福祉業(介護)

介護ではICT活用に挑戦、困窮者へはICTの仕組みづくりを官民協働で取り組む みどの福祉会(群馬県)

From: 中小企業応援サイト

2026年02月20日 06:00

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

今や暮らしのさまざまな領域に浸透するICT(Information & Communication Technology)。一方で「便利なのはわかっているけれど、使いこなせない」という声が中高年を中心に一定数ある。とりわけ介護福祉現場では、主力となる中高年の介護職員において、デジタルデバイスへのとまどいの声が少なくない。また、介護報酬請求システムは浸透しているものの、ケアマネジャーとの内容照合には、毎月大量のFAXを送受信しているケースが多く、ペーパーレスもなかなか進んでいないのが現状だ。

ICTの活用が進まない理由として事業者から指摘されるのは、導入コストのほか、システムのユーザーインターフェイスや操作性の課題だ。今回の事例、社会福祉法人みどの福祉会では、それらの課題と向き合いながら、SNSを活用して困窮者への支援にも取り組んでいる。(TOP写真:不登校児童や困窮者の居場所として開放している同法人のcafe faden)

保育事業を起点に高齢者福祉事業、学童保育を展開。さらに困窮者への支援事業へと拡大し、群馬県内で知られた存在に

みどの福祉会 新町デイサービスセンター センター長の丸茂ひろみ氏。フードバンクなどを手がける地域貢献事業部の代表も務める

みどの福祉会 新町デイサービスセンター センター長の丸茂ひろみ氏。フードバンクなどを手がける地域貢献事業部の代表も務める

みどの福祉会(群馬県高崎市)は1982年に設立。設立前の事業母体から保育園事業を継承した。2000年には高齢者事業としてデイサービスと居宅介護支援センターを開設し、2015年には保育園を、認定こども園に移行するとともに、地域包括支援センターを受託した。さらに学童保育も2拠点設置しており、子どもから高齢者までを対象とする、幅広い福祉事業を手がけている。

また、注目されるのが、地域貢献事業部として行っている困窮者への支援活動の幅広さだ。貧困家庭への学習支援「みどの学習クラブ」、地域の方を対象にしたこども食堂「まんまる食事会」、不登校児童やその親などを対象とするcafe fadenで行う「まるカフェ」での食事会、家庭訪問型子育て支援「ホームスタート・しんまち」、認知症や地域の方を対象とした「おれんじカフェin faden」、制服バンク、食料支援と食品ロス削減を目的とする「フードバンクM・高崎」、食品ロス削減活動「フードドライブ」、ひとり親限定「まんまるパントリー&ランチ会」、群馬県ふくし総合相談支援事業「なんでも福祉相談」、など、幅広い支援活動を展開しており、高崎市以外の市町村からも支援要請が来るほど、県内では知られた存在となっている。
「やりすぎだとよく言われるんですけれど、次から次へと頼まれるうちに広がっていったのです」と話すのは、新町デイサービスセンターの丸茂ひろみセンター長。地域貢献事業部の代表としても多忙な日々を送っている。

パソコンの操作が苦手な人でも操作が簡単なシステムがあれば使いたい

複雑な介護保険制度に欠かせない請求業務を支援するシステム

複雑な介護保険制度に欠かせない請求業務を支援するシステム

「デジタル機器はいまだに苦手です。そもそも、介護職員や保育士は、デジタル機器に苦手意識の高い人が多いんです」と話す丸茂センター長。2000年に介護保険制度が導入されたことから、複雑な請求業務を行うために、必要に迫られて介護報酬請求システムを導入したという。幸い、このシステムには慣れてきたものの、その他のソリューションの活用については費用対効果を考えると「使いこなせないのでは」との懸念が先立ち、導入に二の足を踏んでしまうそうだ。「少し高価でも、それに見合う便利さがあって、デジタル機器が苦手な人でも操作できるものがあれば導入したいのですが」と話す。

煩雑な記録作業を効率化したい。デイサービス利用者の日報は転記作業で二度手間に。データの連動ができれば転記ミスの恐れがなくなる

左はデイサービス棟。右の建物つむぎハウスには、フードバンクや地域包括支援センター、高齢者リハビリ室、カフェが入っている

左はデイサービス棟。右の建物つむぎハウスには、フードバンクや地域包括支援センター、高齢者リハビリ室、カフェが入っている

現在もっと効率化したいと思っているのが、デイサービスの日報記録だと話す丸茂センター長。食事、入浴、リハビリの有無や利用時間といったサービス提供内容の記録は、利用者一人ひとりで異なり、利用日ごとの状況を記録する必要がある。さらに、その月の途中で介護度が変わると、日割りで算出しなくてはならないという。同法人では、これらのサービス提供内容を、Wordで作った業務日誌に利用者ごとに記録し、さらに介護報酬請求システムに手入力で転記しているという。

「この作業が二度手間になっていますし、転記ミスが生じる可能性もあります。介護請求と直結するので間違えるわけにはいきませんし、記録と請求内容が合わないことが度重なれば、不正請求とみなされて営業停止に追い込まれますから、神経を使う作業です」
また、利用者の体温、血圧、脈拍などは、看護師が手書きで記録をして、個人カルテに転記している。それと同時に、個々の連絡ノートにも記入し、家庭との連絡手段としている状況だという。「介護保険請求に直接かかわりませんが、これも二度手間で時間がかかる作業です。今は14時からの体操が1時間ありますので、その間に転記作業をしている状況です」(丸茂センター長)

これらの課題について、同法人ではタブレット端末の活用が有効と考えている。現在使用している介護報酬請求システムは、タブレット端末で入力する介護記録と介護請求が連動したシステムとなっており、その機能を使えば再入力する必要がなくなり、大幅な効率化が期待できるだろう。

利用実績の照合のためケアマネジャーの所属する事業所へ毎月数十枚のFAXを送信。ペーパーレスが進まないのが悩みの種

ケアマネジャーと利用実績の照合をするため、FAXが使われている

ケアマネジャーと利用実績の照合をするため、FAXが使われている

介護保険制度においては、利用者への日々のサービス提供内容を、毎月ケアマネジャーがサービス利用計画表として作成し、利用実績を事業者と照合したうえで請求業務が行われる。その際、使われているのがFAXであるという。介護保険請求はオンラインにもかかわらず、ケアマネジャーと各事業者とのICT化の足並みがそろわないのが現状のようだ。
「ペーパーレスの時代なのに紙のムダですよね。ヘッドレターもつけるので毎月何十枚もの紙を使わねばなりません」と丸茂センター長は指摘する。

シフト管理は最大の難関。複雑な介護内容に対応できる使いやすいシフト管理ソリューションがあればぜひ使いたい

シフト表づくりにもコミュニケーションはかかせない

シフト表づくりにもコミュニケーションはかかせない

丸茂センター長が最も頭を悩ませている業務は、デイサービスに勤務する職員のシフト管理だという。それは、他の介護事業者にとっても共通の悩みであるという。
「その日ごとに頭数がそろえばいいわけではないんです。経験の浅い新人職員にはベテランの職員をつける必要がありますし、プログラムやその日の利用者数に応じた適切な人員配置にも配慮が必要です。それに、職員の希望する休日も勘案しないといけません。条件があまりにも多く複雑なので、シフトを組む時は誰からも声をかけられない場所にこもって作業しています」

実は、丸茂センター長は以前、シフト管理システムを導入したことがあったというが、使いこなすのは難しいと感じた。「3回分のレクチャーを受けられるチケットをもらったのですが、その回数で理解するのはちょっと難しかったですね」。利用者の年齢や経験にもよるが、使い勝手に難があるのは、使い手目線での操作性、直感的にわかるようになっていない、つまりユーザーインターフェイスに負うところが大きい。そして、その実現を難しくしているのが、シフトの細やかさや複雑さにもあると丸茂センター長は感じている。

「以前、地元の事業者から、利用者への食事提供管理システムを開発したいとのお申し出がありました。ですが、入力する条件があまりに多いので断念した事があります」。現状では高齢者福祉に参入するシステム開発会社が限られるため、ユーザーインターフェイスに優れたシステムの開発はまだ道半ばのようだ。しかし、今後AIによるシフト管理システムの開発が進めば、管理者の負担が飛躍的に改善できるのではないだろうか。現状のブレイクスルーに期待したい。

介護は人と触れ合ってこその仕事。その時間を捻出するためにも事務・管理業務にはICTを大いに活用したい

ICTは苦手といいつつも、膨大な管理業務に日々追われる現場には、ICTの利用が必要と丸茂センター長は感じている。「ヨーロッパでは介護ロボットが多くの現場で利用されています。日本でも最近ではレストランで配膳ロボットが見られますし、お年寄りの話し相手をするロボットも登場しました。しかし、私は、利用者のみなさんとの触れ合いを機械やロボットに頼りすぎることに抵抗があります。人とのふれあいを大切にしたいという思いから、まだ馴染めずにいます。ただ、卓上のロボット人形のような、だれでも興味を持ち、コミュニケーションに役立ちそうなものなら試してみたいとも思っています。介護は人と触れ合ってこその仕事だと思うのです。その時間を作るためにこそ、事務・管理業務にはICTを大いに活用すべきという考えです」

困窮者は情報取得に困難を抱えている。フードバンクなどの管理や支援情報をタイムリーに届けられるマッチングアプリの開発に期待

地域の民間事業者から提供された食料が並ぶ保管庫。肉や米、加工食品まで幅広い品目の寄付が集まる。長期保存ができるよう冷凍冷蔵庫とコメの保冷庫を購入した

地域の民間事業者から提供された食料が並ぶ保管庫。肉や米、加工食品まで幅広い品目の寄付が集まる。長期保存ができるよう冷凍冷蔵庫とコメの保冷庫を購入した

フードバンクなど地域貢献事業に積極的に取り組む丸茂センター長は、ICTは困窮者のセーフティーネットとしても重要だと強調する。
「DVを受けている人やシングルマザーなどは貧困に陥りやすく、今日食べるものがなくて困っている人たちが現実にたくさんいます。彼らは、支援の情報にたどり着くことが難しく、また、たどり着いても、「電話」をかけるのは、心理的にハードルが高いのです。でも、スマートフォンさえあれば、つながることができます」と話す丸茂センター長は、現在、ひとり親家庭40世帯と公式LINEでつながっており、支援情報の発信を行っている。しかし、通常業務もある中、すぐにレスポンスできない歯がゆさを感じている。また、食料を支援してくれる事業者からは、いつロスが出るのかわからないという問題もある。

現在、みどの福祉会は、JAたかさき×フードバンクM・高崎×アプリ開発企業×県と実証実験をはじめた。アプリにより、より早く連絡が取れてスムーズな受け渡しができると期待している。しかし、「支援は食糧支援だけで完結しません。制服バンクや学習支援、居場所カフェなどもやっていますので、当事者が必要な時につながるツールが他にもあれば良いと思います」と丸茂センター長の構想は膨らむ。

誰も取り残さない社会の実現にICTが貢献できるはず。それには福祉事業者・民間事業者・行政との連携が不可欠

2024年に増築されたつむぎハウス

2024年に増築されたつむぎハウス

これほどまでに困窮者への支援に取り組む丸茂センター長を突き動かすものは何か。その歩みはこの地に嫁ぐ以前、神奈川県の児童養護施設や児童相談所に勤務していた頃から始まっていた。校内暴力が吹き荒れた当時、丸茂センター長は荒れた子どもや問題を抱える家庭と日々向き合っていたという。

「みどの福祉会の理事長である夫と結婚してこの地域に移り住み、最初はここの保育園で数年間働きました。その中で、経験上、地域には生活に困っている人がいるはず。そう思って支援活動を始めました」。このcafe fadenは、「0歳から100歳までの居場所」として広く活用していきたいと考えています。若者の問題として話題に上がるヤングケアラー、また、学生たちにとっても、ここが居心地良く過ごせる地域の居場所になればと思っています。通信高校に通う元不登校の学生と、高齢者が一緒に食事する企画を行い好評でした。今後もそのような取り組みを続け、さらに企画を広げていきたいと考えています。

cafe fadenは、支援を必要とするあらゆる世代の人たちがつながる居場所になっている

cafe fadenは、支援を必要とするあらゆる世代の人たちがつながる居場所になっている

デイサービスのセンター長としての業務をこなす一方で、地域貢献事業にも情熱を注ぐ丸茂センター長。行政には困窮している人の声をもっと拾ってほしいと訴える一方で、「ICT事業者にはぜひ困窮者への支援を社会貢献として取り組んでほしい」と願っている。困窮する人たちは表面的には見えにくいが確実に存在する。ICTの技術が助けを必要とする人たちに大いに貢献し、誰も取り残さない社会に資する日を切に願う。

企業概要

法人名

社会福祉法人みどの福祉会

住所

群馬県高崎市新町333番地

HP

https://midono.jp

電話

0274-42-0111

設立

1982年2月

従業員数

90人

事業内容

高齢者事業(通所介護、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター)、保育事業(認定こども園、子育て支援センター)、放課後児童クラブ、地域貢献事業(フードバンク、フードドライブ、制服バンク、こども食堂、無料学習支援、家庭訪問型子育て支援、居場所カフェの運営)

記事タイトルとURLをコピーしました!

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

中小企業応援サイトに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

中小企業応援サイト

https://www.ricoh.co.jp/magazines/smb/

「中小企業応援サイト」は、全国の経営者の方々に向け、事例やコラムなどのお役立ち情報を発信するメディアサイトです。"

新着情報をお届けします

メールマガジンを登録する

リコージャパン株式会社

東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

お問い合わせ先:中小企業応援サイト 編集部 zjc_smb@jp.ricoh.com