2023年12月からアルコール検知器によるチェックが義務化。法改正対応に必要な取り組みは?
2023年09月29日 06:00
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2022年4月から改正道路交通法施行規則が順次施行され、業務上の飲酒運転を防ぐための法律が強化されました。延期されていたアルコール検知器使用の義務化も、2023年12月にスタートします。そこでこのコラムでは、白ナンバー車のアルコール検知器使用の義務化や安全運転管理者の専任など、法改正の内容や、企業に必要な対策を解説します。
アルコールチェックとは?
道路交通法施行規則で義務化されている、事業所でのアルコールチェック。現在の法律ではどのような内容が定められているのでしょうか。
アルコールチェックはなぜおこなわれているのか?
事業で使う車を運転する従業員へのアルコールチェックは、飲酒運転による被害撲滅のため法律で事業者に義務付けられています。目視による点呼やアルコール検知器によって、運転者の酒気帯びの有無を確認する必要があります。
これまでは緑ナンバーがアルコール検知器チェックの対象
運賃を得て物品や人を運搬する「緑ナンバー」の車を使う事業所では、2011年5月からアルコール検知器によるチェックが義務化されていました。
また、航空業界や鉄道業界でも、操縦士や運転士へのアルコールチェックはすでに義務付けられています。
白ナンバー車もアルコールチェック義務化の対象に
2022年4月の改正法では、白ナンバー車に対してもアルコールチェックが義務化されました。その具体的な内容は次のとおりです。
社用車もアルコールチェックの対象に
2022年施行の改正法では、事業所で使う社用車など、白ナンバー車もアルコール検知器によるチェックが義務化されました。乗用定員数が11人以上の自動車1台以上、または、その他の自動車5台以上を使用する事業者は「安全運転管理者」を決めて、15日以内に警察署に届け出る必要があります。選任した安全運転管理者が、ドライバーの運転前後のアルコールチェックをおこないます。
2022年4月から義務化されたこと
2022年4月から、白ナンバー車を使う事業所の安全運転管理者に義務化されたのは、次のようなアルコールチェックの取り組みです。
- 運転前後のドライバーの状態を目視などで確認することで、運転者の酒気帯びの有無を確認すること
- 酒気帯びの有無について記録し、1年間保存すること
アルコール検知器使用の義務化は2023年12月から
当初の予定では2022年10月1日より、アルコール検知器を使用した酒気帯び確認が義務化される予定でしたが、半導体不足・コロナ禍の物流停滞等を理由に開始が延期。2023年12月1日から、白ナンバーを使う事業者に対して以下の取り組みが義務化されます。
- 運転の前後にドライバーに対し、目視等により酒気帯びの有無を確認するほか、アルコール検知器を使って確認をおこなうこと
- 確認の記録を1年間保存し、アルコール検知器を常時有効に保持すること
対象となる事業者には、2023年12月に向けてアルコール検知器を用意し、呼気中のアルコールを検知する機器による確認、そして、アルコール検知器に故障などの不具合がなく、確実に使用できる状態にメンテナンスをしておくことが求められます。
違反するとどんな刑罰・ペナルティがあるのか
法律で規定された台数の白ナンバー車を使っているにも関わらず、安全運転管理者を選任しなかった場合は、50万円以下の罰金が課せられます。また、安全運転管理者の選任・解任の届出が15日以内になかった場合は、5万円以下の罰金が課せられます。
また、都道府県公安委員会が、安全運転管理者が必要なアルコールチェックをおこなわず、自動車の安全な運転が確保されていないと判断した場合は、安全運転管理者の解任を命じることができます。またこれに従わなければ、50万円以下の罰金に処せられます。
アルコールチェック義務化への対応に必要なこと
アルコールチェックの義務化に関して、白ナンバー車を使う事業者に求められる取り組みは、次のとおりです。
安全運転管理者の選任
一定台数以上の白ナンバーの自動車を使用する事業者は、自動車を使う拠点ごとに、安全な自動車運転のため必要な業務をおこなう担当者として、安全運転管理者を選任する必要があります。
安全運転管理者は、目視やアルコール検知器によるアルコールチェックのほか、安全運転教育や、運転計画の作成、点呼と日常点検などの業務を担います。安全運転管理者を選任したら15日以内に、警察署に必要書類を提出して届け出ましょう。
アルコール検知器の準備
2023年12月に、白ナンバー車に対して、アルコール検知器を使ったアルコールチェックが義務化されます。運転者の呼気によって酒気の有無や濃度をチェックし、アラームや光、数値で示すアルコール検知器を、白ナンバー車を使用する拠点ごとに揃えておく必要があります。
チェック業務で発生しやすい困りごとは?
白ナンバー車のドライバーのアルコール検知器によるチェックが必要になる現場では、担当者の負担が増えたり、トラブルが起こる可能性もあります。アルコールチェック業務によくある困りごととは何でしょうか。
点呼業務での困りごと
ドライバーの健康状態や酒気帯びの有無をチェックする点呼業務。昼夜を問わず対面で点呼をおこなう現場では、安全運転管理者の早朝勤務・残業などの負荷が大きな課題です。また、拠点や担当者ごとに点呼の重要性に対する認識に差があり、点呼の方法や精度にばらつきが生じることもあります。それによって、安全運行のために必要な品質の点呼が正しくおこなわれないというリスクも想定されます。
記録の管理における困りごと
保存が必要な点呼記録の作成・管理にかかる手間も、点呼に関する困りごとのひとつです。手書きの点呼簿では点呼記録を一元管理することが難しく、監査対応に向けた書類を準備する業務にも手間がかかり、担当者に負荷をかけます。
アルコール検知器の管理における困りごと
アルコール検知器を必要数揃え、管理する業務も新たに発生します。各事業所の設置用や、ドライバー携帯用のアルコール検知器には、十分な精度を備えたものを選ぶ必要があります。また、アルコール検知器を常に正しく使える状態に保持しておくことも義務化されています。取扱説明書に従った適切な使用がおこなわれているかどうかを確認し、定期的に保守や点検をおこなうことも必須です。
機械を使い慣れていないドライバーにも使いやすいアルコール検知器や、遠隔地からの点呼に対応できる検知器、アルコール検知結果をデータ化できるものなど、自社の実情や用途に合った機器を選ぶことも大切です。
クラウドシステムで安全運転管理者の業務を効率化
道路交通法の改正で白ナンバーにもアルコールチェックが義務化され、運転者情報、車両情報、確認者情報、確認結果等、アルコールチェックに関する8項目の記録が必要になりました。
また、測定結果は1年間保存することが義務付けられています。こうした日々の記録や保管業務に、負荷を感じている方も多いのではないでしょうか。
アルコールチェックと検査結果の記録や管理の業務を効率化するのが、アルコール検知器とクラウドを連動させたアルコールチェック記録管理システムです。
会社に設置したアルコール検知器やモバイル検知器を使って毎日のチェックを行い、検査記録はクラウドで管理。直行直帰や出張など会社に立ち寄らない運転者のアルコールチェックももれなく行うことができ、検査記録を紙やエクセルに記入する必要もありません。アルコールチェック業務が効率化され、確認を担当する安全運転管理者の負担が大幅に軽減されます。
アルコールチェック結果を含む点呼記録をICTで管理│藤沢市ガス事業協同組合(神奈川県)
配送用のトラック2台と営業車3台を使ってLPガスの卸売りや小売りを行っている藤沢市ガス事業協同組合は、2022年4月からパソコンと連動したアルコール検知機を導入し、検知結果が自動的に記録されていくシステムを導入しました。
当初は「軽くチェックすれば大丈夫」と考えていたそうですが、社用車の利用に関連したすべての記録を残しておかなければならないと知り、考えを改めたそうです。
アルコール検知器使用の義務化に先駆けて、早めに記録業務の習慣化を従業員に促したことにより、新しい状況にスムーズに移行できる環境を整えることができたそうです。
#卸売業の事例
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アルコール検知器導入やLPWAによるガス検針の自動化 ICTで省力化を推進 藤沢市ガス事業協同組合(神奈川県)
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クラウドの活用と安全運転への啓蒙でアルコールチェック体制を強化 | 阿知波設備(愛知県)
愛知県で水道設備や空調設備の施工を手掛ける株式会社阿知波設備は、交通ルールの遵守や、ながら運転など交通事故につながる危険運転を防ぐ意識付けに取り組んできました。そのため、アルコール検知器を使った酒気帯び確認にもスムーズに対応。アルコールチェックシステムを導入し、運転前後のチェック結果をクラウドに保存して管理しています。
また、アルコールチェック義務化開始前の1ヵ月間、前日の飲酒量が勤務日にどう影響するかを確認。前日の飲酒時間の目安を周知し注意喚起することで、アルコールチェック体制を強化しました。
#建設業(設備)の事例
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9人の会社の「SDGs行動宣言書」は、ICTを従業員のため、顧客のため、社会のために使う姿勢から生まれた 阿知波設備(愛知県)
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業務の安全と社員の健康増進にアルコール検知器を活用 | 備福電気通信建設(岡山県)
岡山県の備福電気通信建設有限会社は、社員の健康増進や職場の安全確保のためICTを活用。デジタル複合機による業務効率化や、健康管理に関する情報発信と社員の運動不足を解消するトレーニングにデジタルサイネージを活用するなどの取り組みを進めています。
また、社員通用口に、勤怠管理用端末に加えて、体温測定用カメラとアルコール検知器を設置。勤怠記録と体温、アルコール検知情報を統合したデータを、運転前のアルコールチェックだけでなく、社員の健康管理のサポートにも役立てていく見込みです。
#建設業(設備)の事例
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法改正はチャンス!安全性アップと業務改善を進めよう
法改正への対応だけでなく、安全性の高い業務のためにも必要なドライバーのアルコールチェック。ITソリューションなど自社に合ったツールもうまく活用してアルコールチェック体制を整え、働きやすい職場環境の実現や、担当者の負担軽減を目指しましょう。
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本記事の内容は、2023年9月時点の情報に基づいて作成しました。
記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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