【海外企業ユニーク事例】社員の健康とイノベーションが狙い?Google社の仕掛けだらけの社員食堂
2018年06月29日 07:00
この記事に書いてあること
社員食堂のいろいろな顔
皆さんの会社には社員食堂(社食)はありますか?
午前中の仕事を終えた後、「何を食べようかな...。」と考えながら仕事で疲れた頭をリセットする場であったり、同僚との交流の場であったり、時には会議の延長の場であったりと、様々なシチュエーションで利用される社食。最近では、全てのメニューが無料とか、ダイエットに効果があるとか、ユニークな社食が増えてきているのでは無いでしょうか。
Google社の社食もその一つ。
しかし、同社の社食は美味しいランチを提供する場だけではない、沢山の仕掛けが隠された、特別な場所なのです。
Google社のカフェテリアとマイクロキッチン
インターネット検索サービス最大手のGoogle社は1998年の創業当時から、従業員が好きな時に気軽に飲食できるように配慮してきました。(参考: MAIL ONLINE)
世界中に拠点を展開する同社では、56ヶ国以上のオフィスに約200ものカフェテリア(社食)、そしてスナックや飲み物をとりながら休憩のできるマイクロキッチンが約1,000か所あり、従業員は、朝食も昼食も、間食も、望めば夕食も無料でとることができます。(参考:Google社資料)
どのオフィスのカフェテリアやマイクロキッチンも開放的で洗練された雰囲気で、しかも提供されている食事の種類も豊富で、あらゆる点で工夫が凝らされています。"ググれば"、その雰囲気がお分かり頂けると思います。
同社のカフェテリアは、全世界の拠点合わせて1日約17万食を11万人以上(!)に提供しており、おそらく従業員が少なくとも1日に1度は使用している社内の重要な施設です。この重要な役割を担う社食を、Google社がただの食事を提供する場にするわけがないのです。
理論と実験を経て作り上げられた 仕掛けだらけの社食
Google社のカフェテリアやマイクロキッチン(以下まとめて「社食」と記載)には、例えば、こんな仕掛けが隠されています。(参考:ダイヤモンド社記事)
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食事を提供するお皿は小さいものと大きいものが選べる
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目につくところに健康的なスナックを置き、甘いお菓子は不透明な箱に入れ、下のほうに置いてある
仕掛けというほど凝った感じはしないかもしれませんが、実はこれらには、行動経済学の「ナッジ(Nudge)」という手法が使われています。
人間はいつでも合理的な判断を下す、という従来の経済学の前提を否定し、人間の不合理な判断について解明しようとするのが行動経済学ですが、この一連の研究の成果として近年注目されたのが、ちょっとしたきっかけを提供することで、強制することなく人々に行動変容を起こさせる手法、「ナッジ」です。(「ナッジ」は「合図のために肘でやさしくつつく」といった意味の言葉を指します。)
先ほどご紹介した仕掛けには、従業員自らが無理なく食事に関して健康的な選択をできるように設計されています。
つまり、
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人は選択肢がないと、たとえよいことを勧められているとしてもネガティブな反応を示す傾向があるので、大小のお皿を並べておき、健康に良い小さいお皿を「選択」できるようにした
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人は手に届きやすいものを選ぶ、という傾向があるので、選んでほしくない甘いお菓子は、見つけにくくした
ということだったのです。
新しい付加価値を生み出す力
従業員の心身の健康が企業の生産性において重要な課題であることは、以前の健康経営の記事でもご紹介した通りです。ナッジを活用した社食の様々な仕掛けは、Google社で働く人々に健康によい行動を促すことに成功しており、生産性の向上に間接的に寄与していることでしょう。
しかし、同社の社食は単に従業員の健康を維持・向上するためだけの場ではありません。「イノベーションの創出を促進する場」であることも、もう一つの重要な役割として期待されているのです。
企業の生産性を上げるためには、少ないインプット(労働投入量)で多くのアウトプット(付加価値の高い成果)を生み出す必要がありますが、イノベーションは付加価値の源泉であり、生産性向上の観点に置いて大変重要な要素です。
イノベーションを生み出すには「知と知の組み合わせ」が必要であり、さらに、それらの知は距離が離れている(異分野である)ことがポイントであると、言われています。 社食のレイアウトに関する以下の2つの仕掛けは、偶然居合わせた人々の会話が弾むように、という意図が隠されています。
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休憩所として従業員がよく使うマイクロキッチンは、異なるチームのエリアの境界線に多くが配置されている
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カフェテリアはわざと列に並ぶようなレイアウトになっている
Google社はまさに、「知と知の組み合わせ」が日常的に、そして自然発生的に起こるような仕掛けとして社食を利活用しているのです。
一方別の視点から注目されるのが、Google社は社食の仕掛け作りのために、理論や最新の研究動向を学び、それを自社に導入するために大学等の外部機関と共同で実験を行い、社員の反応や意見を見ながら試行錯誤を繰り返していたことです。本業の事業においてこのような手法をとる企業は決して少なくないとは思いますが、社内施策にここまで労力をかけるのか、と驚いてしまいます。
Google社の新しい付加価値を生み出す力は、イノベーションを生み出すための様々な取り組みからだけでなく、もともと各分野の優秀な専門家であるはずの人たちが、さらに学び、時には外部の力を借りて、自社にとって良いと思うことを徹底的に追及する、そんなカルチャーからも生まれているのかもしれません。
ランチタイムこそ「知らない人と」おしゃべりを
何気なく見える仕掛けによって、誰かに強制されることなく自然と健康的な食生活に改善できて、しかも、イノベーションも生まれるかもしれないGoogle社の社食。素晴らしくおしゃれな外観を見ると、現実的には参考にならない領域の社食だと思ってしまいますが、よくよく中身を見てみると、実はどの会社でも、個人でも、食生活の改善からイノベーションの生み出し方まで、Google社の社食から真似できるヒントがありそうです。
ひとまず今日からお昼に社食に行くときは、たまたま隣になった人に声をかけてみても良いかもしれません。知らない人でも、同じ企業に務める仲間です。ちょっとハードルが高いですか?それとも、イノベーションのためなら思いきれそうですか?
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
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