自動車部品業界で、高い品質実現のため、人的管理から装置管理を実現 セキュリティ強化で「地域ナンバーワン」へ 梶山鐡工(群馬県)
2026年02月24日 06:00
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有限会社梶山鐡工は群馬県伊勢崎市を本拠として、プレス加工を主体に自動車部品を製造している部品メーカーだ。自動車産業のサプライチェーンの一角を担う部品メーカーの責務として、高い品質保証と最適な生産管理、柔軟な生産体制及び生産性を重視。人手に頼らず、製造装置自体が自動的に品質を管理し、保証する仕組みを、自前で構築し、それを最大の強みとしている。一方、完成車メーカーなど発注元から求められるサイバー・セキュリティ対策の強化にも取り組む。(TOP写真:主力の新田工場に据えられたプレス設備)
プレス加工に溶接加工を付加したことが転機 SUBARUの二次下請けで業績は右肩上がり 太田市に主力となる「新田工場」を新設
新田工場の自動化された溶接加工工程
梶山鐡工は、現在の梶山明久代表取締役の祖父が、1973年に伊勢崎市で自動車小部品のプレス製造を手掛ける「有限会社梶山製作所」を立ち上げたのが原点だ。その後、本社工場を1987年に新設し、プレス加工の後工程である溶接加工を開始し、翌1988年4月に社名を「有限会社梶山鐡工」に変更した。
プレス加工に溶接加工という付加価値を加えたことが、事業面での大きな転機となった。製造する自動車部品の領域も広がり、群馬県太田市がおひざ元のSUBARU(スバル)の二次下請け(Tier2)企業として、SUBARUの生産台数が拡大するにつれて、「当社の業績も右肩上がりで伸び、現在は100%自動車部品を生産している」(梶山氏)。
梶山氏が3代目として就任したのは2010年で、2年後に太田市にプレス工場、その翌年に溶接工場を新設。それらが、現在の主力生産拠点である新田工場となった。事業拡大に伴い、製造装置を増やす必要があったが、本社工場だけでは敷地が手狭となったためだ。
右肩上がりを続けてきた業績も、リーマン・ショックや新型コロナウイルスの影響などにより浮き沈みがあった。ただ、梶山氏は、「毎年のコストダウン要請にも対応し、しっかり利益が出る会社にしようと努めてきた。ここ数年は、自動車メーカーの協力会社で、同業が消えていく中でも、自動車産業のサプライチェーンを、梶山鐡工はしっかり守り抜いていく」と語る。半面、トランプ米大統領による2025年の関税政策に対しては、SUBARUが米国市場を主戦場とするだけに、先行きに対する懸念は消えない。
5ヶ年の経営ビジョンを策定 独自開発の「装置管理」による品質管理・保証を徹底し、不良率は社外流出ゼロ。従業員給与を業界中小企業標準の10%アップと労働時間の短縮、福利厚生の充実
「装置管理」を導入した理由に梶山明久代表取締役は「人の良し悪しで生産性が左右される状況からの脱却」を上げる
梶山鐡工が現在取り組んでいるのは2030年5月をゴールに策定した5ヶ年の経営ビジョンで、「地域ナンバーワンの中小企業になる」を目標に据える。2025年5月まで取り組んできた5ヶ年計画がほぼ目標を達成できたことから、新たな経営ビジョンを策定した。目標については、発注元に対する高い品質保証と最適な生産管理、柔軟な生産体制及び生産性で地域ナンバーワンを目指すほか、売上高、営業利益についても、それぞれ目標を設定した。また、労働分配率50%以下、不良率は社外流出ゼロなどを掲げた。
特に不良率の目標について梶山氏は、「自動車の部品はとにかく品質管理が重要。事業存続にかかわるばかりか、一歩間違えれば人命にかかわる。ここだけはブレずに目指している」と強調する。労働分配率は「とにかく比率を下げて、残った利益は従業員に手厚い報酬を出すことで、モチベーションにつなげている」と話す。実際、従業員に対しては、地域の中小製造業の、平均1割以上高い給料と、短い労働時間、福利厚生と手当の充実を目標に掲げる。
梶山鐡工が、5ヶ年の経営ビジョンを実現するための要に位置付けるのは、プレス加工・溶接加工を担う製造装置そのものが、自動で製造した部品の品質を管理し、保証する「装置管理」の仕組みだ。それを実現するのが、梶山鐡工が独自に設計・開発したPLC(プログラマブルロジックコントローラー)に連動した品質検査装置である。
開発で狙ったのは、「人の良し悪しで検査結果が左右される状況からの脱却」(梶山氏)にあった。かつての品質管理手法は、例えば、1ロット(数百個の部品の単位)から抽出した1個を、人手により検査するロットでの品質管理が主流だった。これに対し、梶山鐡工の手法は、人による品質確認作業を排除すること。製造装置自体が作業の流れの中で、セットされた部品が指定された位置にあるかどうか、また、作業後の製品が公差(こうさ:許容される誤差の範囲)内にあるかどうかを、センサーで全数自動チェックし、品質管理を行うものだ。この仕組みで「人の管理から装置管理への転換」が実現した。
その背景にあったのは中小製造業が抱える顕著な人材確保の困難さにあった。この点を梶山氏は「必要な人員を日本人だけで確保するのは難しく、労働力の確保には、外国人にも頼る事になる。習熟した社員以外もいる中で、仕事を回さざるを得ない。これが今の中小製造業の現実の姿になっている」と憂う。外国人にしても特定技能研修生なら、従事できるのは5年間が限度で、事業を継続していくには外国人労働者を繰り返し確保していくしかない。
自前で設計・開発した「装置管理」は本社工場で完了、新田工場での展開を加速 3拠点のネットワークの構築も急ぎ、発注元への「迅速対応」と「安定供給」に応える
「装置管理」の要となるPLCのコントローラー
そこで梶山鐡工が行き着いたのが、人に頼らない装置管理での作業システムの構築と、全社展開という結論だった。装置管理への移行によって、それまでは各種情報を手書きし、パソコンに入力していた作業は、各製造装置のコントローラーから、生産実績や不具合実績、生産数などの情報をパソコンに直接連動させる仕組みに切り替わり、生産の自動化につながる。この仕組みは2017年頃から本社工場に導入し、ほぼ完了しており、現在は新田工場での展開を加速している。
この仕組みを構成する装置は市販品でなく、梶山鐡工が自社のニーズに合わせた仕様に設計し、開発した自前の装置で、初号の装置は作り上げるのに1年を要した。その後は徐々に設計とソフトウェアの標準化が図られ、装置のコンパクト化も実現。直近の装置のサイズは初期の5分の1、装着もより簡易になった。梶山氏は、「新田工場にある、まだ人が携わっている12基の製造装置のうち、既に4基に導入している。これから数年かけて全面的に導入する計画で、新たな5ヶ年の経営ビジョンに織り込んでいる」と語る。
この先について、梶山鐡工は、本社工場と新田工場、そして製品を集約して出荷する物流施設の3拠点を結ぶネットワークを構築し、各種情報を一括管理する構想を進めている。
金型の設計・製作、そしてプレス加工と溶接加工をメインに、表面処理まで一貫して作業効率を高め、発注元の「迅速対応」と「安定供給」に応える。
自動車業界のガイドラインに沿ってサイバー・セキュリティを強化
完成車メーカーの情報を扱う部品メーカーとしてセキュリティ対策は必須
一方、梶山鐡工は自動車産業のサプライチェーンの一角を担う部品メーカーの責務として、完成車メーカーから求められるサイバー・セキュリティ対策に本腰を入れる。サイバー攻撃が自動車メーカーだけでなく、部品メーカーなどサプライチェーンへも広がっており、サイバー・セキュリティリスクが深刻化している。このため自動車メーカーの業界団体である一般社団法人日本自動車工業会と、自動車部品メーカーの業界団体の一般社団法人日本自動車部品工業会は、共同でセキュリティガイドラインを策定している。
このガイドラインは自動車メーカーだけでなく、サプライチェーン全体を対象としており、企業規模に応じてレベル1(全企業共通)とレベル2(機密情報を取り扱う企業)、レベル3(業界を牽引する立場にある企業)と、3段階の基準を設けている。梶山鐡工としてはレベル2の基準を満たすために、2025年末にシンクライアントシステムを導入し、全てのデータをサーバー内だけでの管理、運用とする。シンクライアントでの作業の可視化、ログ追跡の管理、セキュリティ状況の把握など一括管理が狙いで、既に手を打ってきた社内ネットワークの対策と併せて、サイバー・セキュリティ対策の強化に取り組む。
梶山鐡工が「装置管理」という人に頼らない生産の仕組みに大きくシフトしてきた背景には、外国人労働力に依存せざるを得ない中小製造業が抱える、極めて深刻な実情を色濃く反映している。
「強みの装置管理を軸にICTによる自動化で、製造現場の省人化が実現でき、働き甲斐のある環境に改善できた段階で、再び日本人の採用に、積極的に乗り出す」と語る梶山氏の言葉は、これからの中小製造業にとって大きな励みと挑戦の重さを感じさせる。
企業概要
会社名
有限会社梶山鐡工
住所
群馬県伊勢崎市境下渕名1892-2
電話
0270-76-0509
設立
1986年9月
従業員数
25人
事業内容
各種自動車部品の製造
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