「この人は、どんな生活を送りたいのか」がリハビリの原点 ICTは、利用者支援のための貴重なスタッフツール ゆうあいリハビリライフケア(群馬県)
公開日:2026年03月06日
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高齢化が進む中で、医療やリハビリの役割は、もはや病院の中だけで完結するものではなくなっている。退院後の生活や在宅で過ごす時間、地域との関わり――そうした日常の中でこそ、支援の質が問われる場面が増えている。株式会社ゆうあいリハビリライフケアは、医療やリハビリを取り巻く変化の中で、仕事を通して「何を支えているのか」を問い続けてきた。それは、機能の回復だけを目的とするのではなく、その人がどんな生活を送り、どんな人生を望んでいるのかに向き合うことだった。代表取締役の塩澤仁志さんは、理学療法士としての原点を大切にしながら起業を決断し、人生に向き合う仕事のあり方を積み重ねてきた。(TOP写真:ゆうあいリハビリライフケアがリハビリに取り組む姿勢を表現=ホームページより)
病院でのリハビリの限界を感じ、訪問看護の先駆的存在の会社に転職
利用者に向き合う姿勢を話す山口滉太課長(左)、塩澤仁志社長(中)、和唐千暁課長(右)
塩澤社長が理学療法士を志した原点には、幼少期の体験がある。父親の足の不調を身近で見て育ったことが、体の不自由な人を支える仕事への関心につながった。
福井県の専門学校を卒業後、理学療法士として福井県の病院で勤務する中で、次第にある疑問を抱くようになる。それは、入院中のリハビリによって状態が改善した患者が、退院して在宅に戻ると再び状態を悪化させ、入退院を繰り返すケースが多く見られたからだ。当時は介護保険制度が始まったばかりで、在宅でのリハビリ体制は十分に整っていなかった。もう、「病院の中だけでは、高齢者の生活を支えきれない」という思いが強くなっていった。
このままではいけない。塩澤社長は在宅でのリハビリの必要性を強く意識するようになった。そうした問題意識を抱く中で、地域リハビリを真剣に考え、訪問看護の先駆者的存在である、「ほっとリハビリシステムズ」(福井県)に転職する事に。同社を率いる松井一人社長が大切にしていたのは、「リハビリの目的は、一人ひとりの方がほっと安心して、笑顔で生活を送れること。そして、そのために地域全体で何ができるのかを考えること」だった。その考え方に強く共感したという。
松井社長から受けた影響は大きかった。地域に関わることの意味や、医療やリハビリはどこまで生活に寄り添えるのかといった問いを、日々の現場で、深く考えるようになった。
地元・群馬で起業し、試行錯誤を続けた。活動を続ける事で、「リハビリの目的は、自宅で生き生きとした生活を送ること」と確信
ほっとリハビリシステムズで7年間働いた後、塩澤社長は起業を決意した。父親が企業経営者だったことも影響し、生来の独立心も後押しとなった。地元・群馬で、自分の力を試したいという思いから、起業に踏み切った。
しかし、それは簡単な道ではなかった。訪問看護ステーションを立ち上げるには、まず看護師の採用が必要だ。しかし、病院のような「施設」を持たない組織に就職しようと考える看護師はほとんどいなかった。実際、採用した看護師がすぐに辞めてしまうこともあり、立ち上げ当初は試行錯誤の日々が続いた。
そうした試行錯誤の中でも、塩澤社長は開設前から地元の介護施設を一つひとつ訪ね、身体機能の維持・回復を本気で目指す、現場に即したリハビリ体操などの指導を地道に続けてきた。こうした取り組みが、少しずつ地域に知られるきっかけとなった。施設という拠点はなくとも、地域全体をフィールドとしてリハビリに関わるという姿勢を持ち続けてきたことが、徐々に形になっていったといえる。
ほっとリハビリシステムズでの経験を通じて培ったリハビリの質、そしてリハビリの目的は、自宅で生き生きとした生活を送ることにある、という考え方は、その後の事業を支える確かな土台となった。
「利用者のために」を、すべての判断の出発点にする 方法を固定せず、目的から考える
ゆうあいリハビリセンターのリハビリ風景。ほっとリハビリシステムズで経験したことが、今に生きている
ゆうあいリハビリライフケアの支援の出発点は、「この人は、どんな生活を送りたいのか」という問いにある。
まず「何のために行うのか」という目的を考え、そのうえで「リハビリの方法」を考える。更に「その人に最適な方法は何か」を考えていく。だから、たとえ同じような状態の利用者でも、支援の内容は一律ではない。「利用者がしたいこと」に向かって必要な支援を組み立てていく。
目的が違えば、支援の形も変わって当然で、むしろそうでなければおかしい。ある利用者は歩行が困難だが、自宅の中では一人で移動できるようになりたいと思っていた。リハビリと並行して福祉用具の歩行器も検討したが、段差がある、狭い自宅の中では使えない。日常生活の中での動きやすさを考え、軽くて高さがちょうどよい、ゴミ箱が良いということになった。ゴミ箱を補助として移動できるようになるリハビリがその人の支援となる。何のために行うのかを読み違えると、結果、その人のためにならないリハビリメニューが出来上がる。
もちろん、現場では迷う場面もある。制度の制約や人手の問題、時間や効率とのバランスなど、さまざまな課題が常につきまとう。「本当にこれでいいのか」と立ち止まる瞬間も少なくない。その時によりどころとなるのが、同社が大切にしてきた「嘘をつかない」「裏切らない」「敬う」という3Uの精神だ。この理念を利用者に対して意識すると、次のような問いが生まれる。
「利用者に対して嘘をついていないか」
「利用者が望む人生を、結果的に裏切っていないか」
「利用者を人として敬っているか」。
判断に迷った時は、必ずこの問いに立ち返る。それが、同社の支援を支える揺るぎない軸となっている。
3Uは、理念として掲げるための言葉ではない。現場で判断をするための、最低限の姿勢だ。この判断基準があるからこそ、やり方が変わっても、支援の方向はぶれずに続けられてきた。「目的によって、リハビリの内容が変わる」。その考えは、ホームページにも明確に示されている。
判断基準は、組織の内側にも向けられる 利用者にとって必要という観点から様々な専門職が在籍する組織となった
塩澤社長が信頼するスタッフ。利用者のために何ができるのかをいつも話し合っている
ゆうあいリハビリライフケアは、かつてスタッフの採用に苦労した時期もあったが、現在では看護師、理学療法士、作業療法士、ケアマネジャー、ケアワーカーなど、多くの専門職が在籍する組織へと成長している。
その背景には、利用者に対して大切にしてきた判断基準を、組織の内側にも一貫して適用してきた姿勢がある。「利用者のために良い仕事をしたい」という思いが、現場で否定されることはない。スタッフからの提案は、効率や成果ではなく「それが利用者にとってどうか」という視点で受け止められる。
この姿勢に共感した人たちが入職し、実際に働く中で、同じ判断基準を共有していく。こうした積み重ねが、結果として組織のあり方を形づくってきた。
ここでも、3Uの考え方が生きている。スタッフに対して嘘をつかないこと。思いを裏切らないこと。専門職として敬うこと。これらは、理念として掲げる言葉ではなく、日々の判断において実際に使われている基準だ。
価値観に共感する人々が集まり、その価値観を現場で確かなものにしていく。ゆうあいリハビリライフケアの組織は、そうした循環の中で成り立っている。
人が人に向き合う判断を支えるICT、どこでも情報把握や入力が可能に
訪問先でも業務支援システムにアクセスできるスマートフォン端末。現場での判断に役立っている
ゆうあいリハビリライフケアがICTを活用している背景には、「もっと利用者のために良い仕事をしたい」という、現場からの声があった。
業務支援システムは以前から導入されていたが、訪問看護やリハビリで外に出ている間は、そこで必要になった情報を、その場で確認することができなかった。利用者の状況に応じた適切な判断を行うためには、訪問先でも情報を把握する必要がある。しかし、現実には事務所に帰らないと詳しい情報がわからない。判断を後回しにせざるを得ない場面もあった。
この状況に疑問を抱いたスタッフから、「訪問先でも必要な情報を確認できるようにしたい」という提案が上がった。何のためにそうしたいのかの目的は明確だ。これを受けて、全ての訪問スタッフが業務支援システムに接続できるスマートフォン端末を持つ体制を整えることになった。
塩澤社長はこう語る。「これは私が考えたことではありません。スタッフが『もっと良い仕事をしたい。チャレンジしたい』と言ってきたのです。そうであれば、できることはやるべきだと判断しました」
このスマートフォン端末の導入によって、情報の共有や引き継ぎがスムーズに行えるようになり、利用者の前で判断できる場面が増えていった。現場でリハビリ結果を記録でき、効率が向上したのは事実だが、それ以上に重要なのは、「迷いを後に持ち越さなくてよくなった」ことだ。
ICTは、管理のための仕組みや、業務を楽にするためだけの道具ではない。むしろ、判断を早く正確に行い、人が人に向き合う時間を守るための手段として活用されている。
現在、地域の医療機関や施設との連携は進んでいるものの、情報共有のあり方には、まだ課題も多い。それでも、ゆうあいリハビリライフケアの根底にある姿勢は変わらない。利用者の人生を基準に判断することだ。ICTはその姿勢を地域に広げていくためのツールになり得る。
これからも「この人は、どんな生活を送りたいのか」を問い続ける存在であり続ける
本社社屋
ゆうあいリハビリライフケアは、地域の中で利用者を継続的に支えるため、支援の形を少しずつ広げてきた。2025年12月には、新たにヘルパーステーションを立ち上げ、リハビリ支援センターや訪問看護ステーション、リハビリセンターとあわせて、生活全体を見渡した支援ができる体制が整いつつある。
今後は、ケアマネジャーの増員も検討しているが、それは規模を追い求めるためではない。利用者が望む生活や人生を、より現実的に支え続けるための選択だ。一つひとつ適切な判断を重ねながら、地域の医療機関や介護施設とも連携していく。その積み重ねの先に、「リハビリを通じた地域との連携」が実現していく。これからも、「この人は、どんな生活を送りたいのか」を問い続ける存在でありたいと考えている。
企業概要
会社名
株式会社ゆうあいリハビリライフケア
所在地
群馬県太田市烏山中町813-13
電話
0276-55-1118
設立
2009年2月
従業員数
48人
事業内容
訪問看護事業、居宅介護支援事業、通所介護事業、訪問介護事業
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