製造業(その他)

唯一無二の技術を誇るアルミ鋳造会社 発泡スチロール「型」内製化で超短納期実現 上岡軽合金鋳造所(栃木県)

From: 中小企業応援サイト

公開日:2026年04月01日

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栃木県栃木市に拠点を置く有限会社上岡軽合金鋳造所は、国内アルミ鋳造業界でひときわ光彩を放つ存在だ。同業他社が敬遠しがちな技術的に難しい案件を、職人のプライドをかけて引き受け、一つひとつ創意工夫を凝らし仕上げる。その積み重ねが、唯一無二の技術を生み出してきた。多品種少ロット生産に特化するとともに、発泡スチロール型を内製化することで、超短納期や超大物の受注にも応える少数精鋭のプロ集団を形成。自動車部品メーカーをはじめとする製造業の国内回帰に備え、コスト優先の韓国、中国勢を相手に、技術力で勝ち残る体制を築き上げつつある。(TOP写真:上岡軽合金鋳造所の本社工場で、発泡型に砂を込める作業)

「できない」とは言わない職人肌のプライドで技術的に難しい案件ばかり受注。いつの間にか多品種少ロット生産に特化

自動車ボディーの検査治具金型

自動車ボディーの検査治具金型

上岡軽合金鋳造所は1972(昭和47)年に初代社長の上岡信義氏が創業した。信義氏は、「鋳物(いもの)工場の街」として知られていた埼玉県川口市の鋳鉄工場で働き、鋳造技術を習得。生家のある栃木市に戻って独立した。その際、鋳鉄業ではなくアルミ鋳造業を選択した。鋳鉄に比べ、アルミ鋳造のほうが産業としての歴史が浅いぶんライバルが少ないと読んだためだという。

現在の上岡軽合金鋳造所は、自動車のボディーやインパネ、シートなどのプレス成形用金型をはじめ、ユニットバスや冷蔵庫の筐体の真空成形用金型、建設機械やロボット、船舶などの部品、検査治具、景観品やオブジェ(造形品)など、幅広い分野のアルミ鋳物を製造している。

多品種少ロット生産に特化しているのは、信義氏の長男で、2代目社長を務めた上岡勉代表取締役会長の存在が大きい。勉氏の長男で、2024年1月に35歳で3代目の取締役社長に就任した上岡和喜氏は、次のように語る。「会長は職人肌でプライドが高く、『できない』とは絶対に言いたくない人なんです。そのため、難しくて手間のかかる案件ばかりが来るようになり、同業他社からも依頼されるほどになりました。いつの間にかそうした一品物の注文ばかり集まるようになり、それだけで経営が回るようになったのです」。

量産品が中心の同業他社は、いったん量産用の製造ラインを構築すると、ラインを止めてまで一品物を製造しようとはしなくなる。そのため、一層、上岡軽合金鋳造所に一品物の注文が集まるようになったという。

「会長は職人肌で『できない』などとは絶対に言いたくない人」と語る上岡和喜取締役社長

「会長は職人肌で『できない』などとは絶対に言いたくない人」と語る上岡和喜取締役社長

発泡スチロール型をアルミ鋳造業界で初めて導入。木型に比べ手間もコストも少なく済み、複雑な形状も作れる

アルミ合金のインゴットを溶かすガス炉=本社工場

アルミ合金のインゴットを溶かすガス炉=本社工場

鋳物は、作りたい製品の形を木でつくり、その木型を砂で固めた後、木型を抜いてできた空間に高温で溶かした金属を流し込んで作る。空洞のある鋳物を製作する場合には、外側を形づくる木型の中に空洞を設け、その空洞に「中子(なかご)」と呼ぶ小さな木型を入れ、その隙間にも金属を流し込む。複雑な鋳物になればなるほど、中子の形や数が増えていく。知恵と工夫、そして根気を求められる作業だ。趣味で絵画も手掛ける勉会長は、そうした創意工夫に長けた人のようだ。

木型に代えて、製品の形状と同じ形を発泡スチロールで作成し、型に用いるフルモールド鋳造法をアルミ鋳造に導入したのも、勉会長の発案だった。きっかけは、40年近く前の1980年代にさかのぼる。国内有数の自動車用金型メーカーが鋳物の金型の試作品を、多くの鋳造業者に製作依頼をした。上岡軽合金鋳造所は当時、鋳鉄にフルモールド鋳造法が使われ始めていたのを参考に、同法を採用。「名だたる大手の鋳造屋さんたちと競争したのですが、〝良品〟として納めることができたのは当社だけでした」。「アルミ鋳造(成型金型)にフルモールド鋳造法を導入したのは、おそらく世界でも初めてだったと思われます」と、上岡社長は振り返る。

木型に比べ、発泡スチロールは加工が容易な上、「消失模型」と言って、発泡スチロールの型が入った状態の砂型に、高温で溶けた金属を流し込むと、気化し消失するため、砂型から抜き取る必要がない。複雑な形状の鋳物を作りやすい上に、手間もコストも少なくて済むのだ。

木型も発泡スチロール型も、それぞれの専門業者が製作する。木型は木工メーカー、発泡スチロール型は金属加工メーカーの場合が多い。鋳造業者は顧客から図面が送られてくると、それらの専門業者に転送する。専門業者はその図面を元に木型や発泡スチロール型を設計・製作し、鋳造業者に納品する。このため、鋳物の品質は木型や発泡スチロール型の専門業者に依存しがちだ。

発泡スチロール型の内製化へ職人を育て、CADシステムを習得。3軸加工機を備えた第2工場を新設

上岡軽合金鋳造所は、発泡スチロール型を使って鋳造する比重が次第に高まるにつれ、発泡スチロール型を発注している金属加工メーカーから、内製化を要請されるようになった。加工機で金属と発泡スチロールの両方を加工すると、金属加工に使う油が発泡スチロールに付着したり、発泡スチロールの粉末が工場内に飛散したりするので、材料を入れ替えるたびに半日かけて清掃する必要があり、作業面のロスが大きいというのだ。

そこで、上岡軽合金鋳造所は発泡スチロール型の内製化を決断。まず、砂型の上型と下型をどう組み合わせるかといった〝型メーカー〟のノウハウを持つ職人を育成。続いて、2016年頃に3D-CADを導入した。「すでに顧客との取引上、3D図面が不可欠になっていましたし、紙図面では書く人によって癖があるので、本当の形状がわかりにくいこともあるのですが、立体図だと簡単にわかるということもあって、導入を決めました」。当時は専務取締役だった上岡社長がCADシステムを担当。システムベンダーの講習会に参加したり、同システムを推奨してくれた同業者の下に3ヶ月通ったりして操作方法を学んだ。

2018年末には、本社から車で10分程度の場所に第2工場を新設。3軸モデル加工機を導入するとともに、CADシステムと連動させるため、CAMシステムを追加して、発泡スチロール型を内製化する体制を整えた。「本当は2019年の8月頃までCAD/CAMシステムを勉強する時間が欲しかったのですが、会長が2019年の年始回りの際に、あちこちで『新工場ができたから、どんどん注文をお願いします』とPRしてまわったので、1月中旬から案件が殺到。てんやわんやでした」と上岡社長は振り返る。「本来は自動で動かすはずのものを、準備時間が足りず、無理やり手で動かすなど、力業を駆使して、何とかやり遂げることができました」。上岡社長は当時を振り返り、「専務という肩書である以上、『できない』とは言いたくない。どうしても言いたくない。そこは会長の職人としての思いと通じるところかもしれません」と笑う。

現場の社員が育っていることをうれしそうに話す上岡社長

現場の社員が育っていることをうれしそうに話す上岡社長

上岡社長は24歳で上岡軽合金鋳造所に入社した。鋳造現場の全てをひと通り経験し、役員になると「現場の知識も技術も含めて、『誰よりもこの会社のことを知っていなくてはいけない』という意識を持つようになりました。もちろん今も、誰が抜けても私が代わりになれます」と胸を張る。ちなみに、現在2人いるCAD/CAM担当者は、上岡社長が手取り足取りで育ててきた人材だ。

圧倒的な短納期と超大型製品の鋳造を実現。国内で2社しかできない鋳包みも

ステンレスパイプを鋳包みした真空成形用金型

ステンレスパイプを鋳包みした真空成形用金型

発泡スチロール型の内製化は、同業他社が追随できない強力な武器をもたらした。〝圧倒的な短納期〟である。それまで〝型メーカー〟の都合に左右されていた型製作に要する時間を自社でコントロールできるようになったこと、また、壊れやすい発泡材の梱包や輸送の手間が自社内移動となり、省けるようになったことで可能になった。例えば、真空成形金型の場合、午後の時間帯に「何とか大急ぎでお願いします」と3Dデータが送信されてくるケースが多いのだが、同データを受領したらすぐに材料を手配。夕方までにCAD/CAMデータを制作し、3軸加工機に発泡スチロール塊を設置。自動で稼働させたまま帰宅する。翌朝、発泡スチロール型が出来上がっているのを確認し、鋳造工程の段取りをしてから、鋳造作業を開始。翌々日の朝に砂型からアルミ製品を取り出し、表面仕上げをして午後一番で出荷する。いわば「2.5日納品」が当たり前になっているという。

また、大型の3軸加工機のほかに大型クレーンなど重量の大きい鋳物を扱う設備も備えた。一般的な鋳物メーカーが「大物」と呼ぶ200kgクラスをはるかに超える、製品重量1.5トンまでの鋳造に対応できる。国内で1トン以上の〝超大物〟を製作できるアルミ鋳造業者は同社を含めて5、6社に過ぎない。

発泡スチロール型の内製化は、鋳造工程全体の技術力向上ももたらした。発泡スチロール型は「消失模型」と呼ばれるが、実は98%は消失するものの2%の残渣(ざんさ)とガスが残る。このため、上岡軽合金鋳造所は、それらの残渣やガスを完全に除去する独自の手法を編み出し、アルミ製品の品質を高めている。

また、「鋳包み(いぐるみ)」と呼ぶ、異種の材料や部品を鋳造により一体化、複合化する手法も得意としている。鋳鉄にはない、アルミ鋳造独特の手法で、真空成形用金型にパイプを融着させた製品などを製作できる。

普段は工場内の作業現場は企業秘密としているが、長年の付き合いがある同業者に懇願され、見学を認めたことがある。その同業者に丸一日見学してもらった後で感想を聞くと、「何をしているのか、まったくわからなかった」と述べたという。「当社の型の作り込み方は他の鋳造業者とは異なり、特殊なのです。同業者でも、現場を一日見ただけでは理解できないのです」と上岡社長は説明する。普段は工場内の作業現場は企業秘密としているが、長年の付き合いがある同業者に懇願され、見学を認めたことがある。その同業者に丸一日見学してもらった後で感想を聞くと、「何をしているのか、まったくわからなかった」と述べたという。「当社の型の作り込み方は他の鋳造業者とは異なり、特殊なのです。同業者でも、現場を一日見ただけでは理解できないのです」と上岡社長は説明する。

現在、同社のアルミ製品に使う型は、発泡スチロール型がおよそ7割と主流だが、木型を使う製品も3割ほどあるという。一品物ばかりではなく、量産とまではいかなくても年間に数十個といった注文もあるため、何度も使える木型も重宝しているのだ。そして、「ゆくゆくは木型も内製化していこうと考えています」(上岡社長)と言う。後継者不足などで木型業者が減少しているからだ。木型も発泡スチロール型と同様にCADシステムで設計できるので、木工のできる職人を育成すれば可能だからだ。現在、取引している5、6社の木型業者の動向を見ながら内製化の準備を進めていく考えだ。

ホームページ刷新を機に「経営理念」を事実上明文化、社風を彷彿

上岡軽合金鋳造所のホームページ

上岡軽合金鋳造所のホームページ

上岡社長はCAD/CAMシステムを導入する一方、バックオフィスのデジタル化にも取り組んできた。その一環として、2016年にはホームページ制作ソフトを導入、同社のホームページを一新した。その際、上岡社長が同社の「経営理念」を考案し、ホームページに掲載した。それまで明文化された経営理念はなく、社内で阿吽(あうん)の呼吸で共有されていた考え方をまとめたものであり、機関決定を経るなどして「正式に明文化したものではない」と上岡社長は語るが、以下の通り、同社の社風を彷彿(ほうふつ)させる内容だ。

上岡軽合金鋳造所のホームページに掲載された経営理念

上岡軽合金鋳造所のホームページに掲載された経営理念

2024年頃には、サーバーの機能をNAS(ネットワーク接続型ストレージ)に置き換えるとともに、セキュリティシステムを導入して、社内ネットワークの入口と出口を完全に防御する体制を構築。2025年には、販売管理システムと給与計算システムをクラウド化した。

製造業国内回帰の中、コスト優先の韓国、中国勢に技術力で勝負

上岡軽合金鋳造所の主要製品である金型は、韓国や中国の企業の台頭が著しい。だが、上岡社長は「様々な取引先から聞いたのですが、海外製品には安価以外のメリットはないようです」と断言する。自動車部品メーカーをはじめとする製造業の国内回帰の動きが目立つ中、同業他社にはない独特の技術力にさらに磨きをかけ、「アルミ鋳物屋の一社ではなく、〝上岡軽合金鋳造所〟という唯一無二の存在としての立場を確立したい」と将来への抱負を語る。

地元銀行主催の展示会に出品したオブジェが並ぶ本社社屋。奥にアルミ合金のインゴットが積まれている

地元銀行主催の展示会に出品したオブジェが並ぶ本社社屋。奥にアルミ合金のインゴットが積まれている

企業概要

会社名

有限会社上岡軽合金鋳造所

住所

栃木県栃木市藤岡町太田818

HP

https://www.kac-kamioka.co.jp

電話

0282-62-2399

設立

1972年10月

従業員数

21人

事業内容

アルミ鋳造製品の製造と発泡スチロール型の製作

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