荷主必見!物流効率化のために本当にやるべき具体策まとめ
2025年11月27日 07:00
この記事に書いてあること
物流関連2法の改正により、荷主企業には従来以上に具体的かつ実効性のある物流効率化の取り組みが求められています。本コンテンツでは、積載効率の向上をはじめとした荷主が実践すべき具体的な措置について、国の判断基準や現場での工夫を交えながら詳しく解説します。自社の物流業務を見直し、持続可能な物流体制の構築に向けた第一歩としてご活用ください。
物流関連2法改正の背景や荷主企業に求められる全体像については、こちらの記事で解説しています。合わせてご確認ください。
荷主が取り組むべき措置の詳細①積載効率の向上
積載効率の向上とは、トラックなどの1回の運送ごとに運ぶ貨物量を増やすことです。以下が求められています。
(1)リードタイムの確保(第一種荷主)
(2)貨物量の出庫量、入庫量を適正化すること(第一種荷主)
(3)配車計画や運行経路の最適化(第一種荷主)
(4)第一種荷主への協力(第二種荷主)
(5)社内関係部門間の連携促進(第一種荷主、第二種荷主)
(1)リードタイムの確保(第一種荷主)
運送事業者が他の事業者の貨物と積み合わせや共同配送などを実施できるように、リードタイムを確保します。例えば「明日までの配送」を、「1週間以内の配送」にするなどです。
(2)貨物量の出庫量、入庫量を適正化すること(第一種荷主)
多頻度、少量の出庫、入荷を避け、なるべく貨物の受け渡しをおこなう日時を集約化します。
(3)配車計画や運行経路の最適化(第一種荷主)
配車管理システムなどを用いて、1回の積載量を上げるように配車計画や運行経路を最適化します。
(4)第一種荷主への協力(第二種荷主)
第一種荷主から、上記の取組をおこなうための協力要請があった場合は協力します。
(5)社内関係部門間の連携促進(第一種荷主、第二種荷主)
上記を円滑に実現するため、社内各部門(物流、販売、調達など)の連携を図ります。
荷主が取り組むべき措置の詳細②荷待ち時間の短縮
「荷待ち時間」とは、トラックが集荷や配達をおこなうべき場所に到着してから、実際に貨物の積み降ろし作業がおこなわれるまでの、荷主の都合による待ち時間のことです。荷主の都合によるものなので、例えば、到着後ドライバーが休憩を取っているような場合は、荷待ち時間から除外されます。
なお、以下の措置はすべて第一種荷主、第二種荷主に共通です。
(1)貨物の入出荷日時の分散
(2)トラック到着日時の調整
(3)外部業者が管理する施設における貨物の受け渡し日時の分散
(1)貨物の入出荷日時の分散
一度にトラックが集中して荷待ち時間が発生することを防ぐため、バースの混雑状況をドライバーに伝える、適切な到着時間帯を割り当てるなどにより、入出荷日時を分散させます。
(2)トラック到着日時の調整
トラック予約受付システムなどを導入し予約状況を見える化するなどして、トラックの到着日時を調整します。さらに、予約時間通りに貨物の積み降ろしができるよう、到着時間までの貨物準備の徹底、パレットの使用などにも取り組みます。
(3)外部業者が管理する施設における貨物の受け渡し日時の分散
荷主が管理する施設だけではなく、委託している倉庫などについても、入庫や出庫の発注を早期におこなうことなどにより、受け渡し日時の分散などによる荷待ち時間短縮の取組をします。
荷主が取り組むべき措置の詳細③荷役時間の短縮
「荷役時間」とは、荷物の積み降ろしをしている時間の他、検品、荷造り、代金支払いなどの時間が含まれます。荷主が荷役をおこなう場合、ドライバーが立ち会う時間も荷役時間に含まれます。なお、荷待ち時間と荷役時間を明確に区別できない場合は、「荷待ち時間等」として、一括して捉えることも認められています。
なお、以下の措置はすべて第一種荷主、第二種荷主共通です。
(1)荷役等の効率化
(2)検品の効率化
(3)荷役等の環境整備
(1)荷役等の効率化
①パレットやカゴ車などを導入して、バラ積み、バラ降ろしを避けます。
②施設内での保管から発送、着地での荷卸しまで、同一の標準仕様パレットを用いる「一貫パレチゼーション」を実現します。
③積み降ろしや検品がしやすいように荷造りをします。
④フォークリフトや荷役作業員を適切に配置します。
(2)検品の効率化
①ASN(事前出荷情報)を活用して、伝票レス、検品レス化を実現します。また、貨物情報を事前に運送事業者等に連絡します。
②バーコード、RFタグ、ハンディターミナル、商品識別カメラなどの導入により、検品作業の簡素化を実現します。また、検品水準自体の見直し(外装の軽微な汚破損を理由とした受取拒否をやめるなど)やマニュアル化なども検討します。
(3)荷役等の環境整備
バース等の荷さばき場について、適切な広さ確保、整理整頓などを心がけます。
荷主が取り組むべき措置の詳細④実効性の確保
積載効率の向上、荷待ち時間・荷役時間の短縮について、以下の措置を取ることによって、取組の実効性を確保することも求められています。ここでは、主なものを紹介します。
(1)責任者の選任など体制の整備、従業員に対する研修の実施
(2)荷待ち時間等や積載効率の状況、効率化のための取組の実施状況・効果の把握
(3)外部倉庫における荷待ち時間等を短縮するための提案と協力
(1)責任者の選任など体制の整備、従業員に対する研修の実施
特定荷主の場合は、物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられていますが、特定荷主以外の荷主においても、物流全体を統括管理する責任者を定めることが望ましいでしょう。物流効率化においては社内の関連部門の連携も求められているため、中小企業では、役員クラス、あるいは社長自らが物流責任者となることで、効率化措置を進めやすくなります。
(2)荷待ち時間等や積載効率の状況、効率化のための取組の実施状況・効果の把握
積載率向上や荷待ち・荷役時間の短縮の取組効果について、荷主が把握することが求められています。特に、荷待ち・荷役時間の短縮については、取組前の状況、および取組によってどれだけ時間が短縮されたのかを客観的に把握することが求められています。短縮時間把握のためには、バース予約システムなどを適宜活用します。
なお、特定荷主については、取組効果について定期報告の義務があります。
(3)外部倉庫における荷待ち時間等を短縮するための提案と協力
外部業者が管理する倉庫などについても、荷待ち時間等を短縮するための取組について寄託先に提案するなどして、協力、連携します。
荷主が取り組むべき措置の詳細⑤その他、可能な限り取り組むもの
上記①~④の措置以外に「やむを得ない遅延に対するペナルティの見直しなどにより、必要以上に早くトラックドライバーが到着することがないよう配慮すること」「モーダルシフト等により、輸送される物資の貨物自動車への過度の集中の是正に努めること」「異常気象時に無理な運送をさせない、荷役等の際の作業安全の確保等、トラックドライバーの安全・休憩環境の確保に配慮すること」「違法な白ナンバートラックを利用しないこと」などが、可能な限り取り組むべき措置として定められています。
まとめ
積載効率の向上や荷待ち・荷役時間の短縮、実効性の確保、さらにはドライバーの安全やモーダルシフトへの配慮など、荷主企業が取り組むべき措置は多岐にわたります。これらの取り組みは単なる「努力義務」にとどまらず、今後の企業経営や社会的評価にも直結する重要なテーマです。自社の現状を客観的に把握し、できることから着実に実践していくことが、持続可能な物流と企業価値向上への鍵となります。
会社のためにも従業員のためにも、ぜひ積極的に対策を進めていきましょう。

監修
田代 三紀子(たしろ みきこ)
船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長。
製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援などを数多く実施してきた。また、物流子会社に対しても、あるべき姿の策定や他社との競争力評価をおこなっている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントであり、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングも担当している。

記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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