先進設備で多品種少量生産 レンタル工場で地域製造業を支援 TKG(香川県)
公開日:2026年07月30日
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香川県西部に本社と主力工場を構える2018年設立の株式会社TKGは、多品種少量生産に適したジョブショップ型(機能別配置)の生産方式を採用する新進気鋭の金属加工会社だ。工場には、精密板金加工、レーザー加工、溶接、機械加工に対応するNC(数値制御)型の多彩な工作機械をそろえ、幅広い取引先の多様な要望に柔軟に応える生産体制を構築している。地域企業の受注機会拡大や生産性向上に貢献するため、自社工場の一部をレンタルする事業も展開。デジタル技術と親和性の高い生産設備への先行投資を強みに、地域のものづくり企業を支える頼れるパートナーとして頭角を現している。(TOP写真:NC型の多彩な工作機械をそろえるTKGの工場)
NC型工作機械を活用し、多品種少量生産・短納期・高精度・高効率の金属加工を実現
工場屋根には遮光仕様の太陽光発電パネルを設置(ホームページから)
瀬戸内海に面し、「日本の夕陽百選」に選ばれたこともある父母ヶ浜をはじめ、複数の観光名所を擁する香川県三豊市。同市内の田園地帯に立地するTKGの2棟の工場は、オレンジをアクセントカラーにした外観が印象的だ。工場の面積はそれぞれ1000坪と500坪。内部は天井高が約10メートルあり、大型設備を配置しやすい設計となっている。脱炭素経営にも力を入れており、工場の屋根には遮光仕様の太陽光発電パネルを設置している。
既存事業の枠を超え、新たな市場に挑むためTKGを設立
TKGの筒井琢也代表取締役
TKGの原点には、「変化を恐れず、新たな可能性に挑戦する」という筒井琢也社長の思いがある。筒井社長は、1943年創業の筒井鉄工株式会社の事業を1993年に承継した。建築金物やサッシ部材、産業機器部品の製造を手掛ける同社を経営する中で、従来の事業領域だけでは対応できない新たな加工ニーズが広がりつつあることを実感していたという。
そこで、薄板加工を主力とする筒井鉄工とは異なる領域に挑戦するため、厚板加工を含む幅広い鋼材に対応できる新会社として2018年にTKGを設立した。多様化する顧客ニーズに応えるだけでなく、新たな市場や技術への挑戦を加速させることが狙いだった。
社名のTKGは、「Tsutsui Kindles Globalization」の頭文字に由来する。「世界の動きを感じながら、すべてのステークホルダーを刺激して燃え立たせる存在でありたい」という思いを込めて名付けたもので、その挑戦心は現在の事業展開にも色濃く息づいている。
「お客様の課題やニーズは時代とともに変化していきます。その変化に柔軟に対応しながら、新しい価値を提供し続ける企業でありたいと考えています。幅広い業種の企業から、『困ったらTKGに相談しよう』と思っていただける存在を目指しています。ちなみに、TKGは私の好きな卵かけご飯の略称と同じなので、親しみやすく覚えていただける社名になったと思っています」と筒井社長は笑顔を見せた。
先行投資で磨く生産力
TKGの工場内の様子
TKGは、2018年の設立以来、加工プログラムや加工条件、材料情報などをデジタルデータとして活用できるNC(数値制御)型の工作機械を継続的に導入してきた。加工精度の均一化、リードタイムの短縮、人為ミスの低減、品質改善、設備稼働率の可視化、トレーサビリティーの向上といった様々な効果を生み出し、多品種少量生産、短納期、高精度、高効率の金属加工を実現している。
「ニーズが生まれてから設備を整えていては商機を逸すると考え、常に先行的な設備投資を心がけてきました。投資の可否は、将来の市場性や技術トレンドを踏まえた長期的な事業戦略に沿って決定しています」。工場内の事務所で取材に応じた筒井琢也代表取締役はTKGが大切にしている方針をこう説明した。
取引先の工程全体を把握した上で積極的に技術提案
工場内に設置しているファイバーレーザー加工機
TKGは、中国・四国地方の自動車、船舶、電気関係機械、農業機械の製造会社を主な取引先としている。取引先は大企業からベンチャー企業まで幅広く、高精度な仕上がりに加え、突発的な要望にも迅速に対応することで信頼を築いてきた。単なる製造の下請けにとどまらず、取引先の工程全体を把握した上で、製造効率の向上につながる技術提案も積極的に行っている。特定の業界や取引先に依存しないビジネスモデルだからこそ、しがらみや利害にとらわれない顧客本位の提案が可能だという。「お客様ごとに最善の加工ソリューションを提供できることが、TKGの最大の強みです」と筒井社長は力強く話した。
3Dデータを活用した先進設備で、多様な加工ニーズに柔軟対応
3D-CADシステムを使って設計する様子
TKGは2棟の工場内に、CADシステムで作成した3Dデータをそのまま取り込めるパイプ・形鋼切断用の3Dレーザー加工機をはじめ、小径パイプを高速・高精度で加工できるファイバーレーザー加工機、可変ビーム制御による大型ファイバーレーザー加工機、ベンディングマシン、アーク溶接機、半自動溶接機など10数台の工作機械を導入している。これらを連携させることで、複数工程を一元管理できる体制を整えた。また、材料自動供給装置の導入により、材料の搬入・搬出を自動化し、無人運転や夜間の稼働にも対応している。
製品ごとに最適な工程を柔軟に組み替えるジョブショップ方式で生産
工場内に設置している大型ファイバーレーザー加工機
TKGは、高度な工作機械を活用した生産体制を構築する上で、多品種少量生産に強い「ジョブショップ方式」を採用している。大量生産を前提としたライン生産と異なり、設備や作業者を固定せず、製品ごとに最適な工程を柔軟に組み替えることで、顧客のニーズに応じた工程の最適化に加え、仕様変更や追加加工といった突発的な要望にも迅速に対応できるという。
「限られた資源で最大の生産能力を発揮できるこの方式は、お客様の課題を解決する提案型のビジネスモデルを構築する上で大きな効果を発揮しています。こうした柔軟性は、市場の変化のスピードが増すこれからのデジタル社会において、競争力の源泉になると考えています」と筒井社長。
2020年にレンタル工場事業を開始
工場の外壁にはコーポレートマークとともに歯車を配したデザインの装飾を施している
TKGは、自社のスペースを地域全体の製造力向上に役立ててもらおうと、2020年から自社の工場を1カ月以上の期間でレンタルする事業を展開している。工場には300キロワットの高圧電力を引き込むなど、重電設備を必要とする製造にも対応できる環境を整えた。「新規の受注に対応したいが、設備の増設には費用がかかり、リスクを抱えることになる」、「繁忙期に短期間だけ生産能力を増強したい」。こうした課題を抱える地域のものづくり企業を対象に、各社の事情に合わせて柔軟にスペースを活用してもらっている。
TKGは、試作・小ロット・短納期に対応しやすい方式による生産やレンタル工場事業を通じて、瀬戸内エリアのものづくり産業の活性化に貢献したいという強い思いを持つ。2025年には大手工作機メーカーと共同で会社見学会を開催し、導入したNC型工作機械の稼働の様子を公開。地域の企業や取引先にデジタル技術の有効性を示すことで、地域のDX推進の機運を高めることにも貢献していきたい考えだ。
VPNとNASを導入し、安全で効率的な情報共有基盤を整備
NASを活用している筒井鉄工の事務所
TKGはデジタル技術を活用した社内業務の効率化にも力を入れている。2022年には、パソコンで作成したデータの工作機械への転送やグループ会社間の通信に使うネットワーク環境を強化するため、インターネット上に暗号化された仮想専用回線を構築するVPN(仮想プライベートネットワーク)を導入した。ICT機器の導入で長年取引のあるデジタルサービス会社から、既存の回線を活用しながら低コストで安全に利用できる通信手段として提案を受けたという。
また、2024年には、製品の図面や帳票類などの社内データを保存するため、大容量のNAS(ネットワーク接続型ストレージ)を導入。機種の選定では、管理のしやすさ、高いセキュリティ機能、柔軟な情報共有機能を重視した。NASは、TKGの工場から約2キロ離れた筒井鉄工の事務所に設置し、グループ会社間の情報共有に活用している。「NASのおかげで、TKGと筒井鉄工のどちらで仕事をしていても、それぞれの会社の情報に同じようにアクセスできるようになり、以前より格段に時間を有効活用できるようになりました」と筒井社長はうれしそうに話した。
事業多角化で農業にも挑戦 アラビカ種コーヒーの栽培と集客施設を展開
※海辺の珈琲研究所「豆豆豆」
TKGは、次世代に向けて企業の持続可能性と将来性を高めるため、製造業以外への事業の多角化が必要と考え、農業にも取り組んでいる。世界中に需要があるコーヒー豆に着目し、栽培研究から商品開発、販売までを一貫して行う関連会社、株式会社TKG Rico(リコ)を展開。筒井社長は2019年頃から、日本での栽培は難しいとされるアラビカ種コーヒー豆の研究を続け、栽培方法の確立に成功した。三豊市内に農園を設けてアラビカ種の本格的な栽培に挑戦しており、将来、国産アラビカ種の希少性を生かして高価格帯市場に参入することを考えている。
海辺の珈琲研究所 豆豆豆は瀬戸内海を一望できる絶好のロケーション
2023年には、観光地として人気を集める父母ヶ浜の近くに、本格コーヒーを楽しめるコーヒースタンドとコーヒー研究所を融合させた施設、「海辺の珈琲研究所 豆豆豆(ずずず)」を開設した。大きな窓から瀬戸内海の水平線を一望できる店内では、豆の選定、抽出、焙煎に強いこだわりを持つ研究所ならではの体験価値を提供している。
「世界レベルのコーヒー体験の提供を目指しています。将来は自社で栽培、発酵、焙煎した香川県産の特別なコーヒーを提供し、地域ブランドの発信拠点にしていきたいと考えています」と筒井社長は話した。
ワクワクする挑戦を楽しむ企業文化が、新たな事業を生み出していく
TKGの工場敷地内に設けている事務所の外観
地域と密接に関わりながら、柔軟な発想力と果敢な実行力で、製造業から農業まで幅広い事業を展開するTKG。筒井社長は事業に臨む上で「失敗を恐れず、ワクワクしながら取り組むことを大切にしています」と話す。デジタル技術と挑戦する姿勢を力に、地域に新たな価値を生み出し続けるTKGの挑戦は、瀬戸内エリアのものづくりに新たな可能性を広げていきそうだ。
企業概要
会社名
株式会社TKG
本社
(工場)香川県三豊市豊中町笠田竹田634-1
電話
0875-23-6881
設立
2018年9月
従業員数
10人
事業内容
精密板金加工、レーザー加工、溶接、機械加工、貸工場、農業
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