バッファとは?ビジネス上の意味や業界別の違い、正しい使い方やCCPMまで解説
2025年10月09日 10:15
この記事に書いてあること
ビジネスシーンにおいて、予算やスケジュールなどにバッファを持たせることが重要です。本記事では、バッファの概要や業界別の違い、使い方などを解説します。CCPMという管理手法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
バッファとは何か?
バッファとは、ゆとりや余裕などを意味します。ここでは、言葉の由来を解説します。
英語の「buffer」に由来
バッファは、英語の「buffer」に由来します。日本語の意味は、「緩衝」や「和らげる」などです。人や組織といった対立するものの間に入り、不和を和らげることを意味します。ただし、ビジネスの現場では、本来の意味とは異なる使われ方をします。
ビジネスにおけるバッファの意味
ビジネスにおいて、バッファの意味が本来のものと異なる場合があります。ここでは、言葉の意味を解説します。
「余裕・ゆとり」と「緩衝」の2つの意味がある
ビジネスシーンにおいて、バッファの意味は「余裕・ゆとり」です。たとえば、予算やスケジュール、人員、在庫などに余裕がある、ゆとりを持たせるといった意味があります。それぞれ、主にプロジェクトを管理する際に使われます。
また、対立を「和らげる」「緩衝」といった使い方も可能です。たとえば、人間関係や組織の間に入り、サポートや仲介などをする意味を持ちます。仲介役として、人や企業を指す場合もあります。
業界別のバッファの意味とは?
バッファは、業界によって使い方が異なります。ここでは、業界別の意味を解説します。
金融業界
金融業界において、「資本保全バッファー」が使われる場面が多くあります。資本保全バッファーとは、自己資本に上乗せして資金不足に備えるためのものです。資金に余裕を持たせて、経済危機や資金繰りの悪化などを対策します。
金融業界のバッファは、「バーゼル3」という、国際金融システムを健全にする指針によって導入されました。一般的に、金融業界では他の業界とは異なり、「バッファー」を使います。
IT業界
IT業界でバッファを使う場合、「保存領域」を指すことがほとんどです。コンピューターのメモリをはじめとした、一時的にデータを保存する場所を指します。一時的にデータを保存するバッファがあることで、データ処理の安定化につながります。代表的なものは、パソコンとプリンターの間でデータを転送する機能です。
ただし、IT業界のプロジェクトにおいて、納期や予算の余裕を指す場合もあります。
動画配信業界
動画配信業界では、「バッファリング」が多く使われます。バッファリングとは、映像や音楽などのデータを一時保存する機能です。動画再生の開始前に、データを事前に読み込むために使用されます。読み込みの時間を「バッファ時間」といい、数秒間から数分間、データ通信を行うために必要です。
通信の不具合が起きた場合、再生を中止してダウンロードする、リバッファリングという機能もあります。
製造業界
製造業界では、在庫や時間などの余裕の意味でバッファを使います。製造における生産ラインが異なるものが多いため、調節やバランスを実現する余裕が必要となります。たとえば、在庫の予備や製造工程における、時間的な余裕を意味します。
生産ラインにおける「在庫バッファ」は、製品や材料などの共有を確保するための余裕やゆとりです。「時間バッファ」は、遅延をはじめとした生産スケジュールの調節の意味で使います。
バッファを設けるメリット
バッファは、生産全体に影響するものです。ここでは、バッファを設けるメリットを解説します。
イレギュラー・トラブル発生時のリスクを軽減できる
時間や在庫に余裕を持たせることで、イレギュラー・トラブル発生時のリスクの軽減につなげられます。たとえば、在庫や予算不足など、さまざまなトラブルへの対応が可能です。ビジネスの現場において、スケジュール通りに進行しないケースは多くあります。バッファがあれば、イレギュラーな事態のリスクを最小限に抑えられるでしょう。
作業効率が上がる
柔軟なスケジュールを組むことで、仕事全体に余裕が生まれます。作業現場において、一部に仕事が集中するケースは多々あります。急激な負担増や業務量の変化に対応するため、人員や設備などの再分配が必要です。ただし、余裕やゆとりを持たせすぎると、人件費などの費用が増加するため注意しましょう。
ミスの減少・品質維持につながる
作業量や時間などに余裕があると、ミスを減らしやすくなります。バッファを持たせることで、ミスを取り戻す余裕も生まれるため、品質の維持にもつなげられるでしょう。従業員に焦りが出ると、集中力が低下して品質に影響を与えます。ミスを誘発する悪循環が生まれて、人間関係の悪化の原因にもなるリスクが高まるため、余裕やゆとりが必要です。
ストレス減少・パフォーマンスの向上が期待できる
落ち着いて仕事を進められると、ストレス減少の効果が期待できます。従業員のパフォーマンスも向上し、企業全体によい影響を与えられます。時間・リソースの不足を心配する必要もなくなり、精神的なゆとりも生まれるでしょう。スキルアップやコミュニケーションの時間が取れれば、チームの活性化にもつながります。
バッファの正しい使い方とビジネス例文
ビジネスシーンにおいて、バッファを正しく使うことは大事です。ここでは、言葉の正しい使い方と例文を解説します。
「バッファを持たせる/取る」などの主な使い方と例文
「バッファを持たせる/取る」と使う場合は、自分で状況をコントロールする意味を持ちます。例文は、以下のとおりです。
- ・
納期までには1週間ありますが、バッファを持たせるために早めに納品します
- ・
予算1,000万円のバッファを持たせて相手との交渉に臨みましょう
- ・
プロジェクト進行中の欠員に備えて、バッファをとって準備することが大事です
また、組織や人の間に立つ場合、以下のような使い方をします。
- ・
部署同士の連携が必要なため、営業部と企画部のバッファになっていただきたいです
- ・
ミーティング中は、相性の悪い人同士の間に入ってバッファの役割をもってください
間違った使い方は?「精神的な余裕」には使わない
バッファは、人員や時間、予算などの物理的なものに対して使われる言葉です。精神的な余裕には使えないため、使い方に注意しましょう。間違った使い方の例文は、以下のとおりです。
- ・
バッファをなくしている人に依頼はできない
- ・
Aさんは精神的なバッファをなくして慌てふためいている
上記のように、精神的なものに対しては使えません。「スケジュールのバッファをなくしてしまった」といった、物理的な余裕を指す意味で使いましょう。
バッファの管理手法「CCPM」のメリットと進め方
バッファには、「CCPM」という管理手法があります。ここでは、メリットと進め方を解説します。
「CCPM」とは?概要と特徴
「CCPM」とは、スケジュールやコストを限界まで調節する管理手法です。別名「クリティカルチェーンマネジメント」と呼ばれており、可能な範囲でバッファを短縮します。CCPMにおいて、タスクごとのバッファは一元管理されます。
たとえば、3つのタスクが60日のスケジュールで進行する場合、20日ごとではなく15日ずつに納期を設定します。合計15日の余裕ができるため、遅延する部分に人員やタスクなどを割り当てることが可能です。
CCPMを導入するメリット
CCPMを導入するメリットは、組織全体のパフォーマンスの向上です。スケジュールやコストなどを調節することで、進捗管理や遅延を対策しやすくなるためです。バッファがあるため、トラブルが起きた場合でもリスクを最小限に抑えられるでしょう。
また、タスクの可視化や優先順位の設定など、プロジェクト全体の管理にもつなげられます。従業員がプロジェクトを把握しやすくなり、チーム全体の協力による体制の確立もできます。
CCPMの実施手順
CCPMの実施手順は、以下のとおりです。
- 1.
ODSCを決定する
- 2.
作業の工程を決める
- 3.
バッファを設定する
ODSCとは、プロジェクトの完成イメージを共有するためのものです。目的(Objectives)、成果物(Deliverables)、成功基準(Success Criteria)の頭文字をとった言葉です。従業員が具体的なイメージをつかむことで、プロジェクトの成功確率を高めます。
作業の工程は、プロジェクトのゴールから逆算して決めましょう。工程をすべて洗い出し、開始日や期限、担当者などを割り当てます。最後に工程ごとの時間を割り出して、バッファを設定しましょう。CCPMを実施する際は、各工程の進捗と残量を把握することが大事です。
まとめ
バッファとは、「余裕・ゆとり」といった意味を持つ言葉です。バッファを持つことで、プロジェクト全体を把握し、業務効率やパフォーマンスの向上などにつなげられます。また、ミスの減少や品質維持、ストレス減少も期待できるでしょう。ただし、業界別に言葉の意味が異なるため、正しい使い方で活用することが大事です。
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記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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