製造業(その他)

品質を礎に、人材育成とデジタル革新で持続的成長を描く 有限会社小暮塗装(群馬県) 金属塗装

From: 中小企業応援サイト

公開日:2026年04月06日

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群馬県伊勢崎市の有限会社小暮塗装は、国内大手ATMメーカーの筐体塗装を長年にわたり手がけ、着実に実績を積み重ねてきた。終戦直後の創業以来、堅実な仕事を積み上げながら大手顧客との関係を育て、事業の基盤を整えてきた企業である。
2023年には3代目社長が就任し、これまでの取り組みを引き継ぎながら、納期管理の精度向上や職場環境の改善、デジタル化の推進など、次の時代に向けた体制づくりを進めている。(TOP写真: 2026年1月に刷新した企業ロゴを看板に採用)

品質で信頼を築いてきた歴史

本社外観

本社外観

「当社には代々、いわゆる営業職というものがありませんでした。既存のお客様から品質の良さを評価いただき、繰り返しご注文をいただくことができたからです。小暮塗装の3代目社長・小暮悟史(さとし)代表取締役は語る。小暮塗装は、小暮悟史氏の祖父である小暮孝作氏が終戦を機に中国戦線から帰還し、1947年に創業した。「祖父は絵を描くことが好きで、看板を描く仕事から始めたのが当社の原点です」

日本の高度経済成長の波にも乗り、やがて金属製品の塗装がメインの仕事となり、自動車部品の塗装という大量生産品の仕事を請け負うようになる。1956年に法人化するとともに、伊勢崎市内に新しい工場を建て、それまでの自宅兼職場から移転。当時、群馬県内初とも、関東初ともいわれた電着塗装設備も導入した。ただ、量産品に仕事が偏ることを避けるため、受注の比重を徐々に分散させ、多品種・小ロットの金属製品を扱う体制へと切り替えていった。小暮悟史社長は上智大学理工学部を卒業後、自動車関連会社を経て、2010年に小暮塗装へ入社。生産・塗装工程において10年以上の現場経験を積み、工程管理や品質改善にも主体的に取り組むことで、現場に根ざした知見を培ってきた。こうした実績を背景に、2023年11月、父である2代目社長・小暮正彦氏(現会長)から事業を継承した。

銀行ATMから産業用ロボットまで広がる塗装実績

現在、小暮塗装が手掛けている主な製品は、ATM(筐体)をはじめ、産業用ロボット部品や有料道路のETC(電子料金収受システム)、スーパーやコンビニなどでトラックからの荷下ろし・運搬に使うカート、それにUFOキャッチャーなどのゲーム機だ。
このうちATMについては、国内市場で主要な位置を占めるメーカーの塗装を長年任されてきた。新紙幣発行に伴い既存ATMの更新が相次いだ2023年には、月に1,000台ほどを手がけることもあった。また、近年は産業用ロボット部品の塗装にも対応している。スマートフォンの製造工程で使われるロボット部品も扱っており、製品の幅が広がっている。

安定的な事業基盤  品質・納期・価格への確かな評価

外観や塗膜を確認し、基準値との整合性をチェックする

外観や塗膜を確認し、基準値との整合性をチェックする

仕上げ工程で細部を整え、品質の安定性を確保している

仕上げ工程で細部を整え、品質の安定性を確保している

こうした取り組みの背景には、特定の業界や製品の需要変動に左右されない事業体制をつくるという考えがある。「一つの製品に集中すれば生産効率は上がりますが、需要が落ちた際の影響が大きくなります。だからこそ複数の製品に取り組み、需要の偏りを避けながら安定した受注構造を整えてきました」と小暮社長は語る。

同社はこの考えのもと、異なる業界の案件に継続的に取り組み、仕様や条件の違いに柔軟に対応してきた。多様な要求に向き合ってきた経験が対応力を高め、案件ごとに条件を調整しながら納期と品質を守ってきた実績が取引先の信頼につながっている。こうした姿勢が評価され、その信頼は既存の枠を超えて他業種へと広がっている。

「失敗は成功の母」──現場経験に根ざした人材育成とコミュニケーション」

製品の材質や形状に応じて、塗装条件を最適化する

製品の材質や形状に応じて、塗装条件を最適化する

大手メーカーからの信頼を支える、精度の高い塗装工程

大手メーカーからの信頼を支える、精度の高い塗装工程

前後工程との情報共有を行い、仕上がりのばらつきを抑える

前後工程との情報共有を行い、仕上がりのばらつきを抑える

小暮塗装では、大手顧客から求められる品質水準をどのように達成しているのだろうか。小暮社長はその背景について、次のように語る。
「現場での10年間の経験を通じて、生産工程全体の流れや、どのような場面でミスが起こりやすいかを学びました。人が作業する以上、環境や体調によって品質が左右されることもあります。そのため、エラーを防ぐためのフォロー体制や、風通しの良い職場づくり、チームワークの強化が重要だと考えています。
かつて自社においては経営者が現場の状況を把握し、自らの手で管理することが前提となっていました。しかし、組織が成熟し、扱う製品や業務が多様化するにつれて、そのやり方だけでは限界が見えるようになりました。現場の判断力や改善力を高めるためには、経営者が一人で抱え込むのではなく、次世代のリーダーや従業員が主体的に動ける環境が必要だと感じています。
社長に就任して間もない段階ではありますが、今はまさにその転換期にあると考えています。現場の力を引き出し、次世代の人材が成長できる風土づくりを進めることが、これからの持続的な発展につながると考えています」。

2025年10月初旬、社長就任から約2年を経て、小暮社長は改善標語「失敗は成功の母」を策定した。「品質改善を進めるためには、失敗を隠さず、成功の材料として前向きに捉え、共有して次に生かすことが大切だと考えています」と語る。

この考え方が従業員に自然に受け入れられた背景には、日々のコミュニケーションがある。小暮社長は標語を掲げるだけでなく、現場で起きている事象を丁寧に確認し、その背景や理由を把握してきた。作業の詰まりや判断の迷い、ミスが起こりやすい場面を放置せず、起点を見極めて必要な対応を整理する――こうした実務的なやり取りの積み重ねが、失敗を共有しやすい環境を生み、組織の姿勢を変えていった。
「現場の課題を把握し、従業員と共有したうえで持続可能な対策に結びつけることが重要だと考えています」と小暮社長は語る。

一方的に考えを伝えるのではなく、従業員の個性や状況に合わせて粘り強く対話することで、「失敗は成功の母」という考え方は自然と浸透していった。以前は問題が起きても対応が後手に回りがちだったが、いまは現場で状況を整理し、必要な措置を検討する姿が見られる。現場では主体的に動き、不具合の要因を共有しながら対応を進める姿勢が根付き始めている。トラブルに直面しても、対話を通じて解決に向けて動く従業員の姿は、コミュニケーションを軸にした組織づくりが着実に成果を上げていることを示している。

品質だけでは足りない――社会的価値と職場環境改善に挑む小暮塗装

「中小企業が生き残っていくためには、品質・納期・単価の三つだけでは十分ではないと考えています」小暮社長は語る。「品質・納期・単価を整えることはもちろん大切ですが、それだけで十分だとは思っていません。環境対応やCSR、SDGsといった課題に真摯に取り組むことが、これからの企業に求められる姿勢だと感じています。これまでは品質が一番の要だと考えてやってきましたが、今後は企業の社会的価値を高めることも重要だと考えています」。

まず職場環境の改善に着手した小暮社長。金属製品塗装の現場は、長年暑さが課題となっていた。排気装置の稼働もあり、従来はエアコン導入の効果が乏しいとされていたが、市の補助金制度を活用できることをきっかけに、2025年夏に導入を決断。従業員が少しでも快適に働ける環境を整えることを目指した。

6~7メートルある天井の高さを、作業者の多い区域のみ3メートル程度に下げて、エアコンの冷気の吹き出し口を設置。同時に、冷気のあたる区域をビニールカーテンで仕切るという工夫もした。その結果、従来は夏場に40℃を超えていた職場の気温が8~10℃低下。「こんなに涼しくなるなんて」と従業員みんなが驚き、喜ばれたという。電動ファン付き作業着も支給した。

天井を低くしてエアコンの吹き出し口を設置

天井を低くしてエアコンの吹き出し口を設置

快適な環境を保つために、作業場の全周を囲むビニールカーテン

快適な環境を保つために、作業場の全周を囲むビニールカーテン

技術力を基盤に、デジタル化・イメージ刷新で若い世代へ開かれた企業へ

バックオフィス業務における働き方改革として、勤怠管理・給与計算業務と会計処理業務をアウトソーシングした。事務処理を担当する従業員の勤務をフレキシブルにするのが狙いだ。「事務員として新しく入った方も、求人に応募してくれる人たちも、皆さん小さな子どもを抱えています。そういう方たちが気兼ねなく休みをとれるようにするために社内の業務量そのものを減らしました」(小暮社長)

職場環境や業務の改善と並行して、社内業務のデジタル化にも力を入れている。勤怠管理や販売管理、会計処理の各システム、UTM(統合脅威管理)はすでに導入されていたが、2023年には図面管理システムを新たに導入した。図面や関連資料を自動で読み取り保存でき、検索も容易で、見積書や納品書などの電子帳簿保存にも対応している。現在は過去の図面を順次入力し、データベース化を進めている。「生産履歴をPDF化して保管することで、作業の流れや結果をすぐに確認できるようになり、トレーサビリティーの強化につながっています」と小暮社長は話す。

社内の情報共有ツールとして、2025年9月にビジネスチャットを導入した。「例えば、業務上の気づきを約40人いる作業者のうち誰に伝えたかを忘れてしまい、本来伝えるべき人に届いていなかったということが以前はありましたが、ビジネスチャットを使うようになってからはそうした抜け漏れがなくなりました」。また、製品塗装後の完成品の写真共有も効率化した。従来は工場で撮影した写真を事務所でプリントアウトし、それを現場へ配布していたが、今ではスマートフォンで撮影した画像をそのままビジネスチャットにアップロードすれば共有が完了する。
「イレギュラーなことが起きた際にもすぐに情報が入るようになりました。例えば、製品の数が多い、素材の状態が良くない、表面にさびがあるといった情報を瞬時に共有できるため、お客様にメールで状況を伝え、判断を仰ぐこともタイムリーに行えるようになりました」

入庫検品作業

入庫検品作業

整然とした資材倉庫

整然とした資材倉庫

現在、事務職は事務所のパソコンでビジネスチャットを使っているが、工場の従業員は自分のスマートフォンで使用している。今後、工場内にもWi-Fiによるインターネット環境を整備し、従業員にタブレットなどを支給。図面管理システム、ビジネスチャットに続いてクラウド型の業務改善プラットフォームも導入して、デジタル化による業務プロセスの改善を進めていく方針だ。

そして今、小暮塗装では、新しい社名ロゴをはじめとするコーポレートイメージの刷新に取り組んでいる。「長年培ってきた技術力を大切にしながらも、若い世代にとって開かれた雰囲気を感じてもらえるよう、デザインにも工夫を凝らしています。製造業は若い世代にはとっつきにくい印象を持たれることがありますが、そうしたイメージをやわらげ、働きやすさや挑戦できる環境を積極的に発信していきたいと考えています」。
今回の刷新では、新しい社名ロゴを軸に看板のデザインも統一し、長年の歴史を感じさせる落ち着いた雰囲気を残しつつ、若い世代にも親しみやすい現代的な印象を与えられるよう、色使いやフォント、レイアウトに工夫を施している。老舗としての信頼感と、これからの時代に向けた開かれた姿勢を両立させたこのデザインは、会社の“顔”として新しいイメージを力強く発信する役割を担っている。

小暮塗装は、積み重ねてきた品質と技術を大切にしつつ、変化を柔軟に取り込みながら自らを更新し、より良い姿を目指してきた。
その姿勢は、変化を恐れず前に進むことを大切にする企業文化にも表れている。
これからも、環境の変化を成長の力に変え、確かな価値を積み重ねる企業として、次の時代へ着実に歩みを進めていく。

本社外観

本社外観

企業概要

会社名

有限会社小暮塗装

住所

群馬県伊勢崎市波志江町1853番地の1

電話

0270-25-2052

設立

1956年(創業は1947年)

従業員数

約40人(派遣を含む)

事業内容

金属製品の塗装事業

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