流通業(卸)

デジタル技術が可能にする新しいものづくり 理化学・医療他の専門商社、0→1ビジネスのスマートファクトリーに挑む オリオン(京都府)

From: 中小企業応援サイト

公開日:2026年03月04日

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京都府京都市中京区の行政・経済の中枢エリアに本社を構え、工業、医療、理化学製品の専門商社として、約100年にわたり、地域の産業を支えてきたオリオン株式会社が、デジタル技術を活用した新しいものづくりに力を入れている。本社ビルの玄関口に最新鋭の3Dプリンターや射出成形機を備えた、スマートファクトリー「OLabol(オラボル)」を2024年に開設。「1日で作る、未来のカタチ。」をキャッチフレーズに試作品の設計から完成までの工程を短納期、低コストで完結できる体制を整え、多品種少量生産に適した、デジタル製造のノウハウを蓄積している。主力の商社事業の情報発信、基幹業務、営業でもデジタル技術を積極的に活用し、全社単位でDXを進めている。(TOP写真:3Dプリンターや小型射出成形機を備えたスマートファクトリー「OLabol(オラボル)」)

創業は1928年 戦前、戦後を通じて京都を代表する企業や研究機関との取引を拡大

オリオンの櫻井勲代表取締役会長兼社長

オリオンの櫻井勲代表取締役会長兼社長

オリオンの歴史は1928年、白土伊之助氏が、ゴム製品を取り扱うオリオンゴム商店を創業したことにさかのぼる。工業、医療、理化学製品の専門商社として、戦前・戦後を通じて京都を代表する企業や研究機関との取引を拡大。1981年に株式会社に移行して社名を現在のオリオンに改めた。2002年に大阪市西区に本社を構える産業用部品の専門商社、株式会社旭ケミカルスのグループ企業となり、同年、当時旭ケミカルスの代表取締役を務めていた櫻井勲氏がオリオンの代表取締役社長に就任した。櫻井氏は現在、代表取締役会長兼社長を務める。2001年に環境マネジメントシステムに関する国際規格、ISO14001、2004年には品質マネジメントシステムに関する国際規格、ISO9001の認証を取得している。

「お客様に喜んでいただけるサービスの提供を何よりも優先し、常にスピードアップと質の向上を目指して、全力で取り組んでいます。単に商品をお届けするだけでなく、お客様が何を必要としているかを、精度よくタイムリーに把握することを、何よりも心掛けています」。取材に応じた櫻井会長兼社長はオリオンの事業方針についてこのように話した。京都府内に強固な地盤を持つオリオンがグループに加わったことで、旭ケミカルスにも大きな相乗効果がもたらされたという。

2024年7月、本社ビルの玄関口に「0から1を生み出す」スマートファクトリー「OLabol」を開設

OLabolは、本社ビルの玄関口をリノベーションして開設した

OLabolは、本社ビルの玄関口をリノベーションして開設した

2028年に迎える創業100周年を前にオリオンは、会社の成長につながる新事業の創出に力を入れている。デジタル技術を活用した取り組みの一つが、2024年7月に本社ビルの玄関口をリノベーションして開設した、スマートファクトリー「OLabol(オラボル)」だ。そのコンセプトは「0(ゼロ)から1(イチ)を生み出すラボラトリー」。「0→1」の0と1の間の矢印の部分にラボラトリーを表す「Labo」をあてはめ、0と1をアルファベットのOとLの小文字(l)にみたててOLabol と名付けた。

約30平方メートルの空間に3Dプリンター、アルミ工作機、射出成形機、樹脂加工機を配置して高品質な試作品を低コストかつ迅速に仕上げる体制を構築

OLabolに設置されている3Dプリンターとアルミ工作機

OLabolに設置されている3Dプリンターとアルミ工作機

OLabolには、オリオンのコーポレートカラーのブルーを配色した、約30平方メートルの空間に、最新の3Dプリンター1台、アルミ工作機2台、射出成形機1台、樹脂加工機1台を設置。長野県伊那市の製品設計企業、有限会社スワニーが、デジタル技術を活用して考案した、小規模・省エネ型スマートファクトリーの設計技術、「デザインファクトリー」と、樹脂射出成形の試作技術、「デジタルモールド」を採用することで、高品質な試作品を低コストかつ迅速に仕上げる体制を構築している。「多種多様なゴムや樹脂などの材料を扱ってきた商社としての知識と経験、そして、最新のデジタル技術を組み合わせることで、ものづくりの新しい可能性を切り開いていきたい」と櫻井会長兼社長は意欲を示す。

試作用金型を樹脂で作成 試作品を最短1日で作成可能

射出成形機を使ってすぐに試作品を完成させることができる

射出成形機を使ってすぐに試作品を完成させることができる

OLabolでは、3D-CADで作成したデータを基に3Dプリンターを使って従来の金属製の「金型」の代用品になる「樹脂型」を作成し、射出成形機ですぐに試作品を完成させることができる。型の材質は樹脂よりも耐久性があるアルミにすることも可能だ。
「OLabolを活用することで、アイデアを最速で具現化し、量産を決定するまでの時間を大幅に短縮することができます。金型を作成してから試作品を作る従来の方法では2ヶ月近い時間が必要ですが、OLabolなら量産品と同じ材料や加工方法での試作はもちろん、少量製品の生産も最短1日で行うことが可能です」とOLabolの運営を担当する製造事業室の山本雄大主任は説明した。

オリオンの山本雄大製造事業室主任

オリオンの山本雄大製造事業室主任

依頼主は、OLabolで実際に試作品が出来上がる様子を見ながら様々なアドバイスを受けることができる。「樹脂は金属と比べてコストがかかりません。短時間で修正を繰り返して試作品の精度を高めることができるのもOLabolの大きなストロングポイントです」と山本主任。OLabolを開設して以降、スピードと質を重視する企業の開発部門をはじめ、アイデアをすぐに形にしたいと思っているスタートアップ企業や研究者からの依頼が着実に増加している。2025年2月には樹脂製品試作品の短納期体制を構築したことが高い評価を受け、取引先の株式会社堀場製作所から感謝状を受けた。

OLabolは完全予約制で見学を受け入れている 3ヶ月に1回程度のペースでセミナーも開催 見学者も前年の倍以上と注目を浴び始めている

オリオンの山口将史取締役製造事業室長

オリオンの山口将史取締役製造事業室長

オリオンは完全予約制でOLabolの見学を受け入れている。2024年は22団体が見学に訪れた。2025年は10月までに43団体が見学に訪れている。OLabolを会場に、最新の3Dツールと射出成形技術などをテーマにしたセミナーも3ヶ月に1回程度のペースで開催している。「製造業の現場では、少量多品種、スピード重視の開発体制がこれまで以上に求められるようになっています。スピードと柔軟性に優れたOLabolを活用してもらうことで、製造業の幅広い製品開発をサポートしていきたい」と山口将史取締役製造事業室長は抱負を述べた。

ホームページを活用した情報発信に注力 2025年9月に全面リニューアルして営業活動との連携を強化

2025年9月にリニューアルしたオリオンのホームページ

2025年9月にリニューアルしたオリオンのホームページ

オリオンはホームページを活用した情報発信に力を入れている。その姿勢は20年以上前、国内の中小企業でホームページを開設する動きがまだ活発でなかった頃にドメインを取得したことにも表れている。ドメインの登録は先願主義に基づいているので、全国で『オリオン』を社名に冠した企業に先を越されると「https://www.orion.co.jp」のアドレスが使えなくなってしまうため、先を見据えて手を打ったという。

オリオンの幸山勝寛総務部長

オリオンの幸山勝寛総務部長

オリオンは20年以上にわたってホームページを運営してきた。3年前には機動的に情報発信できるよう、ホームページ運営を外部委託から自社運営に切り替えた。若手従業員のスキルも活用し、SNSを使った情報発信も強化している。2025年9月にはOLabolに関する情報、取り扱っている樹脂やゴムに関する情報、品質への取り組みに関する情報を充実させるため、掲載内容を全面的にリニューアルした。「閲覧者が当社に興味を持ち、さまざまなページを見たいと思うようなしっかりとしたコンテンツを作ることで、ホームページの情報発信力は大幅にアップしました。ホームページと営業活動との連動をこれまで以上に強化していきたい」と幸山勝寛総務部長は話した。

文書管理システムを活用して約1万品目の製品情報を管理 在庫管理はバーコードで行う。在庫情報と保管場所の一元管理により迅速な顧客対応を実現

文書管理システムを活用して製品情報を確認する様子

文書管理システムを活用して製品情報を確認する様子

オリオンが取り扱っている工業、医療、理化学製品は約1万品目を数える。取引に関する情報を保存するとともに社内で共有化するために、15年以上前から文書管理システムを活用している。システムを選定する際は情報共有のしやすさを重視したという。「昔は紙ベースでの保存だったので、必要な資料を探す時は時間と手間がかかって大変でした。文書管理システムを導入してからは検索機能を使えるようになったので、格段に便利になりました」と幸山総務部長は振り返った。2019年からは各品目の在庫管理をバーコードで行っている。各品目とバーコードを紐づけすることで品目の名称、在庫状況、保管場所をわかりやすく一元管理し、仕入れと出荷の関連業務を円滑にして顧客対応スピードを強化している。

2015年以前からリモートアクセス、社内外でも同じ仕事が可能。2018年にはフリーアドレス化。コロナ禍でも迅速な業務進行が可能だった

オリオンは10年以上前から、営業担当者がインターネット回線を通じて社外から本社内のパソコンに接続して仕事ができるように、リモートアクセスシステムを導入。また、2018年からオフィスの座席をフリーアドレスにしている。いつでもどこでも社内と同じように仕事をこなすことができる体制を整えていたので、2020年初頭から広がったコロナ禍でも接触を避けるためのテレワークに迅速に移行できたという。

ハッカーやランサムウェアに備えて複数の防御体制を順次構築

オリオンは情報発信や基幹業務でデジタル技術の活用を進める一方、情報セキュリティも大切にしている。2023年1月には、従来のセキュリティ対策に加え、ハッカー攻撃に伴う外部への危険な通信を遮断して被害の拡散を未然に防ぐ、出口対策用のセキュリティシステムを導入。2024年3月には中小企業をターゲットにしたランサムウェア攻撃への対策として、バックアップデータの保護体制を強化した。「セキュリティ対策は強化するに越したことはありません。サプライチェーンを構成する企業の責任として、情報管理にはこれからも気を配っていきたい」と山口取締役は話した。

新しい取り組みを進めるために本業をしっかりと安定させる RPAやAIの活用に強い関心を示す

オリオンの本社の外観

オリオンの本社の外観

オリオンは今後も更なる業務効率化を図るため、定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIの活用を進めていく方針だ。社内業務に特化して様々な質問に対応できるAIチャットボットの導入も検討している。「新しい取り組みを進めるには、本業をしっかりと安定させていくことが何よりも大事と考えています。付加価値を生み出す取り組みに従業員がより一層集中できる環境を作るために、これからもデジタル技術を積極的に活用していきたい」と櫻井会長兼社長は力強く語った。

基幹業務や情報発信でDXを推進し、OLabolの運営を通じてデジタル技術で高品質な試作品を低コストかつ迅速に仕上げる体制を構築しているオリオン。試作を核に製造業界に新たな息吹を吹き込むこれからの取り組みに期待がかかる。

企業概要

会社名

オリオン株式会社

本社

京都府京都市中京区東洞院二条下る瓦之町374番地

HP

https://www.orion.co.jp

電話

075-222-1930

設立

1981年12月(創業1928年)

従業員数

51人

事業内容

理化学・医療および工業用ゴム・プラスチック製品卸、樹脂、ゴム製品の成形

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