社労士・行政書士の枠を超え、中小企業を支援 兼田ビジネスコンサルタント(広島県)
公開日:2026年10月08日
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兼田ビジネスコンサルタント(広島県広島市)は、社会保険労務士・行政書士事務所としての専門業務にとどまらず、顧客企業の経営全般を幅広く支援している。経営工学を学び、経営コンサルティング会社で経験を積んだ兼田喜弘所長と、銀行でキャリアを重ねた兼田千尋所長代理が、それぞれの強みを生かして多角的な提案・サポートを行っている。各種行政手続の電子申請化が進む中、ICTシステムを活用し、業務の効率化と正確性の向上にも取り組んでいる。(TOP写真: 右:兼田喜弘所長 左:兼田千尋所長代理)
独立の難しさを糧に資格を取得 コンサル経験を礎に資格の枠を超えた中小企業支援へ
創業の経緯を話す兼田所長
兼田ビジネスコンサルタントの前身は、兼田喜弘所長の父・博氏が開いた「兼田社会保険労務士・行政書士事務所」だ。
兼田所長は、法政大学工学部で経営工学を学び、卒業後、東京に本社を置く経営コンサルティング会社に就職。主に福岡市でコンサルティング業務の経験を積んだ。「福岡はビジネスの面ですごく面白いところで、会社もいろんなチャンスを与えてくれました」。いずれは地元に戻ることを考えていた兼田所長は、4年間の勤務でコンサルティング業務に自信を深め、退職して帰郷した。
しかし、独立して仕事をすることは、生易しいものではなかった。特に形のないサービスを提供するコンサルティング業界では、大手企業の看板を離れ、自分の力だけで仕事を得ることの難しさを実感したという。そこで父とともに働くことを決意し、まず社会保険労務士と行政書士の資格を取得するところから再スタートした。
経営コンサルティングの経験と専門資格を生かし、中小企業を幅広く支援したい――。その思いから1980年に事務所名を「兼田ビジネスコンサルタント」に改めた。「資格に縛られた業務領域にとらわれずに、幅広く中小企業の経営を支援していきたいという思いがありました」と兼田所長は振り返る。
現在は特定社会保険労務士と特定行政書士の資格も取得し、それぞれの専門分野で、より幅広い業務に対応できる体制を整えている。
2020年に創業40周年を迎えた後、90歳代まで現役で働いていた博氏が他界した。それまで父と二人三脚で歩んできた兼田所長は、「スタッフはベテランぞろいで、細かい作業もすべて理解しているので、困ることはありませんでした」と振り返る。一方で、自身の年齢とともに事務所の将来も意識するようになっていた。
そんな中、新たな力となったのが、兼田所長の長男の妻で、現在、所長代理を務める兼田千尋さんだ。
育児休業中に二つの資格を取得 銀行経験を生かし企業経営を幅広く支援
育児休業中に資格試験の勉強に励んだ千尋さん
千尋さんは広島大学総合科学部を卒業後、地元の銀行に就職。同じ銀行に勤めていた兼田所長の長男と知り合い、結婚した。第一子の育児休業中に資格試験の勉強に励み、2017年に社会保険労務士の資格を取得。翌2018年には行政書士試験にも合格した。
「嫁いだ先がこの仕事をしていたことがきっかけで、社会保険労務士・行政書士という仕事を知りました。銀行で日々お客さまと接する中で、労務・法律・制度の面から企業経営を支える仕事に魅力を感じ、資格を取得しました」と千尋さんは振り返る。
約14年間勤めた銀行を退職し、2022年に兼田ビジネスコンサルタントの所長代理に就任した。銀行時代は、主に顧客に資産運用や相続対策などを提案する業務を担当していた。「金融機関での経験と当事務所の仕事とは親和性が高い」と兼田所長が話すように、銀行で培った知識や提案力は、同事務所が顧客企業を幅広く支援する上で新たな強みとなっている。
千尋さん自身も「『兼田ビジネスコンサルタント』という事務所名に込められた思い、つまり、単に行政手続や書類作成を代行するだけではなく、お客さま一人ひとりに寄り添い、経営全体を見据えた提案や支援ができる存在でありたいという思いを常に意識しています」と話す。
千尋さんの入所以降、国や自治体の助成金・補助金の申請支援も増えている。数多くある制度の中から、顧客企業に適したものを選び、提案から申請までをサポートする。銀行勤務で培った提案力と、社会保険労務士・行政書士としての専門知識の双方を生かせる業務の一つだ。
社労士・行政書士業務をワンストップで 労働保険の特別加入にも対応
兼田ビジネスコンサルタントの取扱業務(ホームページから)
兼田ビジネスコンサルタントの強みの一つが、社会保険労務士と行政書士、双方の専門業務にワンストップで対応できることだ。労働保険(労災保険・雇用保険)や社会保険(健康保険・年金保険)の手続、就業規則の作成、助成金申請といった人事・労務関連の業務から、建設業許可、経営事項審査、入札参加資格申請などの許認可関連まで、一貫して支援している。
「小規模な企業では、社長が現場に出て、専務や奥さんが事務を仕切っているケースも多くあります。そうした事務の仕事を丸ごと当事務所に任せてもらえるのが強みです」と兼田所長は説明する。「事業主さんも、社会保険労務士事務所と行政書士事務所を行き来する必要がありませんし、同じような書類をそれぞれで作成する二重の手間も省けます」と続ける。
もう一つの特徴が、「広島商工業経営者協会」という労働保険事務組合を運営していることだ。労働保険事務組合とは、中小企業の事業主に代わって労働保険に関する事務を行うことを厚生労働大臣から認可された団体で、事業主の事務負担を軽減する役割を担う。
さらに、労働保険事務組合に事務を委託することで、中小企業の事業主や家族従業員など、通常は労災保険の対象とならない人も、一定の要件のもとで「特別加入」することができる。「例えば、お好み焼き店の店主さんが労災保険に加入しようとすると、特別加入になります。そうした事業主の方々を支援できるのも労働保険事務組合の役割です」と兼田所長は話す。
近年はフリーランスとして働く人が増える中、労災保険の特別加入の対象も広がっている。こうした動きを背景に、国も社会保険労務士による労働保険事務組合の設立・運営を促しているという。「労災保険に未加入の事業所もまだまだあります。行政とも協力しながら、一人でも多くの方が加入できるようお手伝いしていきたいと考えています」と兼田所長。社会保険労務士としての専門業務に加え、労働保険事務組合の運営を通じて、中小企業やそこで働く人たちを幅広く支えている。
長年培った顧客基盤を強みに 経審やCCUSなど建設業を幅広く支援
兼田ビジネスコンサルタントの入居するビル
さらに、兼田ビジネスコンサルタントは県庁や市役所のある広島市中区に事務所を構えており、行政手続を数多く扱う同事務所にとって利便性の高い立地にある。
兼田所長の父・博氏の時代から付き合いが続く顧客も多く、長年にわたって築いてきた顧客基盤も同事務所の強みだ。顧客企業の業種は幅広いが、中でも仕事量が多いのが建設業だという。その理由の一つが、建設業では許認可に関わる手続が多いことにある。特に公共事業の入札に参加する建設業者にとって重要なのが、経営事項審査(経審)だ。企業の経営状況や経営規模、技術力、社会性などを評価し、公共工事の入札参加資格審査に用いられる。
国土交通省は「i-Construction」をはじめ、建設業のDXや人手不足への対応などを進めており、こうした施策は経審にも反映されている。2026年7月からは、技能者の処遇改善に取り組む企業が宣言する「建設技能者を大切にする企業の自主宣言(愛称:職人いきいき宣言)」が経審の加点対象となった。
同制度では、建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用が必須項目の一つとなっている。CCUSは、建設技能者の資格や就業履歴などを登録・蓄積し、技能や経験の適切な評価や処遇改善につなげる仕組みだ。千尋さんは、まず顧客の建設業者にCCUSの導入を促し、新たな制度への対応を支援していきたいと考えている。
ICT活用で電子申請が8~9割に 過信せずセキュリティ対策も強化
「90年代にFAXが入った時はうれしかった」と振り返る兼田所長
兼田ビジネスコンサルタントのICT化が本格化したのは、1993年に現在地へ移転した頃からだ。「まだコピー機もFAXも士業事務所にはあまり普及していない時代でしたが、たまたま飛び込み営業にきたシステム会社の人が親切に指導してくれて、おんぶにだっこですべて任せてきました」と兼田所長は振り返る。有線LANを構築し、コピー機やFAX、電話機、パソコンなどのインフラを整備。その後、「kaneda-business.com」のドメインを取得し、ホームページやメールも整備するなど、ICT環境を充実させてきた。現在はセキュリティ対策にも力を入れている。
業務では、社会保険労務士向けと行政書士向けの支援システムをそれぞれ導入し、バージョンアップを重ねながら活用している。社会保険労務士向けのシステムは、国の行政手続のオンライン窓口「e-Gov」と連携。同事務所が扱う労働保険の申請手続の8~9割が電子申請になっているという。
一方、ICTへの依存には慎重な姿勢もみせる。「インターネットにまるっきり依存するのは、ちょっと危ういという感覚もあるのです」と兼田所長。その背景には、同事務所が利用する社会保険労務士向けシステムのクラウド基盤が2023年6月にランサムウェア攻撃を受け、長期間にわたってサービスが停止した経験がある。全国の社会保険労務士事務所の日常業務に支障が生じた。
「あまり過信するとしっぺ返しに遭います」と兼田所長。そうした経験を踏まえ、現在は社内LANとインターネットをつなぐ入口と出口のセキュリティ対策についても検討を進めている。
クラウド活用で柔軟な働き方を実現 若者が希望を持って働ける広島へ
執務中の千尋さん
クラウド型システムへの依存には慎重な姿勢をとりながらも、その利便性を生かした活用を進めている。所長代理の千尋さんは、クラウド型業務プラットフォームをグループウェアとしても活用し、在宅勤務を働き方の一つとして取り入れている。小学4年生を筆頭に3人の子育てに奮闘中で、仕事と家庭を両立しながら柔軟に働いている。
こうした働き方を支える環境づくりは、地域の企業にとっても重要な課題になっている。広島県では人口減少が続き、特に10~30代の若い世代の県外流出が深刻な課題となっている。進学を機に県外へ出た若者が、そのまま県外で就職するケースも少なくない。
兼田所長は「広島で生まれ、育った者として、何とかこの広島の課題を解決する一助になりたい。中小企業を支援し、産業を栄えさせて、若者たちが存分に働ける場所を確保できるようにしていきたいと思います」と力を込める。
中小企業の経営を幅広く支えることを掲げて歩んできた兼田ビジネスコンサルタント。地域企業を元気にすることが、広島の産業を支え、若い世代が希望を持って働ける場所をつくることにつながる――。そんな強い思いを胸に、一社一社の経営に寄り添いながら、広島の未来を支えていく。
企業概要
事務所名
兼田ビジネスコンサルタント
所在地
広島県広島市中区十日市町2-1-4 田中ビル2階
電話
082-293-5319
創業
1980年
従業員数
所長以下7人
事業内容
労働保険手続、社会保険手続、就業規則作成、公的助成金申請、建設業許可手続、宅建業免許手続、産業廃棄物処理業許可手続、経営事項審査手続、入札参加申請手続、建設キャリアアップシステム登録など
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