わくわく体験で子どもの好奇心、発想力、協調性を育む 職員を支援するデジタルの力との相乗効果 遍照会(岡山県)
公開日:2026年03月27日
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岡山県倉敷市で、1953年(昭和28年)に遍照(へんじょう)保育園を開設、1961年(昭和36年)に社会福祉法人として認可された社会福祉法人遍照会は、同市内の真言宗御室派の寺院、遍照院を母体に、子どもの保育、教育のための施設を運営している。現在、遍照、連島(つらじま)の2つの幼保連携型認定こども園をはじめ、3つの小規模保育園、障がい児通所支援事業所、学童保育を運営。さらに、子育て支援事業のニーズが高い首都圏にも展開し、東京都大田区、埼玉県さいたま市、越谷市で保育園を運営している。舵取りを担うのは、テーマパークの運営会社で数十年の勤務経験を持つ大原正裕理事長。子どもたちの「わくわくする体験」を大切にしながら、好奇心や発想力、協調性を育む保育を実践している。また、職員が安心してそれぞれの業務に専念できる職場環境の整備や、子どもたちのための保育、教育の充実を目的にデジタル技術を積極的に活用している。(TOP写真:子どものための保育、教育に特化した社会福祉法人として活動している遍照会のホームページ)
「好奇心あふれる子どもたちの行動力と発想力にはいつも驚かされています。リアルな五感を使う体験とデジタルを使った体験で視野を広げてほしい」
社会福祉法人遍照会の大原正裕理事長
「好奇心あふれる子どもたちの行動力と発想力には、いつも驚かされています。日々の生活や遊びの中で五感を使って様々な実体験を積むだけでなく、デジタル技術をはじめとする新しいテクノロジーに触れることで視野を広げてほしい。そう願って保育、教育に取り組んでいます。グローバル化が進む今だからこそ、これまで以上に大切になる協調性もしっかりと育んでいきたいと思っています」。岡山県倉敷市内の連島こども園で取材に応じた大原正裕理事長は、遍照会が大切にしている思いを話した。
2019年に就任した現在55歳の大原理事長は、遍照院住職の家系に生まれ育った。就任後、岡山県内の2つの保育園を、幼保連携型認定こども園に移行。さらに、東京都や埼玉県でも保育園の運営に乗り出すなど、将来を見据えた事業展開を進めてきた。「地元では子育て世帯の減少が進んでいます。前向きに動かなければ、将来の展望は開けません。子育て支援サービスに対するニーズが高い地域に進出することで、法人全体の運営基盤を強化していきたいと考えています」と大原理事長。
子どもが抱いた興味や関心に職員が寄り添い、様々な活動をしている。その一つの食育活動が、2026年1月の第20回食育コンテストで優秀賞を受賞
連島こども園が第20回食育コンテストで優秀賞を受賞したことを受けて作成した食育活動についての資料
遍照会は、子どもが抱いた興味や関心に職員が寄り添いながら、取り組みへの意欲を育てることを大切にしている。日々の保育、教育活動の中で、テーマパークで遊んだ時のような、「わくわくした気持ち」を、子どもたちに抱いてもらうよう心掛けており、その成果は様々な場面で現れている。その象徴的な取り組みの一つが、2026年1月に優秀賞を受賞した食育活動だ。連島こども園では、毎日の絵本の読み聞かせ活動の中で、子どもたちがパンに興味を持ったことをきっかけに、パン工場の社会見学やパンづくり体験へと活動を発展させた。子どもたちは、パン屋での買い物体験や工場見学、実際のパンづくり体験に楽しみながら参加し学んだ。この取り組みは、NPO法人幼年教育・子育て支援推進機構が主催する、第20回食育コンテストで高く評価され、優秀賞を受賞した。「今回の食育活動では、子どもたちに人や社会とのつながりを実感してもらう貴重な機会を提供することができました。これからもリアルな体験を大切にしながら、子どもたちの探求心や好奇心を育む取り組みを続けていきたいと思います」と遍照会の大原理事長は話した。
遍照会の理事長は就任前、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に勤務 アイデアを具現化する秘訣や利用者目線に立った施設運営の重要性を学んだ
大原理事長は、1996年、翌年の開業に向けて準備が進んでいた、倉敷チボリ公園(デンマークのテーマパークをモデルにした都市型公園:2007年閉園)の運営会社に入社。開業前から開業後の運営を経験しノウハウを蓄積。2000年には、翌年の開業に向けて準備が進んでいた、大阪市の大型テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社に入社。在職中は開業準備業務のほか、アトラクション部門の人事などを担当した。家族連れを中心とする来場者を楽しませるために、様々なアトラクションやイベントを次々と企画し実行する。テーマパークでの数十年にわたる勤務経験は、現在の保育・教育施設を、利用者目線で運営する上で大いに役立っているという。
「他の人を楽しませることが好きなんです。僧侶の道も人生の選択肢として魅力を感じていましたが、若い頃はそれ以上にアミューズメントの分野で働いてみたいという強い思いがありました。USJではアイデアを具現化するプロセスや秘訣、常に利用者目線に立った施設運営の重要性を学ぶことができました。豊かな発想力や実務能力を備えた多士済々の仲間と長年働いた経験は、現在200人以上の組織を運営していく上で大きな財産になっています」と大原理事長は振り返った。遍照会が運営する施設を、「子どもたち、保護者、働く人にとって、テーマパークのように居心地の良い空間にしていきたい」と話す。
大原理事長にとって大きな転機となったのは2006年。遍照院の住職を務める弟から、「地域のために事業の拡大が求められている社会福祉法人遍照会の運営に携わってほしい」と頼まれた。USJでの仕事は楽しく、毎日が充実していたこともあって悩みに悩んだが、最終的に家族と故郷の役に立ちたいとの思いが勝り、岡山県に戻ることを決断したという。
1963年に設立された倉敷市の公立保育園を前身とする連島こども園の新園舎が2025年3月に完成 公立保育園時代には五輪メダリストや元サッカー日本代表も幼い頃に通園
連島こども園の新園舎の外観
遍照会は、1963年に設立された倉敷市の公立保育園、連島保育園を、2015年4月、同市からの委託を受けて運営に携わるようになり、2021年4月に市からの完全移管を受け、園名を「遍照連島保育園」に改称。2023年4月には幼保連携型認定こども園に移行し、園名を「連島こども園」として新たなスタートを切った。そして、2025年3月には新園舎も完成し、歴史ある園は新たな段階へと歩みを進めている。連島保育園の時代には、男子フィギュアスケート五輪メダリストの高橋大輔さん、元サッカー日本代表でサンフレッチェ広島に所属していた青山敏弘さんが、幼い頃通っていた保育園として知られており、連島こども園には2人から贈られたサイン色紙が今も飾られている。
連島こども園に飾られている男子フィギュアスケート五輪メダリストの高橋大輔さんと元サッカー日本代表の青山敏弘さんのサイン色紙
旧園舎と比較すると保育室、職員室、廊下などがそれぞれ広くなり、職員室はフリーアドレスを採用 職員間のコミュニケーションが以前より活発になった
連島こども園の新園舎は3階建て。保護者が車で子どもを送迎しやすいよう駐車場を完備し、雨天時でも駐車場から雨に濡れることなく園舎に出入りできるよう設計している。2階建てだった旧園舎と比べ、保育室や職員室、廊下などがそれぞれ広くなった。子どもたちがのびのびと活動できる環境が整っただけでなく、職員にとってもゆとりのある働きやすい空間へと生まれ変わった。
職員室はフリーアドレスを導入。業務内容や打ち合わせの相手に応じて柔軟に席を選べるようにしたことで、会議や情報共有がしやすくなり、職員間のコミュニケーションが以前より活発になったという。ハードの刷新は、日々の保育の質や組織の一体感にも確かな変化をもたらしている。
業務のデジタル化やペーパーレス化を進めやすいようにインターネット環境を充実し、ホールではプロジェクターや音響設備を完備 園舎は防災拠点としても機能するよう設計している
プロジェクターや音響設備を設置した連島こども園のホール
業務のデジタル化やペーパーレス化を進めやすいように、インターネット環境も充実させている。園舎内で職員が互いに連絡を取りやすいように、以前は固定式だった電話を持ち運びできるPHSに切り替えた。3階の約120平方メートルのホールでは、映像を投影するプロジェクターや音響設備を設置し、映像や音を通じて子どもたちの表現活動の幅を広げる取り組みに活用している。また、園舎の外側には、水害などの発生時に地域住民が上層階に避難できるよう、地上から2階につながるスロープを設けている。「連島こども園を地域の防災拠点として近隣住民の皆さんに役立てていただきたいと考えています」と大原理事長は自らの思いを話した。
子どもの安全を守るために保育室や廊下など様々な場所に見守りカメラを設置 大きな事故の発生を未然に防ぐ体制を整える
園舎内の様々な場所に設置した見守りカメラの映像
園舎内では、受け入れている約120人の子どもの安全を守るために、保育室や廊下など様々な場所に見守りカメラを設置している。映像は職員室に設置したモニターを通じて確認できる。「子どもが転倒やけがをするなど、万が一の事案が発生した際には、映像記録に基づいてその原因を明らかにできます。転倒やけがの再発防止の取り組みを通じて、大きな事故の発生を未然に防ぐ体制を整える上で、見守りカメラは大きな役割を果たしてくれています」と大原理事長。この映像記録は職員を守るためにも重要な役割を果たすという。カメラが撮影した映像は、漏洩しないようにセキュリティを徹底した上で、一定時間ごとに自動的に上書きされるため、プライバシーも保護できるという。
保護者を対象にした園内行事の写真販売システムを導入し、職員の写真配布の負担を軽減している
職員の負担を軽減する取り組みは他にもある。連島こども園では、幼稚園、保育園、学校向けに特化した写真販売システムを導入。年間行事などの際や日常の保育中に撮影した子どもたちの写真を、保護者に手間をかけることなく提供できるようにしている。保護者はシステムに利用登録してアクセスすることで、必要な写真をダウンロード購入できる。以前は、専門業者が撮影した行事ごとの写真をアルバムにまとめ、保護者に購入希望の写真を指定してもらった上で業者に焼き増しを依頼し、届いた写真を仕分けしなければならなかった。システム導入後は、写真のデータをシステムにアップロードして保護者に連絡するだけで済むようになった。
「職員一人ひとりがプロとしてそれぞれの職務に専念できる環境を整えることは、法人の責務と思っています。法人全体でICTやデジタル機器を活用して事務作業の効率化を進めることで、職員が子どもたちと接したり、子どもたちのための取り組みを考える時間を、さらに増やしていきたいと考えています」と大原理事長は笑顔で話した。
ガーメントプリンターを使って作成したオリジナルのトートバッグを毎年の卒園児にプレゼント 思い出づくりや創造性の育みに大きな効果が生まれている
ガーメントプリンターを使ってトートバッグに印刷する様子
これまで連島こども園で作成してきたオリジナルのトートバッグ
連島こども園では、ICTに加え、デジタル機器の活用も進めている。その一つが、デザインを衣類や布に直接印刷することができるガーメントプリンターだ。卒園式では毎年、子どもたちが卒園記念に描いた絵を印刷した、自分だけのオリジナルトートバッグをプレゼントしているほか、新園舎の完成記念式典でもオリジナルのトートバッグを作成し、出席者に記念品として配布した。これからもガーメントプリンターの機能を活用して、様々なデザインのTシャツやトートバッグを作成し、子どもたちの創造性の育みに活用していきたいという。
こども園や保育園で行う会議や法人全体でWeb会議を開催する際に電子黒板を活用している
連島こども園の職員室で電子黒板を活用して会議を行う様子
遍照会では、それぞれのこども園や保育園で行う会議や、法人全体でWeb会議を開催する際に電子黒板を活用している。画面に直接書き込みを行い、その内容をテキストに変換してPDF形式で保存・共有できる機能を備えているので、記録を残しやすく重宝しているという。電子黒板は、遠方の保育園や学校とオンライン交流を行う際にも活用している。2020年に発生したコロナ禍の最中は特に効果を発揮した。
人材活用を図るため、グループウェアや勤怠管理システムなどデジタル機器やICTを積極導入
約220人を数える職員のスケジュール管理は、グループウェアで行っている。現在は紙ベースで行っている勤怠管理業務を効率化するため、今後、勤怠管理システムを導入して給与計算システムと連携することを検討している。「ICTやデジタル機器は、人材活用を図る上でこれまで以上に必要不可欠なツールになっています。導入コストはかかりますが、長期的な視野で見ると、運営コストの削減や仕事の属人化の解消に大きな効果が期待できます。新しい人材の研修にも役立てていきたい」と大原理事長は抱負を述べた。
遍照会は、各施設によるブログやSNSを通じた保護者への情報発信にも力を入れている。職員が働きやすい職場環境を整え、保育・教育活動の充実を図るという明確な目的を持っていることが、効果的なデジタル技術の活用につながっているといえる。遍照会は、子どものための保育、教育に特化した社会福祉法人として、これからも豊かな発想力と前向きな行動力で、子育て支援サービスの拡充に取り組み続ける。
企業概要
法人名
社会福祉法人遍照会
本社
岡山県倉敷市西阿知町465-1
電話
086-465-1728
設立
1953年4月
従業員数
220人
事業内容
幼保連携型認定こども園、保育園、障がい児通所支援事業所、学童保育の運営
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