大規模社会インフラの維持管理に強み、地域の社会課題を独自のDX「IDX」で解決へ アイ・ディー・エー(群馬県)
公開日:2026年03月18日
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高度成長期に日本各地で造成されたダムや道路、水道施設などの社会インフラが、建造から半世紀を経過し、維持管理の時代に突入した。さらに、人口減少社会を目前に、地方都市は防災対策や過疎に伴うまちづくりにも多くの課題を抱えている。こうした状況下で、社会インフラの建造に携わった建設コンサルタント会社が今、新たな役割を求められている。
群馬県高崎市に本社を置く総合建設コンサルタント、株式会社アイ・ディー・エーは、土木技術サービスの提供をはじめ、近年は地域の行政機関と協働して防災・減災対策に取り組み、その範囲はまちづくりにまで及んでいる。このようにハードからソフトへと広がるニーズに応えられる背景には、同社の技術的蓄積とDXの融合があった。
(TOP写真:荒川最上流部に造成された二瀬ダムは1961年竣工。同社では群馬県を中心にダムの発注者支援や現場技術支援業務に携わっている)
群馬県を中心にダム、道路、橋梁など社会資本の土木技術サービスを提供。とりわけ行政の発注者支援業務を得意分野とする
株式会社アイ・ディー・エー取締役副社長・管理本部長を務める今井哲治氏。社内のDX推進の旗振り役として取り組んだ
総合建設コンサルタント、株式会社アイ・ディー・エーは、代表取締役社長の今井久登氏がダム建設現場で出会った仲間と4人で1990年に設立。会社設立当時はダムの建設ラッシュの時期であり、現場に近い群馬県高崎市に本社を置いた。その後、同社は砂防施設、道路、河川、橋梁(きょうりょう)、下水道など、社会インフラ全般の測量・土木設計のほか、調査・点検などの維持管理業務も担っている。
とりわけ同社が得意とするのが、発注者である行政機関に代わって、工事監督支援業務や積算業務、資料作成を担う、発注者支援業務である。「当社の発注者支援業務は、ダムの仕事を契機に始まりました。行政への伴走支援ですので、技術力はもちろんですが、行政の事情や立場をよく理解していることが求められます。そして、コミュニケーションがとても重要です」。そう話すのは、同社の取締役副社長で管理本部長も兼任する今井哲治氏。今、全国の自治体の4分の1が、ダム・砂防・河川・橋梁等の大規模インフラの専任担当者がゼロという人手不足の状況で、職員の負担が増しているという。
「今後さらに人口減少が進み、技術系行政職員も減少が予想される将来、発注者支援業務は当社の強みとなるでしょう」
社会インフラは建設から維持管理の時代へ。さらに東日本大震災の除染関連を契機に県外エリアの業務が増え、多拠点化が進行
設計部門の執務室。道路、橋梁、ダムなどを中心とする土木技術サービスを中心に、近年は地域防災計画やハザードマップ作成、災害情報の伝達研究など、業務範囲は幅広い
ダムや道路などの社会インフラが盛んに造られていた時代から半世紀以上が経過し、現在は老朽化した施設の維持管理の比重が増している。さらに、同社では社会的要請の高い特殊な業務にも携わっている。それは、2011年に発生した東日本大震災と原発事故に伴う除染関連の業務だ。同社は環境省の発注により、福島県内の除染にかかわる工事監督支援業務を受託。これを契機に事業領域が広がり、エリアも徐々に県外へと拡大していった。西は九州、北は北海道へと多拠点化が進み、社員数も増大。旧社屋は手狭になり、2014年には新社屋を竣工。現在地に移転を果たした。
拠点間の連携や部署間の情報共有などの課題を解消するべく、2014年の社屋移転・新設を契機にICTの導入を推進
2014年に移転した新社屋の技術部門。広々として快適な執務空間で、多くの若手社員が活躍している
2014年に社屋を新築・移転すると、同社はICTの活用を推進していった。その背景には、拠点の増加や部門・社員数の拡大に伴い、情報共有に関する課題が顕在化していたことがある。
「以前は名古屋、大阪、東北地方の部門担当者が、毎月一回本社に集まって会議を行っていましたが、移動が大変で経費もかかっていました。Web会議システムは移転前から導入していたのですが、通信環境の改善含め、リニューアルや見直しは常に図ってきました」(今井副社長)
次に、業務の情報共有についても見直しを進めた。スケジュール管理は、「これまで、各自がエクセルで作成し、社内の共有サーバーに情報を置いていたのですが、いちいちエクセルを開く手間があったため、人によって見たり見なかったりという状況でした。そこで、情報の共有を目的に、グループウェアの活用を検討してみました」。
まずは管理部門と各拠点の部門長、事務担当者のみで試験運用し、2016年には全社で導入を拡大。外出先からも情報にアクセスしやすいよう、パソコンだけでなく、スマートフォンからも閲覧できる環境を整えた。
予算管理の際、バラバラだった拠点ごとのフォーマットを統一。複数人でも運用しやすくなり、煩雑な作業から解放された
2016年に全社的にグループウェアを導入し、部署間における情報の共有がスムーズになった
予算管理では、拠点ごとに運用ルールが異なるため、管理するフォーマットがばらばらになっていたことが課題だった。地域ごとにばらばらでは、表の構成を理解するのに時間がかかってしまう。やはり、管理上は同一のフォーマットであることが望ましい。そこで、部署ごとの予算管理に使用するフォーマットの統一を図った。「それまで各部門はエクセルでフォーマットを作成していたので、操作感がエクセルに近い業務用ノーコードアプリを導入しました。最初は使いにくいとの声も出ましたが、ノーコードですので、使いながら自分たちでブラッシュアップしています」(今井副社長)
2020年にISO27001を取得。情報セキュリティの強化をすべく、オンプレミスからクラウドストレージへと移行
行政からの受託業務が多いため、情報セキュリティには万全な体制を整えている
同社は、主に行政から委託された業務を担っており、情報漏洩のリスクにも万全の体制の備えが求められている。情報セキュリティを考えた社内インフラの転換は、情報セキュリティの国際規格ISO27001を2020年に取得(当時は一部事業部、2024年以降全社取得)したことが契機となった。同社はこれまでオンプレミスだった情報管理を、より高度なセキュリティを備えたクラウドストレージへと2024年に移行した。
「ISO27001は入札の条件となっていましたので、セキュリティ対策は必須でした。でも、こうした対応をとることで、社員の情報の取り扱いに対する意識が確実に変わってきています」と今井副社長は成果を実感する。
多拠点ゆえに拠点間や社員同士のつながりの希薄化が課題。アプリの活用によるコミュニケーションも実践し、さらに活力ある職場へ
スマートフォンで閲覧できるグループウェアやコミュニケーションアプリを活用している
各地に拠点が増え、部門間の情報共有の課題をICTの導入によって解消してきた同社だが、今井副社長は、社員のコミュニケーションを課題に挙げる。「仕事上しかたないのですが、どうしても現場に出たきりになりがちですし、離れた現場事務所に長期間いる社員もいます。発注者とのやりとりは多いのですが、もっと社員同士の距離を縮めたいと思うのです」と打ち明ける。しかし、同社は策を講じていないわけではない。現在、社内ポータルサイトでのAIコンシェルジュ利用を試験的に行うほか、社員同士のコミュニケーションの「場」も作れるよう試行錯誤の最中だ。取り組みは始まったばかりだが、今後の本格的な効果が期待されている。
会社が蓄積した技術を可視化・体系化しデジタル技術を駆使して独自のDX=「IDX」で社会課題に貢献。様々な地域の支援に積極的に取り組んでいく
会社設立以来成長を続け、社員数も増加したことから、社屋を2014年に移転・新設した
会社設立以来、社会インフラの建造や維持管理に携わってきた同社だが、近年は人口減少に伴う地域活性化の課題や、防災・減災における行政支援など、新たな役割が求められるようになった。同社は2010年からそれらを、地域支援事業として取り組みを進めている。その鍵となるのが社会課題をICTの力で解決する「IDX」だ。
IDXとは、社名のIDAとDXを掛け合わせた造語で、同社が蓄積してきた技術を、可視化・体系化し、BIM(建築分野の3次元モデル)/CIM(土木分野の3次元モデル)やクラウドシステムの活用により課題解決を試みている。
「IDXは当社が蓄積してきた技術をもとに生み出した新たな取り組みです。地域支援事業として、これまで紙ベースだった『市町村の避難確保計画』や『ハザードマップ』のデジタル化によるWeb閲覧システムを構築しています」(今井副社長)
さらに2023年度以降適用されたBIM/CIM技術の講習や、インフラ施設の維持管理クラウドシステムの構築などを実用化。人口減少時代の社会インフラの運用課題にも応じる構えだ。それは、発注者支援業務で培ってきた行政への伴走支援の知見があってこそ、実施できる事業だ。
※国土交通省は2020年4月に、2023年度から小規模なものを除く全ての直轄公共土木工事・業務にBIM/CIMを原則適用する方針を決定し、2023年度から開始している
「地域支援事業としては、2015年に群馬県みなかみ町における農業・移住支援で地元に入り、温泉熱をハウス栽培の熱源としてまかなう事業に関わりました。それ以降、行政による都市計画のサポートにも参入するようになりました。今後も地域密着で群馬県や埼玉県を中心に支援業務に取り組んでいきたいと思っています」と意欲を示す今井副社長。作るものが「モノ」から「コト」に変化しても、同社が地域社会に果たす使命は変わることはない。
企業概要
会社名
株式会社アイ・ディー・エー
住所
群馬県高崎市倉賀野町4221番地13
電話
027-384-6600
設立
1990年5月
従業員数
535人(2025年11月1日現在)
事業内容
公共工事等の施工管理・技術支援/土木設計・測量・地質調査/環境事業の調査設計/水中測量・分析/建築設計監理/総合的な情報関連事業・研究開発/地域防災計画・各種ハザードマップ作成・災害情報伝達研究/地域づくり協働モデル事業・地域活性化事業支援/ISO総合マネジメントシステム運用サポート
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