介護業界の人手不足はなぜ深刻化しているのか?現状の原因や解決策を解説
2025年12月15日 08:00
この記事に書いてあること
現在、介護業界では人手不足が深刻化しています。自身が勤務する職場でも人手不足に悩み、原因や解決策を知りたいと考えている人も多いのではないでしょうか。本記事では、介護業界の人手不足の現状と原因を解説し、解決に役立つ国や事業所の取り組み、事例も紹介します。
介護業界の人手不足の現状
まずは、介護業界の現状や将来予測を解説します。
都心部で深刻化する介護人材不足
現在、日本の介護業界では介護人材の不足が深刻化しています。なかでも、都心部の人手不足はより深刻です。厚生労働省によると、介護業界の有効求人倍率が3.57倍であるのに対し、東京都は5倍近くの有効求人倍率で、採用の厳しさがうかがえます。
※参考:厚生労働省「令和4年版 厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保- 図表1-2-40 都道府県別有効求人倍率(2022年2月)」
介護職員はどれくらい不足しているのか
都心部に限らず、介護業界の人手不足は日本全体の問題になっています。厚生労働省の発表では、2040年には約272万人の介護職員が必要とされていますが、現状のままでは約57万人が不足すると予想されている状況です。
介護業界の将来予測
日本では、2025年に団塊の世代が75歳以上となり、後期高齢者は全人口の17.8%・約2180万人に増加するとされています。これを「2025年問題」といいますが、さらに団塊ジュニア世代が60〜70歳になり、高齢化率が35%を超える「2040年問題」もあります。
そのため、打開策を見いだせないままでは、介護業界だけでなく日本全体の労働人口減少による経済活動の鈍化、増税、社会保険料の引き上げなど多くの問題が発生するでしょう。そうなれば、さらに介護業界の人手不足が深刻化する可能性も考えられます。
介護業界の人手不足の原因
介護業界の人手不足は、将来的にも大きな課題となっていますが、現在、介護業界が人手不足に陥っている原因について解説します。
少子高齢化と要介護者の増加
介護業界の人手不足が加速するのには、少子高齢化が大きく関係しています。先に解説した通り、高齢者人口の増加に伴って要介護者が急増していますが、一方で少子化も社会全体の問題となっており、労働人口の現状が深刻です。
そのため、介護を必要とする人が増えているものの、働き手が減少していることが人手不足の大きな原因です。
賃金や社会的評価の低さ
介護の仕事は、人の生活に関わる仕事であるだけでなく、時には命にも関わることもあります。しかし、体力だけでなく、精神的にも責任や負荷がかかる仕事でありながら、全産業と比較しても賃金の水準が低いのが介護業界の現状です。
そのため、介護職の定着率や新しい働き手の確保が難しいため、人手不足に陥っています。
職場の人間関係
介護職は、賃金の低さや3K(きつい・汚い・危険)のイメージを持たれがちですが、実際の現場では、仕事内容にやりがいを感じている人も多くいます。しかしながら、職場の人間関係に悩みを感じて職を離れる人は後を絶ちません。
公益財団法人介護労働安定センターが実施した調査でも、離職の理由でトップに挙がったのは人間関係で、賃金の低さを理由に離職した人よりも多いという結果でした。
人手不足が与える介護業界への影響
人手不足の加速は、職場にさまざまな影響を及ぼします。考えられる具体的例を4つ解説します。
従業員の仕事負担増加による職場環境の悪化
職場で必要とする人材の確保ができないと、従業員の仕事負担が増加します。勤務時間中にやらなければいけないことが増えれば、疲弊するだけでなく、ミスも起きやすくなるでしょう。
また、勤務時間内に業務が終わらなければ、時間外労働も発生します。この状態が続けば、職員のモチベーションが低下したり、職員同士のコミュニケーションが希薄になったりして、離職する人が増える恐れもあります。
サービス品質の低下
人手不足に陥ると、従業員1人あたりの仕事の負担が増加し、サービス品質にも影響が出てくるでしょう。また、サービス品質の低下は、人手不足によってスタッフ教育がおろそかになり、スキル不足の人材が増えることが原因になるケースもあります。
事故発生のリスク
従業員の負担が増え、満足なサービスが提供できない状況は、業務効率が低下している状態です。そのような場合、十分な人手があれば防げた介護者の転倒や誤嚥(ごえん)などの事故リスクが高まります。
国や事業者による人手不足解消への取り組み
介護業界の人手不足を解消するために、国のおもな施策の一部を解説します。
介護職員の処遇改善と定着支援
国は、他の業界と比較して低いとされている介護業界の処遇改善に取り組むべく、補助金・助成金政策を進めています。
政策の一例は、2012年度に創設された「介護職員処遇改善加算」や、2019年度から導入された勤続10年以上の介護福祉士の賃上げと介護職員全体の処遇改善が受けられる「特定処遇改善加算」などです。また、2022年からは収入を3%引き上げるための「介護職員等ベースアップ等支援加算」も実施しています。
多様な人材の確保と業界イメージの向上
国は、現在働いている介護職員への支援をしているだけではありません。新たな人材確保のため、介護施設で実施する中高生のインターンシップの支援や、過去に介護職に従事していた人材の復職支援をしています。
さらに、介護の仕事に対するハードルの高さや不安を払拭するために入門研修やコンサルティングを行い、専門学校の奨学金支援にも積極的に取り組んでいます。
外国人材受け入れ制度の導入と活用
国外からも人材を確保すべく注力しているのが、外国人材受け入れの環境整備です。たとえば、介護の知識や技術を持つ外国人の「特定技能ビザ」を活用した海外からの介護職員受け入れなどがあります。
なお、現在存在する介護に関連した在留資格は、「EPA」「介護」「技能実習」「特定技能」の4つです。
デジタル化やユニットケアによる業務効率化
介護業界の人手不足解消には、新たな人材の雇用や職員の定着支援以外に、デジタル化やユニットケアも行われています。
たとえば、介護ロボットを導入して従業員の業務負担を軽減させれば、必要な人材を減らせたり、従業員の体力負担を軽減したりできるでしょう。また、手書きによるアナログな書類作成業務をデジタル化すれば、負担軽減や業務効率化だけでなく、人的ミスの削減対策にもなります。
人手不足解消に向けた具体的な対策例
最後に、人手不足解消に向けて、実際の介護現場でも取り入れられている対策例を解説します。
職場環境の整備
従業員の離職を食い止めるには、職場環境の整備が重要です。人間関係が良好でストレスなく、モチベーションを保てる職場であれば、働きやすさを感じながらやりがいを持って勤務できるため、定着率の向上が期待できます。
職場環境の改善には、従業員の意見を取り入れる機会づくりに加え、休日取得や時間外労働の見直しを検討してください。他にも、先に解説した一部業務のデジタル化などもおすすめです。
求人サイトの活用
新たな人手を確保するためには、求人サイトの活用も効果的な対策です。求人サイトに掲載すると、介護業界で働きたい多くの人の目に自社を認知してもらえます。また、介護に特化した求人サイトだけでなく、さまざまな業界の求人を扱うサイトであれば、介護業界に従事したことのない層からの人材が確保できる可能性も高まります。
求人サイトを利用する際は、職場の雰囲気をわかりやすく伝えたり、魅力的な待遇・福利厚生をアピールしたりする工夫も考えてみてください。
派遣従業員の受け入れ
人手不足解消には、正規雇用の従業員だけでなく、派遣従業員の受け入れも検討しましょう。派遣会社に依頼すれば、必要な時期に必要な分だけ人手を確保できたり、人選を任せて面接の手間を削減できたりするメリットがあります。
また、急な人材確保が必要になったときのためにも、派遣事業者とつながりを持っておくことも重要です。
外国人材の受け入れ
人手不足を解決するため、現在も多くの施設で外国人材の受け入れが強化されています。外国人材の具体的な活躍の場は、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、老人保健施設、介護療養型施設、グループホーム・デイサービスなどが挙げられます。
在留資格によって雇用可能な施設が異なるため、自社で可能な雇用について、一度調べてみてください。
まとめ
国内ではさまざまな業種で人手不足が深刻化していますが、介護業界も多くの現場で同じ悩みを抱えています。少子高齢化や職場の人間関係、働きやすさも定着率・離職率に影響を与えるため、定期的に自社の職場環境を見直すことは必要です。
しかし、今後も人手不足が深刻化する可能性は高いと考えられます。職場の環境改善に加え、新たな人材確保の対策も検討しておきましょう。
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記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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