ベンダーとは?業界別の意味やメーカー・サプライヤーとの違い、ITベンダーの種類も解説
2025年09月19日 06:00
この記事に書いてあること
ベンダーは、業界によって意味や役割が異なり、混同されやすい用語も存在します。この記事では、ベンダーの定義や語源をはじめ、業界ごとの使われ方、メーカーやサプライヤー、ユーザーとの違い、ITベンダーの種類まで網羅的に解説します。ベンダーに関する理解を深めたい人は、参考にしてください。
ベンダーとは何か?定義と語源
ベンダーとは、製品やサービスをユーザーに販売する事業者のことです。自社で製造は行わず、メーカーと契約して製品を販売します。特にIT分野では、ソフトウェアやネットワーク機器などを専門に扱う企業を指すことが多く、製品や対応業務により呼び方が異なります。
業界で異なるベンダーの意味
業界によってベンダーの意味は異なります。以下で、6つの業界で使われるベンダーの意味について解説します。
IT業界
IT業界のベンダーとは、IT製品やサービスを販売する事業者のことです。取り扱う内容によってさらに細かく分類されます。システムを販売するシステムベンダー、企画から運用まで行うSIベンダーのほか、ソフトウェアやハードウェア、クラウドサービスを提供する各種専門ベンダーがあります。
自動車業界
自動車業界のベンダーとは、自動車の製造に必要な各種パーツを供給する事業者のことです。自動車の部品やアクセサリー、関連サービスを提供する事業者も含まれます。
食品業界
食品業界のベンダーは、小売店や飲食店に商品や食材を供給する事業者です。弁当や惣菜の製造業者、お菓子問屋、飲料メーカー、飲食店に食材や調味料を提供する事業者も含まれます。
飲料業界
飲料業界では、自動販売機のことを英語の「Vending Machine」に由来して「ベンダー」と呼びます。自動販売機の設置・運営・管理、環境対策などを行う事業は「ベンダー事業」とされています。
建設業界
建設業界のベンダーとは、建築用の資材や建設機械、設備、電気工事のサービスなどを提供する事業者のことです。製品の品質や耐久性、安全対策、法体制の変化に応じた先端技術の提供などが求められます。
医療業界
医療業界のベンダーは、医療機器や医薬品を提供する事業者を指します。製品の安全性確保や法令遵守、バイオ医薬品の開発など、継続的な研究活動の把握が重要です。また、医療業界のベンダーは、新しい治療法の開発や診療効率化のためのシステム提供を通じて、医療の進歩に貢献します。
ベンダーに関連する3つの用語「メーカー」「サプライヤー」「ユーザー」との違いは?
ベンダーと混同されやすい用語「メーカー」「サプライヤー」「ユーザー」が、ベンダーとどう違うのか解説します。
メーカーとベンダーの違い
メーカーは、製品の開発・製造を行う事業者全般を指します。自動車業界では、材料・部品の製造や組み立て事業者が含まれます。一方、ベンダーはメーカーからの製品を販売し、サービスを提供する事業者です。例えば、大手自動車メーカーの販売店(ディーラー)はベンダーの役割を担い、メーカーと販売店はグループ内で役割を分けています。
サプライヤーとベンダーの違い
サプライヤーは、原材料や部品を他社に供給する事業者です。一方、ベンダーは完成品を消費者に直接販売する事業者を指します。自動車業界では、部品メーカーがサプライヤー、カー用品店や販売店がベンダーの役割を担います。
ユーザーとベンダーの違い
ユーザーは、ベンダーから商品やサービスを購入して使う消費者を指します。サプライヤーからの原材料をもとにメーカーが生産し、ベンダーが販売した後の「最後の受け手」なので、エンドユーザーとも呼ばれます。自動車業界では、販売店で車を買う家庭や、カーリース契約を結ぶ法人が該当します。
IT業界におけるベンダーの種類と特徴
IT業界におけるベンダーの種類は、主に8つあります。以下で、それぞれの特徴について解説します。
1.システムベンダー
顧客の業務に合ったパッケージ型の基幹システムや管理システムを販売します。ゼロからの開発ではなく、すでに機能が備わった製品を提供することが得意です。多くは月額課金制で、導入後のサポートや保守も充実しているため、システムに不慣れな企業でも安心して利用できます。業種や用途に合わせて適切なベンダーを選ぶことが重要です。
2.システムインテグレーター(SIer)
システム開発だけでなく、ハードウェアやネットワーク、クラウドの構築まで含めて、一連の作業を請け負います。複数のソフトや機器を組み合わせた大規模なシステムを構築し、高度なカスタマイズやセキュリティ対策にも対応可能です。企画から運用・保守まで総合的に支援し、幅広い業界のニーズに応えます。
3.ハードウェアベンダー
スマートフォンや複合機などの電子機器、サーバーやネットワーク機器などのITインフラ関連のハードウェアを販売します。近年はAIやIoT技術を活用し、省力化や業務効率化を目指した高性能で小型な機器の開発が進んでいます。自動運転技術のセンサーがその一例です。
4.ソフトウェアベンダー
会計ソフトや動画編集ソフトなど、業務効率を高める各種ソフトウェアを提供するベンダーです。AIやIoT、クラウド技術の発展に伴い、より高機能で利便性の高いソフトが求められています。販売形態は従来の買い切り型から、月額課金のサブスクリプション型に移行する傾向があります。
5.セキュリティベンダー
ウイルス対策ソフトやファイアウォール、エンドポイントセキュリティなどの製品・サービスを開発・提供するベンダーです。クラウドやIoT、テレワークの普及でセキュリティリスクが増加し、セキュリティ対策の重要性が高まっています。多様な調査や分析、システム開発も手がけています。
6.開発ベンダー
自社で製品の企画から開発、販売まで行うベンダーです。IT業界では自社開発ソフトを持つことが多いです。一方で、SIerは顧客のニーズに応じて複数の製品を組み合わせたり、個別にシステムを開発したりして、全体として統合されたソリューションを提供します。
また、開発ベンダーは製品の販売で収益を得るのに対し、SIerはプロジェクトごとに収益を得るビジネスモデルが一般的です。
7.シングルベンダー
特定のメーカーの製品やサービスだけを扱うベンダーです。製品の種類を絞ることで深い知識とノウハウが蓄積され、不具合が少なくサポートも手厚いのが特徴です。
8.マルチベンダー
複数のメーカー製品を組み合わせて販売し、幅広いニーズに対応します。ユーザーは予算や希望に合わせた提案を受けられます。しかし、異なるメーカーの製品同士で互換性の問題が起こる場合があるため、事前の検証が必要です。
ITベンダー選定方法と手順
ITベンダーの選定におけるチェックポイントや手順を解説します。
ITベンダーを選定する際のチェックポイントと注意点
ITベンダーを選ぶ際は、以下の7つのポイントを押さえましょう。
- ・
価格
- ・
スキル、品質
- ・
得意分野、技術力
- ・
リソース
- ・
安定性
- ・
担当者のコミュニケーション
- ・
導入後のサポート
ITベンダーを選定する際には、価格だけでなく、スキルや品質、技術力も重要です。見積もりが具体的で、求める技術に対応できるか確認しましょう。品質は過去の実績から判断し、得意分野が自社のニーズに合うかのチェックも必須です。
必要な人員や納期に無理がないか、リソース面も見逃せません。ベンダーの経営状態が安定していることも長期的な信頼のために大切です。担当者の対応が丁寧で意思疎通がスムーズかどうかも選定基準になります。導入後のサポート体制が整っているかも確認し、安心して任せられるベンダーを選びましょう。
ITベンダー選定・依頼時の流れ(事前準備~評価)
ITベンダーを選定・依頼する際の流れは、以下の通りです。
- 1
事前調査
- 2
選定準備
- 3
ベンダー評価・選定
まず「事前調査」では、10社程度の候補ベンダーを選定し、Webサイトや業界情報を使って実績やサービス内容を調べます。RFI(情報提供依頼書)を送って必要な情報を効率よく集めましょう。質問項目は統一して比較しやすくするのがポイントです。
次に「選定準備」では、RFIの回答をもとに候補を絞り込みます。その後、RFP(提案依頼書)を作成し、システムの目的や要件などを明確に伝えて具体的な提案を依頼しましょう。技術力や価格、サポート体制などの評価基準を設定し、公平な比較ができるよう準備します。
最後の「ベンダー評価・選定」では、提案書を詳しく確認し、不明点は質問します。プレゼンテーションも実施してもらい、提案内容や対応力を評価します。チームで結果を共有し、総合的に判断して最適なベンダーを選びましょう。
ベンダーマネジメント・ベンダーコントロールの重要性と必要スキル
ベンダーマネジメントとベンダーコントロールの役割や重要性、必要スキルを解説します。
ベンダーマネジメントとは?概要と役割
ベンダーマネジメントとは、システムやアプリを外部の業者に発注し、品質よく開発してもらうための管理業務全般を指します。ベンダーの選定や契約交渉から、発注、進捗管理、成果物の確認、評価、関係構築までが主な業務です。
システムの構想はあるが、具体的な依頼方法が分からず戸惑う企業は少なくありません。ベンダーと企業の間に立って調整を行い、開発をスムーズに進めるのがベンダーマネジメントの役割です。
ベンダーコントロールとは?重要性と必要スキル
ベンダーコントロールとは、プロジェクトに関わる外部ベンダーを管理し、品質・コスト・納期(QCD)を守ってプロジェクトを成功に導くための活動です。管理を怠ると、進捗や成果物の状況が把握できず、プロジェクト全体に影響が出る恐れがあります。
特に複数のベンダーが関与する場合は、要件調整や連携も複雑になり、より高度な対応が求められます。また、保守運用フェーズにおいても、継続的なベンダー管理は不可欠です。ベンダーコントロールに必要なスキルは、以下の5つです。
- ・
IT知識
- ・
社内システムの理解
- ・
プロジェクト管理力
- ・
課題解決力
- ・
リーダーシップ
まとめ
ベンダーは、業界によって意味や役割が異なるため、きちんと理解する必要があります。また、メーカーやサプライヤー、ユーザーとの違いを理解すれば、取引先との役割分担が明確になります。目的や用途に応じて適切なベンダーを選びましょう。
RICOHが運営する「中小企業応援サイト」では、DXを通じた課題解決の実例を667件公開しています。多様な地域・業種にわたる事例を参考に、自社の取り組みにお役立てください。ままずはお気軽にご相談ください。
記事タイトルとURLをコピーしました!