パートナーシップ構築宣言とは? 実施のメリットや企業事例を解説
2026年02月24日 07:00
この記事に書いてあること
コスト増を受けた取引先への価格転嫁の方法や、厳しい取引条件に悩む企業も多いのではないでしょうか。受注側の企業にとっても、取引先との連携強化はビジネスの課題のひとつです。そんな企業にメリットを与える仕組みが、「パートナーシップ構築宣言」の制度です。このコラムでは、パートナーシップ構築宣言の目的や宣言のステップ、また、宣言をした発注者側と受注者側に必要な取り組みを解説。企業間の連携によって競争力を獲得している企業の事例もご紹介します。
パートナーシップ構築宣言とは?
パートナーシップ構築宣言とは、2020年、サプライチェーン全体の価値向上や、大企業と中小企業の共存共栄を進める目的で作られた制度です。発注者側の立場から、代表権のある者の名前で、取引先とのパートナーシップのあり方について宣言します。2025年12月時点で、83,210社以上が宣言を登録しています。
パートナーシップ構築宣言では、下記の内容を宣言します。
(1)サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携
オープンイノベーション、IT実装、グリーン化など
(2)下請企業との望ましい取引慣行(「振興基準」)の遵守
特に、取引適正化の重点5課題について宣言します。
- 1.価格決定方法
- 2.型管理などのコスト負担
- 3.手形などの支払条件
- 4.知的財産・ノウハウ
- 5.働き方改革等に伴うしわ寄せ
宣言は、「パートナーシップ構築宣言」のサイトで行います。ひな形をダウンロードして、パートナーシップ構築宣言文を作成し、サイト上で登録します。なお、宣言には、下請中小企業振興法の「振興基準」の遵守も含まれているため、下記の振興基準を必ず確認しましょう。
パートナーシップ構築宣言のメリット
パートナーシップ構築宣言を行う側(発注者)と、その企業から受注する企業は、以下のようなメリットが得られます。
安定した仕入れと取引先との関係性強化
発注側が、価格決定やコスト負担、支払等に関して望ましい取引を行うと宣言することが、受託関係の適正化につながります。受注側の企業は、取引条件や価格について、これまでより相手とスムーズに交渉ができるようになるでしょう。また、発注側は、この宣言によって委託先の信頼を獲得でき、安定した発注や仕入れが可能になります。また、対等な関係に基づくコミュニケーションが進み、会社間で協力して付加価値を生んでいくことができます。
補助金の優遇措置が受けられる
パートナーシップ構築宣言を登録することで、補助金を受けやすくなります。地域復興実用化開発等促進事業費補助金や、自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金、省エネルギー投資促進支援事業費補助金、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金などの審査において、加点などの優遇が受けられます。また、税制の適用や、パートナーシップ構築宣言関連の融資制度を利用できるというメリットもあります。
取引慣行適正化の意識が高まる
発注者が、企業間の連携推進や望ましい取引慣行について宣言することで、発注時の価格決定や、委託先の労働環境改善に関する意識が向上します。また、宣言を行った企業は、パートナーシップ構築宣言のサイトに社名が掲載されるとともに、ロゴマークを取得できます。パートナーシップ構築宣言は、SDGsのアクションプランとしても推進されており、適正な取引をしている優良企業であることや、SDGsの課題に取り組む企業としての訴求ができる点もメリットです。
宣言を機に発注側・受注側が取り組むべきことは?
では、パートナーシップ構築宣言をした企業は、その目的達成のため、社内でどのような取り組みを進めればよいのでしょうか。発注側の企業、そして、パートナーシップ構築宣言をした企業から受注する企業に必要な主な取り組みは、以下の通りです。
宣言に関する社内の理解促進
パートナーシップ構築宣言を行った企業は、宣言に則った取引を行えるように社内に制度を周知する必要があります。パートナーシップ構築宣言の目的や、取引にあたってとるべき行動、そして宣言に含まれる下請中小企業振興法の振興基準の内容に関して、従業員の理解を促進しましょう。また、受注側も、取引適正化のメリットを受けるために、現場に制度内容を周知することが重要です。
現場業務の点検と改善を実施
パートナーシップ構築宣言を行った企業は、現場の業務が宣言内容に即しているか、点検する必要があります。価格や取引条件の決定方法に問題がある、取引先にコスト負担をさせている、無理な納期短縮を強いている等の行動がないか確認して、是正や業務改善を行いましょう。企業間の取引慣行のチェックを通じて、自社のコンプライアンスや働き方の課題に対処することもできます。
会社間のコミュニケーションを強化
パートナーシップ構築宣言を機に、会社間の取引条件や価格の見直しを積極的に進めて、取引慣行を改善していくことが大切です。良好な取引による価値を生み出していくために、定期的なコミュニケーションを通じて、課題の発見や改善策の協議を行い、関係を強化していきましょう。
共同で課題解決やプロジェクトに取り組める体制作り
パートナーシップ構築宣言の目的のひとつが、企業間の共存共栄です。サプライチェーン全体で、オープンイノベーションやIT実装、グリーン化等の新しい取り組みを進めることが、宣言に盛り込まれています。この実現のため、取引先と共に課題の解決や商品開発、業務改善などのプロジェクトに取り組める、連携体制を作りましょう。
パートナーシップ構築・強化の取り組み事例
パートナーシップ構築宣言に基づく取り組みや企業間の連携をどう始めれば良いのか、イメージがつかない方もいるでしょう。そんな方のヒントになる、パートナーシップ構築の企業事例をご紹介します。
AIシステムを協力企業にも導入し業務改善
奈良県の金属部品加工業の株式会社M.T.Cは、検品作業の効率化のためAIの画像診断システムを採用。不具合件数減少の成果が認められ、同システムが、クライアント企業でも導入されました。また、従業員数が少ない協力会社にも、その一部の仕組みについて、補助金の申請も含めて導入を支援。協力会社との共存共栄のため、継続的な改善提案も行い、サプライチェーン全体でのDXを推進しています。
令和6年度 パートナーシップ構築宣言 取組事例集 | 中小企業庁
株式会社M.T.C
パートナー企業と共にデジタル人材を育成
東京都の情報通信業、株式会社日立システムズでは、デジタル分野の事業拡大のため、協力会社と共に人材育成の取り組みを実施。業界で不足しているデジタル人材を確保するため、協力会社と人材スキルやプロジェクト情報を相互に共有して、人材のマッチングを進めています。また、ニーズの高いスキルの情報を協力会社に提供することで、協力会社の従業員の教育も促進しています。
パートナーシップ構築宣言取組事例集 Ver1.2 | 中小企業庁
【中小企業庁長官賞】㈱日立システムズ
OBが取引先工場の業務改善を支援
静岡の自動車用部品メーカーである株式会社ニッパは、自社OBによる取引先の業務支援を行っています。自動車部品の品番の増減に応じた生産調整のノウハウを持たない取引先工場に、OBを週5日、2年にわたって派遣。コストをかけずに行える生産工程の見直し等を助言し、業務改善を支援しました。一時的な人材派遣を希望する取引先へのスポット支援や、業務の課題や改善に関する取引先とのコミュニケーションで、取引先工場も含めた製品の品質改善を進めています。
令和7年度 パートナーシップ構築宣言 取組事例集 | 中小企業庁
株式会社ニッパ
包括的なITシステムの構築で地域の農業を活性化
農産物の加工食品の製造を手がける大分県のくにみ農産加工有限会社は、80ほどの農家と取引しています。食の安全やトレーサビリティを確保する生産管理が求められる中、小規模農家は自ら管理システムを導入できないという課題から、同社は地域全体で食の安全を担保する生産管理システムを構築しました。導入によって、農家はJGAP、くにみ農産加工はFSSC22000という食品安全の認証を取得。経験の浅い農家の収穫量アップや、生産目標の可視化による農家のモチベーションアップにもつながりました。
令和6年度 パートナーシップ構築宣言 取組事例集 | 中小企業庁
くにみ農産加工有限会社
共に成長できるパートナーシップを構築しよう!
企業同士が共に支え合い、成長できる環境作りを促すパートナーシップ構築宣言。業務を受託することが多い中小企業も、受注者としての宣言の活用を検討することが、企業間の連携について考えるきっかけになるでしょう。この宣言を初めて知ったという方も、これを機に、企業の垣根を超えたパートナーシップ構築の取り組みを進めてみてはいかがでしょうか?

記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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