300年以上続く「変化し続ける老舗」 DXとECで次の100年へ 大清(山形県)
公開日:2026年07月09日
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株式会社大清(だいせい)は山形県米沢市で300年以上の歴史を刻んできた地域最古級の老舗企業だ。創業以来、時代の変化や顧客ニーズに合わせて事業領域を柔軟に広げながら、堅実な経営を続けてきた。現在は「住まいと産業資材のプロショップ」として建設資材の卸販売を主力とする一方、ECサイトを活用した一般消費者向け市場の開拓にも力を注いでいる。また、従業員とその家族の幸せな生活の実現を目指し、「健康経営優良法人」の認定を取得するなど健康経営にも積極的に取り組む。2023年には「DX推進部」を設置し、独自開発のPOSシステムを構築。長い歴史の中で培ってきた経験とデジタル技術を融合させることで、大幅な業務改革を実現している。(写真:大正期の大清金物店 ホームページから)
元禄元年に生糸や小間物を扱う「大坂屋清兵衛」から始まり、現在は建設資材卸として成長を続ける
(写真:本社の「商業資料室」に展示されている江戸時代の店舗を復元した実物大模型)
大清は元禄元年(1688年)、大坂(現在の大阪)から米沢に移り住んだ中村清兵衛氏が、生糸や小間物を扱う店「大坂屋清兵衛」として創業した。町人文化が栄え、大坂商人や近江商人、伊勢商人が新天地を求めて全国へ進出した時代であり、中村清兵衛氏もその一人だったとみられている。
昭和初期には国産初の自動三輪車の販売も手掛けた(写真:ホームページから)
明治期に入ると、小学読本の出版や量器製作に乗り出し、さらには東京・横山町に支店を開設して輸入品と米沢産品の交易を行うなど、事業の拡大と多角化を進めた。大正期の「米沢大火」と呼ばれる大規模火災を経て、金物や建材の販売業へと転換し、商号も「大清金物店」に改称。
昭和初期には国産初の自動三輪車の販売も手掛けたが、戦時下となり、政府の統制による生活必需品の配給業務を担った。
終戦後は金物商として再出発し、1953(昭和28)年に「株式会社大清金物店」を設立。その後、建設資材の卸販売が主力事業へと成長したことを受け、1964(昭和39)年に現在の「株式会社大清」へ社名を変更した。
プロショップ東店 2Fには本社事務所がある
現在は米沢市内の粡町(あらまち)通りを挟んで「プロショップ東店」と「プロショップ西店」の2店舗を構えるほか、同市内の工業団地に鋼材を中心に扱う営業拠点と倉庫機能を備えた「鉄鋼センター」を設置している。プロショップ東店の3階建て社屋には店舗や本社事務所に加え、江戸時代の店舗を復元した実物大模型や、昭和初期の看板、大福帳(売掛帳)、引札(チラシ)などを展示する「商業資料室」がある。300年以上にわたる歴史の歩みを今に伝える施設だ。
現在の取扱商品は配管資材、住宅設備機器、ポンプ、機械・工具、土木・建築金物、鋼材など多岐にわたり、売上の約90%をBtoB(企業向け取引)が占め、そのうち約半分をパイプや継手、バルブ、消火栓器具、プラント配管、計量機器などの配管資材が占めている。
無借金経営と豊富な在庫を強みに顧客から厚い信頼を獲得する
中東情勢が緊迫化する中、「当社は在庫に余裕があるので重宝されている」と話す中村友彦代表取締役社長
株式会社大清は2002年に無借金経営を実現し、現在まで継続している。堅実な財務基盤を維持しながら豊富な在庫を確保している点も大きな強みとなっている。ホルムズ海峡封鎖など中東情勢が緊迫化する中で、塩化ビニル製パイプをはじめとする資材の需給ひっ迫が懸念されている。
中村友彦代表取締役社長は「当社は店舗と大きな倉庫を備えているため、同業他社と比べて在庫に余裕があり、お客様に重宝していただいています」と語る。中村社長は、2018年に創業家14代目の経営トップに就任した。「当社は当座比率がかなり高いのですが、父をはじめとする先代の経営陣が築いた健全経営のおかげだと思います」と、先人への感謝を口にした。
ECサイト「よろずや清兵衛」を10年展開 新ブランド「OSAKAYA」でBtoC市場に挑戦
ECサイトやDXを担当する中村真也取締役常務
ECサイトによる通信販売に取り組み始めたのは2011年頃。「最初は配管資材を米沢以外の地域にも販売したいという思いから始めました」と振り返るのは、中村社長の弟である中村真也取締役常務。ちなみに大清の兄弟経営は祖父の代から3代続いており、同社の伝統の一つとなっている。
配管資材やポンプ部品は、型番違いや互換品、後継品が多く、適合する製品の判別が難しいため、顧客からの問い合わせも少なくない。そこで大清は、商品の在庫情報だけでなく、「適合機種一覧」や「よくある組み合わせ」などの情報も積極的に発信。専門性の高い情報提供によって顧客の利便性向上を図り、購買につなげてきた。
最初に開設したのは「よろずや清兵衛」。その後、「よろずや清兵衛 YAHOO!店」「よろずや清兵衛 ポンプ部品専門店 YAHOO!店」へと展開し、販路を広げていった。
オリジナル商品の焚火台(写真:ホームページから)
さらに2023年には、新ブランド「OSAKAYA」を立ち上げるとともにオリジナル商品の開発に着手。一般消費者向け市場の開拓を本格化させた。翌2024年には、歯車のモチーフの中に、山形で古くから信仰を集める「出羽三山」をあしらったロゴが印象的なブランド専用サイトも開設した。
ブランド立ち上げのきっかけについて、中村常務は「既存のお客様とは異なる新しい市場を開拓したいと考え、鉄鋼センターで扱う鋼材を活用して、まず焚火(たきび)台を作ることから始めました」と話す。「無骨・ブラック・シンプル」をコンセプトに掲げるOSAKAYAでは、焚火台に続いてシェラカップや植木鉢などの鉄製オリジナル商品を開発。中村社長も「これまでは仕入商品の販売が中心でした。利益率を高められるオリジナル商品には以前から魅力を感じていました」と語る。
セレクトアイテムはブラックカラーのものが中心(写真:ホームページから)
現在はブランドコンセプトに合致する著名インテリア雑貨メーカーの商品も取り扱い、OUTDOOR、GREEN、TOOLの3カテゴリで約500点の商品を販売している。今後は実店舗での販売も予定しており、ECサイトで購入した商品を店舗で受け取れるサービスへの対応も進めている。インスタグラムやフェイスブックなどのSNSも活用して情報発信を続けており、中村社長は「リピーターも売上も徐々に増えています」と手応えを語る。
SNSと動画で情報発信を強化 ECで全国・海外市場の開拓目指す
大清のYouTubeチャンネルには、生活のヒントとなる動画が400本以上掲載されている
ECサイトのPRにとどまらず、動画を活用したSNSでの情報発信にも力を入れている。YouTubeの公式チャンネルでは商品の使い方や活用方法を中心に多数の動画を公開しており、中村社長自身も積極的に出演。最低でも月1本のペースで動画を製作・配信している。
7.1万回視聴された屋根の雪下ろしが簡単になるイースライダー
EC事業の将来について、中村社長は次のように語る。「現在は米沢を拠点に商売をしていますが、ECであれば地域にとらわれることなく、全国、さらには海外へも商品を販売できます。将来的にはネット販売の比率を全売上高の半分程度まで高めたいと考えています」。
ECの拡大は販路だけでなく、人材確保の面でも大きなメリットがあるという。「雇用も地元に限定する必要がなくなります。現在もテレワークで働く従業員がいますが、ECビジネスであれば東京や海外の人材とも一緒に仕事ができます。EC事業の拡大と多様な人材の活用によって、会社をさらに成長させていきたいですね」。
300年以上にわたり時代の変化に対応してきた大清。中村社長は、地域に根差した事業を大切にしながら、全国、そして海外へと販路を広げる未来を見据えている。
従業員と家族の幸せを支える健康経営で「健康経営優良法人」に2年連続認定
厚生労働省のサイトで大清の特別休暇制度が紹介された(写真:ホームページから)
大清は、従業員とその家族が幸せな生活を送れるよう、健康経営を経営の重要な柱の一つに据えている。厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針)に基づき、メンタルヘルス不調者への対応だけでなく、円滑なコミュニケーションの促進や快適な職場環境づくりを基本方針に掲げる。こうした取り組みが評価され、経済産業省と日本健康会議が運営する「健康経営優良法人」に2024年、2025年と2年連続で認定された。
従業員は入社時に、がん・心疾患・脳血管疾患を対象とする三大疾病対策保険に加入する。万一発病した場合には本人や家族に保険金が支払われるほか、復職時には会社が勤務時間や業務内容を調整し、円滑な職場復帰を支援する仕組みを整えている。日々の健康管理にも力を入れており、毎朝の出社時には、健康管理システムを通じてメンタルの状態や体温、血圧などを入力。社有車や営業車を運転する従業員はアルコールチェックも実施する。メンタル面で不調を感じた際には、専門医にオンラインで相談できる体制も整備している。
2022年には「二次健診特別休暇」を導入した。定期健康診断で有所見と診断された従業員に二次健診の受診を促すための制度で、原則半日の有給休暇を取得できる。健診結果が出てから1ヶ月以内に利用しなければ失効するため、受診を後押しする効果もある。一方で、一次健診で「異常なし」と診断された人には1万円分の商品券を支給している。中村社長は「異常のない人は29人中3人ほどで、全員女性です。男性は何かしら不調を抱えている人が多いですね」と話す。
また、社内コミュニケーションの活性化を目的に「サンキューポイント」制度も導入している。従業員一人ひとりに毎月1000ポイントを付与し、仕事を手伝ってくれた人などに感謝の気持ちとして贈り合う仕組みだ。貯まったポイントは賞与に上乗せする形で現金支給する。中村社長は「毎月たくさんポイントを集めて“殿堂入り” のような存在になっている人もいます」と笑う。同制度はクラウド型人事評価システムの導入時に活用を始めたもので、「“アメとムチ” でいえばアメの部分として取り入れました」と、その狙いを説明する。
DX推進部を新設し現場の声を反映した独自開発の「D-POS」で業務改革を推進
数万点に上る在庫商品をデータベース化(写真:プロショップ西店)
2023年に「DX推進部」を発足したきっかけは、システムの設計・開発ができる人材の入社だった。中村常務は当時を振り返る。「それまで当社では、すべての売上を手書きの伝票で管理していました。そのため、商品コードもなく、どの商品が何個あるのか把握しきれていませんでした。期末の棚卸を行うまで経営状況も見えにくく、以前から改善したいと考えていたのです。そこに、システム開発ができる人材が加わったことから、その社員を部長とするDX推進部を立ち上げ、本格的なDXに着手しました」。
まず取り組んだのは、数万点に及ぶ在庫商品のマスター化だ。商品名、商品コード、価格、仕入先、サイズ、色などの情報を一元管理するデータベースの構築に着手。商品知識が豊富な中村常務と入社間もないDX推進部長が協力しながら約1年半かけてマスター登録を進め、大清の頭文字を冠した、大清POSシステム、「D-POS」を完成させた。「既成のパッケージソフトとは異なり、見積書作成や商品検索、在庫確認などを自分たちの業務に合わせて使いやすく設計できました。在庫数も棚卸を待たずにリアルタイムで把握できます」と中村常務は成果を語る。(POSシステム:販売情報や在庫状況を一元管理する仕組み)
運用開始後も、イレギュラーな売上処理などによって発生する不具合を一つずつ解消していった。「システム会社が開発したシステムを修正する場合は、費用も時間もかかります。しかし自社開発なので、必要な修正に迅速に対応できます」。また、想定外の事象や不具合につながる情報については、DX推進部発足直後に導入したビジネスコミュニケーションツールで全従業員が共有。現場の声をシステム改善に生かす体制も整えた。
従来は担当者ごとに仕入れ判断が異なっていたが、D-POSの稼働によって在庫管理の標準化も進んでいる。2026年中には商品ごとの適正在庫数を算出し、誰でも適切な仕入れができる仕組みを構築する予定だ。さらに売上データを活用し、経営指標の分析や経営判断の高度化にもつなげていく。
DX推進部長は動画編集も担当
クラウド型請求管理システムを導入し請求書発行作業の大幅な省力化を実現
「無骨・ブラック・シンプル」をコンセプトに掲げるオリジナルブランドOSAKAYAのサイト
DXの一環として、請求業務のデジタル化も進めた。見積書や納品書、請求書などの帳票システムは自社で開発し、自社サーバー上で運用。一方、電子請求についてはクラウドサービスを活用し、請求書の作成から送付までを効率化している。
請求書などのテンプレート作成やテスト運用を重ねた上で、2026年2月から本格稼働を開始。顧客指定の書式に対応する特殊請求を除き、現在は請求業務全体の95%を同システムで処理している。月300~400件に上る請求書のうち、4分の3を電子請求へ切り替えた。残る4分の1は電子メールアドレスを持たない顧客向けだが、こちらも同システムの郵送代行サービスを活用。パソコン上で操作するだけで、請求書の印刷から封入、投函までを代行業者が行う仕組みとなっている。中村常務は「請求書発行にかかる作業時間は大幅に削減されました。月末締めの請求書も、以前は翌月2日までかかっていましたが、現在は翌月1日にはすべて完了しています」と、その効果を語る。
“For next 100 years”を掲げ次の100年へ挑戦を続ける
当時の電話番号は「99」番(写真:ホームページから)
大清は300年以上にわたる歴史の中で、扱う商品や事業形態を時代に合わせて変えながら発展を続けてきた“変化し続ける老舗”だ。中村社長は「老舗というと旅館や酒蔵のように、一つの商売を長く続けている企業が多いと思いますが、当社はいろいろな商売を時代に合わせて変えてきました。当社には代々受け継がれてきた家訓のようなものはありませんが、その歴史から『経営は環境適応型であれ』と教えられているように感じています」と語る。
“For next 100 years”をキャッチフレーズに掲げる大清。変化を恐れず新たな挑戦を続けながら、これからも地域とともに歩み、次の100年、その先の200年へ向けて商いをつないでいく。
企業概要
会社名
株式会社大清
本社
山形県米沢市中央4丁目1-6
電話
0238-23-8111
設立
1953年8月(創業1688年)
従業員数
29人
事業内容
管工機材、住宅設備機器、土木建築資材、環境公園資材、機械工具、作業用品、鋼材、鋼管の販売
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