アセスメントとは?意味や使い方、導入・実践する方法をわかりやすく解説
2022年11月29日 06:00
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アセスメントは、企業経営において非常に重要な考え方のひとつです。一方で、アセスメントという言葉を聞いたことはあるものの、詳細は把握していないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、アセスメントの基本的な意味や考え方、企業経営における効果についてわかりやすく解説します。中小企業において重要度の高いアセスメントや導入時の手順、実践する際の注意点にもふれていますので、ぜひ参考にしてください。
アセスメントとは
はじめに、アセスメントの基本的な意味や使い方を確認しておきましょう。「モニタリング」や「エバリュエーション」といった関連用語との違いを押さえておくことが大切です。
事象や人を客観的データから評価すること
アセスメントとは、直訳すると「評価」や「査定」で、事象や人を客観的データから評価することです。略して「アセス」といわれることもあります。アセスメントは、製造業などの一般企業のほか、医療や福祉、環境といったさまざまな分野で行われます。ビジネスにおいては、人事や、環境への影響、リスクなどにおいて客観的な評価を行うことで、あらかじめ課題に対処することを表す言葉です。
アセスメントの使い方を例文で確認
アセスメントという言葉は、さまざまなシーンで使われています。ここでは、人材・看護・福祉分野での使い方の例を紹介します。
人材関連のアセスメント
例:「適切な人員配置を実現するには、アセスメントが必要」
人材アセスメントとは、従業員の能力や資質を客観的に評価することを指します。適性検査などを活用し、人物像や思考の傾向などを踏まえた人員配置や配属に役立てる手法が一般的です。
看護分野におけるアセスメント
例:「患者の状態を適切に評価するためのアセスメントが求められる」
看護におけるアセスメントは、看護計画を作成する過程で患者の状態を客観的に評価することを指します。検査結果などから得られた客観的情報と、患者自身の発言などから得られた主観的情報を踏まえて看護計画を作成するのがポイントです。
福祉分野におけるアセスメント
例:「アセスメントシートにもとづいて介護計画書を作成する」
介護アセスメントとは、介護対象者の要望に応えるための分析・評価のことを指します。対象者やその家族からヒアリングした情報を元にアセスメントシートを記載し、これにもとづいて介護計画書が作成されます。
「モニタリング」「エバリュエーション」との違い
アセスメントの関連用語として「モニタリング」や「エバリュエーション」が挙げられます。
モニタリングとは現状把握のことです。施策の実行やサービス提供などが予定どおりに進行しているか、随時確認することを指します。特定の指標にもとづいて定期的に状況を確認するのがモニタリングです。
エバリュエーションとは、成果や改善点などを分析・評価することを指します。モニタリングが進行中の事象を把握することを指すのに対して、エバリュエーションは事後評価を指す点が大きな違いです。
このように、「評価」を表している点はアセスメント、モニタリング、エバリュエーションの共通点です。一方で、アセスメントはまだ起きていないことやこれから起きると想定されることを見越して評価するのに対して、モニタリングやエバリュエーションはすでに起きたことについて評価する点が異なります。
アセスメントを実践する際に理解しておきたい「氷山モデル」

前述のとおり、アセスメントは「まだ起きていないこと」「これから起きると想定されること」を見越して評価する点に特徴があります。この考え方の根底にあるのが「氷山モデル」です。
氷山モデルとは
氷山モデルとは、顕在化している事象は全体の一部に過ぎないという考え方のことです。見えている部分(水面上)に対して、より本質的な理由や背景(水面下)が存在するという概念を表しています。現在判明している事実から将来起きる可能性のあることを予測して評価するアセスメントにおいて、重要な概念のひとつです。
氷山モデルの階層
氷山モデルは「出来事」「行動」「構造」「意識/無意識の前提」の4階層から構成されています。
- ・出来事:実際に起きていること。
- ・行動:出来事の前ぶれとして表れる行動の傾向。
- ・構造:行動に影響を与える要因。
- ・意識/無意識の前提:構造の根底にある価値観や先入観。
アセスメントにおいては、出来事から行動→構造→意識/無意識の前提へと物事を深く考察していくことが重視されます。表面化している出来事は全体のほんの一部でしかないことを前提に考えることが大切です。
事象や人の背景(水面下の部分)を検証することが大切
人材アセスメントにおいて、氷山モデルを活用して事象や人の背景を検証している例を見ていきましょう。
- ・出来事:営業成績が伸び悩んでいる従業員がいる。
- ・行動:仕事に対するモチベーションが低く、自発的に発言・行動しない。
- ・構造:現在の担当業務が今後のキャリアにどう活きるのかイメージできていない。
- ・意識/無意識の前提:明確な目標やキャリアプランがないことに不安を感じている。
このように、アセスメントを導入・実践する際には物事や事象の背景に何があるのかを理解することが重要です。
企業経営におけるアセスメントの効果

アセスメントの活用シーンは非常に幅広いため、どのような効果が得られるのかイメージしにくい面があるかもしれません。ここでは、3つのシーンを例に挙げて企業経営におけるアセスメントの効果を見ていきましょう。
効果1:人員配置の最適化
人事異動やプロジェクトの人選を行う際には、公平で客観的な能力の分析と適切な評価が不可欠です。しかしながら、従業員の能力・資質を評価するにあたって先入観を完全に排除するのは容易ではありません。
アセスメントによって客観的なデータを元に個々人の能力やスキルを分析することで、部門やプロジェクトに必要とされる人材をより適切に判断しやすくなります。これにより、上長が個人的に気に入っている部下や、コミュニケーションを交わす機会が多い部下を高く評価するといった事態を回避し、適材適所を実現しやすくなる点が大きなメリットです。
効果2:信頼失墜のリスク回避
アセスメントは、企業が対外的な信頼を失うリスクを回避する上でも重要な取り組みです。職場において発生するおそれのある労働災害を未然に防止するには、潜在的な危険性や有害性を客観的に評価し、予測しなければなりません。現在の職場環境を客観的に分析し、リスクを適切に評価する際にアセスメントが役立ちます。
また、企業の評判低下を招くレピュテーションリスクを回避するためにも、アセスメントが欠かせません。環境に悪影響を与える可能性のある活動や、不快感を与えかねない広告表現などを未然に察知し、対策を講じる必要があるからです。このように、企業の信頼失墜につながるリスクを低減するための取り組みとして、アセスメントの重要性が高まりつつあります。
効果3:管理者の適切な選出
管理者を選任する際にも、人材アセスメントが重要な役割を果たしています。マネジメントには向き不向きがあるため、プレイヤーとして優秀な人材が管理者として適任とは限りません。一方で、プレイヤーとして発揮したパフォーマンスが高く評価され、管理職に登用されるケースも少なくないのが実情です。
それぞれの従業員が備えている資質や能力を客観的に評価し、管理者として必要とされる能力との一致度合いを明確にすることで、より適した人材を管理者に登用できるでしょう。
企業において必要なアセスメントの例
では、一般企業にとって必要なアセスメントとは何でしょうか。ビジネスシーンでとくにチェックすべきアセスメントを解説します。
人材アセスメント
人材アセスメント、または人事アセスメントとは、客観的な評価・分析を活かして人事や採用活動を行うことです。従業員を、第三者や客観的情報から正しく評価することや、適切な評価にもとづく人員配置することなどを指します。評価を第三者機関に依頼することや、採用に適性検査を活用するのも、人材アセスメントのひとつです。
組織アセスメント
一人ひとりの従業員だけでなく、部署やチームを客観的に評価・分析するのが、組織アセスメントです。組織の強みや特徴を把握し、人材アセスメントと組み合わせて活用することで、適切な人材の配置やリーダーの選出、採用活動につなげられます。
環境アセスメント
環境アセスメントとは、商品の製造や建設・工事など自社の事業が、環境にどのような影響を与えるかを予測することです。産業廃棄物や環境汚染、また工事を行う周辺地域への影響などを、客観的な調査や、住民や自治体へのヒアリングを元に評価します。その結果を元に、環境破壊や公害への対策を行いながら、事業を進める必要があります。
中小企業において重要度の高いアセスメント

さらに、中小企業にとってとくに意識したいのが、次のふたつのアセスメントです。
労働安全衛生法で努力義務化されているリスクアセスメント
労働安全衛生法の観点から重要なのが、リスクアセスメントです。リスクアセスメントとは、事業所の中にある危険性やリスクを特定し、それを事前に取り除くための対策を行うことです。労働安全衛生法では、従業員が安心して働ける職場環境を作るため、企業に、労働災害を防ぐリスクアセスメントに取り組むよう努力することが義務付けられています。
参考:「労働災害を防止するためリスクアセスメントを実施しましょう」厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
情報セキュリティに関するアセスメント
情報セキュリティに関するリスクアセスメントも、中小企業にとって欠かせません。中小企業でも情報の利活用が進む一方で、サイバー攻撃手法の巧妙化、悪質化などによって、企業が被害を受けるリスクは上がっています。自社がもつ情報資産や、日ごろ扱っている情報について、どのようなリスクが存在するのかを洗い出し、対策を行うことが重要です。中小企業は、発注元企業への標的型攻撃のきっかけとして狙われる危険性があることからも、丁寧で早急な対策が求められています。
アセスメントを導入する手順を5つのステップで解説
アセスメントの導入は、次の5つのステップで進めます。
- ・ステップ1:実施目的の明確化
- ・ステップ2:情報収集と仮説の立案
- ・ステップ3:目的に合ったツールの選定
- ・ステップ4:実行と検証
- ・ステップ5:評価と改善
各ステップでやるべきことを見ていきましょう。
ステップ1:実施目的の明確化
第一にやるべきこととして、アセスメントを導入する目的の明確化が挙げられます。現状抱えている課題を洗い出した上で、優先的に解決すべき課題を絞り込み、課題解決を実現するために必要なアセスメントとして位置づけるのがポイントです。
たとえば、人員配置の最適化を図ることが目的の場合と、離職率を抑制することが目的の場合とでは、評価すべき項目が大きく異なります。前者であれば各従業員のスキルやキャリアの志向といった個人特性が重視されるのに対して、後者では個々人が現状感じている満足度やストレスといった指標を重点的に測定していく必要があるからです。アセスメントの実施目的を明確化するとともに、具体的な目標数値を設定しておくことをおすすめします。
ステップ2:情報収集と仮説の立案
次に客観的な情報を収集し、現在の状況を明らかにしていきます。印象や感覚で判断するのではなく、具体的なデータや客観的事実を元に現状分析を進めるのがポイントです。現状分析に必要な情報が不足しているようなら、従業員を対象としたアンケート調査や適性検査の実施なども視野に入れて検討していくとよいでしょう。
現状分析の結果を踏まえて、どうすれば改善につながるのか仮説を立てておくことも重要なポイントです。たとえば現状ストレスを抱えている従業員が少なからずいる場合、それらを個々の問題として解釈するのではなく、職場環境や労働条件に起因する問題として捉え、どのような要因をどう改善していけばストレスが軽減されるのかを考えていく取り組みが求められます。
ステップ3:目的に合ったツールの選定
ツールを選定する際には、ツールありきで検討するのではなく、自社が必要とする評価項目を事前に整理しておく必要があります。仮説の検証に必要な評価項目を明らかにした上で、それらの指標を測定可能なツールを選定していきましょう。一例として、人材に関する指標であればタレントマネジメントツール、環境に関する指標であれば環境アセスメントデータベースなどの活用が有効です。
ステップ4:実行と検証
選定したツールを活用して評価を実行し、その結果を検証していきます。数値データの収集に終始することのないよう、評価結果を踏まえて現状の課題分析をより深めていくことが大切です。
検証を進める際のポイントは、数値データの背景や要因を追究することです。事前に立てた仮説と大きく乖離する結果が出ていたり、標準的な数値から大きく外れていたりするようなら、何らかの原因が潜んでいる可能性が高いと考えられます。ツールによって測定される数値はあくまでも現在の状況に過ぎません。それらのデータを元に、原因を深掘りしていく必要があるでしょう。
ステップ5:評価と改善
アセスメントに関する一連の取り組みを評価し、改善点を見出していく取り組みも欠かせません。抱えていた課題の解決につながっているか、具体的な効果が表れているか、といった点を定期的に振り返りましょう。
評価を通じて洗い出された改善点は、速やかにアセスメント計画に反映させます。このようにアセスメントは一度実行して満足するのではなく、改善を繰り返しながら継続していくことが重要です。
アセスメントを導入・実践する際の注意点
アセスメントを導入・実践するにあたって、いくつか注意しておきたい点があります。アセスメントの効果を引き出すためにも、次に挙げる3点を実践していきましょう。
能力の評価と明確に区別する
とくに人材アセスメントのように従業員の能力やパフォーマンスと関わりの深い取り組みにおいては、能力の評価(人事評価)とアセスメントを切り離して考える必要があります。アセスメントにおいて評価対象となるのは、あくまでも個々人の適性です。各々の能力そのものを評価したり、序列化したりすることが目的ではないという点を周知しなくてはなりません。
たとえば、アセスメントの目的が人員配置の最適化であれば、各従業員が現状できること・苦手意識を感じていることなどをありのままに回答してもらう必要があります。人事評価に悪影響が及ぶことを懸念し、自身を実態よりも良く見せようとすれば、不正確な調査結果になりかねません。アセスメントの趣旨を丁寧に説明し、従業員の理解を得ることが重要です。
対象者へのフィードバックを実施する
調査や検査などを実施した際には、対象者へのフィードバックを必ず実施することが大切です。客観的なデータを収集することが目的とはいえ、調査対象者が時間を割いて協力していることに変わりはありません。調査結果から浮かび上がった課題とあわせて、後日従業員へ結果を共有する機会を設けましょう。
フィードバックを行うことで、従業員自身が置かれている状況を把握しやすくなり、自発的な改善が促される効果も期待できます。このように、フィードバックを通じて現状の課題を組織全体で共有し、共通認識を形成しておくことが、改善に向けたアクションを講じやすくするためのポイントです。
検証と改善を繰り返す
アセスメントの取り組みは、一度の評価と検証、改善策の実行によって顕著な成果をもたらすとは限りません。継続的に調査と分析、評価を実施していくことによって、徐々に改善が図られていることを確認できる場合もあります。検証と改善は繰り返し実施し、過去との比較や推移の確認ができるようにしておくことが大切です。
また、改善策を実行後に振り返りを実施することも重要なポイントです。アセスメントそのものの取り組みを継続的に評価することが、指標の最適化や精度の向上につながっていきます。こうした中長期にわたる計画を立て、着実に実行していくことがアセスメントの効果を高める上で不可欠です。
アセスメントを実践して適切なリスク回避につなげよう
アセスメントは人事・組織・環境といった多方面にわたって使われている用語です。中小企業においても、労働安全衛生法で努力義務化されているリスクアセスメントや情報セキュリティに関するアセスメントに関しては、常に意識していかなくてはなりません。今回紹介したアセスメントの考え方や導入する際の手順・注意点を参考に、自社での取り組みにぜひ役立ててください。
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記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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