全業種対象

アファーマティブアクションとは? 有効な具体策を事例で解説

From: 働き方改革ラボ

2025年10月27日 07:00

この記事に書いてあること

\1分のフォーム入力で無料配布中!/

すべての人に働きやすい職場作りを進めよう
LGBTQフレンドリーとは?

フォームよりお申し込みください

多様な人材の活躍を進める取り組みとして、「アファーマティブアクション」が注目されています。世界では、大学入試や、女性政治家の数を確保する制度などで知られるアファーマティブアクションは、企業や働く人の間では、どのような形で取り入れられているのでしょうか。このコラムでは、アファーマティブアクションという用語の意味や、企業が取り組むメリットや注意点、さらに、企業の成功事例をお伝えします。

アファーマティブアクションとは?

アファーマティブアクションとは、ポジティブアクションとも呼ばれ、日本語では「積極的格差是正措置」や「肯定的措置」と訳されます。特定の集団への差別や不平等な状況を正すための取り組みで、女性やマイノリティ、障害者など、これまで社会的、制度的に不利益を受けやすかった人々に、平等な機会を提供するための積極的な配慮や措置が、アファーマティブアクションです。

海外の大学入試において、マイノリティに一定の合格枠を与える「クオータ制」や、フランスで、政治の意思決定の場で男女が同数になるよう選挙候補者名簿における男女の割合を同数にすることなどが法律で定められている「パリテ」の仕組みも、アファーマティブアクションにあたります。

企業活動におけるアファーマティブアクションには、男女の雇用比率の平準化や、待遇、昇進、職務内容などの格差是正、また、障害者などのマイノリティを一定数以上、採用する取り組みなどがあります。

企業がアファーマティブアクションに取り組むメリット

企業のほか、教育現場や政治の世界でも、マイノリティに機会を広げるアファーマティブアクション。では、企業がアファーマティブアクションに取り組むと、どのようなメリットがあるのでしょうか。

多様性が確保できる

アファーマティブアクションを実施して、社員の性別や特性、個人の事情によって生まれる格差や不利益を解消することで、多様性の許容が進みます。さまざまなバックグラウンドを持つ人材が個性を生かして活躍できるようになれば、自社のビジネスに、課題解決につながる多様な価値観や視点を取り入れることができます。組織内のコミュニケーションが活性化するとともに、顧客の多様なニーズへ対応する力や創造力が高まり、新しいアイディアや、イノベーションの創出にもつながります。

人材の活躍が進む

就業の門戸を広げて、多様な人材が活躍できる環境を整えることで、企業は人材不足を解消できます。アファーマティブアクションの取り組みによって、育児や介護などの事情を理由に長時間働けない人や、障害のため業務内容が制限される人、また定年退職したシニアなど、働く意欲を持ちながらも活躍の幅が限られてきた多くの人材を活用できます。また、これまでキャリアの選択肢に制限があることの多かった女性社員の登用が進めば、女性のモチベーションの向上や長期的な活躍も期待できます。

また、個人の事情に対応する短時間勤務制度などの多様な働き方を選択できるようになれば、他の社員にとっても働きやすい環境が整います。社員満足度の向上や、人材の定着にもつながるでしょう。

社会的評価が上がり採用面のメリットも

社会的に意義のあるアファーマティブアクションに取り組むことで、格差是正や多様性の許容を進める企業として認められ、社会的な評価を得ることができます。また、さまざまな特性や事情に合った働き方ができる企業になれば、新卒、中途の求職者にとっての魅力も高まります。そのため、優秀な人材を獲得しやすくなるという、採用面のメリットも期待できます。

\1分のフォーム入力で無料配布中!/

すべての人に働きやすい職場作りを進めよう
LGBTQフレンドリーとは?

フォームよりお申し込みください

アファーマティブアクションに取り組む上での注意点

アファーマティブアクションは、不利益を受ける人をなくす取り組みである一方、進め方次第では、他の社員の不満を招くこともあります。社内の誤解や対立を生むことなくアファーマティブアクションを進めるために、以下のポイントを意識して取り組みを進めましょう。

「特別扱い」という不満が生まれることも

アファーマティブアクションには、反対意見もあります。男女共同参画局が実施した平成7年「男女共同参画に関する4か国意識調査」によると、アメリカ、スウェーデン、ドイツの人の約3割が、ポジティブアクション(アファーマティブアクション)に反対。日本は18%の人が反対しています。日本の人の反対理由としては「男女の平等は、社会の意識や慣習が変化し、女性が能力を十分に発揮できるようになれば自然に達成されるから」「自由な競争を妨げ、社会や企業の活力をそこなう恐れがあるから」「女性が優遇される結果、同じ能力を持つ男性が差別されるから」などが挙げられました。

男女共同参画に関する4か国意識調査(日本、アメリカ、スウェーデン、ドイツ)|内閣府男女共同参画局

こうした調査からも、不利益を受けてきた人々を優遇することは、同じ能力を持つ男性が評価されないのではという疑念や、特別扱いによる問題が起こるという意見も生むことがわかります。そのため、アファーマティブアクションにおいては、特別扱いと受け取られるような過剰な優遇をせず、すべての人に平等に機会を与えるという考え方のもとで取り組みを進めることが大切です。

価値観の押し付けをしない配慮が必要

アファーマティブアクションは、マイノリティへの行き過ぎた配慮が、マジョリティに対する差別と受け取られやすいという点にも注意が必要です。不利益を感じる人が新たに生じないように、女性や障害者の事情に応じた措置を行いつつも、採用や登用に関しては、その人の属性よりも、能力や個性を評価して機会を提供することを意識しましょう。

社内の機会の格差是正や、マイノリティの救済をスムーズに進めるためにも、社員にはアファーマティブアクションへの理解を求めつつ、価値観を過度に押し付けない配慮が必要です。

アファーマティブアクションの具体策は? 事例で紹介

では、アファーマティブアクションは実際に、企業内でどのように進めていけばいいのでしょうか。イメージを掴みづらいという方のために、女性活躍推進や、育児・介護等との両立、性的マイノリティに関する制度など、企業が実際に行っている取り組みをご紹介します。

週4日や朝型勤務などの選択肢を拡充

福島県の株式会社東邦銀行は、子育てや介護等の事情を持つ社員にとって働きやすい環境を整備するため、4時間、5時間、6時間、7時間から選べる短時間勤務制度や、週4日・1日8時間勤務ができる制度も導入。そのほか、介護・育児休業中の従業員が短日数・短時間から復帰できる短日勤務制度や、配偶者の転勤への同行による一時的な休職に対応するキャリアサポート休職制度など、ライフイベントを経ても長く働き続けられる制度を整えています。

また、長時間勤務の是正や業務効率化のため、朝6時半から仕事が始められる朝型勤務制度も導入。取り組みの結果、女性社員の活躍や、削減した労働時間を活用した従業員の育成、福利厚生の利用も進んでいます。

再雇用後も同じ待遇でシニアの活躍を促進

小売業を手がけるイオンリテール株式会社は、シニア社員の活躍を進める新制度を導入。それまで、65歳の定年後は全員が時間給で再雇用されていましたが、新たな仕組みとして、65歳の定年後もフルタイムの正社員として働くことができる、エルダー社員制度を導入しました。

エルダー社員は、定年時と同じ等級であれば再雇用後の月給も同水準のままで、賞与も支給されます。また、定年後も、店舗リーダーや店舗マネージャー、課長、店長クラスで勤務を続けることができます。制度を見直した結果、フルタイム正社員の人材確保や、シニア社員のモチベーション向上、また、シニア社員が現役社員の職務をサポートできるなどの効果が出ています。

雇用形態や性別に関わらず管理職に登用

社員食堂やホテルなどのフードサービスを提供する株式会社グリーンハウスは、調理器具の軽量化や機械化に伴い、女性の活躍を積極的に推進。出産、育児、介護などの各種休暇制度の整備や、育児短時間勤務制度の適用拡大、やむを得ない理由で退職した社員の復職を支援する退職者再雇用制度の導入などを進めてきました。

また、能力と意欲次第で、雇用形態を問わず、女性も含む従業員を積極的に店長に登用しています。女性役員も誕生し、エリアマネージャーや新規クライアント開発マネージャーといった管理職にも女性が多く登用されるなど、男女差なく、能力に応じた活躍の機会が広がっています。

育休社員の同僚も支援する制度で男性育休取得率100%

大分県で介護事業を手がける社会福祉法人 庄内厚生館は、ワーク・ライフ・バランス改善の取り組みのひとつとして、男性の育児休業取得を推進しています。男性社員が抱く育休取得時の収入面の不安をカバーするため、育休中の最大90日間、給付金と合わせて賃金の8割相当を受け取れるよう、賃金の13%を支給。さらに、育休中の社員と同じチームで働く社員に、「子育て育休サポート手当」として1日あたり500円を支給することで、男性も気兼ねなく育休を取得できる雰囲気が醸成されました。2019年の取り組み開始以前は0だった男性育休取得率が、現在は100%に至っています。

同性パートナーを持つ社員への福利厚生を拡充

日本航空株式会社は、同性パートナーを持つ社員(そのパートナーと家族)が利用できる福利厚生制度を整備しています。会社の定める同性パートナー登録を行った社員は、各種休暇(結婚・忌引などの特別休暇)、寮・社宅、社員赴任への同行、結婚祝い金の支給など、婚姻関係の配偶者と同等の福利厚生を受けられます。

パートナー登録の申請は特定の人事担当者のみが確認できるようになっており、担当者が、申請者本人と、性的指向・性自認に関する情報を伝える範囲や共有のタイミングなどを相談し、制度を利用しやすいようにサポート。パートナー登録や、福利厚生制度の利用の実績が出ています。

柔軟な働き方で障害者の安定した就労を実現

埼玉県の株式会社シーエックスカーゴ桶川物流センターは、雇用する障害者ひとりひとりを戦力と見なし、個人が能力を発揮できるように、特性に応じた配慮で職場環境を改善。2019年時点の障害者の実雇用率は5.64%で、障害者雇用促進法で定められた法定雇用率である2.5%という水準を上回っています。

環境改善の取り組みのひとつが、柔軟な勤務時間の設定です。フルタイムで働いていたものの、体調を崩し通院が必要となった社員に、2日間の時短勤務を適用。また、加齢による心身の変化に配慮して、負荷の少ない業務への配置転換を行いました。障害者職業生活相談員やジョブコーチと連携した支援や、社員の通院状況や服薬内容などを記録した支援シートを共有することで、障害者が長く安心して働ける環境を整えています。

アファーマティブアクションですべての人が働きやすい職場を実現

アファーマティブアクションという言葉に馴染みのなかった方も、採用するメリットや注意点、また企業内でできる取り組みを知ることで、理解を深められたのではないでしょうか。まずは、社内の働き方に関する格差に注目することで、今、自社に必要なアファーマティブアクションが見えてくるはずです。今回ご紹介した企業事例をヒントに、自社で取り組みやすいところから始めて、すべての社員が自分らしく活躍できる職場作りを進めてみてはいかがでしょうか?

\1分のフォーム入力で無料配布中!/

すべての人に働きやすい職場作りを進めよう
LGBTQフレンドリーとは?

フォームよりお申し込みください

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
「働き方改革って、こうだったんだ!」「こんな働き方、いいかも!」
そんなきっかけ『!』になるコンテンツを提供してまいります。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。

記事タイトルとURLをコピーしました!

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

働き方改革ラボに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

働き方改革ラボ

https://www.ricoh.co.jp/magazines/workstyle/

「働き方改革ラボ」は、よりよい働き方を目指す全ての方に、幅広いテーマで情報をお届けします。すぐに使えるお役立ち資料を是非ご活用ください。

新着情報をお届けします

メールマガジンを登録する

リコージャパン株式会社

東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

お問い合わせ先:働き方改革ラボ 編集部 zjc_workstyle-lab@jp.ricoh.com