流通業(卸)

創業100年 TOYO TIREとリトレッドタイヤ普及へ 髙瀬商会(新潟県)

From: 中小企業応援サイト

公開日:2026年06月11日

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新潟県最西端の糸魚川市で昭和初期に創業した株式会社髙瀬商会は、摩耗などで寿命を迎えたタイヤを再生する「リトレッドタイヤ」の販売で知られる企業だ。グループのトーヨーリトレッド株式会社、新潟トーヨー株式会社と連携し、多様なタイヤニーズに対応している。近年は、地球環境問題への関心の高まりに加え、中東情勢の影響によるエネルギー問題や物価高騰を背景に、環境にやさしく、省資源かつ低コストを実現するタイヤ再生技術への注目が高まっている。バス・トラック事業者を中心に顧客が全国各地に広がる中、請求書や納品書などの作成・発送業務をデジタル化し、社員の負担を大幅に軽減した。(TOP写真:リトレッドタイヤは新品タイヤに比べて資源使用量や製造時のCO2排出量を大幅に抑えられ、環境配慮型のタイヤとして注目されている)

資源使用量を70%削減、CO2も2/3カットのリトレッドタイヤを製造する国内屈指の企業

髙瀬商会本社

髙瀬商会本社

リトレッドタイヤは、一定期間使用したタイヤの基礎部分である台タイヤを再利用し、接地部(トレッド)に残った古いゴムを取り除き、新しいゴムを加硫・加圧して再生したタイヤだ。価格は新品タイヤの6~7割程度に抑えられ、コスト面だけでなく環境にもやさしい。業界団体である更生タイヤ全国協議会によると、新品タイヤに比べ、資源の使用量を約70%削減し、CO2排出量も3分の1程度に抑えられるという。

こうしたリトレッドタイヤを手がける国内屈指の企業が、1931年創業(法人化は1958年)の髙瀬商会だ。髙瀬社長の祖父・甚衛(じんえい)氏が中心となり、タイヤの販売・修理事業をスタートさせた。「当時はリヤカーや荷車が主流で、自動車はまだ少なかったものの、祖父は『将来、日本でも車が普及する』と考え、自動車の専門学校で技術を学びました」と髙瀬社長は話す。舗装道路が少なかった当時は、タイヤのパンクも多く、修理やメンテナンスの需要が高かった。そうして現場で培われた技術と経験が、やがて現在のリトレッドタイヤ事業へと発展していった。

TOYO TIREと提携し新会社設立 リトレッドタイヤの生産でミシュランタイヤとも提携へ

2000年操業開始のトーヨーリトレッド糸魚川工場(写真:トーヨーリトレッドホームページから)

2000年操業開始のトーヨーリトレッド糸魚川工場(写真:トーヨーリトレッドホームページから)

戦後の1948年、髙瀬商会は通産省(当時)からタイヤ更生工場の指定を受け、業界で注目を集める存在となった。さらに、自動車の普及が進む中、タイヤメーカー大手の東洋ゴム工業(現TOYO TIRE)の新潟県総代理店となり、同社製タイヤの販売を開始。1965年には、新潟県のほぼ中央に位置する長岡市で新潟トーヨー株式会社を設立した。

タイヤへの愛が伝わる(写真:新潟トーヨー株式会社のホームページから)

タイヤへの愛が伝わる(写真:新潟トーヨー株式会社のホームページから)

大手メーカーとの連携は、その後の新工場の建設へとつながった。髙瀬商会の工場は当初、現本社近くにあったが、事業拡大に伴って手狭となり、糸魚川市内の姫川産業団地への移転を検討していた。同じ頃、自社工場の老朽化が進んでいた東洋ゴム工業から共同出資の話が持ち上がり、1999年にトーヨーリトレッド株式会社が誕生。翌2000年に新工場が完成し、リトレッドタイヤの生産が始まった。現在は髙瀬社長の弟・昌洋氏が社長を務めている。

大手メーカーのバックアップと、老舗企業として培ってきた高い技術が融合したトーヨーリトレッドの評価は高い。リトレッドタイヤに求められるのは価格の安さが多いのだが、髙瀬商会はそれ以上に「安心・安全・快適」をモットーに品質にこだわる。この企業文化は、トーヨーリトレッドにも受け継がれている。こうした姿勢が評価され、リトレッド事業にも積極的な世界的タイヤメーカーのミシュランタイヤと2005年に提携。また、2010年には、北海道小樽市の東洋ゴム工業の系列会社を事業統合し、トーヨーリトレッドの生産拠点は糸魚川と小樽の2カ所体制となった。

全国に広がる顧客 増大した業務負担の軽減に向けてデジタル化に着手

事務作業の業務効率化を進める髙瀬社長

事務作業の業務効率化を進める髙瀬社長

新潟トーヨー、トーヨーリトレッドの2社を束ねるホールディングス的な役割を担う髙瀬商会は、販売事業に特化し、顧客は「北海道から鹿児島まで、沖縄を除く日本全国に広がっている」(髙瀬社長)という。事業の拡大に伴い、納品書や請求書などの作成・発送作業が増大。作成した書類を封筒に入れて郵送していたため、とくに繁忙期には担当社員が長時間にわたり業務に追われていた。慌ただしい業務の中で書類の不備が発生し、顧客からクレームや問い合わせが寄せられることもあった。「お叱りの電話に対応することで、担当社員のストレスはさらに増していた」と髙瀬社長は振り返る。人員が限られる中小企業にとって、実に頭の痛い課題だった。

こうした状況を改善しようと、2024年末、デジタル化の検討を開始した。請求書や納品書の作成・発送業務をデジタル化し、オンラインで送付する仕組みだ。もちろん導入当初は不安もあった。管理部副部長の松田努氏は、「何十年もの間、手作業で続けてきた業務をデジタル化することに、不安や抵抗感がありました」と話す。しかし、「導入を支援するデジタルサービス会社が寄り添ってくれたことで、思いのほかスムーズに導入できた」と振り返る。

社員の負担軽減で働きやすい職場を実現 ユースエール認定企業に

2025年3月にグループ2社はユースエール認定企業となった(写真:ホームページから左:トーヨーリトレッド髙瀬昌洋社長。右:新潟労働局長)

2025年3月にグループ2社はユースエール認定企業となった(写真:ホームページから左:トーヨーリトレッド髙瀬昌洋社長。右:新潟労働局長)

2025年8月にシステムの稼働が始まると、社員の負担は大きく軽減された。「書類の作成や発送は夕方の1時間ほどで終えられるようになった」と松田氏は話す。顧客側も、紙でのやり取りからデジタル化への変更をスムーズに受け入れた。時間的な余裕が生まれたことで、慌ただしく時間に追われていた職場の雰囲気も大きく変わった。今では、働きやすい職場環境づくりにつながっている。

聖徳太子の「和を以て貴しとなす」を座右の銘とする髙瀬社長は、こうした変化を強調する。「時間に追われた余裕のない雰囲気では、いい仕事はできません。余裕を持って働くことで、社員の満足度が高まります」。その結果、ミスの減少によって顧客の満足度も向上するという好循環が生まれた。さらに、2024年10月に郵便料金が30年ぶりとなる大幅な値上げとなったが、郵送からオンライン送信へ切り替えたことで、コスト削減にもつながった。

今回のデジタル化を通じて、髙瀬商会ではDXへの不安や抵抗感が払拭され、その効果を実感したことで、今後は受注システムや勤怠管理など、さらなるDX推進に取り組む考えだ。このほか、社員旅行の隔年実施や社員同士の懇親会への費用補助など、働きやすい職場環境づくりにも力を入れてきた。こうした取り組みが評価され、髙瀬商会とトーヨーリトレッドの2社は、若者の雇用管理が優良な企業としてユースエール認定を受けている。

リトレッドタイヤの国内普及率30%目指して委託加工や展示会でのPRに注力

リトレッド作業の抜粋(写真:ホームページから)

リトレッド作業の抜粋(写真:ホームページから)

髙瀬商会は2031年に創業100年の節目を迎える。それに向けて、グループ3社の売上高を「100億円に伸ばしたい」と意欲を見せる。国内の自動車産業は停滞気味ではあるが、現在の環境を好機ととらえ、リトレッドタイヤの普及拡大に力を入れていく考えだ。欧米諸国の普及率が50%前後に達しているのに対し、日本では20%程度にとどまる。「日本の道路は狭く坂道も多い。近年の猛暑の影響もあり、欧米に比べてタイヤへの負荷が大きい」と髙瀬社長。タイヤに厳しい環境のため、バス・トラック事業者では性能面で優れる新品タイヤを選ぶ傾向が強く、リトレッドタイヤの普及を妨げる一因になっているという。

一方で、SDGsやカーボンニュートラルへの関心が企業の間で高まっている。省資源やCO2削減につながるリトレッドタイヤにとって、これは追い風となる。こうした中、髙瀬社長は「委託加工にいっそう力を入れたい」と話す。これは、バス・トラック事業者などが自社で使用したタイヤを、製造会社であるトーヨーリトレッドに委託しリトレッドする仕組みだ。事業者側は使用条件や管理状況などタイヤの履歴を把握しているため、品質の安定したリトレッドタイヤを製造できるメリットがある。「適切な管理を行っている事業者こそ、委託加工を利用してほしい。こうした取り組みを積み重ねることで、普及率を30%程度まで高めたい」と訴える。

このほか、日本最大のトラック関連総合展示会「ジャパントラックショー」(2年ごとに開催)では、TOYO TIREのブースでリトレッドタイヤを展示するなど、環境にやさしいタイヤの認知拡大にも努めている。

2026ジャパントラックショーのTOYO TIRESブースではリトレッドタイヤが展示され、イベントでは髙瀨商会の小池執行役員も登壇(登壇男性左)

2026ジャパントラックショーのTOYO TIRESブースではリトレッドタイヤが展示され、イベントでは髙瀨商会の小池執行役員も登壇(登壇男性左)

商工会議所会頭として地域活性化にも尽力 若者のUターン促進事業を実施

2025年11月に東京都内で開催された糸魚川出身者と企業の交流会(商工会議所ホームページから)

2025年11月に東京都内で開催された糸魚川出身者と企業の交流会(商工会議所ホームページから)

グループ3社を率いる髙瀬社長は、2021年から地元・糸魚川商工会議所の会頭も務め、地域活性化にも力を注いでいる。2026年1月の商工会議所新年賀詞交換会では、中小企業を取り巻く環境が厳しさを増していると指摘した上で、糸魚川の魅力を市外に発信し、「外で稼ぐ、外から稼ぐ」ことの重要性を会員企業に呼びかけた。商工会議所としても、日本の国石・ヒスイの産地として知られる“石のまち糸魚川”をPRするため、関連グッズの開発やガイドブックの作成・配布などに取り組んでいる。

髙瀬社長は、担い手不足の深刻さにも言及した。「さまざまな産業で企業の存続に関わる問題となっている」と危機感を示す。北陸新幹線で東京まで最速2時間余という糸魚川は、アクセスの良さゆえに多くの若者が都心部へ流出しているという側面もある。このため商工会議所では、若者を呼び戻そうと2022年度から糸魚川市出身者のUターン促進事業をスタート。市外在住の学生や社会人5年目までの若者を対象に、東京都内などで交流イベントを開催している。
最近は、都心部での家賃や住宅価格の上昇を背景に、「結婚やマイホーム取得など将来を見据え、Uターンを真剣に考える若い社会人が増えてきた」と髙瀬社長は話す。その上で「糸魚川へ戻りたいと考える若者たちの受け皿となるよう市内企業が、働きがいのある仕事と働きやすい職場環境を整えなければならない」と訴えている。

地域のリーダー的存在として糸魚川の魅力を発信 未来を力強く見据える

髙瀬社長は自社の成長とともに地域の未来を見据える

髙瀬社長は自社の成長とともに地域の未来を見据える

髙瀬商会は、創業時から培ってきた確かな技術を礎に、リトレッドタイヤを通じて持続可能な社会の実現と経済性の両立に取り組んでいる。デジタル化による業務効率化も、単なるコスト削減にとどまらず、社員の心の豊かさと顧客満足の向上という好循環を生み出した。さらに、地域のリーダーとして髙瀬社長は、自社の成長だけでなく、糸魚川の魅力を発信し、若者が戻りたくなる環境づくりにも力を注ぐ。企業と地域がともに成長しながら、髙瀬商会は創業100年の先にある、より明るい未来を力強く見据えている。

企業概要

会社名

株式会社髙瀬商会

本社

新潟県糸魚川市寺町3丁目10番15号

HP

https://www.takaseshoukai.co.jp/

電話

025-552-2022

設立

1931年8月

従業員数

28人

事業内容

リトレッドタイヤ販売、各種自動車用タイヤ販売、各種運搬車の修理・販売、各種自動車用品の販売 

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