建設業(建築)

飛騨ヒノキの「木の家づくり」で75年 ICTを活用した顧客サービス向上と経営効率化で成果 松田建設(岐阜県)

From: 中小企業応援サイト

公開日:2026年03月23日

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産経ニュース エディトリアルチーム

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日本を代表する名泉・下呂温泉で知られる岐阜県下呂市に本社を置く松田建設株式会社は、75年にも及ぶ歴史を紡いできた総合建設会社である。土台や柱など住宅の構造材に、強度や耐湿・耐水性に優れた地元産のヒノキを使用し、自社大工の匠(たくみ)の技を駆使した施工技術によって、顧客の高い信頼を得てきた。近年はさらに、高品質・高耐久住宅を生み出す新構法を採用し、新たな挑戦を始めている。ICTの活用にも積極的に取り組み、住宅の完成予想図を立体的でわかりやすい3DモデルやVR(バーチャルリアリティ)映像で提示できる住宅営業支援システムを導入。また、クラウド型勤怠管理と連動した給与管理システムを導入し業務を改善。顧客サービスの向上と経営の効率化で成果を上げている。(TOP写真:構造材に飛騨ヒノキを使う松田建設がつくる家の「基礎躯体」)

戦後の輸送インフラを支えた薪バス用燃料の製造・販売で1947年に創業

薪バス燃料で創業した当時の松田建設

薪バス燃料で創業した当時の松田建設

戦後の日本では物資が不足する中、主に地方都市では薪(まき)を釜で蒸し焼きにし、そこから発生するガスを燃料とするバスやトラックが走っていた。創業者の松田一郎氏(現社長である松田欣也氏の祖父)は、1947年(昭和22年)に現本社所在地にガス薪工場を建設し、薪バス用燃料を製造して、地元バス会社に供給する事業を個人事業として始めた。これが松田建設のルーツである。地元の輸送インフラ復興のため、需要が増えていた薪バス燃料に着目。創業者と番頭、作業員の6人で始めた事業だった。

製材業を経て1950年に松田建設株式会社を設立、1955年には土木事業にも参入した

創業者の松田一郎氏

創業者の松田一郎氏

下呂市が属する岐阜県飛騨地域は、地域面積の約9割を森林が占め、木材資源が豊富だ。1949年には、その木材資源を利用する製材工場を建設し、製材事業を開始。戦後の建築ブームが始まり、名古屋や岐阜方面に建築材を納入していた。その後、地元の下呂地区でも住宅建築の需要が増えてきたため、1950年6月に松田建設株式会社を設立し、建築業に参入した。
高度経済成長が始まり、公共事業を中心に土木工事の需要が増加する中で、同社は土木事業にも進出。1955年には総合建設会社としての体制を整えた。

構造材に飛騨ヒノキを使う耐震・耐久性と自社大工の匠の技による施工技術が強み

飛騨ヒノキの建築木材

飛騨ヒノキの建築木材

自社大工の匠の技が松田建設の財産

自社大工の匠の技が松田建設の財産

「住宅建築では、土台、柱、梁(はり)などの構造材に地元産の飛騨ヒノキを使うことで、高い耐久性を備え、長く住み続けられる家づくりを心がけています。また、すべての受注案件を自社大工が施工しており、施主様のご要望に速やかに対応することができます」。桂川武尚常務取締役は、松田建設の強みをこう話す。

ヒノキは、美しい光沢とさわやかな香りが特徴の日本を代表する建築用木材であり、松田建設は地元産の東農ヒノキを使う。耐湿・耐水性や抗菌性、強度に優れた高級木材を使った家づくりができるのは、早くから製材業を手がけてきた歴史に加え、人とのつながりを大切にしてきたからだ。自社大工による施工は、同社が育成した「プロフェッショナルの誇りを持つ大工」による安心と確かな品質を提供しており、顧客からの信頼を高めている。

地盤調査・補強を重視し、基礎は耐震性の高いベタ基礎を採用。耐震性能をさらに高めた新構法も

耐震性の高いベタ基礎

耐震性の高いベタ基礎

松田建設の家づくりは、日本の気候風土にあった「木の家」を基本とする。また、木造建築の可能性を引き出す新技術の導入や、品質を高めるための創意工夫を積み重ねる姿勢を重視している。大地震への対応で最も重要な地盤調査・補強工事はもとより、基礎には耐震性の高いベタ基礎を採用。さらに、2000年頃からは、木造住宅の柱と梁を剛接合することで強い構造躯体を生み出し、高い耐震性能を実現する新構法「SE構法」も採用している。

下呂温泉という名泉を持つ土地柄、ホテルや旅館の部屋の改修・修繕の受注も多い。最近は、非日常を求めてスイートルームなど高級な部屋への宿泊を望む観光客も増えており、飛騨ヒノキをふんだんに使った部屋やヒノキ風呂などへの改装を手がけている。

営業段階でのパースや内観制作のための住宅営業支援システムと360°撮影カメラにより、顧客提案力の強化と時間の大幅削減が可能に

パース図を作成しているスタッフ

パース図を作成しているスタッフ

松田建設では、商談の段階から3Dパースを作成し顧客に提案、検討していただく取り組みを始めている。
松田建設が2024年2月に導入したのが、手書きの間取り図から簡単に3Dパースを作成し、積算や見積、設計、法規チェック、伏図作成・構造計算まで行える住宅営業向けの支援システムだ。また、意匠図から構造図の作成をスピーディーに行え、改正建築士法にも対応できる。このシステムは、建築士が利用するCADと違い、商談段階から営業が活用する。施主様の要望を簡単に、具体的な立体イメージにすることができ、イメージを見ながらドアや窓の配置、間取り、家の外観や部材、色などの要望をヒアリングする。また、3Dパースを見るだけでなく、バーチャルで3Dパースの中に入り、住宅内部のウォークスルーや、1日の日影動画で、実際に住む場合の日当たりを具体的に体感できる。またスケルトンパースという機能があり、実際に目にできない階段下の収納や屋根裏の状態も立体的に把握することが可能となる。
また、リフォームの場合は、現状を360°カメラで撮影したパノラマ画像を取り込み、現状と提案プランとを並べて見せることで、完成イメージをわかりやすく伝えることができる。

住宅に必要な女性目線での自社制作のパース図が好評。半分を内製化し、外注費を1件あたり約10万円削減

「(パース図制作には)女性の感性が重要になっている」と語る桂川武尚常務

「(パース図制作には)女性の感性が重要になっている」と語る桂川武尚常務

住宅営業支援システムの運用は、建築部門の営業事務の女性が一人で担当している。施主様からは、「完成後のイメージがとてもわかりやすい」と好評だ。「個人住宅ではキッチンやリビングなどを中心に奥さまからのご要望が多く、その要望に的確に応えていくには、同じ女性ならではの感性が重要になってきます」。桂川常務は、パース図制作を担当する女性事務員の能力を高く評価している。しかもパース図の内製化で、1件あたり10万円程度の外注費削減にもつながっている。現在、自社制作は半分程度だが、今後は個人住宅のパース図のすべてを自前で制作していく考えだ。また、このシステムの導入により、個人住宅の受注拡大も期待している。

複合機更新と同時にオンデマンド印刷アプリを導入

オンデマンド印刷アプリを採用した複合機導入で、コピー費用の削減と取り間違いがなくなった

オンデマンド印刷アプリを採用した複合機導入で、コピー費用の削減と取り間違いがなくなった

2024年3月には、複合機の更新を機に、パソコンからの印刷指示ですぐに印刷するのではなく、自分専用の「私書箱」に蓄積される、オンデマンド印刷アプリを採用。自分が複合機の前で確認して出力指示を行うことで印刷される。出しっぱなしがなくなり、他人が出力した書類を間違って持ってきてしまったり、人事情報や給与明細などの重要な書類を、他の人が見たり、持って行ってしまうことがなくなる。また、間違えて印刷してしまった場合も印刷せずに削除することができ、無駄な印刷も削減できる。
また、受信したFAXをそのまま印刷せずクラウドストレージにデータを保存する仕組みも利用している。この機能は、必要ないFAXを印刷しなくて済むことや、クラウドストレージに保存しているので、受信したFAXを従業員が即時共有したり、外出先からも確認することができ非常に重宝している。
本社事務所の改装によって現場監督らが2階事務所に移った2025年5月には、2階事務所にもオンデマンド印刷アプリを備えた複合機を導入。全員の利便性の向上とミスプリントの減少などによってコピー費用の削減にも貢献している。

クラウド型給与システムにより給与明細をデジタル化 経理担当者や従業員の負担が大幅削減

2024年10月に給与計算システムをクラウド型へ移行するとともに、給与明細配信システムも導入した。これにより、賃金台帳や給与明細書を紙で管理する必要がなくなった。現場が遠い場合、紙の給与明細を手渡すまでに日数がかかっていたケースもあったが、今は給与支給日に配信された明細データをスマートフォンで確認することができる。経理担当者、従業員ともに負担が軽減されたという。

一連のICT化は「90点」。今後は土木部門で遠隔操作できる重機の自社保有を検討する

岐阜県発注 公共緊急総合治山事業 仏洞地区工事現場

岐阜県発注 公共緊急総合治山事業 仏洞地区工事現場

「今のところ100点満点の90点くらいです」と桂川常務は一連のICT化について自己評価する。まだ使いこなせていない機能があるため「マイナス10点」というが、ICT導入への満足度は高いといえそうだ。今後のICT化では、土木事業で遠隔操作できる重機の導入を検討する考えだ。公共工事では、遠隔操作の重機による掘削を指示されるケースもある。これまではその都度、遠隔操作の重機をリースで調達していたが、自社保有することで、ICTを活用したスマート工法を求められることの多い公共工事の受注を増やしていく狙いもある。

地域社会との「共存共栄」の姿勢変わらず。ICTでの業務効率化を働き方改革につなげる

松田建設の社是

松田建設の社是

松田建設の事業規模は、2025年7月期で売上高11億4000万円。事業部門ごとの売上比率は、建築60%、土木35%、不動産5%。「誠実、責任、節約、反省、共栄」の社訓を掲げ、誠実に地域社会と「共存共栄」する姿勢で事業に取り組み、地域に根差した総合建設会社として着実に成長してきた。

2024年4月からは、それまでの隔週2日休日制を改め、完全週休2日制に移行。急用や病気などでの急な休みに対しても、「現場はグループで作業していますので、他のグループメンバーが対応したり、他の現場のスケジュールを調整することで臨機応変に対応できるようにしています」(桂川常務)。ICT化による業務の効率化によって、働き方改革を進める環境が整ってきた。

松田建設の本社

松田建設の本社

企業概要

会社名

松田建設株式会社

住所

岐阜県下呂市三原25番地

HP

https://hida-matsuken.co.jp

電話

0576-25-2627

設立

1950年6月(創業1947年4月)

従業員数

30人

事業内容

建築工事、土木工事、製材業、不動産業など

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