アジャイル開発とは?メリット・デメリットや代表的な手法、実施手順を解説
2025年10月24日 07:00
この記事に書いてあること
「アジャイル開発」は、システム開発やソフトウェア開発における代表的手法の1つです。アジャイル開発にはさまざまなメリットがあり、多くの開発現場で取り入れられています。
本記事では、アジャイル開発のメリット・デメリットや、実施手順を詳しく解説します。アジャイル開発に向いているケース・向いていないケースも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
アジャイル開発とは
まずは、アジャイル開発の概要や、ウォーターフォール開発との違いを解説します。
システムやソフトウェアの開発手法の一種
アジャイル開発とは、機能単位での開発を短いスパンで繰り返す開発手法です。システムやソフトウェアを小さな機能の集合として捉え、優先度の高いものから順に小さな開発サイクルを繰り返します。
アジャイル開発には従来の開発手法とは異なるさまざまなメリットがあり、現在主流となっている手法の1つです。
ウォーターフォール開発との違い
「ウォーターフォール開発」とは、要件定義から設計、開発や実装、テストまでの工程を段階的に進めていく開発手法です。アジャイル開発が小さな単位で開発とテストを繰り返すのに対し、ウォーターフォール開発では全ての機能を開発してからテスト工程へ移ります。
システムやソフトウェアの全体像を設計してから開発に進むため、スタートまでに時間はかかりますが、予算やチーム形成の計画を立てやすいというメリットがあります。
アジャイル開発の代表的な手法
アジャイル開発にはさまざまな手法があります。代表的なものは、以下の5つです。
スクラム
「スクラム」とは、ラグビーで味方同士が肩を組む「スクラム」に由来し、チームで密に連携しながら開発していく手法です。「スプリント」と呼ばれる1〜4週間程度の短い開発期間を繰り返し、進捗(しんちょく)状況や成果物をその都度確認します。
メンバー間のコミュニケーションが重視される手法であり、チームが一丸となって開発に取り組むことが大切です。
エクストリーム・プログラミング(XP)
「エクストリーム・プログラミング(XP)」とは、「顧客ニーズは変化する」という前提に基づき、柔軟性を重視する開発手法です。あまり綿密な計画は立てずに開発を開始し、顧客の要望に柔軟に対応しながらプロジェクトを進めます。
2人1組でコーディングを行う「ペアプログラミング」が採用されるケースが多く、1人がコードを書き、もう1人がコードをレビューするという体制をとります。
ユーザー機能駆動開発(FDD)
「ユーザー機能駆動開発(FDD)」とは、顧客にとっての機能価値を重視する開発手法です。顧客のビジネスを可視化し、必要な機能(Feature)を洗い出した「フィーチャーリスト」を作成して、2週間の短いサイクルで機能ごとに開発を進めます。
短期間で開発できる機能に分割することで、顧客のニーズを素早く満たせるというメリットがあります。
リーンソフトウェア開発(LSD)
「リーンソフトウェア開発(LSD)」とは、製造工程から無駄をなくすことを目的とした「リーン思考」を適用した開発手法です。トヨタ自動車の生産方式をソフトウェア開発に導入したもので、次の7つを原則として開発を進めます。
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無駄をなくす
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不具合を防ぎ、品質向上に努める
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フィードバックから得られた学びを活用する
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重要な意思決定には時間をかける
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素早くリリースする
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メンバーを尊重する
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個別の工程ではなくプロセス全体を最適化する
カンバン
「カンバン」とは、タスクごとの進捗状況を可視化し、視覚的にプロジェクトを管理する手法です。カンバンボードと呼ばれるツールに「未着手」「進行中」「完了」の3つの領域を設け、タスクの状況に応じてそれぞれの領域を移動させます。
進捗状況をリアルタイムで、分かりやすく把握できるため、アジャイル開発との親和性が高い管理手法です。
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発には、以下の4つのメリットがあります。
リリースまでの時間を短縮しやすい
アジャイル開発では、最初から全ての機能を作り込むのではなく、小さな機能を短いサイクルで開発します。これにより、システムやソフトウェアを素早くリリースできます。
リリースまでのスピードも速まるため、「まずは最小限の機能でサービスを提供して、市場の反応を見たい」というニーズにも応えられます。
仕様変更に柔軟に対応しやすい
従来のウォーターフォール開発では、初期の計画に沿ってシステム全体の開発を進めていくため、途中での仕様変更が困難です。
一方、アジャイル開発は機能単位で短い開発サイクルを繰り返すことから、仕様変更にも比較的柔軟に対応できます。
顧客ニーズを反映しやすい
アジャイル開発では、小さな開発サイクルを繰り返すなかで、顧客と頻繁にコミュニケーションをとります。小さな機能が完成するごとに、こまめにフィードバックを得られるため、より顧客ニーズを反映したプロダクトを制作できるでしょう。
修正にかかるコストが少ない
従来のウォーターフォール開発では、開発途中でトラブルが発生したときのコストが大きく、修正に多くの手間がかかるというデメリットがあります。
一方、アジャイル開発では短いサイクルで開発を繰り返すため、仕様変更や問題が発生した場合も、1つのサイクル分の後戻りだけで済みます。これにより、修正にかかるコストを最小限に抑えられます。
アジャイル開発のデメリット
アジャイル開発はメリットも多い一方、以下のようなデメリットもあるので注意が必要です。
全体像を把握しにくい
アジャイル開発は小さな機能ごとに開発を進めるため、システムやソフトウェアの全体像が見えにくい傾向があります。また、顧客の要望も踏まえながら柔軟に対応していくので、最終的なゴールを予想しにくい点もデメリットです。
スケジュールの管理が難しい
アジャイル開発では、仕様変更に柔軟に対応するため、計画をあまり細かく立てないままプロジェクトを進めるケースが多く発生します。全体の進捗状況やスケジュールの管理が難しく、仕様変更があった際はこまめな調整が求められるでしょう。
開発コンセプトがぶれやすい
アジャイル開発は、顧客の要望を柔軟に取り入れられるところが利点です。
しかし、プロダクトをより良くしようと何度も仕様変更を繰り返していると、開発コンセプトが当初のものから離れてしまう可能性があります。開発コンセプトが揺らぐと開発に余計な工数がかかり、コストも増大しかねません。
コミュニケーションのコストが大きい
アジャイル開発では、チームメンバーや顧客との密なコミュニケーションが不可欠です。開発側も顧客側も、コミュニケーションのための時間を捻出し、そこに一定のリソースを割く必要があります。
アジャイル開発が向いているケース・向いていないケース
アジャイル開発は、向いているケースと向いていないケースが比較的はっきりと分かれます。
アジャイル開発が向いているケースの例
アジャイル開発は、仕様変更や修正が予想されるケースに適しています。特に、技術が日進月歩で進化していくような、変化の速い分野での開発におすすめです。サービスのリリース後、定期的にアップデートやメンテナンスが必要な場合にもマッチするでしょう。
また、全ての要件を定義することが難しく、曖昧な部分があるケースにもアジャイル開発が向いています。システムやソフトウェアの開発を進める過程で、状況を見ながら細部を詰めることが可能です。
アジャイル開発が向いていないケースの例
仕様変更の可能性が低いプロジェクトでは、アジャイル開発のメリットを生かせない場合が多いでしょう。アジャイル開発はスケジュール管理が難しいことから、厳格なスケジュール管理が必要なプロジェクトにも向きません。
アジャイル開発では、チーム内のコミュニケーションが重要です。そのため、メンバー同士がコミュニケーションを取りづらい環境では、進行やクオリティに悪影響が及ぶ可能性があります。
アジャイル開発の実施手順
アジャイル開発のおおまかな手順は、以下の通りです。
導入テーマを決定する
まずは、アジャイル開発を導入するテーマを決定します。そのテーマに対してアジャイル開発を導入するメリットを検討し、取り組む範囲を定めましょう。テーマごとの優先順位を決め、優先度が高いものから着手するのがおすすめです。
開発チームを結成する
テーマが決定したら、開発チームを編成します。それぞれの適性を考慮しながら、プロジェクトリーダーやエンジニアなどを配置してください。チームには外部の人材や、顧客が参画することもあります。
スケジュールを決定する
開発工程を1〜4週間程度の短いスパンに分割し、スケジュールを決定しましょう。1つのサイクルごとに実装する機能を明確化し、必要なタスクをリスト化します。
短いスパンでの開発を繰り返す
スケジュールに基づき、短いスパンでの開発を繰り返してください。要件定義から設計、開発やテストまでの工程を行い、フィードバックをもとに改善することで、1つのサイクルが完了します。
機能の開発が終了したら次のテーマに取り組み、再び要件定義からテスト、フィードバックまでの工程をリピートしましょう。
まとめ
アジャイル開発とは、機能ごとに小さな開発サイクルを繰り返す開発手法です。システムやソフトウェアを素早くリリースできる、仕様変更にも柔軟に対応できるなど、アジャイル開発にはさまざまなメリットがあります。
頻繁なアップデートや仕様変更が予想される場合や、開発を進めながら細部の要件を決めたい場合などは、アジャイル開発の導入を検討してみましょう。
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記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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