食料品製造業の業務改善に!効率化を応援するICTツール一覧
2022年03月25日 06:00
この記事に書いてあること
食品製造業は、原材料の加工から最終製品まで製造し、農水産業から小売までと幅広く存在しています。サプライチェーンの中核を担っており、食品の品質と安全を保ちつつ、効率的に製造して安定供給する必要があります。
ICTのビジネスへの応用は、人手への高いサービス・製品や差別化が難しくなりつつあるサービス・製品においても、業務の省力化や製品の高付加価値化の可能性が広がっています。本記事では、自社のICT化への対応方法について悩んでいる担当者向けに解説します。
食品製造業のICT化に必要な要素を業務フローに基づき解説し、ICTツール導入によるメリットをご紹介しますので、業務をICT化して改善を図りたいが、具体的に自社でどのように導入したら良いか分からないご担当者の方は是非ご覧ください。
| 食品製造業の現状 ・食品製造業の出荷額は、28.2兆円(平成28年経済センサス)と食の外部化の進展により拡大している一方で、付加価値額(労働生産性)は製造業全体の6割程度と相対的に低くなっています。 ・飲食料品製造の事業者数4.4万のうち、99.5%が中小零細企業であり、業務改善に役立つICTツールの導入が充分ではありません。 |
生産管理業務の業務効率化
生産管理をどうしたら良いものか悩んでいませんか。ご担当者は、収益を大きく左右するだけに強いプレッシャーにさらされていると思いますので、業務の効率化を確認していきましょう。
あらためて、生産管理とは、決められた生産計画に従って、納期までに必要な数量を決められた品質を確保して製造することを目的とする業務です。食品工場は、製品によりフローは大きく変わりますが、軸となる流れを以下に確認したうえで、効率化について考えていきます。
生産の流れ

・需要予測
需要予測にもとづき生産計画を立案し、必要な資材の調達を計画します。
・生産計画
納期までに必要となる製品の数量や品質を担保できる体制を計画します。
・調達・購買計画
生産計画に沿って、過不足の無いように原材料の調達から入荷までを計画します。
・製造管理
製造現場で必要となる工程管理で、生産計画に基づいた製品数量や品質となるように日々の調整を行います。
・原材料入荷・保管
要求水準を満たした原材料を必要なタイミングで供給できるよう調達し、品質維持が可能な状況で保管します。
・加熱・冷却
2021年6月に食品事業者は、原則HACCP義務化したことから、多くの食品製造業では加熱・冷却工程をCCP[シーシーピー(Critical Control Point:重要管理点)]としています。
・検品・梱包・出荷
最終製品の不良品が無いか確認をします。また、物流に合わせて容器包装し、計画に沿って出荷します。
・品質管理
原材料が要求水準を満たしているか、製造は定められた製造方法を遵守し、製品は要求水準を満たしているか確認し、必要な検査を行います。
・在庫管理
湯洋予測や受発注の変更にあわせて、製造計画を調整し、適正な在庫料を維持します。
生産管理業務の効率化は、なぜ難しいのか
生産計画は、営業部門と製造部門の間にたち両方の調整が必要となります。また、製造計画の変更には、営業から市場や顧客からの要求、製造部門から予期せぬ生産トラブルへの対応、品質管理部門から要求水準等、それぞれへの対応が求められます。

需要予測が難しい
天候や営業の進捗具合、プロモーションの効果や競合他社製品との競争などの要因により、予測が難しくなります。また、新商品ともなるとデータが少ないことから、さらに予測を難しくします。
製造管理が難しい
受給予測の見通し・製造数量の平準化が難しく、そこに入荷時の原材料の不良や納期の遅れ、要求水準を満たさない製品不良の発生等予期せぬトラブルが発生することで製造調整せざるを得なくなります。また、人的資源管理の面では、製造者の技術レベルの均一化や必要な労働力の投入なども含めて難しさがあります。
トヨタの7つのムダ取りから学ぶ
業務改善の課題は、一度全部テーブルに出す
生産管理を担当したことがある方なら同じような経験があるかもしれませんが、課題が多く、何から手をつけたら良いか分からなくなったことは無いでしょうか。そんなときは、課題を一度全部書きだしてみることをお勧めします。書き出すことで、課題が見える化し、整理することができるのです。
トヨタの7つのムダ取り
課題を書き出すと言っても、その課題すら良く分からないということもあります。そのようなときは、先人の知恵を拝借します。今回、ご紹介する「トヨタの7つのムダ」は、著者が社会人大学院にて、元豊田自動織機代表取締役社長の磯谷さんや当時現役のトヨタ自動車の生産管理部生産調査室長であった二之夕さんから直接学んだものの中から一部ご紹介します。

もとは、トヨタグループの祖業であるG型自動織機(糸から布を織る機械)の営業的試験にあたり「執念の ムリ ムラ ムダ ゼロ」を掲げて、故障しない、不良をつくらない、ムリのない道理にあった「設計・機械取扱い・保全」からはじまる生産管理全般に対しての考えから始まるものです。7つのムダ取りは、製造管理における業務改善の洗い出しに利用できます。
製造管理の業務フロー
それでは、製造管理に絞って業務フローをもう一度確認して、効率化を検討します。ICT化が得意な分野は、数値化されたものの管理ですので、この点に注目して確認します。

製造管理業務の流れと数値化
・原材料入荷
良い製品は、良い原材料から作られます。そのため、原材料の自社基準を作り、入荷時に検品します。数値化できるものとして、入荷時の原材料の表面温度、要冷蔵や冷凍の原材料はコールドチェーンの温度管理状態があります。入荷時の原材料のなかで、ICTツール管理しにくいものとして、異物混入や見た目や臭いなどがあります。
・保管
入荷した原材料は、一時保管庫で保管します。要冷蔵や冷凍品については、原材料ごとに定められた温度で管理するように保管温度や湿度を確認します。また、冷凍品は加工しやすくするため温度調整(テンパリング)を管理基準が遵守されているか記録・確認します。
・加熱
先にも述べたように多くの食品製造業では加熱工程をHACCPが(ハサップ)における、CCP(重要管理点)として管理しています。ここを逸脱すると食中毒の原因になるため、温度管理が重要になります。
・冷却
厚生労働省が示している「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、「調理後直ちに提供される食品以外の食品は、食中毒菌の増殖を抑制するために、10℃以下又は65℃以上で管理することが必要である。」としていますので、数値として管理します。
(参考)大量調理施設衛生管理マニュアル
https://www.pref.chiba.lg.jp/eishi/denshikan/documents/tairyoutyouri-manyuaru.pdf
・検品
製造中に目視で検品する他に、重量検査(ウエイトチェッカー)や金属探知機・X線検査機などで、異常値を発見し最終製品とする前に排除します。この件数をモニタリングすることにより、異常値を発見することで、製造ロットの異常の発見が可能になります。
・梱包
製品の多くは、容器包装に入れたあとは、その後の流通形態にあわせて梱包します。ダンボール等の包装資材をパレタイズするまでは、手作業になることが多く、製造のボトルネックになることが多いことから、通過数量や時間あたりの製造数をモニタリングし、改善することで、生産性を向上させることができます。
・出荷
出荷までの間に保管庫で、一次在庫にします。要冷蔵や要冷凍など、管理温度の異常が無いかモニタリングします。
お悩みのポイント
品質の確保とコスト削減の両立
食品製造業は、装置産業であることが多く、価格競争も激しいことから生産性が求められる一方で、人が口にすることから、食中毒などの事故は絶対に起こすことができません。また、美味しくなければ売れませんので、原材料となる農畜産物は天候に左右されるため、品質のばらつきがあるにも関わらず、商品には均一性が求められます。そのため、品質の確保とコスト削減という相反する、難しいことを両立しなければなりません。
人手不足への対応
食品製造業は、人手がいる作業が多いにも関わらず、他の製造業との競合などにより多くの工場で人手不足の感があります。人手が不足しているにも関わらず、商品の品質も落とせないし、価格競争も厳しくコスト削減が求められる厳しい状況への対応が求められます。
業務効率化解決のコツ
先程ご紹介した「7つのムダ」から業務のムダを洗い出します。機械化による省人化やICTツールを利用してのムダ取りを検討します。

人手作業を支援するツール
例えば、作り過ぎのムダや在庫のムダは、需要予測の精度を向上すれば、解消することができます。これは、人がやるよりもICTツールが得意な分野なので、新たな導入やより効率的なツールへの乗り換えを検討します。また、食品表示を間違うと商品回収など大きなリスクがともなうため、ICTシステムを入れて管理します。
製造の見える化(トレース)によるコスト削減
手待ちのムダ、動作のムダ、運搬のムダなど、作業を見える化することで、改善することができます。普段から工場をみていると、今やっていることが当たり前となってしまっているため、ムダに気づくことが難しくなります。そのため、ICTツールを使用して、動作分析は、数値化するなど見える化して確認することを検討します。
オススメ業務効率化ツール
・FOREMAST:キャノンITソニューションズの需要予測・需給計画ソリューション
https://www.canon-its.co.jp/products/foremast/
・パナソニック:リモートカメラシステム
https://biz.panasonic.com/jp-ja/products-services/proav_remote-camera-system
・MerQurius:JFEシステムズの食品表示作成システム
https://www.merqurius.jp/
生産管理の業務効率化
ここまでは、主に製造管理の業務改善について確認してきました。では、生産管理全般の業務効率化について確認します。
具体的な業務フロー
繰り返しになりますが、「需要予測、生産計画、調達・購買計画、製造管理、品質管理、在庫管理」をICTツールによる業務の効率化ができないか確認します。
お悩みのポイント

・需要予測
販売計画の精度が低いことから、勘や経験に頼った計画になったり、商品数が多いために需要予測に偏りが生じたりします。また、特売やプロモーションの変化を掴むことが難しいことなどがあります。
・生産計画
正確な需要予測が立たないことから、度重なる生産計画の変更による段取り替えのムダや在庫のムダが発生します。また、予測が立たない新製品の生産計画はあてになりません。
・調達・購買計画
正確な需要予測に基づいて取引先との交渉や段取りなどができずに、製造の直前まで調整することにより、運搬のムダや余分な経費などが発生します。
・製造管理
需要予想のバラつきにより、人員計画の変更や製造の段取り替えなどのムダが発生し、余分な経費を掛けてしまいます。
・品質管理
製造量のバラつきにより、製造上で負荷が加わることにより、異常な状態やミスが発生し、要求水準を満たさない品質の商品を製造してしまうことがあります。
・在庫管理
正確な生産計画が組めないことで、商品出荷が滞ることで賞味期限を確保することができずに廃棄ロスすることや、逆に特需により適正な在庫量を確保することができずに機会ロスを起こすことになります。
業務効率化解決のコツ
製造管理の課題の洗い出しに使えるツールとして、先に説明した7つのムダの他に、生産管理という視点では、3M(ダラリ)という考え方があります。

3M(ダラリ)とは
「ムダ、ムラ、ムリ」の後ろの文字を取ったものことで、ムリとは能力以上の仕事量があること、ムダとは能力以下の仕事量となっていること、ムラはムリ・ムダが混在していることをいいます。ムダについては、先に説明したとおり、7つのムダの視点で解消します。ますます複雑化する生産管理のなかで、ムラが発生しないように管理することは困難になりつつありますので、上手くICTツールを使用して管理します。
オススメ業務効率化ツール
RICOH製造業向けソリューション:製造業の“QCD確保×生産性向上”の管理ツール
https://www.ricoh.co.jp/solutions/industry/manufacturing/
生産革新 Blendjin SMILE V:大塚商会の生産管理システム
https://www.kk-osk.co.jp/products/smile_v_industry/blendjin.html
AvantStage:キャノンITソリューションズの基幹システム
https://www.canon-its.co.jp/solution/erp/
まとめ
食品製造業の業務改善について、生産管理をICTツールで管理していく視点について説明しました。業務改善は、ICT化するだけでは達成できませんが、課題を解決していくツール(道具)としてうまく利用することにより図られます。そうして、食品製造業は、3K(きれい、気持ちいい、格好いい)と言われる職場環境を目指していきましょう。
本サイトでも製造業の各業務フローにおける、業務効率化のポイントや最適なICTツールを「お役立ち資料」として掲載しております。そちらも是非参考にしてください。
#製造業(その他)の事例
#製造業(その他)の事例
天井裏の配管をRFIDタグで「見える化」、万が一に対応 昭和螺旋管製作所(東京都・茨城県)
- #製造業(その他)
- #顧客満足・社員満足度向上
- #環境経営
- #業務生産性向上
- #茨城県
事例を見る
執筆者
三海泰良(さんかい やすよし)
静岡県浜松市出身、東京都世田谷区在住。大学卒業後に農業関連団体へ入会。自費でMBA(経営管理学修士)を取得し、2013年中小企業診断士登録。2014年中小企業診断士事務所設立。主に経営戦略、マーケティング、創業支援、M&A、補助金申請書作成支援、HACCP構築等を中心に活動しています。創業セミナーや食品表示の講師の他に各種執筆を行う。
記事タイトルとURLをコピーしました!