生労働省の労働局相談員、さらには上場支援を2社で経験するなど、実務の最前線で磨かれた。中野代表が掲げるのは、単なる手続代行に終わらない「顧問先の中長期的な発展」への貢献。その経営理念を実現するため、業界に先駆けてICT化を推進し、従来の社労士事務所の枠を超えた新しい「人」に寄り添うサポート体制を構築した。(TOP写真:リンクス社労士法人のオフィス。ICTにより事務作業を効率化し、働きがいのある職場を実現している)
合格率6~7%の難関試験に一発合格 家業から上場支援へ、異色のキャリアを礎に顧問先を拡大している
「社会保険労務士の地位向上を図りたい」と語るリンクス社労士法人の中野秀人代表
中野代表のキャリアの出発点は、意外にも家業である建設荷役車両販売・修理会社だった。大学卒業後、家業を継ぐべく大手の同業他社に勤務した後、同社に入社。しかし、親との衝突や、次第に高まっていった数字への関心から、自身の進む道を見つめ直すようになった。将来を見据え、資格を取得し、その専門性を生かした仕事に挑戦したいと考えた中野代表。もともと数字を扱うことが好きで、日々数字と向き合う仕事に携わりたいという思いから、かねてより見聞きしていた税理士という資格に興味を持った。しかし調べてみると、税理士資格はかなりの難関。結婚し、子どももいる中で、合格までに長い時間を要する資格取得は現実的ではないと判断した。その時、偶然目にとまったのが、当時「今後の有望士業」とされていた社会保険労務士だった。
「税理士は科目が多くて時間がかかるとわかったんですが、社労士なら1年で取れるかもしれないと。まさか一発で、8ヶ月ほどで取れるとは思っていませんでした」と中野代表は振り返る。合格率5~8%の難関である社労士資格を見事取得した中野代表は、群馬県内の社労士事務所での勤務、前橋労働基準監督署の相談員を経て、自身のキャリアを大きく飛躍させた。その後、群馬県内にある2社の株式上場支援への参画だった。1社目の会社での上場支援では、総務マネージャーとして労務部門を牽引。「上場という大きな目標に向かって、組織が急成長していくさまを内部で体験できたのは、貴重な経験でした。そこで培った大企業ならではのスピード感と労務体制構築のノウハウが、今の経営に生かされています」。(中野代表)
そのキャリアは、中小企業の経営者が直面する問題から、大企業における複雑な労務戦略まで、幅広くカバーする専門性を提供することを可能にした。2008年個人事業主として「社会保険労務士 中野事務所」を立ち上げ独立。2021年に「リンクス社会保険労務士法人」を設立するに至った。
「酒もゴルフもやらない」一般的な営業手法に頼らない成功哲学。給与明細書の電子化によりビジネスを拡張した
2025年5月に移転した事務所に設置した社名の看板。社会・労働保険の手続業務だけでなく、人事コンサルまで幅広く手掛ける
中野代表は、自らを「酒もゴルフもやらない。営業には向かない」と評している。社労士の仕事は「経営者のブレーンの一人として、背中を押すこと」だと語り、従来の夜の付き合いや接待ゴルフといった一般的な営業手法には頼らない。しかし、開業以来、顧問先は順調に増え続け、現在は従業員9人を擁する県内でも中核となる社労士事務所に成長した。
この成功の裏側には、中野代表の時代を先取りするICT化への取り組みと、フットワークの軽さによって築き上げてきた人脈の活用がある。
「私はテニスやPTAの活動など、仕事とは直接関係のないところでの人とのつながりが多いんです。ありがたいことに、そうしたご縁からビジネスの紹介をいただくことがありました。また、同業の社労士だけでなく、税理士や弁護士の先生方からご紹介をいただくケースも多いですね」。
さらに、顧客の利便性向上のために、ICTの導入をお勧めし、業務の効率化を推進してきたことも、ビジネス拡張の大きな要因となった。中野代表が特に力を入れたのが、紙ではなくWebサイト上で確認できる「給与明細の電子化」だった。多店舗展開している顧客や、毎日出勤しない従業員を多く抱える病院・介護施設などでは、紙の給与明細を一人ひとりに配布する作業はとても非効率である。「そこで、理解を得やすく、導入後の結果にご満足いただける、『給与明細の電子化』を売りにしたことで、ICT化に積極的な顧問先からはもちろん、ICT化に慎重な顧問先からも信頼を得ることができました。その結果としてご紹介をいただくことも増えていきました」。(中野代表)
このように、新しい技術を積極的に活用し、顧客の「働き方」に寄り添ったサービスを提供することで、リンクス社労士法人は確固たる信頼と地位を築き上げてきた。
クラウド早期導入が社労士法人のセキュリティと緊急時対応力を飛躍的に高めた。失敗から学ぶ「とりあえず」姿勢で社労士法人のICT推進を成功に導く
チャットツールのチェックを行う中野秀人代表。ICT化を進めたことで、効率化した仕事ができるようになった
「社労士は個人情報を扱うため、セキュリティが強固でなければなりません。その一助になると考え、2019年頃にクラウドストレージを導入しました」。その後すぐにコロナ禍となり、リンクス社労士法人の緊急時における対応力を飛躍的に高める結果となった。全情報がクラウドに集約され、事務所内はもちろん、テレワーク中や顧問先訪問時でも、安全に情報へアクセス可能となった。また、全従業員にタブレット端末を配布。印刷を極力減らし、ノートパソコンとタブレットの2画面を見ながら作業することで、セキュリティを担保しつも業務効率を上げ、テレワークに対応できる体制を構築した。このほかにも、複数の人が共同で作業するためのアプリケーションやチャットツールなど、多様なクラウドサービスを早期に取り入れ、顧客とのやり取りやチーム間のコミュニケーションの効率化を図っている。
中野代表のICT推進は、成功ばかりではなかった。パソコン上で行われる定型的な事務作業を自動化する「RPA」を導入しようとしたが、約1年で断念。「正直、社労士事務所での仕事では、期待していたほど定型化できる範囲が広くありませんでした。費用をかけシステムを構築しても、個別に対応しなければならない案件が多く、人がひと手間かける必要があるのであれば、今まで通りのほうが費用対効果が高いという結論になり、一部機能を除いて撤退しました」。しかし、「とりあえずやってみる」という柔軟な姿勢こそが、新しい技術が次々と生まれる現代において、中小企業がICT化を成功させるための重要なヒントと言える。そして、その経験が顧問先へのアドバイスにつながる。中野代表はそれを実践し続けてきたのだ。
機密性の高い紙書類管理の課題を複合機のアプリ「私書箱」機能で解決。コスト削減と業務効率化を両立した
複合機に取り込んだアプリケーション「私書箱プリント」の画面。プレビュー、印刷枚数などの確認が容易にできる
事務所のICT化における大きな課題の一つが、機密性の高い紙の書類管理だった。以前は、複合機から印刷された書類を、担当者がすぐに取りに行かず放置されがちだった。そのため、異なる顧客の個人情報が印刷物に混ざっていないか、従業員が目視で確認する手間がかかっていた。中野代表は「印刷物がないと思って再度出力すると、他の人が誤って持っていってしまっていたということで、結果、同じものが二重に出てきてしまう無駄な印刷も頻繁に発生していました」と語る。
社労士事務所として、個人情報の混在だけは絶対に避けなければならない。この悩みを解決したのは、複合機の操作パネル上に表示される、利用者それぞれの「私書箱」だ。印刷指示された文書を利用者自身が確認し出力できるアプリケーションだった。
アプリを導入したのは、事務所を移転したばかりの2025年5月。中野代表はパソコンで「印刷指示をしても、すぐには印刷されません。複合機の前に行き操作パネルで自分の名前と印刷データをタッチして初めて印刷される仕組みになったので、他人の印刷物混在によるミスは解消されました」とメリットを説明する。セキュリティ向上だけでなく、無駄な経費削減にもつながった。「誤ってカラー印刷を設定しても、その場で白黒に設定し直せる。二重に出力されていた無駄も減りました。封筒に入れる前のダブルチェックの負荷も大幅に減り、業務効率が上がりました」。(中野代表)
手続業務から解放され、経営者の「ブレーン」へ。ICT活用で変わる未来の社労士像を後押しする
リンクス社労士法人の経営理念は「顧問先の中長期的な発展に貢献し、事務所全体でサポートすること」。中野代表は、ICTの進展により、社労士の仕事は大きく変わると予測する。「入社・退社などの労働保険・社会保険の手続業務は、マイナンバーの普及や電子申請の進展、そしてICT化により、今後は確実に少なくなるでしょう」。しかし、その一方で、社労士に求められるコンサルティング領域の需要は増していると確信している。中野代表は「今はハラスメントに関する研修のご要望が非常に多いです。パワハラ、セクハラだけでなく、カスタマーハラスメントなど、問題は複雑化しています。また、男性の育児休業など、国の政策が複雑化しすぎていて、専門家のサポートが不可欠な分野も増えています」と分析する。
これからの事務所運営で目指しているのは、事務所全員で顧問先をサポートする体制。「担当者しかその顧問先の情報を知らない、という状況を避けたいんです。クラウド上に安全に保存したデータの情報共有に加え、一つの顧問先に主担当と副担当の体制を敷き、誰が対応しても同じサービスが提供できるように、現在、情報共有の仕組みを強化しています。これは、担当者の入院や休養といった緊急時のカバーはもちろん、より多角的な視点で顧問先をサポートするためにも重要です」。
さらに中野代表は、自身のこれまでの豊富な経験を生かし、業界全体の若手支援にも意欲を見せる。「若い人が活躍できる場を支援していきたい。私の経験が少しでも役に立つなら、遠慮なく伝えていきたい。社労士の仕事は、働く人の幸せと、会社の成長を両輪で支える、非常にやりがいのある仕事ですから」。
ICTを活用し、手続業務から解放された未来の社労士は、より深く「人」と向き合い、経営者の「ブレーン」としてその背中を押す存在となるだろう。リンクス社労士法人の挑戦は、その確かな一歩を示している。
企業概要
会社名
リンクス社会保険労務士法人
本社
群馬県前橋市若宮町2丁目10番13号
HP
http://www.4864nakano.com/
電話
027-219-1390
設立
2021年
従業員数
9人
事業内容
社会保険関係の事務手続代行、人事問題・労務管理の助言や提案、ハラスメント対策など
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