ICT施工の自社完結をモットーに、即断即決を重視する企業文化で堅実に成長 建設DXに取り組む エコワーク(静岡県)
公開日:2026年05月25日
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建設業界においてデジタル技術の活用が大きなテーマとなる中で、ICT施工の自社完結をモットーに、一歩進んだ建設DXに取り組む企業が、静岡県中央部の島田市で事業を展開している。道路舗装に強みを持ち、土木工事や廃材のリサイクル事業も手掛ける株式会社エコワークだ。同社は、ICT建設機械を用いた路面切削や施工履歴の蓄積、地上型レーザースキャナーを用いた点群測量において、県内トップクラスの実績を誇る。さらに、基幹業務においても建設業に特化した原価管理システムを四半世紀にわたって活用してきた。こうした先進的な取り組みを積み重ねてきた株式会社エコワーク。今、そのICT建設機械の保管エリアは、次の現場を待つ機械の待機場所ではなく、そのままICT施工を実体験できる研修センター「えこぱーく」へと発展した。社内外の従業員や学生に向けてICT教育を提供するなど、建設業界の未来を見据えた人材育成・技術普及活動に力を注いでいる。(TOP写真:ホームページの中の「えこぱーく」のコーナー)
ICT建設機械MC(マシンコントロール)施工を実演
静岡県を中心に道路をはじめとする様々なインフラ整備に取り組む 60年の歴史の中で常に最先端の機械、機器、技術を積極的に導入してきた
ICT建設機械MC施工で道路の舗装工事に取り組む
静岡県中部を流れ、江戸時代には東海道の難所として知られた大井川の両岸に位置する島田市。JR島田駅から北に向かうと、幹線道路沿いに近代的なデザインの建物が姿を現す。エコワークの本社だ。2階建ての建物の1階に備えたホールは、地域貢献の一環として住民に開放し、健康づくりのための体操や歌の練習、音楽の発表会といった地域コミュニケーションを育む活動に活用されている。
エコワークは、静岡県を中心に年間約400件の道路工事、土木工事を手掛ける。身近な駐車場や生活道路から、高速道路、堤防、空港など、多種多様な地域インフラの整備、維持に携わってきた。その歴史は、地域を代表する企業グループ、大河原グループが、道路分野の企業として大河原舗装株式会社を1965年に設立したことに始まる。設立当初から進取の気性を企業文化として育み、時代の変化に合わせて道路の建設や舗装に関する最先端の機械、機器、技術を積極的に導入してきた。1990年には、他社と共同でアスファルト廃材やコンクリート廃材を再生する静岡リサイクルセンターを設立。21世紀が間近に迫った1997年、環境(エコロジー)と経済(エコノミー)を両立した新しい企業イメージを打ち出すことを目的に、現在の「エコワーク」に社名を変更した。
「他社なら5日かかる工事を3日で仕上げる」 建設機械、人材を豊富にそろえ、設計、施工管理、施工まで全て自社で完結できる体制を強みにしている 国際規格の取得にも力を入れる
エコワークが所有する大型切削機
エコワークは60年の歴史の中で、大手建設会社のパートナー企業として、道路工事だけでなく、一般土木工事にも事業領域を拡大。静岡県内だけでなく東京都町田市に東京支店、神奈川県相模原市と山梨県笛吹市に営業所を設けて、事業エリアを拡大してきた。道路舗装に必要な大型アスファルトフィニッシャー、冷却装置付きタイヤローラ、大型切削機、小型切削機といった建設機械や路面清掃車を数十台所有するとともに、高度な管理技術や機械の操作技術に精通した人材を豊富にそろえ、設計、施工管理、施工まで全て自社で完結できる体制を強みにしている。製品やサービスの信頼性を客観的に示す国際規格の取得にも力を入れてきた。1999年にISO9001(品質マネジメントシステム)、2020年にISO14001(環境マネジメントシステム)、2021年にISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)をそれぞれ取得した。
エコワークの高野悟執行役員・総務部部長
「品質を大事にすることはもちろん、スピードと両立させることも重視しています。他の企業であれば5日かかる工事でも、エコワークなら安全と品質を損なうことなく、3日で仕上げる。そうした意識を従業員一人ひとりに浸透させるとともに、依頼主に安心して選んでいただけるために必要な取り組みを、常に考えています」。高野悟執行役員・総務部部長はエコワークの企業文化の特色についてこのように説明した。
2009年に情報化施工に着手。ICT施工を自社で完結できる体制を整備 2021年には、一連の自社のICT推進活動を「ECOWORK-i(エコワーク・アイ)」と命名、対外的に発信開始
GNSS受信機を使った測量を実践して見せる様子
エコワークは、2009年にICTを活用して高精度な施工を効率的に実現する情報化施工に取り組み始めた。道路の舗装工事は物流に与える影響が大きいため、他の工事以上に迅速さが求められる。知恵と工夫、即断即決を重視する企業文化を持つエコワークにとって、業務効率化に大きな効果が期待できるICTの活用に関心を示すのは、自然な流れだった。
施工業務のICT化を進める上で、GNSS(汎地球測位航法衛星システム)、TS(トータルステーション)、TLS(地上型レーザースキャナー)といった高度な測量システムのほか、上空からの測量に活用するためのドローンを段階的に導入。その一方で、所有している建設機械に半自動で施工を行うMC(マシンコントロール)機能を搭載していった。
エコワークは現在、起工測量、3次元設計、MC施工、路面切削厚測定、切削出来形管理、運行管理、温度測定、転圧温度管理、表層出来形管理、完成形状測定、3次元データの納品といった、全てのICT工程を自社完結できる体制を確立。また、男性中心になりがちな職場であるが、女性従業員一人で測量から設計までを担える環境も整えている。2021年からは、自社のICT推進活動を「ECOWORK-i(エコワーク・アイ)」と命名し、一連の取り組みを対外的に発信している。
2023年、国土交通省中部地方整備局が設けている中部DX大賞の奨励賞を受賞した
ICT建設機械を使って施工に取り組む
2019年から、細江金谷線舗装修繕工事(2023年)、国道362号舗装修繕工事(2022年)、国道473号橋梁改築工事(2022年)をはじめとする静岡県内の数々の道路舗装の現場でICT施工を実施。平均すると約20%の生産性向上が実現できたという。一連のICT施工に関する取り組みは高い評価を受け、エコワークは2023年、国土交通省中部地方整備局が設ける中部DX大賞の奨励賞を受賞した。「現在のICT施工の取り組みは、まだまだ通過点に過ぎません。コストはかかりますが、投資するだけの価値は十分にあると考えています。これからも新しい技術の導入に積極的に取り組み、建設ICTのトップランナーを目指していきたい」と高野執行役員は話した。
2023年に開設した建設ICT重機研修センター「えこぱーく」を舞台に自社のICTリソースを活用して、道路建設を担う次世代の人材育成にも取り組む
えこぱーくでTS(トータルステーション)を使った測定体験を実施
エコワークは、自社のICTリソースを活用して、道路建設を担う次世代の人材育成にも取り組んでいる。ICT教育の舞台として運営しているのが、島田市内に所有する建設用の重機や資材の保管ヤードを利用して、2023年に開設した建設ICT重機研修センター「えこぱーく」だ。
研修では、ガイダンスに加え、3次元点群データ収集の操作、道路の工事現場でのAR(拡張現実)の活用、地上型レーザースキャナーの操作、GNSS受信機による測量、TSによる測定、レーザー光を対象物に発射し、その跳ね返りを分析するLiDAR(ライダー=光による検知・測距)技術の実践、ICT建設機械による施工体験といった、様々な体験型実習を提供している。模擬道路の建設やICT建設機械の試乗もプログラムに盛り込み、自社の従業員向けだけでなく、他社の従業員や自治体の技術職員向けの研修も行っている。「ICT機器の操作だけでなく、安全意識や次の工程を見通す力を養ってもらうことも、意識してプログラムを策定しています。机上で学ぶ知識に、実践による体験が組み合わされば、大きな学習効果が期待できます。地域全体にICT施工を広げることに貢献していきたい」と高野執行役員は力強く話した。
えこぱーくでは、地元の建設系、電気系の高校生を対象にした研修も受け入れ、普段の授業では知ることが難しい建設業界の最先端の技術を学んでもらっている
エコワーク・建設ICT重機研修センター「えこぱーく」の案内
えこぱーくでは、社会人向けに加え、地元の建設系、電気系の高校生を対象にした研修も受け入れている。エコワークは、建設DXや働き方改革の進展など、建設業界の近年の動向と正確な情報を若い世代に知ってもらうために、えこぱーくの開設前から静岡県内の高校への訪問活動や出前授業に力を入れてきた。えこぱーくを活用することで、以前よりも学習効果が高いプログラムを提供できるようになったという。「普段の授業では知ることが難しい建設業界の最先端の技術を、見たり触れたりしながら実体験できるので、学生や先生からの反応も上々です」と総務部総務課の岡村達也係長は話した。
エコワークの岡村達也総務部総務課係長
高校生向けの研修では、主に若手従業員が指導にあたっている。高校生に親しみを感じてもらいやすいことに加え、指導する若手従業員にとっても、教育に携わる経験を通じた成長が期待できるという。「研修内容は、参加した学生の意見をフィードバックしながら、常に充実を図っています。ICT建設機械や様々なデジタル機器に触れ、現場の雰囲気を知ることで、若い人たちが建設の仕事のやりがいや魅力を感じ取ってくれたらうれしいですね」と岡村係長は笑顔で話した。
2024年2月に会社を紹介するアニメ動画「2分でわかるエコワーク」を作成 学生を中心に教師や保護者にも視聴してもらうことを意識
エコワークが作成したアニメ動画「2分でわかるエコワーク」。YouTubeで公開している
エコワークは2024年2月に、会社を紹介するアニメ動画「2分でわかるエコワーク」を作成し、YouTubeで公開している。アニメ動画は、学生を中心に、教師や保護者にも視聴してもらうことを意識して作成。道路が安全、安心な社会を維持する上で果たしている役割や、エコロジーとエコノミーが両立する未来を実現したいという思い、ICT施工の取り組みなどを内容に盛り込んでいる。また、ホームページやSNSを活用した情報発信にも力を入れている。「情報発信についての様々なアイデアを若手が中心になって自発的に提案してくれるので、本当に助かっています」と岡村係長は目を細めた。高校への働きかけや、デジタル技術を活用した情報発信の取り組みは、若い人材を対象にした採用活動で成果が出始めているという。
現場別原価管理システムにより収益把握徹底 原価管理を徹底する企業風土があるからこそ、価格競争に走ることなく品質を重視する受注方針を貫くことができている
2010年に導入した原価管理システムを活用する様子
エコワークは、建設業務だけでなく基幹業務でもデジタル技術を活用している。施工管理を担う現場の責任者が、実行予算書を効率的に作成し、材料費、労務費、外注費、経費といったコストを適切に把握する上で役立てているのが、建設業向けに特化した原価管理システムだ。
2010年から活用しているパッケージ式の原価管理システムは、過去に作成した類似工事の予算金額と実際原価を参考に、新たな実行予算を作成できる機能を備えている。見積の内容を基に実行予算を作成することや、あらかじめ予算項目をひな形として登録しておくことも可能だ。また、当初予算と実際金額をわかりやすく比較できる機能も、インフレによって費用が上振れするケースが増える中、予算超過を防ぐ上で非常に重宝しているという。
この、エコワークの原価管理を重視する姿勢は、四半世紀前の2000年ごろ、会社が設定した勘定科目や現場別人件費の配賦ルールに対応できるよう、独自に作成した現場別原価管理システムを導入したことにも現れている。だが、この思いを込めたこだわりのシステムは、法改正などに合わせて修正を加える際に、多大なコストと手間がかかる点や、情報共有のしにくさといった課題があった。そのため、法改正への対応や情報共有にすぐれた建設パッケージシステムへの移行を検討。旧システムからのデータ移管のしやすさや機能の拡張性も考慮し、現在の原価管理システムに変更したという。
「現場別原価管理を徹底する企業風土があるからこそ、価格競争に走ることなく、品質を重視する受注方針を貫くことができているのだと思っています。現場監督が原価管理に対する高い意識を持ち、効率的に実行予算書を作成して適切にコスト管理を行う上で、現在の原価管理システムは欠かせない存在になっています」と高野執行役員は話した。
2024年に勤怠管理システムを導入し、以前は紙ベースで行っていた従業員の勤務時間の記録をデジタル化した
エコワーク本社のオフィススペース
エコワークは、原価管理システム以外の基幹業務においても、デジタル化を進めている。2024年に勤怠管理システムを導入し、以前は紙ベースで行っていた従業員の勤務時間の記録をデジタル化した。この勤怠管理システムは、スマートフォンなどの端末を使ってクラウド上で打刻できる機能を備えており、直行直帰が多い工事現場から出退勤時間を記録することができる。勤怠管理システムは給与計算システムと連動しているので、紙で集計した各従業員の勤務記録を転記する手間もなくなった。「業界内の慣例として現在もアナログで行われている業務を、どんどんデジタル化していくことで、更なる業務効率化を実現していきたい」と高野執行役員は抱負を述べた。
2035年に売上高100億円 従業員規模の拡大や県外での営業活動と対応力の強化を図りながら、更なる成長を目指す
エコワークの本社の外観
エコワークは、大河原高広代表取締役社長の舵取りの下、今後、大型工事を単独で受注できる体制を整えることで、2024年9月期の時点で55億円の売上高を、2035年に100億円とする目標を掲げている。ICTをはじめとする最新技術を積極的に導入することで、高品質な施工を効率的に実現してきた実績を持つエコワーク。従業員規模の拡大、県外での営業力強化、変化する事業環境への対応力の向上を図りながら、さらなる成長を目指してデジタル技術の活用に力を入れる。その取り組みは、成長を志向する中小企業のモデルケースの一つとなるに違いない。
企業概要
会社名
株式会社エコワーク
本社
静岡県島田市中溝町1703
電話
0547-37-3194
設立
1965年10月
従業員数
109人
事業内容
特定建設業(土木、とび・土工、鋼構造物、舗装、造園、水道施設業)、各種舗装材料販売、舗装用機械レンタル
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