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ABWとは?フリーアドレスとの違いとメリット・導入ステップを解説

From: 働き方改革ラボ

2024年10月29日 07:00

この記事に書いてあること

働き方の多様化が進む中、注目されているワークスタイルの1つに「ABW(Activity Based Working)」があります。ABWという言葉自体は聞いたことがあるものの、フリーアドレスとどう違うのか、具体的にどのようなメリットがあるのか疑問に感じていた方も多いのではないでしょうか。

今回は、従来のオフィスのあり方とは大きく異なるABWの特徴や導入が適している企業の例、導入時のステップについてわかりやすく解説します。導入に際してチェックしておきたいポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

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ABW(Activity Based Working)とは

ABWと一口にいっても、広い意味でのABWと狭義のABWがあることをご存知でしょうか。はじめに、ABWの定義やフリーアドレスとの違いを整理しておきましょう。

ABWの定義

ABWとは、仕事の内容や目的に合わせて、社内外を問わずふさわしい場所を選んで仕事を進められる働き方のことを指します。従来のようにオフィスの場所やデスクの位置を固定せず、業務内容に応じて仕事に取り組む場所を社員が自由に選べるワークスタイルのことです。

たとえば、集中して作業を進める必要がある際には集中ブースを利用したり、オンラインでミーティングを実施する際にはWebミーティングブースを使ったりする働き方も可能です。就業場所ありきではなく、仕事の内容・目的に応じて働く場所を柔軟に選べる点が、従来のワークスタイルと大きく異なります。

広義のABWと狭義のABW

ABWの捉え方は企業によってまちまちです。ABWを広い意味で捉えた場合、オフィスにとどまらずカフェやコワーキングスペース、自宅なども就業場所に含まれます。一方、就業場所をオフィスのみとし、社内で働く場所を自由に選べるようにする狭義のABWも存在します。

仕事の内容や目的に合わせて就業場所を選べるようにすることがABWの趣旨のため、どちらが正解というものではありません。この記事では、オフィスにとどまらず社外のさまざまな場所で就業可能な広義のABWを想定しています。

フリーアドレスとの違い

ABWとよく混同されるのが「フリーアドレス」です。フリーアドレスとは、固定席を設けないオフィスの仕組みを表します。日によって周囲の顔ぶれが異なるためコミュニケーションが活性化することに加え、必要最小限の席数を設ければよいためオフィスコストの削減につながる点が大きなメリットです。ABWとフリーアドレスの主な違いとして、下表の2点が挙げられます。

ABWの導入によって得られるメリット 

ABWを導入することによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主な4つのメリットについて解説します。

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1. 生産性が向上する

業務内容に合った就業場所を柔軟に選択できるようになることにより、生産性が向上します。今まさに取り組もうとしている業務を最も進めやすい環境を、社員が各自で判断して選べるからです。

たとえば、じっくりと集中して取り組みたい業務であれば、他の社員が大勢働いているオープンなスペースよりも、一人で利用できるブースの方が適しているでしょう。反対に、チーム内でのコミュニケーションが重視されるプロジェクトであれば、お互いの距離が近いワークスペースを選ぶ方が得策です。このように業務内容に応じて就業環境を選べることは、ABWの大きなメリットの1つといえます。

2. 社員の満足度が高まる

場所の制約を受けることなく働けるようになることで、社員の満足度が高まることもABWを導入するメリットといえます。一例として、必ずしもオフィスに出社する必然性のない業務であれば在宅勤務を選択することも可能です。結果として通勤時間が削減され、社員の心身の負担を軽減できる可能性があります。

各社員にとって都合の良い就業場所を選べることは、ワークライフバランスの向上にも寄与します。育児や介護などに携わっている社員にとって、仕事と私生活とのバランスを維持しやすくなるからです。

3. ワークスペースを合理化できる

社員一人につきデスクを1つ設置する従来のスタイルでは、あまり活用されていないスペースが発生しがちです。日中は外回りが中心の営業職であれば、自席を利用するのは帰社した時のみというケースもあるでしょう。また、デスクの配置上デッドスペースができてしまうこともあり得ます。利用されていないスペースがあることは、ファシリティコストの面からも好ましい状況ではありません。

従来はデッドスペースだった場所にWeb会議用の席を設けるなどスペースの有効活用や、省スペース化・多用途化につながることもABWを取り入れるメリットの1つです。

4. 優秀な人材の確保につながる

就業場所を自律的に選べる環境が整えば、社員にとって働きやすい企業というイメージが高まることが期待できます。能力の高い人材にとってパフォーマンスを発揮しやすい環境となるため、優秀な人材を採用しやすくなるでしょう。

また、社内外を問わず就業可能な環境とすることにより、居住地やライフスタイルを問わず多様な人材を確保しやすくなります。たとえば、遠方に在住している人材は採用しにくいといった事情を抱えていた企業も多いのではないでしょうか。ABWを導入することで、優秀な人材をより幅広く募集できるようになる点は大きなメリットといえます。

ABWの導入が適している企業の例

ABWの導入が適しているのは、どのような企業でしょうか。一例として、下記のような条件に該当する企業が挙げられます。

オフィス移転を予定している企業

近い将来、オフィスの移転や統合を予定している企業は、移転・統合を機にABWの導入を検討しやすい状況にあるといえます。新オフィスを設計する際、ABWの運用を前提とした設計にすることで、使い勝手の良いオフィスにできる可能性が高いからです。既存のオフィスを改装する場合と比べて、効率良くABWを導入できます。

ABWを採用することにより、全社員が必ずしも常にオフィスで就業するとは限らない状況となります。結果としてオフィスをコンパクト化できたり、デッドスペースを極力つくらない設計にできたりするでしょう。

テレワークやハイブリッド勤務を導入している企業

現状、すでにテレワークやハイブリッド勤務を導入している企業に関しても、ABWへの移行を検討する意義が十分にあります。空いている座席や使用していない空間などを、多様な用途に活用できる可能性があるからです。

たとえば、座席数を削減してファミレス形式のテーブル席を設けたり、集中ブースやWeb会議スペースを設けたりすることが想定されます。ハイブリッド勤務の社員がオフィスで仕事をする際には、その時々の業務内容に応じて席を自由に選べるようになるため、業務効率が向上するでしょう。

部署・部門を超えたコラボレーションが求められている企業

部署・部門を超えて協働する必要がある企業にとって、ABWの導入は生産性向上に寄与する可能性が高いといえます。部署・部門ごとにフロアや執務スペースを区切る必要がないため、プロジェクト単位・チーム単位で柔軟に業務を進めやすくなるからです。

所属部署の垣根を越えたコミュニケーションの場を設けることにより、新たなコラボレーションの創出につながる可能性もあります。コミュニケーションの活性化とコラボレーションの促進に、ABWを活用してみてはいかがでしょうか。

社内外での協働が不可欠な企業

取引先など社外メンバーとの協働を重視している企業にも、ABWの導入はおすすめです。オフィス内外を問わず気軽に集える仕組みにすることで、社員と社外メンバーとの垣根が低くなる効果が期待できます。

たとえば、社員に限らず利用できるスペースを設けることにより、社外メンバーとの打ち合わせやコミュニケーションのために会議室を予約する必要がなくなります。社外メンバーが気軽に立ち寄り、社員との交流を深められる空間となるでしょう。

ABWの導入に向けた5ステップ 

ABWを導入する際の基本的な流れを紹介します。ABWは定義が幅広いことから、導入する目的や解決したい課題によって導入の進め方が異なるケースが少なくありません。まずは基本の流れを押さえた上で、自社の状況に合わせてアレンジしていくことが大切です。

1. 導入目的を明確にする

はじめに、なぜABWを導入する必要があるのか明らかにしておきましょう。ABW導入ありきで進めるのではなく、何を実現・達成するためにABWという手段を用いるのかを明確にしておく必要があります。

ABWの導入そのものが目的化してしまうと、導入後にかえって混乱を招いたり、導入効果の検証が困難になったりするおそれがあります。手段ありきではなく、目的ありきでABWの導入を検討・推進していくのがポイントです。

2. 現状の課題を洗い出す

次に、現状の職場環境が抱えている課題を洗い出していきます。現状のオフィスや働き方について感じている課題を社員へのヒアリングやアンケートを通じて調査し、実態を明らかにしていきましょう。

課題を抽出する際には、社員が感じている困りごとや問題点の原因を掘り下げていくことが重要です。たとえば「情報の共有がしにくい」という課題を感じている社員が多いとすれば、情報共有の仕組み以前に日常的なコミュニケーションが不足している可能性があります。この場合、コミュニケーションの活性化がABW導入によって解決すべき課題となるはずです。

3. オフィスのレイアウトを決める

洗い出した課題に優先順位をつけ、解決に向けたオフィスレイアウトを検討していきます。どのようなスペースや機能が必要なのかをリストアップした上で、オフィスの図面へと落とし込んでいきましょう。

レイアウトを決める際には、配線や通信回線の確保やオフィス内での動線についても考慮する必要があります。重要文書の保管場所は、オフィスの出入り口から遠い場所や人の行き来が多くない場所にする、保管する情報によってはセキュリティルームを設けるなど、ゾーニングを慎重に検討することが大切です。

4. 制度の見直しをする

ABW導入によって社員の働き方が大きく変わることになるため、就業規則や評価制度なども見直しておく必要があります。ABW化と制度の実態が食い違うことのないよう注意しなければなりません。

たとえば、自律的に判断・行動して成果を上げたことが評価される制度の仕組みは、ABWとの親和性が高いでしょう。上長の目が届く場所で就業しているかどうかによって評価に差が生じることのないよう、客観性の高い評価方法を取り入れることが重要です。

5. セキュリティ・ネットワーク環境を整備する

ABW化に伴って、必ず検討しておきたいポイントの1つがセキュリティ対策です。就業場所がオフィス内に限定されなくなることによって、従来のように社内と社外を分ける境界型セキュリティの考え方では対応できないケースが、日常的に発生することになります。

オフィス外での就業を認める以上、インターネットへの接続は不可欠となります。したがって、マルウェア侵入などのインシデント発生を完全に防ぐのは不可能といわざるを得ません。そこで、脅威の侵入を防ぐ仕組みを構築するだけでなく、実際にインシデントが発生した場合のことも想定して対策を講じておく必要があります。  たとえば、マルウェアの侵入を検知し、感染が疑われる端末を自動でネットワークから切り離すセキュリティソフトの導入などはその一例です。このように、端末単位でセキュリティ対策を講じるエンドポイントセキュリティの仕組みを導入することが求められます。

ワークスペースを整備する際の注意点

ABWを実現するためのワークスペースを整備する際には、いくつか注意しておきたい点があります。シェアオフィスなどを活用する場合と、自社内にて完結させる場合に分けて注意点を押さえておきましょう。

シェアオフィスなどを活用する場合 

オフィス以外の場所で就業するためのスペースとしてシェアオフィスなどを活用する場合には、利用時間や設置可能な機器などの制約を受けるケースが少なくありません。自社が想定している利用方法に合致しているか、営業時間や業務内容との不一致が生じないか、契約前に十分確認しておく必要があります。

また、オフィス外に端末を持ち出したり、通信が可能な機器を設置したりすることになるため、社員へのセキュリティ教育が欠かせません。たとえば、機密情報が保存された端末や記憶媒体を放置したまま離席することや、端末画面をのぞき見られることが情報漏えいの原因となる場合もあります。このように、日々の業務において具体的に気を付けるべき点や、セキュリティ上の観点から禁止されている行為について周知徹底しておくことが重要です。  

自社内にて完結させる場合

自社内に限り就業場所を自由とする狭義のABWを採用する場合、社員にとって従来の働き方との違いがわかりにくくなることもあります。ABWを導入したものの、これまでどおりオフィスに出社し、毎日決まった席を利用する社員が続出する事態を招きかねません。ABWの意義や目的、メリットなどを事前に共有しておことが大切です。また、オフィスの改装や通信機器の設置など、社内整備には相応のコストがかかります。実現を目指すワークスタイルと、実現するためにかかる費用を慎重に比較した上で、十分な費用対効果が得られる施策であるかどうかを判断する必要があるでしょう。

ABW導入時にチェックしておきたい4つのポイント

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ABW導入を効果的に進めるために、チェックしておきたいポイントを紹介します。下記の4点はABW導入時につまずきやすいポイントでもあるため、必ず対策を講じた上で導入に着手しましょう。

ポイント1:労務管理方法を決めておく

就業場所が一定ではなくなるため、労務管理方法をきちんと決めておかなければ混乱が生じるのは避けられません。出退勤の報告をはじめ、有給申請や休暇中の社員の把握など、労務管理をどのように行うのかを決めておく必要があります。

また、各社員が上長とコミュニケーションを図る手段を確保しておくことも重要なポイントの1つです。勤怠関連の報告をはじめ、日常の業務連絡を滞りなく行えるよう、ビジネスチャットやビデオ会議ツールの導入を検討しておくことをおすすめします。

ポイント2:企業理念やカルチャーの浸透を促進する

ABWの導入を成功させるには、社員が自社の理念やミッションを深く理解し、各自に求められる役割を把握している必要があります。果たすべき役割を正確に理解した上で、自律的に社員が判断・行動して業務を遂行していくことがABW導入の本質的な目的だからです。

裏を返すと、企業理念やカルチャーが十分に浸透していない状態でABW導入に踏み切った場合、失敗するリスクが高まります。ABWが形式的なものにならないようにするためにも、導入に先立って企業理念やカルチャーの浸透を促進しておくことが重要です。

ポイント3:シャドーITの防止策を検討しておく

シャドーITとは、企業として使用を許可していないIT機器やソフトウェアなどのことです。組織が管理・把握していない機器やソフトウェアを無断で使用した場合、情報漏洩や不正アクセスの被害に遭うリスクが高まりやすくなります。

ABWでは常に社員が管理者の目の届くところで就業するとは限らないことから、シャドーITの防止策を検討しておく必要があります。機器やソフトウェアの扱いに関するルールを策定するとともに、なぜそれらのルールが必要なのかを十分に認識してもらうことが大切です。

ポイント4:成果を評価する仕組みを構築する

ABWを導入することにより、業務内容に応じて社員の就業場所は各自まちまちになります。各自の取り組みや業務プロセスが見えにくくなることから、成果にもとづく評価軸を取り入れるのが望ましいでしょう。

能動的に判断・行動した社員の成果がより高く評価される仕組みにすることで、社員が自ら考え行動するよう促せます。上長の目が届く範囲で業務を進めていた社員が高く評価され、オフィス外で就業していた社員の貢献が評価されないといった不公平が生じることのないよう注意が必要です。

ABWの目的と意義を理解した上で導入を検討しよう

ABWは「仕事を場所に合わせる」のではなく、「場所を仕事に合わせる」考え方にもとづくワークスタイルといえます。従来のように就業場所をオフィスに限定した働き方とは大きく異なることから、その目的と意義を十分に理解した上で導入することが大切です。今回紹介したABWの導入ステップや導入時の注意点を参考に、社員の自律性・主体性を引き出すワークスタイルを取り入れてみてはいかがでしょうか。

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