障がい者や高齢者に明るい姿勢で福祉サービスを提供 デジタル技術を様々に活用して地域にふれあいの輪を広げる ソアリー(岡山県)
公開日:2026年05月13日
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岡山県岡山市に本社を構える株式会社ソアリーは、誰もが住み慣れた場所で安心して暮らし続けることができる社会づくりを目指して、障がい者や高齢者を対象に、真心を込めた福祉サービスを提供している。2020年に訪問介護・居宅介護サービスの提供から事業をスタートし、わずか数年で障がい者を対象にした2か所の就労継続支援事業所(B型)を含む3つの事業所を持つ企業に成長した。
就労継続支援事業所の施設外就労の受け皿となる喫茶店やキッチンカーも運営している。篠塚美紀子代表取締役は、ソアリーに関わるすべての人たちが明るく笑顔で毎日を過ごせる環境を作るため、人と人とのふれあいを大切にしながらデジタル技術にも着目し、新しい事業の創出や業務の効率化に役立てている。(TOP写真:ソアリーが運営するキッチンカー「naru32」)
「自らが理想とする福祉サービスを提供する会社を立ち上げたい」との思いを抱いて介護福祉士から起業の道へ
ソアリーの篠塚美紀子代表取締役社長
「ソアリーのスタッフとのふれあいを通じて、日々の生活の中で幸せを実感してほしいと願いながら、利用者の皆さんに寄り添うことを何よりも大事にしています。利用者の皆さんが生きがいを持って楽しみながら毎日を過ごせるよう、これからもしっかりとサポートしていきます」。2020年に30代半ばでソアリーを設立し、訪問介護と居宅介護の事業に乗り出した篠塚社長は、事業活動の中で大切にしている思いを笑顔で話した。
篠塚社長は、20代半ばから約10年間、訪問介護事業所で介護福祉士として勤務した経験を持っている。日々の仕事を通じて訪問先の利用者一人ひとりとの絆を深める中で、自らが理想とする福祉サービスを提供する会社を立ち上げたいとの思いが強くなり、起業を決意したという。
「訪問介護の仕事に過酷なイメージを持っている人は少なくないと思いますが、様々な人生経験を持った人たちと、深く関わることができる日々の仕事は、私にとって新しい発見と気づきが連続する、楽しく、やりがいにあふれたものでした。大きな責任を伴う仕事なので、もちろんプレッシャーを感じる時もありましたが、お役に立っていることを実感できた時の充実感は、何ものにも代えがたいものがありました。福祉の仕事の魅力や奥深さを、自ら会社を経営することで発信していきたいと思ったんです」。篠塚社長はこのように、ソアリーを設立した当時の思いを振り返った。
2020年に訪問介護と居宅介護の事業所「スノー」開設、2022年には就労継続支援事業所「ツリー」、2024年に同じく就労継続支援事業所「aru work(アルワーク)」の運営に取り組む
aru workの建物
ソアリーは、65歳以上の要介護認定を受けている人を対象にした訪問介護や、障がいを持った人を対象にした支援を行っている。具体的には、利用者が住み慣れた自宅で生活していく上で必要な身体介護、家事援助、移動支援などのサービスを提供している。
篠塚社長が高齢者を対象にした訪問介護に加え、法的枠組みも異なる、障がいを持った人を対象にした居宅介護も事業として手掛けたのは、仕事を通じて障がいを持った高齢者と接する中で、障がい者福祉の重要性を深く認識していたからだ。「誰もが輝いた人生を過ごせるようサポートする企業でありたい。ソアリーを経営していく上で、幅広い福祉サービスを提供していきたい、という思いがありました」と篠塚社長は話した。
喫茶店にキッチンカー 就労継続支援事業所に通う人たちが、多種多様な仕事を経験できるように施設外就労の受け皿づくりに力を入れている
カラオケ喫茶&カフェバーをコンセプトにした喫茶店「naru」
ソアリーを設立した直後、篠塚社長は、障がいを持った人に生産活動やスキル向上の機会を提供する就労継続支援事業所(B型)の設立に動き出した。設立から2年後の2022年、岡山市南区福富西の住宅街に、一般企業で働くことが困難な障がいのある方の働く場として、「ツリー」を開設、さらに2024年には、岡山市南区彦崎のJR彦崎駅近くに「aru work」を開設した。今後、aru workに隣接した場所で、障がいを持った人を対象にした短期入所施設を開設する準備も進めている。「会社や事業所の名前は、親しみやすさやゆったりとした雰囲気を感じてもらうことを意識してインスピレーションを大切にしながら名付けています」と篠塚社長は明るい表情で、ネーミングの背景を明かした。
多様な福祉サービスを提供するために矢継ぎ早に新たな事業を立ち上げることは簡単ではなく、資金調達や人材の募集といった課題は、補助金の活用や知人のネットワークを頼りに乗り切ってきたという。「思い立ったら悩むよりも、とにかく行動に移す性格が幸いしたように思います。経営者の仕事がこれほど大変だとは起業前には想像していませんでしたが、後悔はまったくしていません。楽しみながら取り組んでいます」と篠塚社長は明るい表情で話した。
naruでの食事とカラオケを楽しむレクリエーション(ホームページから)
ソアリーは、就労継続支援事業所に通う人たちが、施設内で行う簡単な軽作業だけでなく、一人ひとりの個性に合わせて多種多様な仕事を経験できるよう、施設外就労の受け皿づくりにも力を入れている。その一つがツリーの開設に合わせて開店した、カラオケ喫茶&カフェバーをコンセプトにした喫茶店「naru」だ。木の温もりが感じられる落ち着いた雰囲気の中で、定食をはじめ、軽食、ドリンク、デザートを提供している。カツカレー、ミックスフライ定食、岡山産のレンコンを材料に、地元のコロッケ専門店直伝のレシピで作る「レンコンコロッケ」などが好評という。また、こども食堂の取り組みも定期的に行っている。
キッチンカーはノウハウを蓄積した飲食分野の事業を拡大するために導入 地域のスーパー、イベントや祭りの会場などで移動店舗として活躍している
移動店舗として活躍するキッチンカー naru32
就労継続支援事業所の利用者はnaruで、掃除、接客、調理補助といった業務に携わっている。さまざまな仕事をこなし、来店者とコミュニケーションを取ることで、働く上でのスキルや自信の向上につながっているという。naruの運営でノウハウを蓄積した飲食分野の事業を拡大するため、2023年にキッチンカーを導入した。「naru32」と名付けたキッチンカーは、地域のスーパーやイベント、お祭りの会場などで移動店舗として活躍。実績を積み重ねる中で、レンコンコロッケのほか、瀬戸内産のレモンを使った「瀬戸内レモネード」といった看板メニューも育っている。「揚げ物やドリンクなどのメニューは、出店する場所やイベントの客層に合わせて、臨機応変に変更しています」と篠塚社長。
利用者の賃金アップにつながる新しい仕事の開拓に力を入れる オリジナル缶バッジ、ボールペン、キーホルダーなど様々な商品づくりに取り組む
ソアリーが製作している岡山の方言をデザインした缶バッジのガチャガチャ
ツリーとaru workでは、商品の封入と封かん、箱折り、検品などの軽作業だけでなく、利用者の賃金アップにつながる新しい仕事の開拓にも力を入れている。障がいなどで自宅や施設から移動することが難しい人を対象に、ネイリストを派遣する「福祉ネイル」向けのネイルチップをはじめ、岡山の方言をデザインしたオリジナル缶バッジ、きれいなお花などを軸に封入したハーバリウムボールペン、ビーズでつくるダイヤモンドアートのキーホルダーなど、多種多様な商品づくりに取り組んでいる。これらの商品は、ソアリーのグループ企業が岡山市南区で運営する雑貨と服飾の店、「aru closet(アルクローゼット)」で販売している。
アナログの取り組みを大事にする一方で新しい商品開発に役立てるためデジタル機器も活用 ガーメントプリンターを導入してオリジナルのTシャツやトートバッグを製作している
ガーメントプリンターにTシャツをセットする様子
ソアリーは、人と人とのふれあいに軸を置いたアナログの取り組みを大切にする一方で、デジタル技術の活用にも目を向けている。2023年8月には、就労継続支援事業所で販売する商品のラインナップを拡充するため、デザインデータをTシャツなどの衣類に直接印刷することができるガーメントプリンターを導入した。ガーメントプリンターで製作したオリジナルのTシャツやトートバッグは、aru closetやキッチンカーが出店するイベント会場などで販売している。
無地のトートバッグにnaru32ロゴを印刷(ホームページから)
導入した機種は、一般的なガーメントプリンターの約3分の1のサイズで設置しやすく、カセット式のTシャツホルダーを備えているので、初心者でも簡単に衣類に印刷することができる。「Tシャツやトートバッグに印刷した画像は、高画質に仕上がるだけでなく、紙に印刷したような違和感のない見た目も実現しています。さまざまな機能をしっかり使いこなし、新しい商品開発に役立てていきたい」と篠塚社長は話した。
SNSを使った情報発信に注力 2022年4月には、ホームページ作成システムを導入しホームページの運営を内製化して、機動的に情報発信
ソアリーが情報発信に活用しているSNS(ホームページから)
ソアリーは、情報発信においてもデジタル技術を活用している。2022年4月にホームページ作成システムを導入し、設立以来初となるホームページのリニューアルを行った。ホームページ作成システムは、ホームページ運営の専門的な知識がなくても、直感的な操作で記事や画像を更新できる機能を備えている。以前は外部委託していたホームページの更新作業を内製化することで、機動的に情報発信できるようになった。
また、ブログやSNSによる事業所ごとの情報発信にも力を入れ、ホームページとも連動させている。キッチンカーの出店予定といった情報の投稿は、空き時間にスマートフォンを使って短時間で発信できるようになった。
スマートフォンを活用してブログの投稿を行う様子
介護業務支援システムを導入し、請求書の作成業務をデジタル化
介護業務支援システムを活用して請求書を作成する様子
介護事業を営む事業所は、サービス提供の記録や国民健康保険団体連合会への介護給付費請求書といったさまざまな文書を作成しなければならない。篠塚社長は、デスクワークを円滑にこなすため、会社を立ち上げた当初から介護業務支援システムを導入し、請求書の作成業務をデジタル化している。ソアリーの介護サービスの利用者は約80人に上る。「提出期限があるさまざまな書類を、負担を感じることなく作成できているのは、介護業務支援システムのおかげです。システムを提供する企業のフォロー体制も充実しており、電話での相談はもちろん、リモート操作によるサポートも受けることができるので、本当に助かっています」と篠塚社長は話した。
「スタッフには楽しんで仕事をしてほしい」 仕事の属人化の解消にもデジタル技術は役立つと考えている
ソアリーが情報発信に活用しているSNS(ホームページから)
訪問介護、就労継続支援の各部門で勤務するソアリーの従業員は、女性が9割を占める。子育て世代を中心とした従業員の負担を減らすため、業務効率化につながるデジタル技術の活用を、これからも進めていきたいという。今後、介護業務支援システムと連動し、タブレット端末で介護記録の入力や確認を行えるアプリケーションの導入も検討している。
「スタッフには楽しんで仕事をしてほしいと思っています。一人ひとりが存分に力を発揮できる仕組みを整えることは、利用者の皆さまに充実したサービスを提供する上で欠かせません。働きやすく、スキルアップにも取り組みやすい環境づくりに、これからも力を入れていきたい。ワークライフバランスを整える上で重要な、仕事の属人化の解消にもデジタル技術は役立つと考えています」と篠塚社長。従業員には、福祉系の仕事に携わる上でのキャリアの幅を広げる、介護福祉士や、社会福祉士、介護支援専門員といった資格の取得を奨励している。
バックオフィス業務について定額料金で相談できるアドバイザリーサービスを活用 創意工夫を大事にしながら人の輪を広げる
就労継続支援事業所のaru workの外観
篠塚社長が事業の拡大を図る上で常に大切にしてきたことがある。それは、迅速な決断と社外からの客観的なアドバイスだ。デジタルサービスの導入で長年取引している企業との間で、ICTをはじめ、人事、財務、労務といったバックオフィス業務について、定額料金で相談できるアドバイザリーサービスを2025年12月から新たに契約した。会社のさらなる成長を図るため、今後も外部の幅広い知見を活用していきたいという。
「会社を設立してから山あり谷ありでしたが、スタッフや利用者の皆さんのおかげで、ここまでやってくることができました。みんなのためにも、経営者としてさらに成長していかなければならないと感じています。これからも一人ひとりとのふれあいと絆を大事に、楽しみながら事業に取り組んでいきます」と篠塚社長は笑顔で話した。障がい者や高齢者に明るい姿勢で福祉サービスを提供し、地域社会で新しい雇用を生み出しているソアリー。創意工夫を大切にしながら、これからも多彩な活動を通じて、温かい人の輪を広げ続ける。
企業概要
会社名
株式会社ソアリー
本社
岡山県岡山市南区豊成3丁目11-1
電話
086-259-3361
設立
2020年3月
従業員数
30人
事業内容
訪問介護、居宅介護支援、就労継続支援B型
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