福祉業(介護)

自衛隊時代の救難の精神で特養を運営 ICTをフル活用して入居者の支援、地域貢献も充実 ひまわり会(栃木県)

From: 中小企業応援サイト

公開日:2026年03月25日

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人口減少社会を見据え、地域の高齢者福祉の持続的な担い手として奮闘する、自衛隊と県警出身、という異色の経験を持つ理事長が運営する社会福祉法人ひまわり会の取り組みを紹介する。
理事長の町田英夫氏は、人命救助の最前線を担う航空自衛隊のレスキュー部隊に長年所属してきた、救助のエキスパートだ。教官として後進の育成にも携わるなど、高度な指揮・管理業務も経験している。その高い危機管理能力は介護事業にも発揮され、365日、昼夜を問わない介護に積極的にICTを取り入れ、入居者と家族の安心と安全を確保、また不測の事態にも迅速に対応を行っている。
さらに、地域の災害時に対応できる拠点として機能できるよう、施設の建築のあり方や敷地の活用方法にも考慮している。災害時の避難拠点として機能することは、避難のための移動が困難な入居者や家族にとって、大きな安心につながっている。
(TOP写真:たっぷりと木を用い、落ち着いた高級住宅の玄関のような「結和(ゆわ)の里」の各居室入口。「利用者に自宅にいるような気持ちで過ごしてほしい」という理事長の思いを形にしたこだわりの設計だ)

航空自衛隊でレスキューの道へ。母親の介護と自身の闘病を経て52歳で介護福祉業界へ転じ、デイサービスとショートステイを開所

社会福祉法人ひまわり会 理事長の町田英夫氏。長年航空自衛隊でパイロットや教官を務めてきた

社会福祉法人ひまわり会 理事長の町田英夫氏。長年航空自衛隊でパイロットや教官を務めてきた

町田理事長は航空自衛隊のパイロット、教官を経て、栃木県警に入職し、県警ヘリ部隊の指導にあたるなど、航空レスキューの分野を長年歩んできた異色の経歴の持ち主だ。
「高校卒業後、航空自衛隊航空学生となりました。当初は戦闘機のパイロットを希望していたのですが、基礎課程の教官が航空救難団のヘリコプターパイロット出身で、彼からレスキューの話を聞いているうちに、人の役に立つ仕事としてレスキューに強く惹かれるようになり、結果、ヘリコプターパイロットを希望して航空救難団に配属されることになりました」

航空自衛隊浜松基地の浜松救難隊に所属していた頃、後に妻となる洋子氏と出会う。その後、名古屋の小牧基地で教官として4年ほど勤務。そして茨城県の百里基地への赴任を経て、32歳の時に栃木県警察の航空隊への異動を打診された。
「当時、佐野で暮らしている両親がいろいろ心配だったこともあり、地元に戻ろうと栃木県警に入職しました」(町田理事長)

病気で航空隊の一線を退くという時に、ショートステイで薄暗い多床室で過ごす母の姿を見て不憫に感じ、ケアマネジャーの妻とともに、地域で求められる介護事業を始める

町田理事長は40代後半、脳の手術を受けるという大きな転機に直面した。「手術後は、指導はできても、パイロットとして飛び続けるのは難しいだろうと思いました。そんなときに、母の介護が必要な状況になったのです」
当時は、介護に関する知識もなく、介護施設探しは手探りの状況だったという。苦労の末、ようやくショートステイの施設が見つかり、利用する事に。しかし、入所後、そこで目にしたのは、薄暗い多床室でひっそりと過ごす母の姿だった。こんな環境に母はおいておけないと強く思った。この経験が契機となり、町田理事長は52歳で栃木県警を早期退職。全くの異業種である介護の世界へ飛び込む決断をした。

「これまで自衛隊や県警で培ってきた、人を救うという精神や実践してきたことは、必ず介護の現場でも生かせるはずだ。自分の母親を安心して預けられる場所、母親が心穏やかに過ごせる理想の場所を作ってみせる。そしてそれは地域貢献にもなると思ったのです」。こうして地元に有限会社ひまわりを2005年に設立し、デイサービスとショートステイの事業所を2006年5月に開所した。

町田理事長が介護事業を志すにあたり、大きな支えとなったのが妻・町田洋子氏の存在だった。洋子氏は看護師としての経験を持ち、当時すでにケアマネジャーの資格も取得していた。専門知識を持つ身近な存在がいたことが、異業種への挑戦に踏み出す背中を押したという。当時、佐野市の介護施設は多床室の施設しかなかった。県に相談した際、「どうせやるならユニットケアに取り組んでほしい」との要請があった。町田理事長はその言葉を前向きに受け止め、先進的な取り組みを行っていた足利市内の施設を見学。設計の考え方から運営ノウハウまでを学び、助言を受けながら準備を進めた。こうした試行錯誤を経て、ユニットケア型施設の開所へとこぎつけた。自分の母親に生活してほしいと思う施設、利用者一人ひとりに寄り添う介護を実現したいという思いは、ここから具体的な形となっていった。現在、佐野ショートステイ、デイサービスセンター花の広場の他、特別養護老人ホーム「明水の里」および「結和の里」を運営しており、妻の町田洋子氏が施設長を担っている。

特養を運営し、さらに地域貢献したいという想いから社会福祉法人を認可設立して地域密着型の特養を開所。次いで2022年に広域型特養の開所へ

特別養護老人ホーム「明水の里」「結和の里」の両施設長を務める町田洋子氏。ケアマネジャーでもあり、看護師としてのキャリアは長い

特別養護老人ホーム「明水の里」「結和の里」の両施設長を務める町田洋子氏。ケアマネジャーでもあり、看護師としてのキャリアは長い

2006年花の広場開設当初は認知度不足から利用者集めに苦戦したものの、開設から2、3年後には順調に利用者が増加した。しかし、ショートステイの利用者が、介護度の進行に伴い、次第に特別養護老人ホームに移ってしまうことが相次いだ。
「利用者の方は介護度の進行によって利用するサービスが変わっていきます。特養に移られていく利用者の方々を見ていて、やはり特養の運営も行い、さらに地域貢献してみたいと思いました。そこで2010年に、民間経営として事業を拡大するのではなく、公的施設として、非営利性を主軸においた、社会福祉法人を認可設立し、準備を始めました。そして、翌2011年に特別養護老人ホーム「明水の里」を開所しました。同じ法人内にデイサービスとショートステイ、そして特養がそろっていれば、利用者やそのご家族にとって、本当に安心できる場所が提供できます。」(町田理事長)。

しかし、「明水の里」は入居者が佐野市限定(地域密着型)で定員が29名の施設だった。数床でも空床となれば、経営は赤字に転じる可能性があった。そこで、経営を安定させるために、広域型の特別養護老人ホーム「結和の里」を2022年に開所した。建物は普通の住宅を思わせる平屋。各居室の入口は家の玄関のような意匠が施されており、「自分の家で暮らしているように安心と愛着を持って過ごしてほしい」との施設長のこだわりで作り上げた。

広域型特養「結和の里」を2022年に開所。「明水の里」の経験からWi-Fiを全館に整備。ICTによる支援体制も充実し、「家にいるような安心できる暮らし」の提供を目指した

ユニットごとにパソコンを設置し、介護士はその場で記録作業を行っている

ユニットごとにパソコンを設置し、介護士はその場で記録作業を行っている

自宅で暮らすような安心感と快適さを提供するためには、利用者への手厚い見守りが欠かせない。同法人では、ICTを活用することで利用者や職員の不安解消に取り組んでいる。
先に開所した「明水の里」では、2015年に介護報酬記録システムを導入。2019年には各ユニットにパソコンを配置し、職員の記録業務の効率化を図った。さらに2020年にはWi-Fi環境を整備し、介護ロボット(ベッドセンサー)を導入した。
「夜間はどうしても職員の配置人数が限られるのですが、徘徊(はいかい)される方もいらっしゃるので、利用者の安全を守るためにも必要な取り組みでした。また、心拍や呼吸、睡眠状況などの生体情報もモニタリングできるので、職員の安心感も大きく高まりましたね」(町田施設長)

2022年に開所した「結和の里」は、「明水の里」での施設改修の教訓を生かし、開所当初からWi-Fiを全館に整備。介護報酬支援システムや介護ロボット(ベッドセンサー、離床センサー)も導入している。
「今後入居する方はスマホやパソコンを持ち込まれるケースも増えてくるでしょう。Wi-Fiの設置は欠かせません」と町田理事長は今後を見据える。また、共通の介護報酬支援システムの導入により、全施設の情報共有ができることも運営上のメリットとしてあげている。

次に導入したいのは職員の連携をスムーズにするインカムと排泄ケアのソリューション。シフト管理ソフトの進化にも期待したい

利用者のベッドに設置された介護ロボット(ベッドセンサー)は心拍や呼吸数などの生体信号を計測。夜間の見守りに安心感をもたらしている

利用者のベッドに設置された介護ロボット(ベッドセンサー)は心拍や呼吸数などの生体信号を計測。夜間の見守りに安心感をもたらしている

介護報酬が国によって定められているため、介護は利益の出にくいビジネスモデルだ。利用者の安全や、職員の利便性のための介護ソリューションの導入には、いろいろな補助金が使えるが、その補助の多くは2割程度で、8割は自己負担となる。その上、民間施設との競争激化により経営は厳しい状況だという。だが、町田理事長は、2026年度以降に期待を寄せている。
「2026年度の介護報酬臨時改定では介護職員の処遇改善を目的に介護報酬の見直しが行われます。社会福祉法人として自助努力で対応していた職員への報酬分が、将来の投資にまわせます。2026年度の1年間で、何とか資金を蓄えることができれば、導入したいICTツールがいくつかあります」
そのソリューションの一つがインカムの導入だ。これがあれば、広い館内に分散している職員を探し回る手間が省け、業務負荷がかなり軽減すると期待している。そして、次に導入したいと考えているのが「排泄ケア」のソリューションだ。これは、尿意を訴えることができない利用者の膀胱(ぼうこう)に溜まった尿量を推測し、事前に適切な対応ができる仕組みである。また、寝たきりの利用者の体重を測定できるツールも必要だという。いずれも、利用者の尊厳を守ると同時に、職員の身体的、精神的な負担を減らすために必要なものだ。
「導入にあたってはIT導入補助金を活用したいと思っています。ただ、補助金が出るのは2割にとどまります。自己負担がゼロではないので、職員への報酬に影響が出ないよう、経営に余裕のある状況で実施したいと考えています」と町田理事長は前向きに考えている。
さらに、重要でありながら本当に煩雑な作業として一番にあげるのが、シフト表作成のソリューションだ。「実は以前、一度導入したことがあるのですが、入力すべき条件が多く、使い勝手が悪かったため、結局はお蔵入りしてしまいました。今後はAIの技術を活用し、より簡単にシフトを作成できるような商品が登場しないかと期待しています。」と町田理事長。

災害時には地域支援拠点としても機能。BCP策定や自家発電機も備え、地域防災にも貢献していく

特別養護老人ホーム結和の里を上空から望む。施設前の駐車場は災害時の支援拠点としても想定されている

特別養護老人ホーム結和の里を上空から望む。施設前の駐車場は災害時の支援拠点としても想定されている

ICTについては今後も積極的に活用を進める意向を示す町田理事長だが、施設の開所当初から、快適かつ安全な居住環境づくりにも取り組んできた。その一つが「結和の里」に設置されている温湿度管理空調システムだ。この設備により、一年を通して適切な湿度を保つことができ、冷暖房も過度に使用しなくて済むという。
「この設備は県内で初めて導入しました。夏はカラッとして清々しく、冬は適度に加湿されるのでとても快適です」
この設備のメリットとして、「湿度調整」で快適な空間の実現、「除菌」「除塵」「消臭」でクリーンな空間の実現が挙げられる。目には見えないことだが、利用者や職員が快適に過ごす環境を整える上で、とても大切なことだ。さらに安全性についても、防災・減災の観点からさまざまな対策を講じている。
「建物の耐震性は特に重視しました。この施設の地域には活断層がありませんので、災害時には地域の避難拠点としても使えるよう想定しています。それも社会福祉法人としての役目です」(町田理事長)

建物を平屋にしたのも、緊急時に窓からも避難できるよう想定したからだという。そのほかBCP対策として、非常食や水の備蓄、自家発電装置の設置、各種生活備品の確保も行っている。さらに、施設の駐車場は緊急支援車両の駐車スペースとしても使えるよう、十分なスペースを確保した。もちろん、災害時には、館内に地域住民が宿泊する事態も想定済みだ。食料備蓄には年間50万円ほどの費用を要しているというが、ここまで地域への貢献を前提に備えを進める社会福祉法人は、決して多くはないだろう。

災害時にはライフラインがストップすることから、利用者が通常と同じように食事ができるよう、食料備蓄は欠かさない。また、地域住民のための支援物資も備えている

災害時にはライフラインがストップすることから、利用者が通常と同じように食事ができるよう、食料備蓄は欠かさない。また、地域住民のための支援物資も備えている

原点は航空自衛隊時代に従事した人命救助への使命感。万全な危機管理は職員や利用者を守り、地域への貢献にもつながる

「結和の里」。施設前にある駐車場は、災害時には支援車両の受け入れや地域住民の避難スペースとしても想定している。地域の防災拠点として開放するという

「結和の里」。施設前にある駐車場は、災害時には支援車両の受け入れや地域住民の避難スペースとしても想定している。地域の防災拠点として開放するという

施設のハード面における整備から、業務管理・運用といったソフト面に至るまで、さまざまな対策を講じてきた町田理事長。その根幹には、かつて従事した航空自衛隊での任務が原点にある。
「そうですね、自分としては、どれも救助の延長線上でやっていることです。それに、職員があっての我々ですから、彼らを大切にしたいという思いもあるのです」

この仕事に従事している以上、救急対応や看取りのために、深夜に呼び出しを受けることもしばしばあるという町田施設長。それでも、利用者へのケアから最期の看取りまで寄り添い、その過程でご家族から感謝の言葉をかけてもらえることが、何よりの支えになっているという。

利用者や職員を家族のように温かく見守り、地域を守るという強い志を支えに、町田施設長と二人三脚で歩んできた町田理事長。その存在はまさに大黒柱のように心強い。いかなる苦境も乗り越え、地域の拠点として存在感を発揮していくことを期待してやまない。

企業概要

法人名

社会福祉法人ひまわり会

住所

栃木県佐野市小見町733番地

HP

http://himawari-kai.com

電話

0283-62-8788

設立

2010年5月12日

従業員数

100人

事業内容

高齢者事業(特別養護老人ホーム、短期入所生活介護、デイサービス)

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