「聞かれたら答える」ではもったいない!SDGsの広報のポイントと注意点
2022年01月24日 06:00
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SDGsへの取り組みを開始した中小企業にとって、次の課題になるのが、その取り組みを適切にPR・広報することです。
SDGsへの取り組みは、それ自体で完結するものではなく、社内外のステークホルダーに周知し、コミュニケーションを取りながら続けていくべきものです。
SDGsは、持続可能な社会の実現に向けて達成すべき目標であると同時に、同じ目標を目指す者同士のコミュニケーションツールでもあるからです。
また、PR・広報をしたとしても、その伝え方が悪いと、いわゆる「SDGsウォッシュ」(見せかけだけのSDGs)として、かえって世間から批判を浴びてしまう事態にもなりかねません。
そこで本記事では、中小企業がSDGsのPR・広報をする際のポイントや注意点などを解説していきます。
自社の取り組みをPRすることは、SDGsの達成を推進することにつながる
中小企業において、PR・広報(以下、PRとまとめて記します)は、後まわしにされがちな業務です。広報部があったり、専任の広報担当者が存在していたりする中小企業は少数派でしょう。多くの企業では、総務部や営業部などの社員が本来の業務の隙間でPR業務を兼任しているのが実状です。
また、PR活動と宣伝広告との違いがはっきりと認識されていないことも、よく見られます。そのため、中小企業では、PR活動自体がほとんどおこなわれていないことも珍しくないのです。

しかし、せっかくSDGsに取り組むのであれば、正しいPR活動によってその取り組みを社内外のステークホルダーに伝えることは非常に重要です。
SDGsは、持続可能な社会を作るために、すべての国や企業が取り組み、達成すべき目標です。その際、自社がSDGsに取り組んでいることを示せば、「あの会社でも取り組んでいるのだから、うちの会社でも取り組もう」といった風に、自社の取り組みが、他の企業、他の人々のSDGsへの取り組みを推進させることにつながります。その推進力が増えることで、SDGsの目標である17のゴールの、2030年までの達成に近づいていくはずです。

SDGsの取り組みは、企業の説明責任の一部になりつつある
また、SDGsが全社会的な達成目標であることの認識が広まるにつれて、それに取り組んでいるのかいないのか、あるいはどんな内容で取り組んでいるのかを示すこと自体が、企業の社会的責任の一種である説明責任(アカウンタビリティ)の一部であると考えられるようになってきています。
BtoC企業であれ、BtoB企業であれ、自社が提供している製品・サービスが安全で安心なものであることを消費者や取引先に説明することは、企業としての当然の責任でしょう。
また、融資、出資をする金融機関、株主などのステークホルダーに対しては、財務の健全性や業績の成長性などを説明することも、当然の責任です。
SDGsへの取り組みの開示も、それらの責任と同様のものとして捉えられつつあるということです。
そのため、近年では「サスティナビリティレポート(報告書)」や「統合報告書」といった報告書を開示する企業が、大企業を中心として増加しています。
SDGsへの取り組みを開示する基本資料「サスティナビリティレポート」

「サステナビリティレポート」とは、すべてのステークホルダー、とくに消費者や取引先に重点を置いて、サステナブル(持続可能)な社会の実現に向けて、自社がどのような取り組みをしているかを報告するためのレポートです。SDGsの取り組みを開示するためには、もっとも基本的な資料だといえます。
ESG投資・融資を受けるのであれば「統合報告書」の作成も検討する

「統合報告書」は、有価証券報告書や決算書などの財務情報と、SDGs活動などの非財務情報をまとめて報告するレポートです。こちらはどちらかといえば、中堅から大手の企業が主として金融機関や投資家への説明のために作成するものです。しかし、中小企業であっても今後の成長のために上場レベルのしっかりした内部統制を実現したいという場合や、ESG投資、ESG融資などを受ける際には、作成してみるといいでしょう。
「SDGs宣言」などの簡単なPRも

SDGs宣言とは、自社がどのような考えでSDGsに取り組み、なにをしていくのかというメッセージを、完結に箇条書きで表した宣言書です。本格的なサスティナビリティレポートや統合報告書の作成よりも、手軽に取り組めるので、まずは「SDGs宣言」を作成、自社のWebサイトや企業パンフレットに掲載するというのも良い方法です。
SDGsへの取り組みを開示するメリット
SDGsへの取り組みを開示することは、社会全体でSDGsを達成させていくことへの推進力となりますが、それだけはなく、自社にとっての直接的なメリットもあります。
消費者、取引先、採用候補者などからの共感や安心を得られる

ミレニアル世代、またその下のZ世代といった若い世代を中心に、エシカル(倫理的)消費という考え方への支持が拡がっています。同じ消費をするのであれば、より、社会に対して悪い影響が少ない企業の製品を使いたいという意識が強くなっているのです。
一方、BtoB取引においては、SDGsへの取り組みを始めている企業が、自社の内部だけではなく、仕入れ先も含めたサプライチェーン全体において、SDGsに反する実態のないことを求めるようになっています。
さらに、就職活動においても、SDGsへの意識が低い企業は忌避され、積極的に取り組む企業が選考される傾向が強まっています。
自社がSDGs活動に取り組んでいることを、これらの人たちに適切に知らしめることは、短期的な業績面でも、長期的な成長面でも、良い影響をもたらすでしょう。
ESG投資、ESG融資などを受けやすくなる
ESG投資、ESG融資とは、環境、社会、企業統治へ配慮し行動している企業を選別して、優先的におこなわれる投資や融資のしくみです。機関投資家、金融機関などの間では、ESG投資、ESG融資の実施が増えていますが、これらの投融資を受けようとする際には、自社のSDGsへの取り組みを適切にPRしていることが必要です。
社内の共通意識を作れる
SDGsをPRする意外な効果として、社内の共通意識形成があります。社外向けの媒体だけではなく、社内SNS、イントラネット、社内報などにより、社員に対して自社のSDGsへの取り組みを伝えることは、SDGsに対する社員の意識を揃える効果があります。そしてそれは、次の項目で述べる「SDGsウォッシュ」を防ぐことにもつながるのです。
「SDGsウォッシュ」と批判されないためのSDGsPRのポイント
「SDGsウォッシュ」あるいは「SDGsウォッシング」とは、「SDGsに取り組んでいるように見せかけること」を意味します。

たとえば、本当のSDGsにはつながっていないうわべだけの行動をしている、不都合なことを隠して良いことだけをPRしている、あるいは取り組みの実態よりも過度にPRしているといったことなどを指します。
SDGsへの取り組みを発信しても、それがSDGsウォッシュだと思われて批判されると、かえって企業イメージを大きく傷つけることになります。
逆に、適切な情報発信をしていれば、企業イメージやブランド価値の向上をもたらすでしょう。そのためには、下記のような点に意識して適切な情報発信をすることが必要です。
①SDGsの意図を理解し、なぜSDGsに取り組むかを明確にする
SDGsは、社会をサステナブルにするための取り組みであり、それに正しく取り組んでいる結果として、企業イメージ向上、ブランディングなどの効果が付随してくるものです。最初から、「企業イメージを良くしよう、企業ブランディング」をしようという意図でSDGsに取り組むのは本末転倒です。
そこで、自社がなぜSDGsに取り組むのか、その理由や意図がはっきりしていることが必要です。最終的には地球と社会をサステナブルなものするためという目標がありますが、その中で自社事業が果たせる役割が何なのを明確にしておくということです。
そのためには、SDGsで掲げられている17のゴールだけではなく、169のターゲットのどれに対して、どのように役立つのかを明確にしておくべきでしょう。
②事業活動そのものにおいての取り組みを伝える
SDGsが、単なる寄付などのCSR(企業の社会的責任)活動と異なるのは、事業や製品そのものがサステナブルでなければならないという点です。たとえば、環境負荷が大きい使い捨てのプラスチック製品を製造している企業が、一方で植林活動への寄付をしていたとします。その寄付を「SDGsへの取り組み」としてPRした場合は、SDGsウォッシュだと批判される可能性が高いでしょう。
一方、事業のうち、一部を環境負荷の少ない製品の製造に置き換えたとすれば、それは本質的な部分でのSDGsへの取り組みと理解されます。そのような部分を伝えることがポイントです。
③定量的に現状や目標を示す

上の項目と関連して、企業活動のすべての面がSDGs的になれば理想的ですが、それは実際には不可能に近いことでしょう。そこで「こういう部分に課題があったが、それを10%はSDGs的なものに置き換えた」といった形で、定量的に取り組みの中身を示すことが大切です。
その上で、定量的な目標も示せればベストでしょう。たとえば、ジェンダー平等にかんして、「以前は、女性の役員・管理職がゼロだったのが、現在は25%に増えた。これを5年以内に50%にすることを目指す」といった具合です。
④全社的な一貫性を意識する
経営理念やビジョンから、SDGsのタネを見つけて、それを事業に反映させるというのは良い方法です。しかしそれをトップダウンでおこなうと、えてして社員の隅々まで浸透しないことがあります。

たとえば、事業においてユニバーサルサービスを実現し、人や国の不平等をなくす、という取り組みをPRしているのに、社員が特定の国や民族を貶めるような差別的な発言をSNSでおこなっていたといったことがあれば、企業イメージを大きく損なうはずです。そのようなことが生じないためにも、先に述べた社内でのPR活動による、全社的な意識の統一が重要になるのです。
⑤過度な表現をしない
PR(パブリックリレーション)とは本来、自社の理念や行動をステークホルダーに正しく伝えるための発信です。それは、自社製品を良く見せるための「広告宣伝」とは別の活動です。
もちろん、SDGsへの取り組みを広告宣伝に使っても、悪いわけではありません。しかし、イメージを良くするために針小棒大な表現をしたりすれば、SDGsウォッシュだと批判されるでしょう。

たとえば、すべての人に健康と福祉をという目標にかんして、男性社員が育児休暇を取れるとか、働きがいも経済成長もという目的に対して、法定労働時間を守り残業代をすべて支払っているといったアピールは考え物です。
なぜなら、育児休暇の取得や労働時間の上限は法律で定められていることであり、「やって当たり前」のことだからです。このようなことをSDGsへの取り組みとしてPRするのは避けるべきでしょう。
SDGsロゴやアイコンの使い方に注意
SDGsといえば、17の目標に対して17色に塗り分けられたアイコンやロゴマーク、カラフルな円のマーク(カラーホイール)を思い浮かべる人も多いかもしれません。
これらのロゴ等は、自社のSDGs活動の取り組みを告知する媒体においては、無許可で利用できます。
ロゴ等の画像データは、国連広報センターのWebサイトからダウンロードできます。
また、ロゴ等の使い方(位置、サイズなど)には、細かい規定が定められています。利用の際には、同ページに掲載されたガイドラインで確認しましょう。
商業用途等の場合、事前に許諾が必要
商業用途(商品にマークを掲載するなど)、資金調達目的(クラウドファンディングなどに使うこと)などでSDGsロゴ等を利用する場合は、国連に事前申請して許諾を得なければなりません。
これは、国連本部に直接メールで申請します。
まとめ
SDGsへの取り組みは、これからの中小企業には欠かせないものとなるはずです。そして、せっかく取り組むのであれば、適切かつ積極的に発信していくことを心がけましょう。
それはサステナブルな社会の形成に役立ち、また、結果的に自社にもメリットをもたらすものとなります。
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記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
全国の経営者の方々に向けて、経営のお役立ち情報を発信するメディアサイト。ICT導入事例やコラム、お役立ち資料など「明日から実践できる経営に役立つヒント」をお届けします。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。
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