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苦しい取引に悩む中小企業経営者は必読!取適法のポイントをわかりやすく解説

From: 中小企業応援サイト

2026年02月24日 09:00

この記事に書いてあること

法改正により、旧下請法が、20261月から「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」として新たに施行。中小企業をはじめとする事業者間の取引適正化と価格転嫁の促進のため、規制内容の追加や、規制対象の拡大がなされました。そこで今回は、価格転嫁や、厳しい取引関係に悩む中小企業のために、取適法の禁止事項を具体的な行為も含めて解説。さらに、新法スタートにあたり中小企業が進めるべき準備と、違反行為を受けた際の対応方法についてもお伝えします。

取適法では何が変わった?下請法からの追加点

受発注者の取引適正化や、価格転嫁を図る法律である下請法が改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法)」と名称を変えて、20261月に施行されました。旧下請法からの変更点や追加内容は以下のとおりです。

「下請」などの用語の見直し

法改正で名称や用語が見直され、事業者間の取引関係をより対等にしていく姿勢が示されました。委託側と受託側の上下関係を連想させる「下請法」という通称が、中小受託取引適正化法(取適法)に刷新。また、従来の用語である「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」に変更されました。「下請代金」という言葉も「製造委託等代金」に変わっています。

適用範囲の拡大

対象となる取引や事業者の範囲が拡大され、受託側の中小企業の利益保護の規制が強化されました。従来の対象事業であった製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託に、目的物の引き渡し時の運搬に関する「特定運送委託」が追加。また、事業者の対象基準にも以下の従業員数の基準が加わりました。

「製造委託」「修理委託」「特定運送委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理に限る)

委託事業者:従業員300人超
中小受託事業者:従業員300人以下

「情報成果物作成委託」「役務提供委託」(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理を除く)

委託事業者:従業員100人超
中小受託事業者:従業員100人以下

適用範囲等について詳しくはこちらをご覧ください。
中小受託取引適正化法ガイドブック | 公正取引委員会

禁止事項の追加

禁止事項に、以下の内容が追加されました。

・協議に応じない一方的な代金決定の禁止
⋯委託事業者が、中小受託事業者からの価格協議の求めに応じず代金を決定

・手形払等の禁止
⋯手形による代金の支払い(「支払遅延」に該当)

複数の省庁が違反に対応

複数の省庁が連携して取適法の違反行為に対応する「面的執行」が強化されました。これまで公正取引委員会や中小企業庁が違反行為へ指導や助言を行ってきましたが、事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言の権限が付与。中小受託事業者が、委託事業者の違反行為等について公正取引委員会などに申し出たことを理由に不利益な取扱いをした場合の情報提供先にも、事業所管省庁の主務大臣が追加されました。

取適法の11の禁止事項

では、具体的にどのような行為が取適法の違反にあたるのでしょうか。委託事業者に禁止されている11の事項と、違反行為の具体例は以下のとおりです。

①受領拒否

中小受託事業者に責任がないにも関わらず、発注した物品や成果物の受領を拒否する行為は禁止です。同じく責任がないにも関わらず、発注取消や、納期の延長などを理由に納品物を受け取らない場合もこれに該当します。

【違反行為の例】

  • 委託先の洋服メーカーの納品が外的な要因で遅延したため、アパレル会社が製品の受け取りをしない。
  • テレビ局が委託して制作会社が作った番組のデータを、出演者の不祥事で放送ができなくなったことを理由に受け取らない。

【ポイント】

事前に契約内容として取り決めていた品質基準に明らかに満たない製品の受け取りをしなかった場合は、違反に該当しない。契約で定めた通りに納品されたものは、必ず受け取る必要がある。

②代金の支払遅延

委託事業者は、発注した物品等の受領日から60日以内で定めた支払期日までに代金を支払う必要があります。今回の法改正で新たに、「手形の交付」や、「中小受託事業者が支払期日までに代金相当額の金銭と引き換えが難しい電子記録債権や一括決済方式を使用する」ことも、支払遅延として禁止されました。

【違反行為の例】

受託メーカーが828日に納品した電子部品について、委託事業者が検収に2週間を要したため、911日を受領日として、1031日に代金を支払った。

【ポイント】

工場の休業や、検収体制の不備等の理由で検収が遅れた場合も、60日以内に代金を支払わなければ違反。

③代金の減額

中小受託事業者側に責任がないにも関わらず、発注時に決定した代金を発注後に減額することは禁止です。代金から協賛金を徴収したり、振込手数料を差し引いたりする行為も違法です。

【違反行為の例】

電機メーカーが部品製造会社に10000個の部品を発注したが、代金の総額を変えずに、1000個、数を増やして納品するように要求する。

【ポイント】

数量を増やして単価を下げることも違反行為の減額に該当。

④返品

中小受託事業者側に責任がないにも関わらず、発注した物品等を受領後に返品するのは違反です。ただし、不良品などの場合に、原則として受領後6ヵ月以内(一般消費者向けに6ヵ月超の品質保証がある場合には、その保証期間の範囲内で最長1年以内)であれば返品は可能。

【違反行為の例】

化粧品会社が、メーカーに製造を依頼した新製品について、販売後に売れ残ったぶんをメーカーに返品して、返金を求める。

【ポイント】

売れ残りの返品は、委託側と受託側の合意のもとで行われている場合でも違反行為に該当。

⑤買いたたき

物品や役務などに通常支払われる対価(同様の製品や、類似品の市価)に比べて、著しく低い代金を不当に設定する行為は禁止です。

【違反行為の例】

繊維メーカーが、10000枚という大量生産を前提とした単価で受注し製造をしていた冬用の毛布について、委託した企業が、暖冬を理由に数量を1000枚に変更。単価を変えずに納品するように強制する。
荷主が運送会社に、委託先に一律で単価を一定率で引き下げると通達し、通常の単価を大幅に下回る代金で発注。

【ポイント】

基本契約で大量の発注を取り決めていたものの、個別契約で予定より少ない数量を発注する場合は、買いたたきに当たる可能性がある。

⑥購入・利用の強制

中小受託事業者に発注する物品の品質維持などの正当な理由がないにも関わらず、委託事業者が指定する製品や保険、リース等を強制的に購入・利用させることは禁止です。

【違反行為の例】

冠婚葬祭業を手がける委託事業者が、発注先の企業の担当者に、数量のノルマを課して自社のおせち料理を購入させる。

【ポイント】

双方の完全な任意の合意のもとで、取引先の製品やサービスを購入・利用することは違反に該当しない。

⑦報復措置

中小受託事業者が、委託事業者の違反行為を公正取引委員会や中小企業庁、または事業所管省庁に通報したことを理由に、取引の停止や発注量の削減などの不利益な取り扱いをするのは禁止です。法改正で新たに、事業所管省庁への通報も可能になりました。

【違反行為の例】

中小受託事業者が公正取引委員会へ自社の違法行為を勧告したことを知り、その会社との取引をやめる。

【ポイント】

中小受託事業者が、委託事業者の取引減少や取引停止を是正させようと、違反行為がないにも関わらず、公正取引委員会に通告をする可能性もありえる。委託事業者は、取引減少や取引停止の根拠となる客観的な情報を集めて提示することで、数量削減や取引停止を認められる。

⑧有償支給原材料等の対価の早期決済

中小受託事業者が、委託事業者が有償で支給する原材料などを使って物品の製造等を行っている場合に、製造した物品代金の支払日よりも早く、原材料等の代金を支払わせることは禁止です。

【違反行為の例】

消費財企業が、委託先のメーカーに、8月、製造を委託するシャンプーの容器を納入。シャンプーの納品予定は9月だが、9月に支払う別の取引の代金から、シャンプー容器の費用を差し引く。

【ポイント】

納品物の代金を10月に支払うタイミングで、容器の費用を差し引く必要がある。早期に原材料費を決済させることは、中小受託事業者のキャッシュフローを滞らせる等の不利益を与えるため禁止。

⑨不当な経済上の利益の提供要請

委託事業者の利益のために、中小受託事業者に協賛金や従業員派遣の要請といった金銭や役務などの経済上の利益を不当に提供させることは違反。

【違反行為の例】

  • キャラクターグッズの筆箱の製造を委託する事業者に対して、顧客にサンプルで配布する目的で、無償で鉛筆を作らせる。
  • 委託先のメーカーに「手数料」を負担させ、製品の代金から差し引いた額を支払う。

【ポイント】

「ついで」と言って取引と関係のない作業をさせることや、強制的に協賛金を支払わせることも違反。

⑩不当な給付内容の変更・やり直し

中小受託事業者側に責任がないにも関わらず、発注の取消や変更、物品等の受領後のやり直しや追加作業などを行わせる際に、委託事業者がその費用を負担しない行為は違反です。

【違反行為の例】

ホームページ制作会社に、具体的な仕様を決めずにホームページを作らせた後、「イメージと違う」と言って作り直しをさせる。

【ポイント】

ホームページ制作やデザインなどの無形商材の取引は、明確な仕様書を作ることが難しくトラブルにつながることが多いため、事前に双方で仕様や修正に関して取り決めることが重要。

⑪協議に応じない一方的な代金決定

今回の法改正で新たに追加された禁止事項が、協議に応じない一方的な代金決定です。中小受託事業者から価格について協議したいと求められたにも関わらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりして、一方的に代金を決定することは違法です。

【違反行為の例】

中小受託事業者から、コストの高騰を理由に製品の値上げを依頼されたものの、「値上げ交渉は受け付けないことに決まっている」と協議を拒否する。

【ポイント】

値上げについての相談内容を聞いたとしても、理由の説明なしに値上げを拒否することは違反に当たる。値上げを検討した結果、受け入れられない場合は、説明する時間を設けた上で、社内での検討の経緯や、値上げが難しいことの根拠となるデータを示すなどの協議をする必要がある。

取適法に対応するために必要なステップ

では、取適法に対応するため、主に受託側の中小企業は何を準備すれば良いのでしょうか。必要なステップは次のとおりです。

自社が取適法の対象か確認する

まず、下記のガイドブックなどの資料で、自社の企業規模や事業が取適法の適用対象かを確認します。

中小受託取引適正化法ガイドブック | 公正取引委員会

価格転嫁に関するトップの方針を決定

次に、取適法や価格転嫁に関するトップの方針を決定します。公正取引委員会の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」も参考にして、検討を進めましょう。方針では、情報収集の方法や、交渉材料となる公表資料の活用法、交渉タイミングの決定のしかたなど、発注者側、受注者側がとるべき具体的な行動が示されています。

発注者側としては、現在の、取適法違反にあたる行為の有無を確認した上で、委託先から価格交渉を受けた際の対応に関する方針を決めましょう。受注者側としては、価格転嫁に関する現状を整理した上で、価格転嫁を推進するというトップの方針を明確化することが重要です。

労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針 | 公正取引委員会

社内の取適法への対応体制を確立

取適法の遵守や、価格転嫁の交渉を進めるための社内の連携体制を確立します。受注者側の企業は、価格転嫁の交渉方法や、根拠の提示方法について定め、マネージャーを通じて現場に浸透させましょう。

取適法の新ルールを周知

取適法に関する社内教育も重要です。特に、協議に応じない一方的な代金決定が禁止されている旨の周知は不可欠です。公正取引委員会が用意するテキストや動画などの教材も活用して、社内にルールを浸透させましょう。

情報の記録体制を整備

取適法への対応や価格転嫁の交渉に関して記録する体制を整備します。契約書の内容を確認できる仕組み作りや、情報の保管ルールやマニュアルの整備を進めましょう。

相談窓口の設置

委託事業者としての発注が多い企業は、中小受託事業者向けに、取引適正化に関する相談窓口を設置することも有効です。取引をする現場の担当者同士とは別のルートから違反をチェックする仕組みによって、コンプライアンスを遵守する企業としてのガバナンス体制を整備できます。

違反行為を受けた際の対応法は?

では、中小受託事業者は、委託事業者から取適法違反にあたる行為を受けた場合、どのような対応をとればよいのでしょうか。主な手段は次の通りです。

委託事業者への是正要求

違反が発生したら、まずは取適法に基づいた是正を要求しましょう。交渉を行っても是正がされない場合は、内容証明郵便などの書面で、以下のように法的な根拠を示しながら、回答や是正を求めます。

【書面に記載すべき内容の例】

  • どの行為が取適法のどの条項に違反しているのか
  • 要求する是正措置(減額された代金の全額支払い等)
  • 回答または是正の期限

公正取引委員会など第三者へ相談

委託事業者との交渉で是正が行われない場合や、関係性上、直接の交渉が難しい場合は、公正取引委員会や中小企業庁などの第三者へ相談しましょう。行政が、中小受託事業者の秘密を守りながら、委託事業者への指導や助言などの措置を行います。

弁護士を通じた法的措置の検討

是正要求に応じてもらえない場合や、取引停止等による損害を受けた場合は、弁護士への相談も検討しましょう。弁護士が、取引継続に向けた交渉や、損害賠償などの法的な手段によって、問題解決へのフォローを行います。

取適法のポイントをおさえて適正な取引を進めよう!

中小受託事業者の利益を守るために規制が強化された取適法。取引先との対等な関係のもとでビジネスを広げていくための第一歩として、委託する企業も、受注側としても、まずは取適法のルールを正しく理解することが重要です。このコラムの違反行為の例も参考にしながら、法律を遵守した取引ができる社内の体制作りを進めてみてはいかがでしょうか?

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監修

吉野 誉文(よしの もとふみ)

吉野モア法律事務所 代表弁護士
京都大学法科大学院修了、大阪弁護士会所属。中小企業のコンプライアンス、外国人雇用に伴う労務・労災問題、事業開発のリーガル支援に精通。「トラブルを未然に防ぐ守りの法務」と「人が辞めない組織を作る攻めの法務」を両立させ、次世代経営者の育成支援も手掛ける。事務所HPでは、中小企業向けの法務情報を発信している。
吉野モア法律事務所 HP

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記事執筆

中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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